期待のルーキーが加わった早大ヨット部にとって、新体制の船出となる関東学生春季選手権(春季関東インカレ)。昨年は他大に圧倒的な差をつけて総合優勝。今季2連覇を達成し、秋の全日本学生選手権(全日本インカレ)へ弾みをつけたい早大だったが、1日目から精彩を欠きミスが目立ってしまう。第4レースを消化し、首位日大と79点差の2位で初日を折り返した。最終日の第5、6レースで追い上げるも及ばず、470級が2位、スナイプ級が3位で終わり無念の総合2位。秋春連覇の日大相手に雪辱は果たせなかった。
1日目は強風の中、スナイプ級で波乱の幕開けとなる。第1レーススタート直前で島本拓哉(スポ3=千葉・磯辺)・服部雄大(基理2=東京・早実)組が転覆。大きく出遅れるも、強風を生かした走りで追い上げ16位でフィニッシュ。第1レースで総合1位に立つ。強風を得意とする早大はこのまま有利にレースを進めていくかと思われたが、470級第3レースで小泉颯作(スポ3=山口・光)・江畑陽太(法4=神奈川・浅野)組、山口優副将(スポ4=佐賀・唐津西)・槌谷祥吾(商4=東京・早実)組がBFD(※1)を取る痛恨のミス。「僕らが自滅してしまった」と小泉が語るように、このレースで早大へ100点が加わり、日大に79点差と大きく引き離されてしまう。
苦しい状況を耐え抜いた島本(左)・服部組
迎えた最終日。なんとか巻き返したい早大は苦手とする微風の中、他大と激しいレースを繰り広げる。470級では小泉・江畑組が第5、6レースで連続1位を取り奮闘を見せると、スナイプ級では島本・服部組が3位、1位と好順位につける。一方で、1日目に好調だったスナイプ級平川竜也(スポ2=神奈川・逗子開成)・花岡航(創理3=京都・洛北)組が失速。23、30位と大きく崩してしまった。同じくスナイプ級で、永松礼(スポ1=大分・別府青山)・櫛田佳佑主将(社4=東京・早大学院)組も連続15位と振るわない。チームの総合力で追い上げるも、最後まで日大を捉えることはできず、総合2位で今大会を終えた。
個人成績で1位となり笑顔を見せる岡田(左)
チームとしていいレースもあったものの、目標としていた総合優勝とはならなかった。櫛田は「課題が日に日に増えていくような2日間だった」と振り返る。しかし、今大会では1年生の活躍も光った。470級岡田圭樹(スポ1=佐賀・唐津西)・原海志(創理3=東京・早実)組は2日間全てのレースでシングル(※2)を取り、個人成績1位に輝いた。これから成長していくルーキーたちと、早大の伝統を背負う上級生が一体となれば、勝利することができるはずだ。最大の目標である全国の頂へ――。エンジのセーラーたちは次なる舞台へ帆を進めていく。
(記事 丸山美帆、写真 近藤廉一郎)
集合写真
(※1)規則30.3(Black Flag Rule)に対する違反のこと。そのレースは失格となる。
(※2)10位以内の順位を取ること。
結果
▽470級
早大198点(2位)
▽スナイプ級
早大211点(3位)
▽総合得点
早大409点(2位)
コメント
スナイプ級クルー櫛田佳祐主将(社4=東京・早大学院)
――2日間のレースを振り返っていかがですか
初日の1レース目の入りはすごく良くて、得意の強風だったので想定していた順位よりいい順位が取れたんですけど、その後徐々に風が落ちていくにつれて、他の大学とのボートスピードによるアドバンテージがどんどんなくなって、ワセダはその時の戦い方が悪くて課題が日に日に増えていくような2日間だったように思います。
――予選から決勝までの1週間、どのようなことを気を付けて練習を行ってきましたか
予選の2日目からずっと長期合宿を行ってきて、レースメンバーだけではなくサポートメンバーを含め全員で総合優勝をするということを目標にして、みんなで合宿を乗り込んでいくといくモチベ―ジョンを持って準備してきました。
――1,2レースとスナイプチームはいい順位を取れていたのですが第3レースで大きく順位を落としてしまいましたが
本来だったら、半分の点数で収まっていたと思うのですが、目の前の1点を焦ってしまって、フィニッシュ間際でプロテストをかけられてしまって2回転をしなければならなくなり、その間に15艇に抜かれてしまったのが原因で悪い順位だった。
――スナイプチーム内のまとまりというのはいかがですか
自分が経験してきた4年間の中で一番まとまりのある、仕上がっているように感じられるチームで、1艇が崩しても残りの艇が前に出てカバーしてくれるような安心感のあるチームだと思います。
――470チーム、スナイプチーム合わせ全体のチームの状態というのは昨年と比べて、主将としてどう感じられていますか
