島本・堀田組、カットレースに泣き『優勝』を逃す

ヨット

 全日本学生選手権(全日本インカレ)前、唯一の全日本クラスの大会に挑んだ早大ヨット部。全国から強豪が集結する大会で470級、スナイプ級それぞれで2艇が入賞を果たした。

 6月に予選が行われ、7艇が突破した。中でも470級の岡田奎樹(スポ2=佐賀・唐津西)は「2月くらいから優勝すると宣言している」、スナイプ級の島本拓哉(スポ4=千葉・磯辺)は「最後のチャンスなので必ず優勝できるように」と、はっきりと『優勝』を目標にやってきた。今季不調の小泉颯作主将(スポ4=山口・光)も昨年度、最優秀選手賞を獲っており、この大会を機に調子を取り戻したいところ。その他の4艇も入賞を狙える実力を備えており、各艇に期待がかかっていた。

 岡田奎・岩井俊樹(創理2=東京・早大学院)組は初日、2日目と安定しない。良いレースを展開するものの、第1レースでは16位、第5レースでは14位と、シングル(※1)に食い込めないレースもあり、2日目の時点で暫定6位と優勝戦線からは外れたかのように思えた。一方で、島本・堀田芽ノ世(法2=東京・早大学院)組は5、4、3位と好順位を取り続ける。第4レースではスタートを誤り21位となってしまったが、第5レースでは8位に入り、第4レースがただのミスだと示してみせた。この時点で1位。『優勝』という目標が現実味を帯びてくる。今大会の規定では6レース以上行われるとカットレース(※2)があるため、このまま最終日も駆け抜けていけば十分に優勝は狙える位置にいた――。そのはずだった。

素晴らしい走りを見せる反面、安定性を欠いた岡田奎(奥)・岩井組

 最終日、『優勝』を懸けた2組は共に躍動する。岡田奎・岩井組は1、4、2位と怒涛の追い上げで迫った。それでもわずかに3点足りず3位。『優勝』は逃してしまった。「まだ器が小さい」(岡田奎)。周りを顧みず自分本位で舵を切るあまり、順位の安定性が欠けてしまったことを岡田奎は反省した。島本・堀田組は9、6位と第6、7レースを共にシングルでフィニッシュ。最終レースとなった第8レースはトップでフィニッシュし、最高の締め方で大会を終えた。カットレースが適用され、第5レースの21点分が消されることで確実に『優勝』を手にしたかに見えた――。しかし、そのカットレースこそが罠であった。当然ではあるが、悪い順位を消せるのは島本・堀田組だけではない。それまで競っていた同志社大のエース艇。そのライバルもまた、28位を取ってしまった第5レース以外はシングルでまとめてきていたのだ。逆にカットレースがなければ、島本・堀田組は『優勝』していた――。ポイントをより少なくし選手たちにとってはありがたいカットレースの適用が、皮肉にも島本・堀田組から『優勝』を引き離してしまった。「1年生のときから、いつかはこの大会で優勝すると決めていた」(島本)。最後の夢舞台、島本はカットレースに泣き、またしてもこの舞台で『優勝』をつかむことはできなかった。

最終レースでトップフィニッシュを決めた島本(右)・堀田組。このときは『優勝』を確信していた

 強い思いで臨んだ岡田奎、島本、それ以外の者も『優勝』をつかむことはできなかった。それでもこの全国大会で早大の層の厚さはしっかりと見せつけられたに違いない。また、今大会は個人戦であるため組ごとに表彰されるが、早大からも4組が入賞を果たした。2ヶ月後に控えるは団体戦である全日本インカレ。この大会が仮に全日本インカレだったら――。そう考えてみるだけで、『優勝』を期待せずにはいられないのである。



(※1)レースで10位以内を取ること。

(※2)大会の既定のレースを行うと、最も悪いレースの点数を除くことができるというルール。

(記事 菖蒲貴司、写真 丸山美帆)

結果

▽470級

3位  岡田奎・岩井組  36点

7位  市川夏未(社3=埼玉・早大本庄)・永松瀬羅(スポ3=大分・別府青山)組  68点

9位  小泉主将・原海志(創理4=東京・早実)組  83点

14位 元津志緒(スポ1=長崎工)・中島捷人(スポ3=神奈川・逗子開成)組 102点



▽スナイプ級

2位  島本・堀田組  36点

6位  永松礼(スポ2=大分・別府青山)・花岡航副将(創理4=京都・洛北)組  55点

9位  平川竜也(スポ3=神奈川・逗子開成)・服部勇大(基理3=東京・早実)組  71点


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コメント

スナイプ級スキッパー島本拓哉(スポ4=千葉・磯辺)

――いまの感想をお聞かせください

1年生のときからいつかはこの大会で優勝すると決めていて、ことしは優勝するつもりで臨んできたので、自分の甘さが出てしまって結局2位になってしまったと思います。まだまだ力が足りないのでもっともっと練習して団体戦の全日本インカレが終わった後も全日本スナイプ、全日本選手権があるのでそこで両方とも優勝できるように頑張ろうと思います。

