【連載】全日本インカレ直前特集『4EVER』第4回 神宮泰祐×入江裕太

ヨット

 ことし創部史上初の4年連続日本一に挑戦する早大ヨット部。カギを握るのは3番艇の存在だ。そのポジションを巡って熾烈な争いが繰り広げられている。第4回に迎えるスナイプ級クルーの神宮泰祐(政経3=東京・早大学院)とスキッパーの入江裕太(スポ2=神奈川・逗子開成)も初めての全日本学生選手権(全日本インカレ)出場に向けて、日々の練習が戦いだ。優勝大本命とされながらも慢心はない。新たに優勝にチャレンジする気持ちで全日本インカレに臨む2人の素顔に迫った。

※この取材は10月20日に行われたものです。

「海の上、ヨットの上で優勝を喜びたい」(神宮)

ヨットへの熱い想いを語る神宮

――去年の全日本インカレの振り返りをお願いします

入江 去年の蒲郡でのインカレでは自分はサポートという立場で、4番艇として蒲郡に行きました。その時、僕はいつでも出ることができる状態で待っているように、と平川さん(竜也、平29スポ卒=神奈川・逗子開成)と監督(関口功志、平18人卒=愛知・半田)から言われていたので、集中力を切らさずに、いつでも出られるようにしていようと思っていました。1日目からワセダは調子が良くて、3艇が(上位で)まとまっていたので、僕が出ることはあるのかな、と思っていて、最終的には出番はありませんでした。しかし、去年の蒲郡インカレ前に開催された1日だけの練習レースのようなもので、僕はしっかり走ることができて、ワセダの中で礼さん(永松礼、スポ4=大分・別府青山)が3番、僕が4番になったことで、自分の1年間やってきた結果を出してしっかり走ることができ、来年につながるような結果を出せたと感じることができました。インカレでは優勝できたのですが、団体競技なので総合力が大事になってくる中で、そこで頭一つ抜け出すことが出来ていたのが要因なのかな、と思います。

神宮 僕もサポートメンバーとして、みんなをサポートする立場でした。インカレを通してワセダの調子が良くて、最終日まで状態が良いままいって優勝した、という形でした。僕は優勝した瞬間、ボートの上からみんなが喜んでいる姿を見ていて、もちろんうれしかったのですがその反面僕もあの場に立ちたかったという悔しさも感じ、(次は)僕も海の上、ヨットの上で優勝を喜ぼう、という強い思いが芽生えました。

――新チーム発足時から現時点までの振り返りをお願いします

神宮 そうですね、新チームになって、4年生の470級には奎樹さん(岡田奎樹主将、スポ4=佐賀・唐津西)、スナイプ級には礼さんという2大エースが存在して、そのすごいエースに僕たちがついていけばまた全日本インカレで優勝できるだろう、という感じの雰囲気で最初はやっていたのですが、だんだんとレースや大会が始まっていく中で、やはり慶大や日大のような他大も僕たちに食らい付いてきて、そこで2大エースに頼っているだけではだめだな、と感じるようになりました。そこからの夏合宿などではエースに頼らないで自分たちが戦力になっていこうという気持ちになることができ、迎えた秋インカレ(関東学生選手権)では、全員が良い成績を出せていて、特にスナイプ級では3艇ともまとまった成績を出すことができたので、そういう面では流れ的には良い感じで今を迎えられているかな、と思いますね。

入江 春は五大戦(春季東京五大学戦)で一度負けていて、そこから1回冬の練習はどうだったのか、という話になりました。1回負けた後の練習から伸びたと僕は感じていています。春イン(関東学生春季選手権)で勝って、その後は夏合宿がありました。いつもの夏合宿は葉山でみんなで生活するという形式なのですが、大会などが江の島で行われる都合で今回は合宿をしないで個人の家から通ったりとバラバラな生活をしながらそれぞれが夏の練習を頑張りました。夏の初めは合宿がなかったことで各々の意思疎通があまり出来ていない状況にあったのですが、最後の9月にはみんなで合宿をして、そのことでお互い努力しなきゃいけない部分が見えてきて、みんなで一致団結しよう、頑張っていこう、という流れができたことで、秋インで優勝することができたのかな、と思います。六大学戦(秋季東京六大学戦)のスナイプ級では慶大に負けてしまったのですが、470級の艇がチームを引っ張ってくれて、勝つことができたので今の(チームとしての)流れは良いのかな、と。冬の最初の大会で負けたことで2大エースはいるのですが、(それだけではなく)どうしたら勝てるのだろう、と考えるようになりました。いつでも勝ちにこだわる、という考えができるようになり、良い流れが出来ているのかな、と僕は思います。

