【連載】全日本インカレ直前特集『To be at the Top』 第1回 外山萌々氏×饒平名千秋×前田楓香

ヨット

 第1回はマネージャー対談。大西真凛氏(令2文構卒=茨城・並木中教高)から始まったマネージャー文化を継承してきたヨット部OGの外山萌々氏(先理5=東京・桜蔭)、今年、最後の全日本インカレに臨む饒平名千秋(人4=東京・青陵)、新たにヨット部の一員となった前田楓香(スポ1=山口・徳山)の3人にそれぞれ話を伺った。

※この取材は10月18日に行われたものです。

「誰かのためだと自分は頑張れることを知ることができた」(外山)

マネージャー時代を振り返る外山氏

 

――お互いの印象について教えてください

前田 (外山)萌々さんとは入りたての頃、一緒のボートに乗らせていただいて、関東学生選手権(関東秋インカレ)でも一回会いました。最初、OGさんがいらっしゃるということを聞いていたので、マネージャーさんだとは思ってなかったのですが、美人さんだなと思いました。

外山 照れますね(笑)。

前田 (饒平名)千秋さんとは新歓の時に初めて会ったのですが、とてもテンションが高い先輩だなと思いました。初対面でも積極的に話しかけてくれたのが印象に残っています。

饒平名 初めの印象というと3年前までさかのぼるのですが、萌々さんは親しみやすい一つ上の先輩で、話したいことに触れてくれるし、何でも聞いてくれる存在です。部活全体の中でも一番何でも話せる先輩だと思っています。(前田)楓香に関しては、初めて会った時から私が言ったことやお願いしたことを忠実にこなしてくれる、非常に頼りがいのある後輩だなと感じています。初めての印象はとても大人しい子だなと思っていたのですが、話してみればそんなことはなくて(笑)。冗談を言いながら話ができるような子です。

外山 千秋は正直、第一印象をはっきりとは思い出せないのですが、その時マネージャーの後輩を入れたいと思っていたので、入ってくれてすごくうれしかったですし、その分、続けてくれるかすごく不安だったのは覚えています。楓香ちゃんはボートを一緒に乗った時に、私の同期の男の子も同じボートに乗っていたのですが、とてもかわいいという話をしていました。それゆえ、泥臭い部分もある部活の環境は大丈夫かなと不安だったのですが、関東秋インカレで他の女子の先輩と仲良くしているのを見て、頑張ってくれているなと思いました。あとブログも読んでいます(笑)。

――前田さんにお聞きしたいのですが、ヨット部に入った経緯を教えてください

前田  私はスポーツ科学部に所属しているのですが、そこに入ったのも体育各部のサポートをしたいと思って入りました。なので、マネージャーとしてそういったサポートができる部活を探す中で、ヨット部の新歓に行った時の部の雰囲気、それこそ千秋さんの雰囲気を見て楽しそうな部活だなと思い、ヨット部に決めました。

――マネージャーとしての主な仕事を教えてください

饒平名 私と楓香がやっている仕事は分かれているので、基本的なことは全て楓香にお任せしています。

前田 私が今行っている中で一番大きな仕事は、献立を立てることです。最初に栄養管理表などをしっかり付けていると聞いた時には驚いて、今後自分がやるということは思っていたのですが、やはり考えるのが難しいなと感じています。

饒平名 生活系は全て彼女にお任せして、私がやっている仕事はレースのエントリーの書類を書くことや裏方の事務的な作業がほとんどです。加えて、全体的に活動を見てできていないところや足りないところなどがあれば、逐一後輩に伝え、確認するということを第二の仕事としてやっています。

――仕事のやりがいやマネージャーの経験を通して得たものはありますか

前田 ふとした時に選手の人から「ありがとう」と感謝の言葉をかけられることがあり、そういった時にはすごくやりがいを感じます。

饒平名 ありがとうって言ってくれるのは大事だよね。

外山 やはり感謝されることはうれしくて、同期や後輩から「萌々がいたから」と言ってもらえた時は頑張ってきてよかったなと感じました。学んだことは、誰かのためだと自分は頑張れるということに4年間を通して気づけたことかなと思います。

