関西の雄を破り、伝統の一戦で2年ぶり勝利!

ヨット

 関西の強豪に圧勝だ。早大と同大の二校で行われる定期戦が、ことしは早大ホーム、神奈川の八景島で開催された。東の雄・早大に呼応するのは西の雄・同大。ともに全国屈指の強豪として挙げられる両者の直接対決は、470級、スナイプ級の両クラスで大差をつけた早大に軍配が上がった。

 両クラス3艇同士の合計スコアで勝敗が決まる今大会。初日は午後にかけて徐々に風が吹き上がるコンディションの中、2レースが開催される。第1レース、今大会を通してペアを組んだ永松礼(スポ4=大分・別府青山)・川上健太(創理4=東京・早大学院)組をトップに、スナイプ級が上位を独占。対する470級も順調な滑り出しを見せ、手堅く3点差をつけた。1レースで12点のリードを得ると、第2レースでもホームの海面を順調に走り、終始同大を先行。風が大きく吹いた影響で初日のレースはここまでとなるが、2レースで20点の大差をつける好スタートとなった。

好調を維持している元津(右)・永島組

 2日目、前日とは変わり、風向は不安定ながら継続して風が吹く中、4レースが開催された。470級では今大会新たにペアを組んだ岡田奎樹主将(スポ4=佐賀・唐津西)・秦和也(基理2=東京・早大学院)組が他艇の前を切る中、他の2艇がしっかりと前を走り、常に好順位をキープする。特にことしから団体戦のレギュラースキッパーに定着した元津志緒(スポ3=長崎工)は、春季関東学生選手権(春季関東インカレ)でもペアを組んだ永島慶也(政経3=神奈川・逗子開成)と共に2度の1位を獲得するなど、好調をアピール。岡田奎主将は「全員が万全の体調で臨めた」と470級の好調ぶりを喜んだ。一方のスナイプ級は、注目を集めるルーキー松尾虎太郎(スポ1=山口・光)と坂上宗輝(政経4=東京・早大学院)のペアが、永松・川上組と共に上位を走り存在感を見せると、この日途中から出場したスキッパー岩月大空(スポ3=愛知・碧南工)と三宅功輔(商3=東京・早大学院)が最終レースでトップフィニッシュを飾り、ハイレベルなチーム内競争をうかがわせる結果となった。

厳しい部内競争を勝ち抜けレギュラーをつかんだ松尾・坂上(右)組

 同大が苦手とする海水面でのレースとはいえ、毎年日本一を争っているチーム相手の圧勝は、春先らの好調ぶりをうかがわせる結果となった。大逆転優勝を果たした春季関東インカレに続き、この同志社定期戦にも勝利し、例年もろさを見せる春のシーズンでしっかりと勝ちを拾っている。それでも関口功志監督(平18人卒=愛知・半田)は、「本来では順位を上げるべきところで上げられなかったり、逆に落とさず済むところで落としてしまったり」と、結果を手放しで喜ばない。しっかりと勝利を挙げる中でも、改善点をいくつも見つけ、未だ伸びしろを示す選手は何人もいる。慢心しないチームは、翌々週から始まる関東個人選手権で、1艇でも多くの全国出場を果たすため、練習を重ねる。

(記事 喜田村廉人、写真 喜田村廉人、松澤勇人)


レース以外でも親睦を深めた両校の部員たち。集合写真では笑顔を見せた

結果

▽470級

◯早大(岡田奎・秦組、元津・永島組、田中美紗樹(スポ2=大阪・関大第一)・岩井俊樹(基理4=東京・早大学院)組)51-76同大

▽スナイプ級

◯早大(永松・川上組、松尾・坂上組、入江裕太(スポ2=神奈川・逗子開成)/岩月・三宅組)47-79同大

▽総合

◯早大98-155同大

コメント

関口功志監督(平18人卒=愛知・半田)

――今回の大会の位置づけは

そもそも同志社戦というのは、数十年前に早大が同大にお願いして実現した定期戦です。同大は早大よりもずっと長く日本一を争うチームをつくり続けているので、そこから少しでも多くのものを学ぼうというのがこの定期戦の趣旨です。そのことは私も学生たちに言い聞かせていました。