自分たちの意見をしっかり言い合える環境というのは昨年以上につくられているという感じがあります。目標は全日本学生選手権で総合優勝することなんですけど、部員の中にはベクトルが違う方向に向いている人がいるのですが、そういう意見をぶつけさせることで、より総合優勝に近づける環境がいまの部にはあるのかなと思います。
――総合でもスナイプでも点数を離されたライバル日大との差というのはどこにあると思いますか
ヨットの知識、経験ということはまだ日大に劣っていると思います。風が吹いたときのボートスピードだけは勝てると思うのですが、誰でも走れてしまう風域になってしまったときに、経験や知識の差が顕著に出てきてしまって、日大が一枚二枚上手なのかなと思います。
――レースで見つかった修正点を今後どのように生かしていきたいと思いますか
まずは練習あるのみなのかなと思います。やはり量に勝るものはないので、ストイックに朝から晩まで練習をして、その1回1回の振り返りというのをより濃いものにしていかなければいけないなと思っています。その中で出てきた課題を、短期的、中期的、長期的な課題に分けて進んでいけたらいいと思います。
――次の大きな大会は関東個人選手権となりますがチームとしての目標と櫛田選手個人の目標を教えてください
スナイプチームはいまスキッパーが4人いるので、4艇全員で蒲郡にいくということがチームの目標です。自分は1年生と乗っているということでいかにプレッシャーを与えないで蒲郡への切符をつかめるのかというのが個人の目標です。
470級スキッパー山口優副将(スポ4=佐賀・唐津西)
――2日間のレースを振り返っていかがですか
私たちのところはずっとスタートを課題にしていていますが、決勝ということで自分たちの中でも緊張感も高まっていて、予選の時よりもやってはいけないことをやってしまったことで、毎レーススタートから出遅れてしまうことが初日の前半のレースでありました。しかし、レースを進めていく中では相手を抜いていくことができていたので、ボートスピードという面では他艇に比べて優位性があったと思います。そして第3レースからどんどん攻めていこうとクルーと話していたのですが、そこでBFDを取ってしまい失格になるレースをしてしまい、前へという気持ちはあっただけに最後の詰めが甘かった点があるので、そこに関しては早く改善していかなければならないことだと思っています。
――予選から決勝までの1週間どのように調整をされていましたか
1日オフがあるくらいで、毎日に練習をしていました。その中でも、コース練習を主にやることと、全艇共通して上マークとサイドマークでタイトなコースを苦手としていたので、その辺を中心にコース練習をしていました。
――予選ではいい走りができていただけに、第3レースでBFDを取って失格をしてしまったというのは痛かったのではないでしょうか
すぐ近くに小泉艇がいて、私たちの中ではまだ他の艇が出ているように見えていたので大丈夫だと思って走っていたので、そのレースでトップフィニッシュしたときにホーンが鳴らなかったところで、スタート時にどのタイミングで出てしまったのかちょっと分からなかったので、しっかり出なければならない見通しや、他艇との駆け引きをもっともっと意識しなければならなかったです。勝てるレースでBFDを取って結果として泣いているので、今後のレースでは自分たちの走りは自信を持っていかなければと思っています。
――470チームとしての課題はどんなところにあると思いますか
経験が豊富な下級生が多いので、4年生がもっとしっかりしてチームを引っ張っていくというところであったり、個人個人の考えをチーム内でもっと共有することが今後必要になってくると思います。
――今回優勝した日大との差をなくしていくために今後どうしていかなければならないと思いますか
ボートスピードに関しては日大と戦えていると思うのですが、やはり自分たちでミスをして崩れていくことがワセダに多いのです。日大はすごくチームレースがうまいことと、ミスをしてもちゃんと立て直してくるので、そういうところがもっとワセダに必要なのかなと思います。
――最後に関東個人選手権に向けて抱負をお願いします。
上位で関東予選を通過して、全国で自分がどのくらいの位置にいてどのくらい走れるのかということを全日本個選(全日本学生個人選手権)で把握したいので、まずスタートからしっかり頭を出していって第1マークを回航する時には10位以内に入れるぐらいの展開だったり、失敗した場合のリカバリーも自分は判断が遅いので大きな決断力であったり、思い切った決断を大きな大会でもやっていきたいなと思います。
