【連載】全日本インカレ直前特集『4EVER』最終回 岡田奎樹主将×永松礼

ヨット

 満を持して最終回に登場するのは、早大が誇るWエース岡田奎樹主将(スポ4=佐賀・唐津西)、永松礼(スポ4=大分・別府青山)。1年時からレギュラーとして出場し、全日本学生選手権(全日本インカレ)3連覇に貢献してきた二人も、ついに最後の大会を迎える。創部史上初の4年連続日本一という伝説をつくるべく、『挑戦』を続けてきた二人。Wエースの最終章――。最後の全日本インカレに向けた思いは、いかに。

※この取材は10月17日に行われたものです。

「(個人の結果については)ぶっちゃけどうでもいい」(岡田奎)

ラストイヤーは主将としてチームを率いる岡田奎

――まず、昨年の蒲郡での全日本インカレを振り返ってください

永松 昨年の全日本インカレはとにかく(風が)吹いたということで、体力戦になったと思っています。加えてワセダのスナイプはこれまで強風(域)で強いという特徴があって、それは僕たちが1年生の時の夏合宿でかなり強風の中での練習が続いて実力がついたからというのがあるんですが、ワセダは風が吹くと走るというのはあったので、結果もついてきたと思います。とにかく風が強かったので、ハイクアウトがきつかった印象がありますね。3番艇は岩月(大空、スポ3=愛知・碧南工)だったんですけど、強風だと岩月もかなり走ってくれたので、風が吹いたおかげで楽だったなと思います。でも横文字を取ったこともあったので、そういったところをつぶしつつ、強風域以外では課題もあったんですが、それを隠して勝ったというイメージが強かったですね。

岡田奎 きょねんはプレッシャーもなかったので、楽に戦えたというのはあったと思います。きょねんも470級リーダーをさせてもらっていたんですけど、リーダーだった割には責任感がなかったかな、と。逆にそれがたまたまいい方向につながったというだけで、100%勝てるかって聞かれたらそうじゃないチームだったかなという振り返りはあります。

――新チーム発足からここまでを振り返って

岡田奎 みんなコツコツうまくなってますよ。みんなやるべきことはやってますし。もちろんこれからやらなきゃいけないことはたくさんあるんですけど、僕が思っている以上に470級もスナイプもいい状態なんじゃないかなと思います。これは僕らの力ではなくて、下級生が真剣に上手になりたいと思っているその気持ちがここまで成長させたのかな、と思ってます。僕らは基本なにもしてないです(笑)。うまくなれるように後押ししているだけで、実際にやってるのは彼ら、彼女らなので。

永松 下(の学年)から活気は感じますね。スナイプでは3、4番艇争いがし烈で、いつも練習でもバチバチやっていて、470級でも女子同士の争いみたいなところがあって、僕らももちろん本気で練習しているんですけど、それ以上に下(の艇)が上の艇を打ち砕こうという活気はいつも感じています。

――クラスリーダーとして、今季のそれぞれのチームの戦いぶりはどう評価しますか

岡田奎 やるべきことはやってきたので、順調かなというところはあります。まあ特に結果がうんぬんかんぬんというのはないですね。あくまで最終ゴールはインカレで、秋インまでいくら負けていてもインカレ勝てばいいですし、これまで勝っていてもインカレで負けたらどうしようもないので、これまではこれまで、インカレはインカレと切り替えないといけないのかなという思いはあります。過去3回レースしてきてそう感じています。

永松 練習ではいつも4艇でいい争いをしているんですけど、レースになると大きな差が出てしまうところがあるので、いつも練習でやっていることをレースでもやる、といった丁寧さはまだつきつめていく必要があると思っています。まだそういうところが弱い艇もあるな、という印象です。

――あらためて今年のチームはどんなチームでしょうか

岡田奎 レースに向けて着々と準備できるチームかなと思います。特に勝っても喜び過ぎないですし、負けてもそんなに落ち込まないし、結構冷静にレースを分けて考えられるチームなのかな。