――ことしはホーム開催ということで運営の方はいかがでしたか

大きなトラブルもなくて安心している、という状態ですね。

――今大会のペアの組み合わせの意図は

スナイプは大きく変更なく、470も岡田(奎樹主将、スポ4=佐賀・唐津西)のところだけですね。めちゃめちゃ何か意図があって今回の編成にしたというわけではないです。(岡田奎と組んだ)秦は伸びしろがあるので少し期待はしていたものの、基本的には配艇は少しでも多くの選手にチャンスが回るように常々やっています。それが基本的な考え方です。

――470級の成績について

成績は…正直470もスナイプも、ことしは同大がいい仕上がりになっていないので、昨日が終わった段階から成績はあまり重視していませんでした。正直、過去数年(の全日本学生選手権)で早大が3連覇する前は同大が2連覇していて、この3年もずっと優勝争いをしていて、もっとシビアな争いになるかと思っていたんですけど、あまりそうではないコンディションのレースになったので、成績はあまり重視していないレースになりました。そんな中で一つ一つの内容を見ていくと、昨日もきょうも、本来では順位を上げるべきところで上げられなかったり、逆に落とさず済むところで落としてしまったりと、どちらかというと同大がどうこうというよりも、単純に早大のセーリングのミスが目立ったなと。特に戦い方で改善できることはたくさんあると思うので、そこは一つ一つ修正して次の大会に臨みたいと思います。

――スナイプ級の永松(礼、スポ4=大分・別府青山)選手を除くスキッパー陣の力関係についてはどう考えていますか

現状でいうと松尾(虎太郎、スポ1=山口・光)が少し抜けています。入江(裕太、スポ2=神奈川・逗子開成)と岩月(大空、スポ3=愛知・碧南工)は、ほとんど力の差がないと見ています。ただ、レースに行った時の集中力とか、心の強さには若干差があるなと感じていまして、その差がどちらをスターティングメンバーで使うかという差になっています。ただ、いずれにしても永松を軸に、誰が出ても戦えるようなレベルで競い合えているという非常にいい状況で、何も言わなくても自分たちで切磋琢磨(せっさたくま)できるような環境になりつつあるので、それはとても心強く思っています。

――スキッパー陣については、スナイプ級のそこ以外の部分で変更はなさそうですか

今の段階では見通しはないですね。ただ、ことしは1年生でヘルムスマン(スキッパー)が4人既にいるので、経験者が。練習ではいい走りを見せてくれている選手もいるので、今この瞬間を切り取ると、力及ばないですけども、夏にいい環境でしっかり練習をすることで可能性が出てくれば、学年を問わず起用していきたいと思います。

――ペアに関してはまだ確定していませんか

ペアはたくさん変更の可能性がありますね。(470級では)今回は経験を積む意味で秦を長く使いましたけど、もっとコンディションが強ければ深田(龍介、政経4=東京・早大学院)を使いますし、もっとライトなコンディションだったら須賀(偉大、教4=大阪・高槻)を使います。(スナイプ級では)結果的に最終レースになった試合で松岡(嶺美、先理3=東京・国学院久我山)を投入しましたし、コンディションによって使い分ける可能性もあります。

――今後への意気込みをお願いします

まずは関東個人選手権でチームの目標としている、470級とスナイプ級のミニマム4艇ずつの予選通過、そしてより多くの選手を(全日本個人選手権に)輩出するということを目標にしてやっていきたいと思います。いずれにしても、今回同大に勝てたということは、自分たちの課題を確認する上ではすごくいい機会になりましたし、同大とは学生同士でも仲良くやっていることを考えると、ある種自信につながったところもあると思います。前向きなところは伸ばしながら、改善するところはいくつも見えているので、その修正をしながら、奢ることなく泥くさく地道に練習を積み重ねていきたいと思っています。

岡田奎樹主将(スポ4=佐賀・唐津西)