――入江選手は全日本個選(全日本学生個人選手権)では三宅功輔選手(商3=東京・早大学院)と組んで11位となりました。振り返っていかがですか

入江 個人的に全日本個選に関しては目標は6位入賞で、頑張ればできるだろう、という考えだったのですが、自分のスコアを見て初日の第1、第2レースがあんまり走れてなくて、やっと第3、4、5レースとレースが進んでいくに連れてスタートがきまってしっかり走れるようになりました。僕の今年を通じての傾向として、最初の2レース、試合の入りの順位が悪いために最終的に結果がついてこないということがあったので、全日本個選に関しては、今回は11番だったのですが、初日(2レース目まで)が良ければもう少し上の順位にいけたのにな、と思います。ワセダはスナイプ級でワンツーで、1、2、3、(位)を取れれば完璧だったな、って思います。

――神宮選手は岩月選手(大空、スポ3=愛知・碧南工)とペアで、全日本個選には出場することができませんでしたが、いかがでしたか

神宮 そうですね、関東個選(関東学生個人選手権)で僕達は負けてしまったのですが、自分の中では絶対にいけるだろう、という思いがあって臨みました。しかし、実際やってみると関東には自分が思っていたよりもレベルの高い人がたくさんいて、実力で負けてしまい悔しかったのですが、一方で自分の実力をここで知ることができて、自分はこの程度で、ここから頑張っていかなければいけないんだ、というのを再認識できた大会でしたね。

――激しい3番艇争いが繰り広げられていますが、チームにとっては良い方向に働いているのでしょうか

入江 そうですね。良い方向に働いていると思います。

――永松選手も4艇全てが高いレベルでやることができているとおっしゃっていましたが、練習時から争いやライバル関係などはあるのでしょうか

入江 ありますね。ある時期に、練習レースといって4,5艇でやるレースのような練習があって、その順位によって船を変えるよ、という話がありました。その前から僕と岩月さんとは3番艇争いというかずっとライバル関係で、去年から同じような関係でやっていて、8月9月の、順位によって(船を)変えるよ、と言われていた時はすごくバチバチになりました。岩月さんに勝てれば3番艇になれるわけではないので、礼さん、こた(松尾虎太郎、スポ1=山口・光)とかに負けないようにこの夏は練習からけっこうバチバチにやっていましたね。

――クルーもいろいろと入れ替えがあったと思うのですが、そこに関してはいかがでしょう

神宮 そうですね、今までの3番艇争いは、スキッパー(入江のポジション)だけが争うという風潮があったのですが、クルー(神宮のポジション)の入れ替えもあることで自分自身も絶対に3番艇を奪い取る、という気持ちにはなりましたし、そういう意味では三宅がライバルになってくると思うのですが、お互いそこで意識しあったりしていたので、3番艇争いはクルー自身のレベルアップにもつながったと思います。

――今のところは、入江選手と神宮選手、岩月選手と三宅選手、というかんじなのでしょうか

神宮、入江 そうですね、はい。

――まだ3番艇というのは決まったわけではなく、残りの期間も続いていく、ということでしょうか

神宮、入江 そうですね。

――直前まででしょうか

神宮 ギリギリまで(競って)いい方を試合に出す方向だと思います。

――今のところはいかかがでしょうか

入江 うーん・・・(笑)。自分自身としては、今の所では勝っているな、というのが率直な思いです。先週、先々週の秋インと六大学では僕の方が走っていて、しっかりと結果を出せている状況なので今は少しは勝っているのかな、と思います。でも、去年の全日本インカレでの経験というのは岩月さんは持っていて僕は持っていないものなので、大きなフリート(多くの艇が出走するレース)になった時に自分がしっかりと力を出し切ることができるかという所はまだ未知数なので、向こう(福井)にいってしっかり調整してやっていくしかないのかな、と思います。

