個人の学生日本一を決める全日本学生個人選手権が兵庫・新西宮ヨットハーバーで行われた。早大からのエントリーは関東での予選を勝ち抜いた470級の2組。先日のジュニアワールドで日本人初の金メダルを獲得した岡田奎樹(スポ3=佐賀・唐津西)はいつもの相棒岩井俊樹(基理3=東京・早大学院)とともに出場した。しかし、2日目に大きな反則を犯してしまい、優勝戦線からは脱落。市川夏未(社4=埼玉・早大本庄)・深田龍介(政経3=東京・早大学院)組も順位を安定させることができず、13位に終わった。
岡田奎は日本人初のジュニアワールド覇者として本大会の優勝を狙っていた。実は昨年のこの大会では、わずか3点差で優勝を逃し、悔しい思いをしている。その思いを持って臨んだ初日は第1レース、第2レースを予定通り5番以内でまとめると、第3レースではトップフィニッシュを決める。このまま優勝と思われたが、2日目の朝に悪夢が待っていた。出艇申告を忘れた岡田奎にペナルティが与えられたのだ。「普段ならしないことなんですけど、たぶん気の緩みがあったんだろうな」と岡田奎。これにより、無駄な失点を負うと、さらには第6レース中、不意に失格を取ってしまったことで大幅に順位を落とした。最終的に実力で7位までは迫ったが、失ったものは大きかった。「実力的には優勝しても全然問題なかった」(岡田奎)。ことしこそはと挑んだ大会でまさかの結果に終わり、岡田奎はひとつひとつのレースを悔しそうに振り返った。
優勝候補の大本命に挙げられた岡田奎(左)・岩井俊樹組だったが…
一方の市川は、3レース目で2位を取るなど、随所に強さを見せた。しかし、安定した順位を取ることが難しい。「きょねんよりも良い成績を残したいと思っていた」(市川)。昨年よりも順位が落ちてしまった理由を聞くと、「コース取りの面が大変だった」と冷静に振り返った。また、今大会は西宮での開催であり、いつも練習している相模湾とは違い陸に囲まれた内海であったことが、また市川を悩ませた。第6レースでは後半での追い上げに成功し3位に入ったものの、結局、7レース中2レースでしかシングル(※1)を獲得できず。安定した成績を残すことはできなかった。本人の振り返りにもあったように、海上で優位に試合運びをするためのコース取りが今後の課題になってくるだろう。
市川(左)・深田組は課題の安定感を克服することができなかった
「同じ過ちをしないこと」(岡田奎)。技術や体力以上に、気持ちの部分で負けてしまった大会となった。実力はあるはずなのに、結果が出ない。選手たちにとっては苦しい3日間だったはずだ。このつらかった経験をチームに持ち帰り、皆で共有し次に活かしたいと、市川は語った。全日本学生選手権(全日本インカレ)までの日数ももう多くない。全日本インカレを制した昨年度からレースメンバーである岡田奎、市川の2人が苦しい経験をした今だからこそ、伝統のチーム力が試される。
(記事 菖蒲貴司、写真 喜田村廉人)
(※1)10位以内の順位を取ること。
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
結果
▽470級
岡田奎樹(スポ3=佐賀・唐津西)・岩井俊樹(基理3=東京・早大学院)組 7位 56点
市川夏未(社4=埼玉・早大本庄)・深田龍介(政経3=東京・早大学院)組 13位 71点
コメント
470級スキッパー市川夏未(社4=埼玉・早大本庄)
――まずは、大会の振り返りをお願いします
きょねんより良い成績を残したいと思っていたのですがなかなか難しくて、特にコース取りの面が大変でした。悪い状態のときが長続きしてしまって、そのときにもう少し上手くできていたら安定して順位を取れていたと思います。今回は成果が出ませんでしたが、勉強になることが多く収穫の多い大会でした。
――順位に関しては全く満足できていないですか
そうですね。悔しいですし、上位の艇よりもコース取りに関係する情報が少なく、地元の人に負けてしまったのかなと感じています。
――何か具体的につかんだ収穫はありますか
スタートが悪くてもコース取り次第では上位に行くこともできるんだということに気づけたことですね。逆に言えば、コースの選択ミスで(順位を)落としてしまうこともあるので気をつけようと思うことができました。
――西宮はいつも練習している江の島や葉山と違い、陸に囲まれた内海でのレースでしたが
レース前に予報を見て大まかな流れは確認しているつもりなのですが、いつものように(海が)開けているような場所とは違い、予報通りにはいきませんでした。台風の影響もあったのかもしれないのですが、そこで、予報と違うときの対応がまだまだだなと気づくことができました。