――この同志社定期戦はどういった位置付けの大会なのでしょうか

西の人たちと勝負する機会はほとんど無くて、同志社大は毎年西日本で一番強い大学として全日本学生選手権(全日本インカレ)にやってくるので、その大学と一戦できるというのは、全国のレベルがどれほどなのか、自分たちのレベルがどれくらい変わったのかなど関東だけでやっていては分からないようなことを確認できるいい機会だと思っています。

――2日間を通してご自身の調子はいかがでしたか

古い船を使ったのですが、それにしてはよかったんじゃないかなと思います。

――チームレースとして、なにか意識していたことはありますか

特にはないですが、相手よりも速くゴールする、相手のこの艇よりも速く走るという意識をより一層強くするということですかね。

――470級のチーム全体を振り返って

よかったと思います。自分が思った以上に走れたのもありますし、全員が万全の体調で臨めたので、この結果になってもおかしくはなかったのかなと思います。期待通りですね。

――運営面、同志社大との交流など同志社定期戦全体を振り返って

同志社大は勝ち続けている大学、強さを継続できている大学なので、自分たちよりも断然(部としての)文化があります。それを同志社大から得ることができたと思います。逆に同志社大は(普段平水面である琵琶湖で練習していることもあり)波がある海面での対応が得意ではないので、そこを早大から吸収していったのかなと思います。お互いのいいところを吸収し合い、高め合えたと思います。運営面での課題はこれから話し合います。

――今後の個人戦に向けて意気込みをお願いします

個人戦は自分の能力を最大限発揮しないといけないので、個人戦で勝つことがチーム全体のレベルアップに欠かせないと思います。僕も負けてられないので、予選はしっかりと1位で通っていきたいですけど、去年は個人戦で全然結果が出せなかった人もいたので、そういうミスをチーム全体として無くしていきたいです。個人戦でもタイトルが欲しいので、狙っていきたいと思います。

永松礼(スポ4=大分・別府青山)

――2日間を通してご自身の調子はいかがでしたか

個人としてはあまり上手くいけてないというか、少し守りに入ったところが多かったと思います。少し潮が強かったりして、最初からあまり攻めずに安定したスタートをしていこうと思ってはいたんですけど、艇数が少ないこともあり同志社大のエース艇に自分が勝って1位を取るということはあまりできなかったので、誰よりもいいスタートをするという点ではまだ足りていなかったと思います。しっかり1位を取るべきところで取りきれなかったというのは反省点ですね。

――スナイプチーム全体はいかがでしたか

しっかり同志社大に対してセーリングができていたので、最初から比較的楽な展開が多かったです。順位を守るところは守って、相手を落として自分たちの艇(の順位)を上げるという場面もあったので、チーム全体としてはよかったと思います。それでも慶大など上には上がいるので、ここで慢心せず、日本一のスナイプチームになるためにもっと頑張らないといけないなというところです。

――3番艇は途中でスキッパーを入れ替える場面がありましたが

入れ替えたスキッパー2人にあまり技量の差はないので、お互いにどちらも経験を積ませるという意味もありました。全日本学生選手権(全日本インカレ)に向けて、誰が出るかは全く決まっていないので、みんなで競い合って、その中で走れる3人を選ぶということになります。今後もスナイプチーム内で競争関係を作っていくためにも、経験を積んでもらいたいと思っていました。

――運営面、同志社大との交流など同志社定期戦全体を振り返って

(同志社大との)コミュニケーションはよく取れていましたね。同志社大のいいところ、具体的には、普段琵琶湖で練習しているので平水面での走らせ方だったり、逆に早大の強みである波のある海面での走りを、お互いに共有できました。部の運営の仕方というのも、会話や観察を通じてよく勉強できたと思います。これから全日本インカレまであと6カ月間、お互いに高め合っていきたいですね。

――最後に、今シーズンの個人としての目標、そしてチームとしての目標をお聞かせください

日本一のスナイプ乗りになって、チームも日本一のスナイプチームになるということが目標です。そのためには3番艇の向上や自分自身の技術の向上が必要で、日本一速いスナイプ乗りになるために、自分自身を見つめ直す時間と、しっかりと周りを見て全体で上手くなろうという環境を作っていくことを意識していきたいと思います。