神宮 そうですね、確かに僕たちの方が最近の成績は上で、一応その要因としてスタートがうまくきまるようになったということと、どの風域でも(しっかりと)走れるようになったということが大きくて、秋インカレでは微風のレースで、六大学戦は結構強風のレースだったのですが、その両方(のコンディションで)走ることができたのは大きな自信になりました。でも、岩月は強風が得意ですし、そういう面では風域とか風向、北風や南風によって得意不得意が分かれてくるので、そういう所でも3番艇として誰が出走するかは変わってくるのではないか、と思っています。

「煩悩は陸に置いて出艇する」 (入江)

入江の坊主には複雑な理由があるようだ・・・

――ヨットを始めたきっかけを教えて下さい

入江 僕は出身が逗子開成高校で、海が近いこともあって、中学からヨット部がある学校でした。初めはサッカー部だったり野球部だったりという普通の部活に入ろうと思っていたんですけど、ヨット部って全国を見てもある中学が少なかったので、ちょっとやってみようかな、という軽い気持ちで始めました。僕がヨットの大会に初めて出たのが中学3年生の夏の大会で、全中(全国中学校ヨット選手権大会)という大会だったのですが、僕はその時OP(15歳までの選手が乗るジュニア向け小型ヨット)じゃなくてシーホッパー(YAMAHA 14 Seahopper Ⅱ、ジュニア向けではないヨット)という1人乗りの船に乗っていたんですけど、その大会で3番を取ることができたことで、インターハイ(全国高等学校総合体育大会)という大きな大会にもヨットで出てみたいな、と気持ちが出てきました。その夏の大会が終わってからはインターハイや世界大会などのいろんな大会に出てみたいという夢ができました。

――早大を選んだ理由を教えて下さい

入江 早大を選んだ理由は、父も早大出身で、小さいころからラグビーの早慶戦などをテレビで見ることがあって、いずれは早慶のどちらかに入りたいと思っていて、だから早大を選んだ理由としては親の影響が強いのかな、と。自分は高校でヨットをやっていて、早大のヨット部は名門なので、自分もそこに入ることで技術的にも人間的にも成長できるかな、という思いで選びました。

――神宮選手はいかがですか

神宮 僕はヨットを大学から始めたのですが、大学に入る前にワセダの体育会系に憧れを抱いていて、なんとかして体育会系に入りたいな、と思っていた所、同期で高校からの友人である古橋君(捷太、先理3=東京・早大学院)がヨット部の試乗会に行くというので僕も興味本位で行ってみて、そうしたらこういうスポーツもあるのだな、と思い、そこからヨットの魅力に取りつかれて、このヨット部で日本一を取りたいと思うようになり、入部しました。

――高校時代はハンドボール部に所属されていたということで、何かその時の経験が生かされていることなどはありますか

神宮 ないですね(笑)。ヨットは特殊な競技なので(笑)。

――高校時代漕艇部だった選手も寒さに強いことくらいだと話してくれました

神宮 そうですか(笑)。でもハンドボールは室内競技なので、僕は寒さには弱いですね(笑)。

――早大は他大と違い、未経験者、早大学院のヨット部出身者、スポーツ推薦での入学者のバランスの良さが魅力だと考えているのですが、部員の方から見ていかがでしょうか

 未経験者がいることで、いままで自分がやってきた他競技の経験をヨット部に還元するということができて、考え方が広くなると思います。他大の経験者だけのヨット部を見ると、ヨット部の昔ながらの伝統的な良くない部分が残ってしまったりしているのですが、早大は未経験者がいることでヨット部の良い部分だけが残って、その上他のスポーツをやってきた人がもたらす良い所が合わさって、良いバランスが取れていると思います。

――では、スポーツ推薦で入学された入江選手から見ていかがでしょうか

入江 僕はスポーツ推薦でワセダに来たのですが、大学からヨットを始める未経験者もいて、試合に出ている選手を見ても半々くらいですし、バランスはすごく良い。いろんな学部の人がいて、出身地もバラバラですし、方言をたくさん話す人もいて、(このように)いろんな人がいて、いろんな考え方を持っていて、それが合わさって早大のヨット部ができていて、僕自身勉強になることがたくさんありますし、一方で僕の(経験者としての)ヨットの知識っていうのを大学から始めた選手に教えたりできたりとお互いに成長できる環境にあるという点が早大のヨット部の良い所の1つなのかな、と思っています。