――西宮でのレースは久々だと思いますが、西宮にはどのような印象を持たれていますか
(風が)あまり吹かないと思っていたのですが、そんなこともなく。練習の期間から強くて、1年のときのインカレ時から印象が変わりましたね。あのときはワセダが良い成績を残せなかったので、このような風は私たちにとってはやりにくいコンディションなのかとも思いました。しっかりと克服できればいいかなと思います。
――ご自身の課題でもありますが、順位を安定させるには
さっき言ったコース取りに関係してきますが、いつも自分が優位になる場所を走るということですね。常に意識していますがなかなかできないです。
――次は全日本女子学生選手権です。意気込みをお願いします
まずは優勝できるように頑張ります。それと、前回は今回も一緒に乗るであろう永松(瀬羅、スポ3=大分・別府青山)にたくさん意見をもらって、それで自分自身のコース取りのスキルが上がったように感じたので、またそのときのように良い経験になればいいと思います。
470級スキッパー岡田奎樹(スポ3=佐賀・唐津西)
――いまの率直な感想をお聞かせ下さい
悔しいですね。
――今大会を振り返っていかがですか
全体的にやっぱ、実力自体はあるのかなっていう手ごたえを受けたんですけども、失格があったり英語がついたりして、ささいなミスで自滅していったのかなと。そういうところからやっぱりチャレンジしていかないとという心が生まれて、普段守りに行く部分も攻めて、それが失敗したという感じになりましたので、そういう意味ではまだまだ、ヨットの実力だけではなくて、自分の準備という面で足りていないのかなという風に感じました。
――1日目は好調な滑り出しになりましたが
最初の2レースは、5番以内を確実にとることが目標で、そうやって安定させていこうと思っていました。それで、3レース目に、そろそろ3番以内が欲しいなと思っていたところ、運よく周りの人があまり速くなかったので、自分が一番になれてよかったな、という感じだったので、自分がどうこうしたというわけではなく、相手が失敗してくれたという感じでしたね。
――2日目のペナルティと反則についてはいかがですか
1つ目は、出艇申告というものがありまして、その申告を単純に忘れてしまったということで、普段ならしないことなんですけど、気の緩みが多分あったんだろうなと思います。いろいろ原因はあるんですけど。気の緩みが一番に挙げられます。失格になったやつは、スタートで、ロールアップという技がありまして、一回スターボード(右舷から風を受ける状態)から、ポート(左舷から風を受ける状態)になって、ポートのときは、スターボードの船を避けなきゃいけないんです。そのポートになったときに、スターボードの船を避けさせてしまったということで、失格になってしまいました。自分としては「避けさせていないだろう」という見た目の判断でペナルティの2回転を履行しなかったんですけども、認められた事実がそうだったので、これからは気をつけていきたいと思います。
――大会を通してのレースコンディションはいかがでしたか
初日はシーブリーズ(海風)で、220度からの風だったんですけど、だんだん右にふれていって、風もいい風で、15ノットとか入ってたんじゃないかなと思います。そうなると強風の域に入ってくるので、ボートスピードで圧倒的になって、僕にとっては走りやすい海面だったなという風に思いました。2日目はちょっと東の100度くらいの風で、予報通りくらいだったんですけど、陸から吹いてくるので、よく風の方向が変わるような感じで、そこに標準を合わせられていなかったなという感じですね、僕自身も。状況はそんな感じでした。
――クルーの岩井選手とのコンビネーションは
今回はコンビネーションすごく良かったかなと思います。コンビネーションというか、おのおのがちゃんと力は出せていたんじゃないかなと思います。
――今後への意気込みをひとことお願いします
今回はたくさん失敗していて、実力的には優勝しても全然問題なかったところを、入賞できなかったということは、何かしらの気の緩みや、甘さがあると思います。これは個人の大会で、大事なのは大学としての対抗戦になるので、11月にある全日本インカレ(全日本学生選手権)では、同じ過ちをしないことと、失敗した経験をみんなに共有して、同じ失敗を全員がしないようにしたいと思います。それと、全日本優勝するためには、なにが必要かということについて、今回学んだことを、十分練習で克服できたらなと思います。