【連載】全日本インカレ直前特集『To be at the Top』 第6回 蜂須賀晋之介×倉橋直暉

ヨット

 最終回を飾るのは、今年から470級の1番艇を任されている倉橋直暉(スポ3=福岡・中村学園三陽)と、先日行われた全日本学生個人選手権でスナイプ級優勝、最優秀選手賞を獲得した蜂須賀晋之介(スポ4=茨城・霞ケ浦)のスキッパー2人組。それぞれのクラスでエース級の活躍を見せるお二人に今の両チームの雰囲気、さらには全日本学生選手権(全日本インカレ)における勝負を分けるポイントについて伺った。

※この取材は10月17日に行われたものです。

「伸び伸びと部活をやることができた」(倉橋)

スキッパーとして舵を取る倉橋(手前)

――お互いの印象を教えてください

倉橋 超絶ストイック!大学でいうとヨットの意見を後輩からも謙虚に聞く姿勢であったり、皆が休憩してる時にも練習したりと。普段の生活でも食事の管理をストイックにやられている印象があります。

蜂須賀 負けず嫌い!小さい頃の種目から今に至るまで勝ち続けています。

――お互いの意外な一面などありますか

倉橋 綺麗好きかな。

蜂須賀 めっちゃ意外すぎじゃない。綺麗かな?

倉橋 綺麗好きじゃないすか?!意外って言ったら失礼か(笑)。

蜂須賀 意外なところ見つけられないの悔しいな…。(暫くして)本読んでる?

倉橋 たまに読んでます!

――どういったジャンルの本を読みますか

倉橋 自己啓発系を結構読んでいます。

――今シーズンを振り返るといかがでしたか

倉橋 今年で言うと楽しく部活をやらせていただけたなと思います。4年生が運営面であったりと色々なことをしていただいて、下級生も嫌な空気とかを一切出さずにサポートをすごいしてくれました。僕はのびのびと部活をやることができたなと感じます。課題をはっきりさせて、上達することができたなと思います。いい1年でした。

蜂須賀 今年から初心者のクルーで乗っているのですが、初心者と乗ることで自分の粗が出たというか…。自分本体の能力も上げないと2人でヨットを走らせられない場面が多く。クルーはクルーで常に初心者ボーナス、僕も初心者と乗ることで伸び代が増して初心者ボーナスが。全日本インカレまであと数週間しかないのですが、この初心者ボーナスの勢いを保てると思うし、保つ自信があります。

――現在の両チームの雰囲気はどのようなものですか

蜂須賀 勝っている時は雰囲気いいのですが、負けてる時はちょっと難しいなと思います。僕が3位から1位に上げる課題よりも、大久保(優輝、創理=東京・早実)や尾道(佳諭、スポ4=山口・光)、服部(陸太、スポ1=神奈川・鎌倉学園)が20番台から1桁まで上げるほうがポイントの稼ぎ幅が大きいわけで…。そこで課題を明確に克服していかないといけないのですが、やはり海の上だと風が強い時もあるし、近付くのも難しい時もあり、海上での順位が悪い時の雰囲気や情報共有をしていく努力をしています。

倉橋 雰囲気は良い方向に向かっているなと感じます。自分でも足りていない技術を考えるし、お互い何が足りていないかを考えあえてると感じます。どういう練習すべきかなどのアドバイスを陸上でも海の上でも交換したりすることができているので、いい方向に向かっているんじゃないかなと思います。

――最近伸びてると感じる選手はいますか

蜂須賀 自分って言っていいのかな(笑)。誰よりもレースの分析が多いし、明確。1人の反省だけでなくペアの反省ができたと。仲間の課題を克服するほうが伸び代が多いと先程言ったと思うのですが、仲間の課題を意識するようになってから自分の課題に対する余裕ができたなと思います。

倉橋 僕も自分かもしれません。コース引きの考え方を理論的に考えることができるようになりました。普段の練習の経験から学べたことなので、コース系の考えが一段階上がったのが結構最近ありました。

――今季伸びてきた選手として大久保選手、河﨑(元紀、スポ2=神奈川・鎌倉学園)選手、田中丸(武、商2=早稲田佐賀)選手の名前が他対談では挙がりましたが、お二人にとってはどのように感じるか

蜂須賀 河﨑は技術的にうまくなったというよりかは、レースに対するマインドの持ち方がうまくなったかなと思っています。動作や海のパフォーマンスが格段にうまくなったかと言えば普通で、いいレースをするためのルーティーンや順位が悪い時の会話などが前よりも遥かに弾むようになりました。レースに向けた行動の運び方がうまくなったなと思います。

倉橋 田中丸は一緒に乗ってないんで正直分からないんですが、石川(和歩、スポ2=香川・高松商)と前乗った時に「すげえうまくなってる」と言っていたので伸びてるのかなと思います。外から見てる感じだと分からないですけど。大久保に関しては成績見ても安定してないので、正直伸びてはないのかなと。いい時もあれば悪い時もあるなと。

――蜂須賀選手にとって4年間はどのようなものでしたか

蜂須賀 1年生の時は本当に何も考えていなくて空白。2年生からは安心して付いていける先輩を見出して、競技に打ち込めるようになりました。2年生の時にインカレは負けているけど、自分の成長曲線で言ったら垂直に上がっていた時でした。3年生は全日本個人戦出れなくなってしまったんですけど全日本インカレでも個人成績が3番と。上の2艇には敵わなかったけど、早稲田のスナイプチームとして貢献できたのではないかなと思います。そこまでは自分の順位重視で走っていましたが、自分が追いかけられるポジションになってからは、常に周りの伸び代を確実に埋めながら自分の順位も上げていかないといけないので考えることは増えましたし、2、3年生の頃に比べると部活が忙しく感じます。