――すこしずれた質問になりますが、入江選手はなぜ坊主にされたのでしょうか。去年の対談の時は岡田奎選手が坊主姿で登場してくださりましたが。

入江 えー・・・。どうしよう(笑)。

神宮 (笑)。気合い入れとか。

入江 そうですね。気合い入れです。僕が今年学んだ事は、煩悩があると走らない(結果が出ない)、ということです。煩悩があると船が走らないですし、ペアの仲も悪くなるので。陸に煩悩を置いて出艇しよう、と思い、気合いを入れるために坊主にしました。

――どのような煩悩なのかお聞きしてもよろしいでしょうか

入江 どんな煩悩・・・。そうですね。うーん・・・(笑)。付きものなんですかね、恋といいますか、はい(笑)。そういうことです。

神宮 (笑)。

――お二人は相性抜群に見えるのですがプライベートではいかがですか

入江 プライベート。プライベート・・・。あ、1つあります。僕が大学1年生の時、僕の入学式は所沢であって、そのあと本キャン(早稲田キャンパス)で新歓があったので所沢から戻ってきて、次の日も本キャンで新歓があったので家に帰るのがめんどくさくて、(入学前の)冬の練習の時から神宮さんには良くしてもらっていて、話しやすい先輩だったので、「きょう家に行ってもいいですか」と聞いたらすぐにOKしてもらったのを僕は覚えています。

神宮 あったね、そんなことも(笑)。

――普段からお二人は仲が良いのでしょうか

入江 プライベートではキャンパスが違うのでなかなか会う機会がないんですけど。ちょくちょく。

神宮 ちょくちょくね。

入江 きょうも麺爺行きましたもんね。

神宮 そうだね(笑)。

入江 ちょくちょく遊びに・・・遊びにはないか。

――3年生、2年生はそれぞれどのような学年ですか

神宮 3年生は、そうですね、他の学年に比べて女子が多い学年だったこともあって最初はぶつかり合うこともあったのですが、学年が上がるに連れてそういうのもなくなり、今ではお互いに気兼ねすることなく話し合いができる仲になって、結構まとまりのある学年かな、と思います。

入江 2年生は、すごく仲の良い代だと思います。男女関係なく普通に話すことができて、大きな喧嘩をしたことがないです。

――去年の対談でも2年生は大きな喧嘩をしたことがないとお聞きしたのですが、1年経った今でも変わりませんか

入江 あんまり・・・ないですね。

神宮 うらやましいですね(笑)。

入江 逆に、仲が良すぎる、というのはあるのかな、と。統率(を取る人の不在)だったり、1年生が入ってきて、そこから指導というか、仲が良いからというわけではないのですが、思ったことを直接強く言える人があまりいなくて、今の4年生の代だと圭樹さんだったりが強く言える人なのですが、そういう人が僕たちの代にはいなくて、1年生だったりにきちんと強く注意等をしていける人がいないので、仲は良いですけど、そういう面ではまだまだかな、と思いますし、克服していけたらいいな、と思います。

――ことしの1年生の印象を教えてください

 客観的に見てすごく仲の良い代だな、と思っています。ことしの1年生は例年よりも経験者の数が多い学年なのですが、あまり未経験者と経験者で分れることなくみんなで仲が良い、というイメージですね。経験者は(未経験者と違い)船に乗って海に出ることが出来る機会が多く、大会等に出る機会もあるのですが、その中でも未経験者はちゃんと出ている経験者を応援することができていて仲の良い学年だな、と思います。

入江 1年生は10人いて、それぞれ考え方が違う人が集まっていて、それが良い方向に進んでいる時は1年生同士すごく良くまとまっているのですが、一方でそうじゃないときに同期同士で喧嘩だったりをしていることがあって、(そういう点では)僕らにはないものを持っている代だと思いますね。

――インカレは福井で行われますが楽しみにしていることなどはありますか

入江 1個だけ。海着を新しくしたので、その威力を試してみたいです。あ、でも福井に関係ないですね(笑)。福井・・・。福井って何がありますかね?

