やっとつかんだ勝利 西の雄に完勝

ヨット

 『同志社定期戦』。それは、早大ヨット部員にとっては早慶定期戦よりも価値が高いものなのかもしれない。なぜなら、西の強豪である同志社大との一戦は、秋季に控える多くの全国大会の行方を占うひとつの指標になるからだ。迎えたことしの大一番は、各艇の走りが光り105-106の1点リードで初日を折り返す。2日目も早大ペースでレースが展開されるが、終盤には同志社大の猛追を受ける。それでもなんとか振り切り、183-195で見事完勝。ここまで関東圏の大会で一度も勝てず、また早慶定期戦でも敗れてしまった早大だったが、この一戦を制したことで全日本学生選手権(全日本インカレ)での2連覇が現実的に見えてくる結果となった。

 「4月から負け続けて、やっとチームとして勝つことができてよかった」。主将の小泉颯作(スポ4=山口・光)にとって、それは待ちに待ちわびた瞬間だった。絶対的エースとしてこれまで活躍し、今年度は満を持して主将に就任。『全日本インカレの2連覇』へ向けスタートを切った新生ヨット部だったが、ことごとく勝てなかった。毎度のように今季好調の慶大に首位を奪われる。小泉自身の成績も振るわず、スーパースターはここまで足踏みをするしかなかった。今大会でも、2位は幾度と取るもののトップフィニッシュは見られない。それでもレース後は「かなりうれしい」と何度も繰り返した。それは自身の成績よりもチームで勝てないことに悩んでいたから。重い苦しみから解放されたかのように、小泉は本音を漏らした。初日、2日目を好成績でまとめた市川夏未(社3=埼玉・早大本庄)・永松瀬羅(スポ3=大分・別府青山)組も最終レースは納得のいくものではなく、「悔しい気持ちが大きいです」(市川)と、勝利に貢献してもなおストイックに自らと向き合った。好調の岡田奎樹(スポ2=佐賀・唐津西)・岩井俊樹(基理2=東京・早大学院)組も、クルーの岩井が「スキッパーのやりたいことを実現する能力が足りていなかった」と、好成績にもおごらず、さらに上を見据えている。本来の力を取り戻しつつ470級に、これから期待だ。

今季苦しみ続けた小泉主将(右)。団体での勝利を渇望していた

 大勝利を果たせたのはスナイプ級勢の力も大きかった。スナイプリーダーである島本拓哉が率いる島本・清原駿(創理3=東京・早大学院)組は、初日に2度トップフィニッシュを飾り、存在感を示した。「(全日本学生個人選手権では)優勝を狙っていきたい」と以前語っていたように、大学生活最後の個人戦への思いも十分だ。永松礼(スポ2=大分・別府青山)・花岡航副将(創理4=京都・洛北)組も第2レースで2位に食い込むなど、成長を感じさせるレースを展開する。平川竜也(スポ3=神奈川・逗子開成)・服部勇大(基理3=東京・早実)組も初日こそ苦戦するが、2日目の第2レースをトップでフィニッシュし、エース艇の意地を見せた。2日間で9レースという過酷な日程の中、それぞれの良いところを出せた収穫が多いレースだったとも言える。スナイプ級の精度を高めていくことで、ひいては早大全体の精度も上がっていくことだろう。伝統の団結力を武器に、全日本の頂を貪欲に狙ってゆく。

確かな成長をみせる永松礼(奥)・花岡副将組

 これまでの3年間、小泉は常にエースとして多くの勝利に貢献してきただけに、まだまだ本調子と言える状態ではない。また、勝利は挙げたものの、470級、スナイプ級共に内容の悪いレースもいくつかあった。それでもこのチームで勝つということができた経験は大きい。選手たちが口々に「うれしい」という言葉を発することからも、この勝利が単なる1勝ではないということはわかるだろう。全国の舞台へ向け、価値ある2日間となった。早大が全国を制すには、やはり全員で補い合えるチームづくりが必要となってくる。実力者が多いだけに、昨年と同様に各艇が縁の下の力持ちとなり、エース艇の復調を待てば全日本インカレでの2連覇も十分に可能であることには違いない。これからどんな物語を見せてくれるのだろうか。宿敵・慶大とはまず10月の秋季関東学生選手権でぶつかり合う。他にも関東には強敵がたくさんいる。全日本インカレの日までに、もう一度自信をつかめるような大金星を挙げたいところだ。

(記事、写真 菖蒲貴司)

これからも東西のライバル関係は続く

★定期戦ならでは!新旧の応援担当がコラボレーション

 大会の終わりにはヨット部の応援担当が指揮を執り、エールの交換ならびに『都の西北』の斉唱を行う。今年度の応援担当は清原だが、今大会ではかつての応援担当だった石橋賢人氏(平25政経卒=東京・早大学院)も訪れ、ふたりでのパフォーマンスも見られた。清原は「(高校時からの)大先輩がいる中で緊張しました」と、いつもとは違う雰囲気での応援に少しばかり戸惑ったようだが、一方で石橋氏は「今でも動きは覚えている」と、卒業してもなお持ち続けている『ワセダ愛』をのぞかせてくれた。

選手以外にも応援担当として活躍する清原

結果

470級   ○早大90―99同志社大

スナイプ級  ○早大93-96同志社大

総合     ○早大183―195同志社大

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コメント

470級スキッパー小泉颯作主将(スポ4=山口・光)