永松 コツコツレースを積み重ねて、相手が大きなミスをするのを待つ、みたいな冷静なチームだと思います。

――ラストイヤーの個人の結果については

永松 風が吹いていない中で結果を残せたので、かなり自分は自信を持てたと思います。でもそこで自分の成長がストップしてしまった感じがあって、その時点で1番だっただけで、秋にかけて成長している艇が自分のチームにも他大にもいるのは改めて実感したので、今はもう結果は忘れて、気にしないようにしています。
もちろん全日本インカレではMVPを取って、得点的にチームに1番貢献したいです。風が強い中では自信を持っていて、これまで課題だった微軽風でも少しずつ結果が残せてきているので、1位を狙うという強い気持ちは必要なくて、コツコツ上位を積み重ねて、大きなミスをしないという自分の勝ち方を貫ければ良いなと思います。あまり強気じゃないと捉えられるかもしれないんですけど、とにかくコツコツいい順位を取って、終わってみればMVPというのが理想ですね。

岡田奎 ぶっちゃけどうでもいいですね(笑)。チームが優勝すればいいので、僕がMVP取らないと優勝できないなら取らないといけないですし、そうじゃなくても優勝できるなら他の人がMVP取ってもらっていいです。個人の結果についてはなんの感情もないというか(笑)

永松 きょねんはチームリーダーが順位を落とすとチームの士気が下がるというのがあって。

岡田奎 うん、下がるよね(笑)。

永松 みんな表情が変わるというか、ヤバいってなるので(笑)、いい順位を取ってチームが明るくなるのであれば、前を走るのは大事なことだなと思います。

――岡田奎主将は国際大会や一般の大会にも多数出場しました

岡田奎 学生大会と個人で出る大会は別ですからね・・・個人で出る大会はいくら失敗してもいいのでチャレンジできるんですけど、学生大会は失敗が許されないので、もちろん(学生大会は)社会人のレースと比べてレベルはさがるんですけど、それでも全てのレースで勝つというのはすごく難しくて。やはりその時々のコンディションだとか、自分の体調だとかを変えていかないといけないので、苦労はしているんですけど、まあいい経験かなと思っています。

――永松選手は川上健太選手(創理4=東京・早大学院)と組んで2年目ですが、成長を感じるところはありますか

永松 技術的なところは少しずつなんですけど、今一番成長を感じているところは、会話ですね。きょねんは、言い方悪いんですけど僕が怒ってばかりというか(笑)、一方的に僕が喋っちゃっていて、向こうがいい視点を持っていても僕が耳を傾けられていなかったんですが、今年はフランクに話せているので。そういうコミュニケ―ションが増えたことから気づけることだったり、レース展開の選択肢を増やせることがあったりするので、気持ちの面でも助かっています。

――今季は岡田奎主将のクルーは後輩の秦和也選手(基理2=東京・早大学院)が務めることが多いと思いますが、大変だったことはありますか

岡田奎 まあほぼほぼ初心者なんでね・・・最初から技術を教えて、ここまでやらなきゃいけないという自分の中でのラインがあるのですが、そこまでなかなか到達できないので、どうしたらいいのかなと思いながら、日々悶々と過ごしていましたね。でも4年生になって育て方っていうのが分かってきて。どういう風に伝えたらいいのか、ただがむしゃらにやるだけじゃダメだとかに気づけて、教えることはできていますね。まあ上手ですよ。ちゃんと教えないといけないことは教えて、ポイントは抑えられてますし、本人もすごく努力しているので、その甲斐もあって今ではほぼ問題ないです。

永松 (秦は)陰で一人で筋トレしているのもよく見ますし、そういう見えないところで努力しているのを見ると、真面目だなというか、本気なんだなというのをひしひしと感じます。

――岡田奎主将は主将に就任してから変わったことはありますか

岡田奎 うーん・・・特にはないかなあ。逆にこれまでの勢いがなくなったかなとは思います。昔はもっとイケイケドンドンで、『気合と根性』が僕のモットーだったんですけど(笑)、そういうのはあまりなくなりましたね。得たものはなにかあるかなって考えるんですけど、それって終わってから気づくんじゃないかと思うんですよ。どうしても進んでる途中って失ったものにばかり目がいっちゃうんですけど、優勝しても優勝しなくても、終わった後に「自分ってこうだったんだな」って分かるんじゃないかなと思います。

――永松選手は最上級生になって意識の面で変わったことはありますか

永松 これまでは競技のためだけに部活にきているっていうイメージだったんですけど、そういうのはなくなりましたね。今までは上級生の方々が結果を出してくれるおかげで自分は競技に集中できていたんですけど、4年生になってからは下級生の生活面だったり、技術的な部分を教えるときだったり、どうすれば伝わるかを考えるようになりました。特にスナイプチームなんですけど、かなり下級生を見ることは増えたと思います。

「奎樹みたいになりたいって思って」(永松)

