【連載】全日本インカレ直前特集『To be at the Top』 第4回 尾道佳諭×服部陸太

ヨット

 第4回は昨年、3番艇として全日本学生選手権(全日本インカレ)の王座奪還に貢献した尾道佳諭(スポ4=山口・光)、ルーキーながらここまで安定した走りを見せる服部陸太(スポ1=神奈川・鎌倉学園)のスナイプスキッパー同士による対談。学年が離れながらもお互いに仲のよい2人に、全日本インカレに懸ける思いを伺った。

※この取材は10月17日に行われたものです。

今シーズンを振り返って

ルーキーイヤーを振り返る服部

――お互いの印象を教えてください

尾道 僕らはOP級という一人乗りの小さい艇で競技を始めて、知り合いだったわけではないのですが、顔馴染みではありました。実際、ヨット部に入ってきて感じたのは、思ったよりもよくしゃべるなということです(笑)。もっと大人しいと思っていたのですが、意外と取っつきやすい性格ですね。また、今の早稲田の中でも1年生ながら3番艇を争う実力を持っているので、頼もしいという印象です。

服部 僕もジュニアの頃から(尾道)佳諭さんを知っていて、自分が小学生の頃から(佳諭さん)は日本代表の中学生だったので、上のレベルを目指すところに常にいる選手でした。なので、そういった方と早稲田に一緒にいる中で、引退する前に技術を盗むべき選手だなと思います。

――最近のマイブームなどはありますか

服部 コンデジ(コンパクトデジタルカメラ)を持っていて、ここ数日の間、写真が必要ということだったので、先週の秋インカレ(関東学生選手権)で選手の写真を撮るのが楽しかったです。

尾道 マイブームは特にないです。ただ、最近やっていることと言えば減量ですね。トレーニングというよりは脂肪を落とすことで体を絞っています。

――今シーズンを振り返っていかがですか

尾道 個人としての成績は置いといて、例年よりも団体戦の数が少なく、練習の量も減っている中で、チームとしての成績はここまでの全ての公式戦で総合優勝を果たしているので、この結果は全日本インカレにもつながると考えています。また、個人の順位としては多くのレースで上の方にいたことはよかったのですが、1つの大会で1、2レースほど(順位を)崩す場面があったので、そこは全日本インカレまでに直していかなければいけない課題だと捉えています。

服部 僕はまだ1年生ですし、高校までは個人で競技を行ってきたので団体戦は今年しか経験していないのですが、少しずつレギュラーとして(レースに)出させてもらう中で、ここまで団体戦で負けずにくることができたというのはすごくよかったと思います。ただ、個人としては夏前に靭帯を切ってしまって2カ月ほどレースに出ていない期間があり、復帰後は体力的にも感覚的にも上手くいっていた時に比べて崩れてしまったので、ここ1カ月は不安でいっぱいでした。

――何か先輩方からアドバイスなどはもらいましたか

服部 断裂したわりには早く治ったほうだったので、大丈夫なのか、無理してないかと聞かれることが多かったです。

尾道 早いなと思いました。2カ月かかってないよな。

服部 1カ月半ですね。先輩方には心配していただきました。

――現在のスナイプチームの雰囲気はいかがでしょうか

尾道 今まで通りですね。少し(調子を)崩したりすることがあっても、僕の下級生の頃のように3番艇、4番艇といったレギュラーを争う選手たちが下から押し上げてくれるようなチームとなっています。学生のレベル的には一番速いスナイプチームだと思うので、その面で言うといい雰囲気なのではないかと思います。

服部 470チームと比べると、どちらかというと楽しく伸び伸びとやっているなと思います。その中でも、レースになるとクラスリーダーがアドバイスをくれますし、その上で前を走って引っ張ってくれるので、自分も少し気楽にレースができています。そういう面でも4年生2人はすごいなと感じます。

――今年のチームのカラーはどういったものでしょうか

尾道 去年と似ていると思います。レインボーですね(笑)。というのも、僕たちが1、2年生の頃とは異なり、下級生に上からの圧がかからないというのが大きいです。僕らが下級生の頃は上級生に意見できなかったのですが、昨年くらいからは下級生が伸び伸びとやれる環境となっているので、そういった意味でもみんながそれぞれ、個人のいいところを出せているなと感じます。本当の自分が出せているというのは、自分の色を出せているということでもあるので、そういったことを踏まえるとレインボーかなと思います。

服部 例年というのは分からないですが、エンジよりも明るい赤色なのかなと思います。僕のイメージでは4年生に活気があって、部活での行動も含め輝いているので、そんな感じですね。

――尾道選手から見て、最近伸びている選手はいますか

尾道 これは服部ですね。先程述べたように元々入ってきた時から実力は持っていたのですが、そこにスナイプの知識がつき、靭帯断裂で練習ができない期間もあった中でも、自分から分からないことやアドバイスを求めて吸収しようとする姿が見受けられるので。実際、それがレースの結果にも出ていますし、ケガから1、2カ月ほどでレギュラーを争うくらいまで実力を取り戻してきたのはすごいなと思います。