――時には辛いこともあるかと思うのですが、モチベーションの保ち方などありますか

外山 私は、女子部屋にいる時やご飯を作る時に後輩と話すことが楽しかったというのが一番大きいです。あとは、ヨット部という部活がマネージャーと選手との壁が他の部活より小さいと思っているので、みんなが優勝をしてくれると一緒に喜びたいという思いを強く持てたことが、モチベーションを保つのにつながったかなと思います。

前田 先輩と話すことはとても楽しいですし、部活のメンバーとも長くいる中でどんどん仲良くなれることが非常に幸せだと思っていて、それがモチベーションにもなっています。私はまだレースをそこまで見たことはないので、みんなが優勝して盛り上がるところは見てみたいなと思います。

饒平名 私は、毎年の関東学生選手権(関東秋インカレ)や全日本学生選手権(全日本インカレ)といったレースで優勝したという経験がモチベーションとなっています。辛いけれど、絶対この先の大会ではこれだけの練習をしたから勝てると思っているので、そういったところで自信を持ち、モチベーションを上げています。あと、夏合宿中は楓香とご飯を作りながらすごくどうでもいい話をしていました。しかも、彼女は料理が上手いので、何なら私は手伝わずにずっと食べています(笑)。

前田 いっぱいつまみ食いしてますよね(笑)。

饒平名 つまみすぎて夕飯が入らなかったりします(笑)。おいしいご飯を食べながら楽しい話をするというのも、一日のモチベーションとなっています。

「一緒にいて楽しい人たちに出会えたのが一番の財産」(饒平名)

自身にとって早大ヨット部の存在とは、という問いに答える饒平名

 

――外山さんにお聞きします。ヨット部の活動を終えて、名残り惜しさなどはありますか

外山 すごく貴重な時間だったなと思うことが多いです。(引退後も)レースを見に行ったりするのですが、みんなにそれぞれの役割があって頑張っているところを見ると、自分がOGになったということをすごく実感します。みんな悔いのないようにやってほしいですね。ただ、最近少し寒くなってきたので、よく海に出てるなと思います(笑)。

一同 (笑)

外山 冬の海に出たいとは思いませんが、合宿生活でおしゃべりをしていたのは楽しかったので、そういうところは懐かしいと思ったりもします。

――続いては饒平名さんにお聞きします。4年間を振り返っていかがですか

饒平名 うれしいことと苦しいことがどちらも同じくらいあったなと感じます。ですが、今振り返ってみるとヨット部に入ってよかったと思うことのほうが多く、私自身が一緒にいて楽しい人たちに出会えたのは、一番の財産だなと思います。ただ、私も冬の海にはもう入りたくないですし、練習はしたくないです(笑)。特に冬の雨が降る暴風域が嫌で、そこに行かなくてもいいということはうれしいです(笑)。

――特に印象に残っているエピソードはありますか

前田 私は千秋さんと一緒に料理している時間や1、2年生みんなで朝ご飯を作っている時が楽しいです。野菜の切り方一つとってもみんな個性が出ますね。特に藤倉さん(藤倉廉、法2=早稲田佐賀)は、、(笑)

饒平名 藤倉は壊滅的に(料理が)できないですね(笑)。

前田 その出来事は印象に残っています。

饒平名 最も衝撃的だったのは、やはり全日本インカレでの優勝ですね。それ以外で言ったら、新型コロナウイルスが流行する前は関東秋インカレが終わった後に飲み会があったのですが、学連に入っていたのでその際はいろいろな大学のところを転々と回っていました。すると、明治大学さんの合宿所にお邪魔している時に、早稲田の3、4年生の男子が急に押しかけてきて、飲んで盛り上がってすぐに帰ったことは印象に残っています。早稲田の人はやることが大胆だなと思いました(笑)。

外山 大会で言ったら、もちろん4年生の頃の全日本インカレです。私は最終日、陸にいたのですが最後だからと誉輝(白石誉輝、スポ2=神奈川・深沢)と交代で海に出してもらって、間近でみんなが優勝した光景を見ることができたのはすごくうれしかったです。普段の生活では、去年の夏にこっそりお肉屋さんからもらった冷凍のケーキをマネージャーで食べたことですかね(笑)。そういった少しの楽しみが部活の楽しかった思い出となっています。

饒平名 選手に見つからないように、そこそこ大きいケーキ3つをマネージャー3人で食べ切ることを考えていました。その時は冷蔵庫が小さかったので、隠し通すのが難しかったですね(笑)。