恥ずかしがる場面もありながら、お互いの出会いを振り返っていただいた

――もうすぐ引退ということですが、引退後楽しみにしていることはありますか

岡田奎 引退したら本当に引退するんで、あれ、なに言ってんだろ、俺(笑)。もう縛りがなくなるんで、思いっきり遊びたいです。終わったら同期と一緒に福井からどこかへ旅立つっていうのを計画してます。

永松 東京には帰らずにね(笑)。京都が近いんで、京都に行くのもアリかな。ここ最近同期全員で集まったのってなにかを決めるときとか、大事な話をするときとかなので、なんとなくピリッとした雰囲気ばかりなんですよ。同期全員で集まって和やかな雰囲気なのって・・・1年生のとき以来とかじゃない?(笑)。

岡田奎 みんなでスノボ行った時だね。2年かな?

永松 めっちゃ楽しみですね。まだなんも具体的な計画は立ててないですけど(笑)。

――合宿所での生活もあと少しだと思いますが、寂しさなどはありますか

永松 寂しいとかはないな(笑)。

岡田奎 俺も(笑)。

永松 僕、合宿所で寝れないんですよ、全然。なんか夜起きたら座ってるらしくて(笑)。あんまり寝れなくて朝眠いみたいなことが多いので、幽霊がいるのか分からないですけど、合宿所生活はあんまり好きじゃなかったですね。みんなの生活の話を聞けるっていうのはまあ面白いんですけど、早く終わりたいですね、僕は(笑)。

岡田奎 僕は合宿所でも結構マイペースで、性格的に人を振り回してしまうんですが、合宿所でもバンバンみんなを振り回してきたんで(笑)。終わった後は少しは達成感あるんじゃないかなと思います。

――川上選手は、「いきなり週末暇になっても何をすればいいか分からない」とおっしゃっていましたが

岡田奎 僕は今後もヨットするので、平日もヨット、土日もヨットです(笑)。

永松 スポ科の友達もみんな部活が終わるので、これまではみんな部活で遊べなかったのでそこは楽しみですね。あと最近は登山とかしてみたいなと思っています。

――卒論の進み具合はいかがでしょうか

永松 まだ一切触れてないです。インカレまではノータッチだと思います。

岡田奎 マジで?俺もう目次作り始めたよ。

――卒論はどんなテーマなのですか

岡田奎 『ヨットのインカレで勝つためには何をしないといけないか』っていうのが卒論のテーマです。

永松 おおー!それは後輩への財産になるね(笑)。

岡田奎 脳内ではほぼ確立されてるんですけど、まだ文章にできてないですね。点数とか考え方みたいなのは過去の先輩たちが作っているので、それをもとにもっとグレードアップしたものを作っていきたいと思います。

――昨年の対談では岡田奎主将は坊主頭でしたが、今年は坊主ではないのですか

永松 あーそうだったね(笑)。

岡田奎 今年は悪いことしてないんで(笑)。

――悪いことをすると坊主になるのですか

岡田奎 悪いことというか、きょねんは470級リーダーだったにもかかわらず成績が悲惨だったので、士気が下がってしまうなあと思って、ちょっと(頭)丸めとくか、って(笑)。

永松 いや、逆効果でしょ(笑)。「ミスったら坊主にさせられる!」って思ったかもよ。

岡田奎 たしかに・・・

――今年は坊主にした人はいないのですか

永松 います。

岡田奎 いるね、しかもつい先日。

――どなたですか

岡田奎・永松 入江(裕太、スポ2=神奈川・逗子開成)!

永松 彼なりになにか思ってやったんでしょうね(笑)。ヨットのことではなく、きっとプライベートのことでしょうね(笑)。

――4年生はどんな学年でしょうか

岡田奎 まあひどいよね(笑)

永松 誰かしらそれぞれつながってるって感じですかね。それぞれがちゃんと仕事はしますけど、みんなでなんかするってことはないですね。

岡田奎 干渉しないよね、お互いに。

永松 必要なところ以外絡まないというか、合宿で自由な時間ができてもそれぞれバラバラで、たまに2、3人でどっか行くみたいな。みんなでヨット以外の話はあんまりしたことないかもしれないです。こう話してみると少し寂しい学年だな(笑)。

岡田奎 まあでも他の学年よりもちゃんと芯で仲がいいとは思うかな。中途半端に仲がいいと、「あいつ今なにしてるんだろ」とか気になっちゃうと思うんですけど、そう思うことがないってことはお互い信用できているってことだと思うので、見えないつながりはしっかりしてるんじゃないかなと思います。