――勝つことができました。主将としてチームの振り返りをお願いします

4月から負け続けて、やっとチームとして勝つことができてよかったです。大きい大会というわけではないですが、かなりうれしいです。

――勝てた要因というのはどのような点にあるとお考えですか

慶大に負けて、負け続けて、470級で言えばランニングがやっぱり遅くて、そういうのを修正して今回レースをしてみて、ランニングは同志社に対して速かったですし、きょねんの全日本インカレは強風で、風が弱いところでのレースがワセダとしての課題と言われていて、それをずっと練習してきたのですが、今回風が弱いところで勝ちを積み重ねることができたので、慶大に負けていろんなことを見つめ直す機会ができたことがよかったのだと思いますね、今は。

――一方で個人の成績がなかなか振るわないと思いますが

そのあたりは納得してはないですけど、個人がというよりもチームでの勝ちがひとつでも欲しかったので、もちろん悔しさはありますが、主将という立場からするとかなりうれしいですね。チームの勝ちがひとつでも取れたことが大きいですね、個人で取るよりも。

――全日本学生個人選手権、また主将として全日本インカレ2連覇への意気込み

今回勝ったのは勝ったのですが、最終レースでは大負け(1~3位を同志社大に独占される)しているので、そういうところで依然として課題はあるのかなと感じています。慶大にも勝ててないですし、関西には強豪の関西学院大もいるので、しっかりこれからの夏で練習して、最後は勝てるようにやっていきたいと思います。


470級スキッパー市川夏未(社3=埼玉・早大本庄)

――おめでとうございます。いまの感想をお願いします

初日から1点差ですけどリードできて、結果勝てたのでよかったです。しかし、自分の中では、反省が多くて、1日目より改善できたところはあったので、反省がかなりあって、悔しい気持ちが大きいです。収穫も少しあるという感じですね。勝ったのですが、悔しい。内容的にはもう少し楽にできた部分も多かったので、悔しいですね。

――ご自身の出来はいかがでしたか

1日目はスタートを思い切って出ようとして攻めすぎた面があったのですが、2日目は少し消極的にいってしまったのかなと。そのあたりのバランスも上手にできたらより良いなと思いました。あとはランニングのコースで、コース取りでいくつか反省点があるので、そのあたりですかね。今回レース委員長をされていたOBの方にアドバイスをもらったりといろいろ考えましたが、まだまだですね。

――2日間で9レースという過密な日程については

最近、病気にかかっていたのであまり実戦経験を積めずに今大会を迎えてしまいました。今後、長くて数もあるレースがあるので、それに向けて長期で体調を整えることができるようにしていきたいです。

――次戦への意気込み

今回の反省を改善して、それができれば順位が上がっていくと思うので、そこでああすればよかったなという反省をできるだけ少なくして、悔しい気持ちをせずに良い結果を残せたらなと思います。


スナイプ級クルー清原駿(創理3=東京・早大学院)

――おめでとうございます。いまの感想をお願いします

きょねん負けて悔しかったので、ことしは勝てて素直にうれしいのですが、内容自体がまだまだ甘いところがあるので、全日本インカレに向けてそこを修正していかなければなと思います。

――レース前には応援担当として指揮を執られていましたが

今回は大先輩がいる中で緊張しましたが、やはり自分の役割なのでレース前の部活の雰囲気を高めるという意味でもすごく大事なことなので、もっともっとがんばってさらに盛り上げられるように頑張ります。

――ご自身の成績については

島本さん(拓哉、スポ4=千葉・磯辺)とはきょねんから組んでいて、普段からあまり口数を交わさなくても理解し合えるというか、わかる部分があるので、そう言った面では良い傾向にあるだろうし、だいたい考えていることがわかるので、もっともっとこのコンビでの連携を深めて、誰にも負けないようなペアになろうと思います。

――団体戦で今季初の勝利ということですが

負けっぱなしでしたが、同志社戦の勝利をきっかけに、全日本インカレで優勝できるように、まずは秋季関東インカレをステップにして、全勝できるように頑張っていこうと思います。

――全日本学生個人選手権(全日本個選)、全日本インカレに向けて

全日本個選では優勝を目指して、全日本インカレでは総合優勝を目指して、470級、スナイプ級で互いに勝てるように頑張ろうと思います。


470級クルー岩井俊樹(創理2=東京・早大学院)

――勝利の感想は

団体戦で今季初の勝ちということで、それが何よりもうれしいですね。今まで早慶戦と春のインカレと負け続けて、しかも反省点がたくさんあるようなレースをしてきたので、今回も反省点はあるのですが勝てたことがうれしいです。

――今大会での好成績の秘訣は

今まではスキッパーのやりたいことを実現する能力が足りていなくて、それができればもっと良い成績を安定して出せると思っていました。そのあたりがわかってきたことが良い成績につながっているのだと感じています。ただきょうの最終レースでは上手くいかなかったので、まだまだその部分は課題であるのではないかと思います。

――2日で9レースという日程については

きょう、きのう共に午前中はあまり風が吹いていなかったのですが、風が強いと体力を奪われますね。強風の中でも自分たちのレースを展開できるように体力面でも努めていきたいですね。

――全日本学生個人選手権へ向けて

夏の練習が勝負だと思っているので、そこまでにスキッパーとの息が合うようになれたらいいなと思います。それを実行できれば良いレースができると思いますし、それが
ワセダの優勝へつながると思っているので、まずはこの夏ですね。頑張っていこうと思います。