――カニとか、魚介系じゃないでしょうか

入江 旅館で出してもらえたらうれしいですね。

全国の大学がライバル

ヨットの話になると、真剣な目つきに変わる入江

――インカレまで1か月(この日で13日前)を切りましたが、今の心境はいかがでしょうか

入江 あと2週間くらいですね。率直に言って、楽しみであり、緊張もしています。楽しみというのは、今年やってきた練習、礼さん、こた、岩月さんとやってきて、4艇がちゃんとまとまっていて状態も良いですし、今のレベルで全国の舞台でどれだけ通用するのかを試したいです。(インカレは)自分たちが今どのくらいまでできているのかを発表する場だと思っているので、どこまでいけるのか楽しみですね。緊張というのは、もし自分がレースに出るとしたら、全日本インカレというのは初めての経験なので自分がどれくらい走れるのか、自分がちゃんとできるのかが不安というわけではないのですが、どこまでいけるのかな、と。やっぱり自分たちの目標というのは、全日本インカレの総合優勝、できればスナイプ級、470級のクラス優勝も目指しているので、完全優勝を目指して。レースメンバーとサポートメンバーがチーム一丸となってやれば達成できると思っているので、頑張りたいです。

神宮 そうですね、今の心境は、楽しみというのが大きいですね。秋インだったり六大だったりという最近のレースでは成績もちゃんと出ていて自信はあるので、この調子でいきたいと思っています。ただ、過信せずに謙虚な気持ちで挑もうと思っています。自分の実力を発揮するのが楽しみです。今は緊張していないのですが、緊張しやすいタイプなので、多分大会が近づくにつれて緊張が増していくのかな、と思います。

――福井での開催ということで、初めての場所だと思うのですが、怖さや不安などはありますか

 僕としては福井開催だからといって不安に思うことはあんまりないですね。(早大より)前に(福井に)入った京大がおとといくらいのTwitterで結構波も立っていて風も強い様子を投稿していて、自分が想像していた波の高さよりも高かったので、このくらいなのか、とちょっとドキッとしました。

神宮 僕も特にないです。福井(の海)もそれなりに波とか風とかに特徴はあると思うのですが、事前練習で波や風の傾向をつかんで全日本インカレに臨めば、実力をちゃんと発揮することは出来るのかな、と思います。

――直前期ですが、今はどのような練習をなさっていますか

 主に動作練習ですね。普通のスタート練習なのですが、今からスピードが飛躍的に向上することはないと小松コーチ(一憲、ロンドン五輪470級代表監督)に言われているので、しっかり1個1個の動作を細かく調整していくという練習をしています。基本に戻ろうっていう。

――ご自身の今の調子はいかがでしょう

神宮 自分は腰の方を少し痛めているのですが、そんなことは言い訳に過ぎないので、あまりそこはチームに迷惑をかけないようにしてインカレに臨みたいです。他の部分は調子良いです。

入江 僕は体調面は大丈夫で、レースモードなのか分からないのですが、楽しみで楽しみでたまらないです。ワクワクしている感じですね。あとは、煩悩を捨ててしっかりヨットに打ち込むことができれば、しっかりとしたパフォーマンスができると思うので、煩悩を捨ててしっかり修行したいと思います(笑)。

――今週末で葉山での練習は最後でしょうか

入江 そうですね。明日がルール講習会で、日曜日は強風らしいので、もう海に出ることなくあとは福井で、という形になるのかもしれませんね。

――インカレにおける3番艇の役割はどのようなものだとお考えですか

神宮 あまり3番艇だとか1番艇だとかいうことは気にしないで、一応ターゲットスコアというものは決められているので、自分たちはそれをきちんと取っていこうと考えていて、1・2番艇の礼さんやこたの調子が上がらずに崩してしまった時でも自分たちが良い成績を取っていればチームが楽になるので、1・2番艇を助ける役割というのが3番艇にはあるのかな、と思います。僕たちが走れば、1・2番艇も楽に走れますし、チーム全体も楽になると思うので、そういう意味では3番艇がカギのなるのかな、と思います。

入江 僕も3番艇だから(特別何かをする)というよりは、ターゲットスコアを最低限ラインとして、それよりも良い順位で帰ってきたい、と僕は勝手に思っています。できれば、全レースシングル(10位以内)で帰って来られれば最高だな、と思いますし、ワセダの総合優勝を考えても大切だと思います。3番艇の役割は、3番艇(だから特別何かをする)というよりはレースになったら何番艇であるかに関わらず、各艇が粛々とレースをすることが普段通りのパフォーマンスを発揮するために大切だと思います。いつも通りのパフォーマンスができれば良いのかな、と。