――今年の1年生の印象はいかがでしょうか

岡田奎 元気ですし、素晴らしいですよ。仕事も覚えも早くてしっかりやりますし。ヨット部の活動は1年生のおかげで成り立っている部分が大きいので、合宿所生活の50%は1年生がいないと成立しないんですよ。食事とか合宿所の管理とかもそうですし、海上での練習環境の設置も1年生がやってくれているので、そこはすごく助かっています。

永松 1年生の活動が部に大きな影響を与えているっていう意識はこれまでの学年よりは強いと思います。というのもこれまでと比べて1年生が4年生部屋に質問しに来ることがすごく多くて、そういうのは自分たちが部に強い影響を持っているっていう自覚が強いことの表れなんじゃないかなと思います。

――お二人の出会いから語っていただけますか

永松 出会いは・・・小学校1年生くらいかな?

岡田奎 そうだね。ヨットやってたら、外国人のお父さんが外人みたいな子連れてきて。

永松 太ったお父さんね(笑)。

岡田奎 そのときは学年とかは知らなくて、同じくらいの子がいるなあって思ってたんですけど、学年聞いたら一緒で、仲良くなれるかなーって思ってたんですけど、コイツ全然来なくて(笑)。

永松 父親がヨットやってたのもあって、ちょっとやってみよっかなくらいで最初は行っていて、姉2人と一緒に行けるときだけしか行ってなかったので、本当に最初はおちゃらけた習い事って感じでした。冬は寒いから行ってなかった(笑)。

――本格的に競技に打ち込み始めたのはいつ頃からなのですか

岡田奎 俺は最初から本気だった。平日も練習してたし。まあとにかくヨットが好きだったっていうのがあって。礼は中学くらい?

永松 そうだね。小4で全国大会に出てたらしいんですけど、(出た大会が)全国大会っていうのを終わった後知ったくらいだったので(笑)。そのくらい受け身だったんですけど、中学校上がったくらいに、奎樹みたいになりたいって思い始めたんですよ。そこからかな、ヨットに一生懸命になったのは。

――その後別の高校に進学しますが、大学で再び再会することになります。同じ大学に入ると知ったときはいかがでしたか

永松 めっちゃ心強かったですね。奎樹はすでに国内だけじゃなくて世界大会でも活躍してて、そんな人が自分と同じチームで、しかも昔一緒にやってたのもあって、超楽しみだなと思いました。

岡田奎 僕はまさか礼が(ヨットを)続けると思っていなかったので、あー続けるんだーって感じでした(笑)。正直やる気ないだろうなと思っていたんで。でも大学入って最初のレースでいきなり礼が結果出して、僕が全然ダメで、コイツ結構本気だな、俺も頑張らないとって思いましたね。

――今年のインカレは福井での開催ですが、なにか福井で楽しみにしていることはありますか

岡田奎・永松 ないですね(笑)。

岡田奎 めっちゃ調べたんですよ、本当に。でもなんもなくて(笑)。

永松 強いて言うならご飯じゃない?日本海の、魚介類。旅館で出るといいなあ。

「勝つために挑戦者の気持ちで臨む」(永松)

永松は有終の美を飾るべく、ひそかに闘志を燃やしている

――もうインカレも迫っていますが、今の心境はいかがですか

岡田奎 楽しみですね。やれることはやってきたので、あとはそれをどう実現するかってところに入ってきているので、特に心配事もないですし、自分が思い描いてきたチーム像になってきていると思います。あとはそれに結果がどうついてくるかだと思いますね。

永松 かなり頼りになる後輩を持ったので、下(の学年)からの勢いもすごく感じますし、僕もそれ以上に本気になって、引っ張っていきたいなと思っています。インカレで結果が出るのが楽しみですし、みんなが前を走って帰ってくるのが楽しみです。

――今年のインカレは福井での開催ですが、お二人は福井でのレースの経験はありますか

岡田奎・永松 ないですね。

――そこに対しての不安や怖さはありますか

岡田奎 ないですね。海はどこも一緒なんで。気温とか気候が違ったり、見慣れてなかったりするだけで、結局海に出たら一緒なんですよ。

永松 知らないという不安は確かにあるんですけど、それはほとんどの大学が一緒なので、普段練習してるのも同大くらいですし、逆に知ってて固定観念に縛られるよりは、フレッシュな気持ちで臨んだ方がいいんじゃないかと思っています。あまり不安はないですね。