外山 絶対に私たちで食べると決めていました(笑)。

――合宿所が新しくなったと思うのですが、それについての感想はありますか

前田 前の合宿所を知らないので、違いはそこまで分からないのですが、先輩たちが廊下で寝ていた話などを聞くと、一人一つずつベッドがあるのはありがたいなと思います(笑)。

外山 私も一回見に行ったのですが、綺麗すぎてうらやましいです。特に乾燥室があるのはうらやましいと感じていて、これまで私たちは湿った服を着ていたので、それがあるのはすごくいいなと思います。ただ、これまでが良くなかっただけで、当たり前かなとは思います(笑)。今までは男女別のトイレもなかったので。

饒平名 男女別のトイレがあることにすごく喜びました。

外山 あと、廊下で寝ているのもやばかったね(笑)。

饒平名 部屋がすごく狭かったので、何なら廊下で寝るのが勝ちでした(笑)。

外山 みんな廊下に出たがってたよね。

饒平名 夏は廊下の方が涼しかったりするので、廊下に誰が出るかでじゃんけんしていました(笑)。なので、新しく合宿所ができたことで全体的にQOLが上がりました。また、建築の際に部員からの要望を2回ほどアンケートで聞いてくださって、それが生かされていると感じますね。一人の人間として、さらにはヨット部員としてもすごく過ごしやすい環境となっています。マネージャー目線からだとキッチンに導線が確保されていることがとてもうれしいです。今まではスペースがなく、作業が非常に大変だったので、マネージャーとしてはそれが一番かなと思います。

――早稲田大学ヨット部の存在はどういったものでしょうか

外山 4年間を費やしたものですね。振り返ってみると、学部時代は部活が中心だったなと思います。今遊びに行く友達も早稲田のヨット部や他の大学でヨット部に所属していた子が多く、交友関係も増えましたし、長い時間、合宿生活を行う中で自分が成長できた場所でした。また、引退してからは自分のために使える時間がこんなにあるということを修士になって感じています。

饒平名 高校までずっと水泳をやっていたのですが、五輪を目指したり、何かのレースを目標としたりすることもなく、ただ部活に入っているから泳ぐという感じでした。なので、目標を持ってそれに向けて真剣に挑むスポーツはヨット部が初めてで、これまでは妥協して行ってきたスポーツとは異なり、目標を持ちながらスポーツをしっかりスポーツとして見ることができた部活だなと思います。水泳は競技人口が広く、どれだけ続けても終わりが見えてこないのに対し、ヨット部は初心者が入っても日本一を目指せる部活ですし、早稲田のヨット部は非常に強いので、組織面、スポーツの運営面、技術面の3つで洗練されたスポーツだということを感じることができました。また、それに関わらせてもらっているというのも自分自身にとって大きなことだと思います。

前田  まだ入部して半年ですが、完全に生活の中心となっています。この間の合宿中には同期に寝言を聞かれました(笑)。

饒平名  (寝言を)話すんですよ!文章というよりかは突発的な言葉なのですが(笑)。

前田 その時にヨット用語を話したみたいで、、(笑)。それくらいにはヨット部が生活の中心になっているなと思います。

外山  将来が有望ですね。でも、寝言が酷い人は多いので、大丈夫だと思うよ。健伸(新井主将、商3=東京・筑波大付)は起き上がって寝言でお誕生日の歌を歌っていました(笑)。

饒平名 朝直の人がそれを見て、怖かったと話していました(笑)。

――ヨット部のマネージャー制度というのは大西氏から始まったと思うのですが、お二人にとって大西氏はどういった存在でしょうか

外山 言葉では言い表せられないぐらいに、(存在は)大きいですね。(大西)真凛さんがいなかったらマネージャーが続かなかったと思いますし、マネージャーとしての業務を教わるだけでなく、生活面でも教わることは多かったです。真凛さんは成績優秀で学業と部活の両立が完璧にできていた人だったので、そういった部分でも尊敬している偉大な存在でした。

饒平名 今振り返ってみると、私が行っている仕事のほとんどは真凛さんから受け継いだものだと思います。加えて、ただマネージャーの仕事を教えてもらうだけでなく、新しい仕事も積極的に考えている方だったので、そういった姿勢を1年生の頃から見て、学ばせていただきました。また、真凛さんから始まった特徴で言うと、マネージャー全員がお酒に強いことですね(笑)。(萌々さん)も強いですし、私もそこそこ強いです。