470級スキッパー小泉颯作(スポ3=山口・光)
――初日のレースを振り返って
第2レースで風を読み切れずに順位を落としてしまったことがまず一つ目の反省点です。そして第3レースでライバルの日大が失格になって自分たちにチャンスが来たところで、スタートで自分たちも失格になってしまいました。ワセダはしかも2艇失格になってしまい、逆にリードを許すことになり、そこで決定的に試合を決められてしまいましたね。
――第3レースのスタートの際に焦りは
やはり日大が失格になっていてここで一気に攻めたいというのがみんなあって、良いレースをしようと、日大との差を稼ごうとしすぎて気持ちが早まってしまいましたね。
――2レース共にトップフィニッシュとなった2日目のレースは
初日に重大なミスを犯してしまったので、きのうからきょうのレースに向けて準備をしっかりして、1番艇としての役割を果たせるように取り組みました。
――第3レース以外はシングルの順位も多かったですね
風が安定していて、スタートもしっかり出られればいい順位で走ることが自分はできます。ただ第2レースは風を読み外したりスタートで失敗したりしてしまいました。いいときと悪いときがまだはっきりしてしまっているかなというのはありますね。
――チームとしてのレースプランは
各々ターゲットスコア(目標とする順位)を決めていて、だいたいどのレースもその順位の中に入れるようにどの艇も努力しました。でも結果としてはすごくいいときもあればすごく悪いときもあって、総合としてはそれでは勝てないですね。そこが反省点です。
――優勝した日大との差は
僕らが自滅してしまったので、そういうミスをしないところの差が出たかなと思います。
――今後に向けて
今後は同志社との定期戦、関東個選(関東学生個人選手権)、ジュニアの世界選手権と続きます。まずは個人戦でいい結果を残して、秋シーズンにつなげられるような走りをしたいと思います。
スナイプ級スキッパー島本拓哉(スポ3=千葉・磯辺)
――初日のレースを振り返って
自分は1レース目のスタート前に船が沈するトラブルを起こしてしまって、もったいなかったなと。いいところもありましたが、悪いところも顕著に出てしまったなという感じです。
――沈した際の心境は
いやもう本当に死ぬかと思いました。笑えないですけど。
――しかし第1レースは中盤から巻き返しましたね
そうですね。意識していたことはヨットレースのセオリーを守ることと、自分のテクニックに自信があったので、強風を利用してうまく進めることでした。
――2日目のレースを振り返って
軽風に自分自身は得意意識があるので、その中で2レース共にシングルの順位で走れたのは良かったと思います。
――調子はいかがですか
絶好調です。
――スナイプチームとして意識していたことは
軽風になったときのスピードだったり、スタートだったりに関してもチーム全体としてスキルも自信もまだないので、まずはスタートをしっかり出て自分たちの進むべき方向に走ることを意識していました。
――日大に大きくリードを許すこととなりましたが
スタートと軽風域への対応とレース展開能力が非常にうまいなと感じました。1番艇から3番艇までがまとまってそろえてくるのも日大はうまかったですね。
――今後に向けて
関東個選(関東学生個人選手権)はもちろん優勝するつもりでいって、夏になれば社会人と走ることも増えるので、社会人も倒せるくらいの実力をつけたいと思います。
スナイプ級スキッパー平川竜也(スポ2=神奈川・逗子開成)
――予選を振り返って
僕は五大学対抗戦、六大学対抗戦と調子が悪く、予選までに練習の意識を変えました。予選でも、走らなくてはいけないと思ってがつがつレースしました。
――練習の意識の変化とは
例えば、レースに対する臨み方だったり、コースのとり方だったり、自分が今までしていたことを一新して取り組みました。
――花岡航選手(創理2=京都・洛北)の印象
とても楽しいです(笑)。きょねんから、全日本ジュニアとブラジルのジュニアワールドに一緒に出ました。仲良くさせていただいていて、楽しく良いペアとしてやっています。
――決勝1日目を振り返って
1日目は、予選の流れで自分の中にある程度自信がありました。ミスをカバーして、順位をシングルに抑えることができました。ミスはあったものの、自分の中では成果が出たと思います。
――2日目はスナイプチーム全体として不調でしたが
僕のせいです。課題を克服しきれていないところがありました。ワセダは強風だと他大よりもスピードがあって、アドバンテージがあるのですが、微風や中風になってくると、他大も走れるため、コース引きなどそれ以外のところで差を出さなければいけません。そこが弱かったです。日大はそこが上手くて、この点が日大に離されてしまったり、個人の成績が安定しなかったりする原因になってしまいました。