――以前のインタビューで「優勝を狙っていきたい」とおっしゃられていました。改めてこの2位という結果については

優勝する思いというのは強かったのですが、それ以上にワセダの他艇が良い走りをしたので4年生としてはそれがうれしい部分もあり、個人としては悔しい思いで一杯です。チームとしてはまずまずの結果でこれからもっと練習して頑張ろうと思える大会でした。

――今季はエース艇がなかなか結果を出せずにいますが、その他の艇は着実に成長していると思います。スナイプリーダーとしてチーム力は上がってきていると感じますか

他艇が良いのでチーム力は確実に上がってきていると思いますが、クルーが変わったりと自分がもう少し安定した力を出して、『柱』のようなものになって、常にチームの先頭を走って他艇ものびのび走れる状況をつくり出していけたらなと思います。

――一度21位になってしまったレースがあったと思いますが、そのレースについては

スタートを失敗してしまって、その後も良い位置で艇を扱えなくてその順位になってしまいました。後半に追い上げたのですが、距離が足りずに21位でフィニッシュしてしまいました。

――暫定首位で迎えた最終日はいかがでしたか

やはり1位になった艇はスタートの順位が良く、プレッシャーにもなっていました。自分はそこで上げることができなかったので、そこで結果が分かれたのかなと。

――次は団体戦です

チームとしては確実に上向きになっているのでしっかりと全員で力を合わせて優勝を勝ち取ろうと思います。


470級スキッパー岡田奎樹(スポ2=佐賀・唐津西)

――3日間の振り返りをお願いします

スタートが去年に比べて全体的に良くなったので、そこは成長したなということを実感しました。改善点としては、どうしても自分の展開に持っていこうと無理矢理コース展開をしようとして、周りの集団に合わせないで抜かれてしまうというレースがあったので、全体を見てコースを取ろうと思いました。

――良いレースが多かった中で、シングルを取れなかったレースについてはいかがお考えですか

両方ともスタートは良かったんですけど、さっきも言ったように、自分の集団に合わせないところが、まだ器がちっちゃいなと思いました。

――全日本個別選手権での優勝という目標には届きませんでしたがそれについてはどうお考えですか

優勝できなかったのは残念ですが、風が良かったというのもあるんですけど、きょう最終日に良いレースができてある程度走れるんだなということが分かったので、優勝はできませんでしたがまた次へのいい勉強にもなったので、活かせればなと思います。

――国体と、関東インカレに向けての意気込みを一言お願いします

国体は日頃乗らない方と乗るので少し難しいレースになると思うんですけど、(一緒に乗るのは)ナショナルチームの人なので、多分優勝できると思って目標にもして目指していきたいと思います。関東インカレは団体戦になるので、チームのことを考えながら、自分があまり大きな点数を叩かないように出来ればなと思います。もちろん目標は優勝なので、少しでもそれに貢献できればと思っています。


スナイプ級スキッパー永松礼(スポ2=大分・別府青山)

――3日間の振り返りをお願いします

今回のスコアを平均してみたら、やっぱりまだ自分は微風域でのレースのコース取りだったり、スタートだったりに苦手意識があって、そういうところできのう30番台を2つとってしまって、やっぱりまだまだ全然微風域、中風域での自分の弱点がまだあるなというのが振り返ってみて実感しました。でもそれ以外のレースで見たら、自分は結構ネガティブで、弱気なところが多くて、結構レースでもそれが反映されていたんですけど、最近のレースでしっかり自分の考えを少しでも出して自分が思った通りのコースを取ろうだったり、しっかり自身を持ってスタートしようだったりとか、一番できることをやっていっている中で、8レースあって6レースはいい走りが出来てこういういい結果が出ていたので、自分の考えをもっと出していって、セーリングすることでもっとより良い成績が取れるんじゃないかなって、自分なりに考えているので、順位を見てみたら結構内容は良かったのかなと思います。

――今回の総合的な結果についてはどうお考えですか

結構今年から強いと言われる慶大だったり同志社大だったりに関しては、自分が3番手としては結構食い込めたかなと。一番下じゃなくて慶大の2番手に食い込めたりとか、同志社大より前を走ったりとか、しっかり上位校についていって結果的に勝ってるレースが多いというのは自信になったし、特に微風域と中風域は同志社大が速いので、微風域と中風域を主に課題として練習してきた成果が結果として出たので、良くなってきたのかなという風には思いますね。

――関東インカレに向けての意気込みを一言お願いします

まあ、敵はほぼ慶大かなという風に思っているんですけど、自分自身関東インカレというレガッタの中であまりいい成績を残したことがなくて、それこそ微風域、中風域のレースで、ほとんど崩しているということがあったんですが、それでも今回とか前の東日本スナイプでもいい成績が出ていて、その中で自分がいつもと違ういいところを見つけられて、どこが悪いと順位が出ないということが少しずつ分かってきたので、春のインカレが終わってからしっかり自分が練習してきて上手くなったところを出していければいいかなと思います。