――どんなコンディションが予想されるのでしょうか

岡田奎 海風だと面倒ですね・・・(風が)振れない、スピード勝負、小波、湾になっていて(水深が)急に浅くなってることがあるので、波長が短くて波高が高いっていう状況なので、(艇が)波に刺さるというか、その辺はうまくやっていかないといけないと思います。逆に陸風だと、山からの吹き下ろしなので、ブローが見えないんですよね。ブローって基本的に横からきてそれに海が反応してるんですけど、上からだと海の反応速度が遅くなるので、その点はやべーなって思いますね(笑)。

永松 OBの人からは離岸流があるっていう噂を聞いたんですけど、まあ一応頭の片隅に置いておくくらいで、それこそ固定観念に縛られず、現地で実際に乗って感じてからだと思います。どんな風、どんな地形でもみんな条件は一緒なので。

――それに向けて現在はどのような練習をされていますか

永松 向こうで走りの調節はするので、こっちでは最後の動作の確認だとか、基本的なところをやっていますね。

岡田奎 最後のチェックだからこそ、基本に戻るという感じです。特別なことはもうしないですね。

――今のご自身の調子はいかがでしょうか

岡田奎 いいですよ。僕が見てる感じは礼も悪くないと思います。

永松 特に飛び抜けてるわけでもなく、って感じです(笑)。あとはやるべきことをやって、やっちゃいけないことをやらないっていうのを徹底するだけだと思います。

――慶大、日大あたりがライバルとなってくると予想されますが、他大の印象はいかがですか

永松 今年の慶大は一喜一憂のチームに見えますね。勝ったらすごく勢いに乗りますし、逆に大きなミスをやってしまってそのままズルズルいくっていうことも多いと思います。自分たちはそれに対してなにかするのではなく、コツコツとやって相手の大きなミスを待つっていう戦い方ができればいいと思います。特別なことはせず、しっかりレースをこなせば勝てる相手だと思います。470級も強風ではうちの方が全然走れていたので、1レース単位で大きく勝とうみたいな考えはいらないかなと思います。

岡田奎 セーリングっていう競技自体が、他のチームがこうだからこうするみたいな競技じゃないんですよ。大きな目で見て、どう戦うかっていうのが大事なので、風との勝負っていう面が大きいですし、他大に対しては特になにもないですね。「みんな頑張ってるなー」くらいです(笑)。

――両クラス共に3番艇が重要な役割を担ってくると思いますが、クラスリーダーから見て現在の3番艇の状態はいかがでしょうか

永松 かなりよくなってると思います。岩月は練習ではすごくいいんですけど、レースで変なことをしてしまうことが多くて実力を出せていないと思います。そこを除けば前を走ってくれる選手なですし、入江もちゃんと結果を出していて、スタートだとか練習でやっていることがレースでも出せているんじゃないかなと思います。かなり期待していますね。

――3番艇争いは全日本インカレまで続いていくということでしょうか

永松 そうですね。練習は残り少ないんですけど、それぞれの特徴や得意な風域があるので、二人ともレギュラーとしての自覚を持ってもらって、出るべきときに代えられるようにしようと思います。

――470級チームはいかがですか

岡田奎 例年の3番艇よりも速いというか、結果は出ていると思います。心強いというか、しっかりやってくれると思います。いい感じだと思うんですけど、将来的に1番艇になれる実力かどうか聞かれるとそうではないので、今の状況で満足するのではなく、どんどん次のステップへと毎日毎日成長していけるように、インカレ期間中でも成長してくれることを期待しています。不安ももちろんありますけど、できないことをなくしていくのはシーズン前半にするべきことで、今はとにかくできることをもっと伸ばすことだと思ってやっています。不安を抱えてもどうしようもないんでね。

――今年は全日本インカレでの負けを知らない代となります。それに対しての不安要素はありますか

岡田奎 それがおごりにつながったらアウトでしょうね。そんなんだったら絶対負けると思います。でも僕らが(新チームになって)一番最初に言ったのは、勝つことが当たり前のチームにしよう、ということで。勝てないことはないように、総合優勝も当たり前だと言えるような強いチームにする、総合優勝すればいいやみたいな考えではなく、さらなる高みを目指すという目標でやってきました。それってすごく難しいことで、総合優勝ではなく完全優勝を100%とするということはやはり選手の質だったり、もっとストイックな練習だったりが必要になってきますし、ヨットは運の要素が少なからずあるので、そこに頼らないで勝つためには圧倒的な実力がないといけません。そのためにはおごりなんて持ってる暇はないですね。これまでの先輩たちがどうすれば勝てる、どうしたら勝てないというのを残してきてくれたので、それはありがたいですね。