――今大会、日大との差は何でしょうか
日大のスナイプはきょねんから変わっていなくて、スタートが安定しています。ワセダはスタートで出られれば調子が良いのですが、スタートが出られなかったり、そうした時のリカバリーが上手くいかなかったりすることが頻繁にありました。
――見つかったご自身の課題は
リカバリーと、対艇に関する考え方です。ヨットは風をつかまえて走りますが、そこに多大の動きだったり、対相手の意識を持つことが弱いです。そこをもっと詰めていかなければいけないと思います。
――関東個人選手権への意気込みをお願いします。
優勝します。
470級スキッパー岡田奎樹(スポ1=佐賀・唐津西)
――ワセダのヨット部に入られたきっかけは
ワセダはヨットの強豪です。僕は大学でもヨットを続けたかったので、どこに進もうか考えたとき、候補に挙がりました。さらに、僕の2つ上に小泉颯作選手(スポ3=山口・光)がいて、うまい方なので、一緒に練習することで僕のスキルアップも目指せると思いました。4年生で速い人は他の大学にもいますが、4年生は一緒に練習できる時間が短いため、3年生で速い選手がいるところを選びました。さらに、ワセダは練習量が多いです。やはり、練習をしないと勝てないため、ワセダに来ました。
――初の公式戦の感想は
思った以上に走れました。僕は1年生なので、プレッシャーなどもなく、気持ちよく走ることができました。それがもっと、全日本学生選手権とかになれば緊張すると思うので、そのときにどうなるかですね。今回は、結果だけ見れば良かったと思います。
――大学でのヨットは、高校までと比べていかがですか
種目自体が変わりました。高校ではFJ級と420級があったのですが、大学で470級になって、まだ感覚というものがつかめていません。高校生は、基本的にインターハイでFJ級に乗りますが、僕の高校は世界大会を目指していたので420級に乗せてくれました。470級はそれにセールの形が少し変わってきたような形なので、慣れるのは早かったです。
――ワセダの練習にはいつから参加なさっていたのですか
こちらには高校3年の2月からお世話になっていました。一回卒業式で抜けましたが、そこからです。
――4年間の抱負をお聞かせください
4年間全てインカレ優勝したいです。
――今回ペアだった原海志選手(創理3=東京・早実)の印象
僕と全く対照的な性格です。僕は結構ふざけていますが、すごく真面目でこつこつと積み上げていく先輩です。頼れますし、話しやすい先輩です。ヨットのときも、風を探すのが早くて、コースもコミュニケーションもとれますし、僕も乗りやすいです。
――いつごろからペアを組まれているのですか
レギュラーが決まってからなので、1か月くらいです。
――予選を振り返って
予選は失敗しました。スタートが悪くて、先輩たちが他の艇を抑えてくれました。他大の艇がスピードを出せないようにして、僕を前に出してくれました。予選では色々勉強させてもらって、予選で経験したことを、本選では失敗しないように走りました。
――今大会のレースを振り返って、チームとしての日大との差は
本選は予選と違ってレベルが上がっているので、3艇がまとまって走ることができませんでした。そのようなばらばらになったときに、日大は3艇まとまって上位に来ます。その時に1対3という形になって、負けてしまいます。3艇まとまってコースをとれるかというところが、日大との差だと思います。あとはやっぱり、僕の経験が浅くて、結構足を引っ張っていると思います。僕がもっと全日本のレース形式に慣れていかなければいけないと思います。
――高校の頃とはレベルが違いますか
同じ世代がずっと上がっていくので、レベルに大きな差はありません。インターハイはほとんど一人で、ソロ競技ですが、大学は470級3艇、スナイプ級3艇の合計点で争います。全体をどうやって上げていくかというゲームづくりにまだ慣れません。今までずっと自分のことだけをしてきたので。
――今大会で見つかったご自身の課題は
全部ですね。スタートも悪かったです。たまたまクルーの人に助けてもらいながらコースも良いところがとれて、後はフリー、ランニングのときに僕がとったコースが悪くて、もっと良いコースをとれたら良かったです。さらに、ターンも他の艇との差が出てしまったので、この後練習していきたいです。
――関東個人選手権へ向けての意気込みをお願いします
僕が出られるのでしたら、優勝したいですね。