――そういった姿勢は前主将の松尾(虎太郎氏、令3スポ卒=山口・光)さんの影響を受けているのでしょうか

蜂須賀 直接聞いた時は「競技中とかどんなに辛い時でも無理にでも笑顔になってろと、周りに焦りを見せるな」と教わっています。陸ではできていないですけど、海上では心掛けています。「誰からでも俺と乗りたいと言ってもらえるようにスキッパーとしての腕を磨け」と言われているので、それだけは常に考えています。

「他大学からしたら目標にならなければいけない存在」(蜂須賀)

自身にとって、早大ヨット部がどういった存在であるかを語る蜂須賀

――4年間の中で印象に残っているエピソードはありますか

蜂須賀 全部印象薄すぎて分からないです。これから作る印象が一番デカくなると思います。

――早大ヨット部はどのような存在ですか

倉橋 必要不可欠(な存在)です。ずっと昔から憧れていて、実際入学させてもらってモチベーションが上がりましたし、今も早稲田のヨット部に所属している自信を持ててヨットができているので、なくてはならない存在だと思っています。

蜂須賀 関東勢の中でトップラインの成績を維持してて、他大学からしたら目標にならないといけない存在だと思っています。早稲田は部員の半分が一般生ですし、他大学が目標にするほどすごいものを持っているわけではないですし、誰でもできることをやり切ることで目指せる高みのマックスを攻めてるだけです。(周りからは)いい指標になっているとは思います。これからも目標であり続ける必要があると思います。

――倉橋選手は地元への凱旋にもなると思いますが、強い思いなどはありますか

倉橋 もちろん地元なので絶対に勝ちたいとの思いはありますが地元だからいけるという考えはしたくないです。初心に戻って、行ったことのない海と考えてやろうかなと。特別な思いなどはそんなにせず。開催地が蒲郡なだけで、ただ頑張ります。

蜂須賀 僕も地元とはいってもいたの中学生までで、その時はコース取りとかを考えていなく。大学になってからは2年生の時の全日本個人戦で順位も7位とそんなに良くないので。倉橋と同じように自分が勝つために必要な準備をしている最中です。

――1番艇としてどのようなものが求められていると思いますか

蜂須賀 自分の理想は去年のです。去年勝っていてそれが一番理想になっています。常にリーダーに意見を求めながら自分の意見を持つ。レースの組み立て方をチームで意見しながら一番いい勝ち方に皆を当てはめていく。そのために必要な情報提供を僕からできたらいいなと。尾道もコース取るのがうまいですし、自然の変化を観察する能力に長けているので、その点は4年生の僕らが継承していけたらいいなと思います。

倉橋 気持ちの切り替え部分で他の2艇をサポートできたらなと思います。悪い時はどうしてもちょっとだめになりますし、そういう時でも次頑張ろうと思えるように。先輩たちは最後でプレッシャーかかっていると思うので悪い時のダメージがくると思うんですが、そういう時にしっかり後輩から声をかけたら先輩たちも元気出ると思います。自分が悪かった時でも、「切り替えて頑張ります」などの声掛けをしてモチベーションを維持することが必要なんじゃないかなと思います。

――1番艇であることにプレッシャー感じますか

蜂須賀 全然感じていないです。船が新しいだけなんで。

倉橋 プレッシャーとかは全くないです。

――全日本インカレの勝負を分けるポイントはどこになると感じますか

蜂須賀 チームのムードだと思います。必要な情報はいい会話からしか生まれなくて。悪い雰囲気の時は会話しないので。皆が意見しやすい雰囲気でないといい意見や情報は入ってこないので、勝つために必要な情報を意見しやすい場をつくりあげていかないといけないです。前もって必要な情報とかは調べるんですけど、そういう会話を僕、尾道、そして大久保がどうにかしがみついてくれればと。

倉橋 どれだけレース前に準備したかが重要だと思っています。個人戦の後に団体戦という2週間の長い期間なので色々とトラブルは起こると思います。強いチームというのはミスを立て直せると思うので、トラブルが起きた時の対処、全部準備できてるかです。出発前の備品の整理とかもしっかりしておければ、誰よりも練習してきましたし、あとはやるだけかなと思います。どれだけミスを想定して出発できるかだと思います。

――最後に全日本インカレの意気込みをお願いします

蜂須賀 みんなで喜べる勝ち方がしたいです。勝つ前提で挑んで、勝ち方にも拘るようにします。去年のようなです!雰囲気を盛りあげながら勝ちにいきます。

倉橋 いつでも楽しく。どんな時もモチベーションを落とさずに、皆で声を掛け合って楽しく勝つですかね。

――ありがとうございました!

(取材・編集 足立優大、大島悠希氏)

所沢キャンパスのトレーニングジムで撮影させていただきました!

◆倉橋直暉(くらはし・なおき)(※写真右)

2000(平12)年10月10日生まれ。168センチ。福岡・中村学園三陽高。スポーツ科学部3年。470級スキッパー。倉橋選手がヨットを始めたのは今回の全日本インカレの舞台である愛知・蒲郡。自身のヨット人生における思い出の地でどんな走りを見せてくれるでしょうか

◆蜂須賀晋之介(はちすか・しんのすけ)(※写真左)

1999(平11)年9月3日生まれ。171センチ。茨城・霞ヶ浦高出身。スポーツ科学部4年。チームメイトから全幅の信頼を寄せられている蜂須賀選手。エースの快走でチームを勝利に導きます!