永松 負けを知らないというのは、ここまでやれば勝てるというボーダーラインみたいなものが経験的にないということで、その中で必要なのはやはり4年生が引っ張っていくことだと思っています。一番危機感を持ってやらないといけないですし、みんな(インカレでの負けを)知らない中では、最上級生の僕らが目標を明確に定めていくことが重要になってきます。ここまで下級生も4年生についてきてくれていて、今の段階でもみんなしっかりネジが締まっていると思います。

岡田奎 僕らも1年生の頃は「楽しくやればいいじゃん」と思ってた部分もあったし、それは下級生の中には絶対あるものだと思うんですけど、月日が経つにつれて「勝たなきゃいけない」という使命感が生まれて、そこで初めて厳しくしていかないといけないと気づきましたね。厳しくすると笑顔が消えてしまうので、そこをどう活気づけていくかは課題かなと思います。

――全日本インカレにおけるキーパーソンを一人挙げるとしたらどなたになるでしょうか

岡田奎・永松 僕ですね。

岡田奎 最終的には僕と礼なんだと思います。部員はみんな俺たちは絶対に失敗しないと信じてくれているので。でも実際僕らも神様じゃないんで、人間なんで、失敗することはあるんですけど、僕らが前を走るということを精神の安定としてやってくれているので、僕らが崩さないということが一番重要だと思います。

永松 自分で言うのもなんですけど、今までの練習でもみんなが僕らを目標に、僕らに勝ちたいという気持ちでやってきたと思います。そういう自分の目標にしている人が本番で走らなかったら、自分たちのやってきたことが間違いだったんじゃないかと不安に駆られると思うので、かなりチームの士気に関わっているというのは実感しています。結果以上に精神的な面でチームに対して大きな影響力を持っていると思うので、インカレではそういう姿をみせないようにしたいです。

岡田奎 3番艇が「ミスった!」ってなるのと、俺らが「ミスった!」ってなるのじゃ全然違うからね(笑)。

永松 全然違うね。ドンマイってならない。ヤバいヤバいってなる(笑)。

――最後に、全日本インカレに向けての意気込みをお願いします

永松 4連覇4連覇と周りからも自分たちでも言ってるのですが、それで守りに入ってしまうのが一番怖いと僕は思っていて、プレッシャーもあるとは思うんですけど、勝つために挑戦者の気持ちで臨むことが結果につながってくると思います。自分たちが練習でやってきたことを発揮するには、挑戦者の気持ちというのが大事になってくると思うので、そこは本番までにチームで合わせていきます。

岡田奎 今インカレに勝つ喜びを知っているのはワセダだけなので、それをもう一度味わいたいですね。ワセダで独り占めしたいです。2014年はスナイプ、470級どっちも勝って完全優勝で、一番盛り上がったと思ってているので、あれを再現したいです。主将とか470級リーダーとか関係なしに、岡田奎樹という一人の大学生の4年間の集大成として、達成したいのが完全優勝での4連覇なので、全員を引っ張っていけるだけの成績を出して、言動だけでなく行動でも示していきたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 松澤勇人)

一言一言に重みが感じられる対談でした!

◆岡田奎樹(おかだ・けいじゅ)(※写真左)

1995(平7)年12月2日生まれのO型。身長170センチ、体重63キロ。佐賀・唐津西高出身。スポーツ科学部4年。470級スキッパー。4年間早スポの対談取材に応じてくださった岡田奎主将も、「これで色紙書くのも最後か・・・」と感慨深そうでした。最後の色紙に書いたのは「直進」。4年間の集大成、あとは4連覇へ向け「直進」するのみです!

◆永松礼(ながまつ・れい)(※写真右)

1996(平8)年2月17日生まれのA型。身長179センチ、体重64キロ。大分・別府青山高出身。スポーツ科学部4年。スナイプ級スキッパー。永松選手が色紙に書いたのは「自信」。実はこの言葉、2年前に永松選手の姉の永松瀬羅さん(平29スポ卒=現豊田自動織機)が書いた言葉と全く同じなのです!「自信」を持って、有終の美を飾ってほしいです!