――慶大や日大がライバルになってくると思われるのですが、他大の印象はいかがでしょう

入江 慶大のスナイプチームのレギュラーは全員が4年生で世界選手権に行っている畠さん(広樹、4年)だったり片山さん(拓哉、4年)だったりがいて、そういう意味でも強いイメージです。この前の六大学戦でも強風の中で慶大に負けていますし、自分たちが1つでもミスをしたらすぐに抜かしてくるようなチームだと思うので、1点2点を争うような関係になるだろうとこれまでのレースを振り返ってみても思います。

神宮 最大のライバルになってくるのは慶大だと思うのですが、他水域の関東以外の大学でも同大や関西や九州の方にも大学はあって、そういった大学の実力は未知数なので、油断はしてはいけないと思いますし、慶大だけをライバル視しすぎずに、全ての大学がライバルだという気持ちで臨んでいきたいと思います。

――今年はインカレでの負けを知らない代だと思うのですが、そのことでの不安などはありますか

 負けを知らない代であると前々から言われていて、そのおかげで自分の勝ちに驕らないという気持ちは出ていて、過去の4連覇できなかったときの経験が(部には)あるので、負けを知らない代だからと言って駄目なんじゃないか、という不安はなく、みんな負けを知らないことへのおごりはないのかな、という感じは受けます。

 過去に4連覇を達成したのは同大です。今は全員が4連覇に向けて頑張っているので、これは僕自身の単純な考えなんですけど、負ける、負けるかもしれないって少しでも思ってしまったら行動や発言の中に表れてしまう感じがして、今みんなが勝ちに向けて突っ走っている状態で、結果はどうなるか分からないですけど、みんなが前を向いて勝ちに進んでいるのかな、と。4連覇に関しては、僕は多分できるんじゃないかな、と強く思っています。

――今大会のキーパーソンは誰でしょうか。これまでほかの選手にお聞きしたところ、入江選手を挙げる声が多かったのですが

神宮 僕ですかね(笑)。みんなのキーパーソン入江君のペアなので。僕は全力で入江君を支えますよ。そう意味でキーパーソンになるのかな、と。

入江 そうですね。僕ですね(笑)。僕がキーパーソンになってくると思います。

――インカレに対する意気込みを教えてください

入江 初めての全日本インカレで、さっきも言ったようにワクワクしますし、自分の力がどれくらい通用するのか分かる試合で、4連覇もかかっている試合なので、とても楽しみ、というか。こういった経験ができるのもワセダに入ったからなので。楽しみながらしっかりレースをやっていきたいです。しっかり目標を達成できるように、やって良いことはやる、やっていけないことは絶対にやらないように、レース中に神宮さんとしっかりコミュニケーションをとって、最終日にみんなで笑顔で神奈川に帰って来られたなら、とすごくハッピーだな、とおもいます。

神宮 僕もレギュラーとして迎える初めての全日本インカレなので、緊張はするのですがいつも通りのパフォーマンスをすればちゃんと結果はついてくると思うので、いつも通りを心がけていくのと、個人的には、ことしの4連覇だけでなく、らいねんの5連覇、5連覇している大学は未だないので、5連覇をしたいという夢もあるので、そういう意味でも絶対にことしは4連覇しなければいけないので、必ず優勝したいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 松澤勇人、金澤麻由)

相性ぴったりの仲良し対談となりました!

◆入江裕太(いりえ・ゆうた)(※写真右)

1997年(平9)12月6日生まれのB型。身長170センチ、体重64キロ。神奈川・逗子開成高出身。スポーツ科学部2年。スナイプ級スキッパー。明るい笑顔が印象的な入江選手。技術的にも人間的にも成長したい、との思いで早大ヨット部の門を叩いたそうです。福井での楽しみの1つである新しい海着で創部史上初の4連覇に挑みます!

◆神宮泰祐(じんぐう・たいすけ)(※写真左)

1996年(平8)12月11日生まれのB型。身長170センチ、体重64キロ。東京・早大学院高出身。政治経済学部3年。スナイプ級クルー。早大の体育会に憧れてヨット部に入ったという神宮選手。対談中の落ち着いた雰囲気とは裏腹に熱い思いを持った選手です。今年こそは自らの手でインカレ優勝をつかみ、ヨットの上で歓喜の瞬間を!