――服部選手から見て、ライバル視している選手はいますか

服部 大久保さん(優輝、創理3=東京・早実)です。練習でも一緒に競ることが多いですし、レースの結果が求められる中で3番艇を争っているので、ライバル視していますね。自分が中学生の頃には同じクラブでレーザー(ラジアル級)をやっていて、その時から友達みたいに接していたのですが、その時から一緒に練習をし、世界選手権を目指していたので、今もライバルをやらせてもらっています(笑)。

「自分のヨット人生の全てが詰まった場所」(尾道)

色紙の文字に『覇』を選んだ理由について話す尾道

――尾道選手にお聞きします。この4年間を振り返っていかがですか

尾道 やっと終われるなという気持ちです。2年生の頃に一回、全日本インカレで負けて目標としていた4連覇の夢が途切れ、去年と今年はコロナがあって1年生の頃に比べて圧倒的に練習時間が足りない中で、正直、今年も初めの方はどうなるのかと思っていました。ただ、団体戦をやってみるとチームとしての力を発揮して戦えているので、1年生の頃と比べて着実にチーム力はついてきているなと感じます。なので、このまま勝ち切れればいいなと考えています。

――その中でも特に印象に残っている出来事はありますか

尾道 去年の全日本インカレの1レース目ですね。僕は全然勉強をしていなくて、1,2年生の頃はレースに出ることができなかったのですが、去年が初めての(全日本インカレでの)レースとなる中でトップを取れて、チームとしてもワンツースリーでフィニッシュした時はヤバいなと思いました。自分がトップで上マークから1位、2位、3位を早稲田が独占していた時の印象は強いですね。

――今年もそういったレースをしたいですか

尾道 もちろんやります。そこに(服部)陸太がついてきてくれると思うので。

服部 頑張ります。

――続いては服部選手にお聞きします。このルーキーイヤーに点数を付けるならば何点ぐらいでしょうか

服部 55点くらいです。早稲田大学ヨット部で成績を残すために入学してきて、最初は関東個人選手権に出させていただくなど、とんとん拍子で来ていたのですが、階段を下りて足を挫いてしまうという、選手としては一番やってはいけないケガをしてしまったので、そこは今後の3年間、起こしてはいけないミスであると反省しています。

――お二人にとって、早稲田大学ヨット部とはどのような存在でしょうか

尾道 これまで小学1年生からヨットをやってきて、高校でもいい成績を残して推薦で早稲田大学に入学する中で、僕自身は高校時代、一度もタイトルを取ったことがなく、早稲田に入っても1年時は優勝したものの自分は出場していないですし、去年も1レースしか出ておらず、あまり優勝に貢献できてないと感じています。ただ、今大会で集大成を迎える自分のヨット人生の全てが詰まった場所です。

服部 自分が今唯一頑張れる場所だと思います。コロナというのもあって大学生になった感じもないですし、勉強もオンデマンドがほとんどでただひたすらキーボードを打つ毎日なので、遊びにも行けてないです。その中で、大学入って一番ヨット部で活動してきた時間が長いですし、今までずっとやってきたセーリング競技をみんなとできていることは幸せだと感じています。また、いざ海に出てヨットに乗ると少しのコース練習でも気づいたら勝ちにこだわっていますし、前を走りたいという思いが出るので、頑張れる場所があってよかったと思います。

――全日本インカレのキーマンは誰だと考えていますか

尾道 スナイプで言うと服部と大久保ですね。やはりリーダーの蜂須賀(晋之介、スポ4=茨城・霞ケ浦)は日本でもトップクラスの実力を持っていて、自分で言うのも何ですけど、僕もそれを目指してついていける実力は持っていると思うので、実力がある2人もそれをしっかり発揮して、3番艇として勝ちを確実なものにするためにも、服部と大久保には頑張ってもらいたいです。

服部 自分も同じですね。上2人は安定して前を走ってくれるので、僕らがそこにどれだけついていけるかが勝利につながると考えています。

――最後に全日本インカレへの意気込みをお願いします。

尾道 毎年同じことを言っていますが、目標は総合優勝ですね。自分の力で(チームの勝利に貢献する)というところが今までできていないので、自分が勝利に貢献するという意味でもしっかり勝ち切りたいです。

服部 目標は総合優勝で、チーム戦ではあるのですが、それに向けてまずは自分が走ること重要だと感じています。周りを気にしている余裕があるなら、自分が走れと言われると思うので、しっかり前を走ってポイントゲッターとなれるように頑張ります。

――ありがとうございました!

(取材・編集 足立優大)

色紙を書いていただきました!

◆尾道佳諭(おのみち・けいと)(※写真右)

1999(平11)年10月15日生まれ。163センチ。山口・光高出身。スポーツ科学部4年。スナイプ級スキッパー。今年、連覇かかっていることと『覇者早稲田』を合わせた『覇』を色紙の字として選んだ尾道選手。最後の全日本インカレの舞台でその雄姿を刻みます!

◆服部陸太(はっとり・りくた)(※写真左)

2002(平14)年9月9日生まれ。177センチ。神奈川・鎌倉学園高出身。スポーツ科学部1年。スナイプ級スキッパー。写真を撮るという趣味を持つ服部選手。カメラはコンデジ(コンパクトデジタルカメラ)を愛用しているそうです