外山 そこそこじゃないけど(笑)。

饒平名 まだ未成年なのですが、素質があるので多分彼女(前田)も強いと思います。そういった文化を作ったのも多分、真凛さんですね。本当に真凛さんから学ぶことは多かったです。

――前田さんにお聞きしたいのですが、今後どういったマネージャー像を目指していきたいですか

前田 私が知っているマネージャーとして活躍している先輩は千秋さんなので、千秋さんを目指したいです。強いマネージャーになりたいですね。

「チームを明るくさせるような雰囲気をつくりたい」(前田)

全日本インカレへの抱負を述べる前田

 

――インカレのキーマンを1人挙げるとすれば誰でしょうか

饒平名 スナイプ級の大久保(優輝、創理3=東京・早実)と470級の倉橋(直暉、スポ3=福岡・中村学園三陽)ですね。倉橋は安定して上位を取れるのですが、一度ミスをすると後に引きやすいので、彼と大久保がミスなく走れるかが勝負のカギを握っていると思います。あと彼はメンタルで(走り)が左右されるので、健康的なメンタルを維持して走ってくれれば大丈夫だと思います。スナイプでは大久保が安定感に欠けていて、4番艇の服部(陸太、スポ1=神奈川・鎌倉学園)の方が走っていたこともあるので、正直、3番艇が不安ではあります。ただ、関東秋インカレの時には1位で走っていたので、それを全日本インカレで発揮してくれればスナイプクラスの優勝、ひいては総合優勝も固いのではないかと思います。なので、大久保と倉橋に注目したいです。

前田 関東秋インカレを見ていた時に大久保さんが後半にすごく順位を上げたのですが、それで早稲田全体としての得点が上がっていったので、私も大久保さんがキーマンかなと思います。

外山 じゃあ私も大久保くんに注目したいと思います(笑)。

饒平名 まだ3番艇のスキッパーは服部と変わる可能性があるのですが、全日本インカレで彼(大久保)が20番台を走ってくれれば大丈夫だと信じています。

――最後にインカレに向けての抱負をお聞かせください

前田 初めてのことなので、何が起こるか全く想像もできないですし、自分も周りもどう動くか分かっていないので、その場に合わせて柔軟に動いていきたいです。また、先ほど千秋さんもおっしゃっていたのですが、選手のメンタル面のサポートも大事なので、チームを明るくさせるような雰囲気をつくっていけたらいいなと思っています。

饒平名 最後の大会になるので、まずみんなには1艇でもいいから他大に多く勝ってほしいと思っています。また、それが可能になるようなサポートをすることが目標です。私はおそらく陸上で計算することになると思うのですが、それをミスがないように行うのと、サポートで必要な備品や打ち上げの準備などを確実に遂行していきたいです。

外山 みんなが悔いのないレースをしてくれたらいいなと思います。それができればOGとしてこんなにうれしいことはありません。サポートも含めてみんなで一つのチームなので、それを忘れずに戦ってくれたらなと思います。

饒平名 速報も頑張ります!

 

――ありがとうございました!

(取材・編集 足立優大)

 

全日本インカレに向けた意気込みを色紙に書いていただきました!

 

◆外山萌々(とやま・もも)(※写真右)

1999(平11)年2月1日生まれ。156センチ。東京・桜蔭高出身。先進理工学部5年。現在は研究と就活を両立して行っているという外山氏。全日本インカレではOGとして、チームを陰から見守ります!

◆饒平名千秋(よへな・ちあき)(※写真中央)

1999(平11)11月15日生まれ。157センチ。東京・青陵高出身。人間科学部4年。マネージャーとして最後の全日本インカレに臨みます。故郷である沖縄の方言「なんくるないさー」の精神を胸に、ヨット部に流れを呼び込んでくれることでしょう

◆前田楓香(まえだ・ふうか)(※写真左)

2002(平13)9月25日生まれ。154センチ。山口・徳山高出身。スポーツ科学部1年。入部してから半年が経ち、初めての全日本の舞台に挑む今回。選手の躍進を後押しする『癒しパワー』に注目です!