2ペアが入賞、最終日に明暗分かれる

ヨット

 全日本学生選手権(全日本インカレ)前、最後の全日本級の大会に挑んだ早大ヨット部。全国各地の強豪がひしめく中、470級、スナイプ級共に1ペアが6位入賞を果たす。両種目共に似た結果に終わったものの、そこにたどり着くまでの過程は全く異なるものであった。

★入賞するもベストな走りを見せられず(470級)

惜しくも優勝を逃した小泉(左)・槌谷組

 愛知県の海陽ヨットハーバーで行われた全日本個人選手権(全日本個選)。2日目まで暫定1位だった小泉颯作(スポ2=山口・光)・槌谷祥吾(商3=東京・早実)組は最終日に失速したものの6位入賞を果たす。さらに山口祥世(スポ4=長崎工)・谷口諒介(文講4=東京・桐朋)/谷口柚香(スポ4=長崎工)組が8位、山口優(スポ3=佐賀・唐津西)・石原裕太主将(文講4=東京・早大学院)組が24位という結果に終わった。
 風の影響等でコンディショニング面において難しい大会となったことしの全日本個選。「平常心のままレースに臨むことが難しかった」(石原)と、予測に反する風が吹いたことにより早大は思うようにレースを進められない。小泉・槌谷組が7、4、2、2位と2日目まで安定した走りを見せ、優勝は確実かと思われたが、最終日に艇のトラブル等の影響でベストな走りを見せられなかった。しかし早大は2日目のレースで全てワンツーフィニッシュを決めるなど、他の強豪校にも引けを取らない強さも見せた。
 「勝つためには大きく崩さないことが重要」(山口祥)。選手たちは今大会で自分たちに足りなかったものをしっかりと分析し、全日本インカレへ意識を向けていた。「調子は全く悪くない」(石原)。『チーム力』で3年ぶりに頂を奪還することは、いまの早大には決して難しいことではない。2カ月後の笑顔のために、エンジのセーラーたちはとどまることなく突き進む。

(記事 近藤廉一郎、写真 細矢大帆)

★巻き返しに成功し入賞を獲得(スナイプ級)

惜しくも優勝を逃した小泉(左)・槌谷組

 11月の全日本学生選手権へ向けて大事な一戦となる今大会、スナイプ級からは3艇が出場した。「個人選手権でもチームで走る」と桐岡洋平副将(社4=東京・早大学院)が語るように、3艇全てが10位以内に入ることを目標に臨んだ早大。関学大など強豪がひしめく中で桐岡・櫛田佳佑(社3=東京・早大学院)組が6位入賞を飾り、平川竜也(スポ1=神奈川・逗子開成)・三ツ木駿(スポ4=東京・明学東村山)組が7位につけるも、島本拓哉(スポ2=千葉・磯辺)・花岡航(創理2=京都・洛北)組は18位と惜しくも目標に届かなかった。1日目は桐岡・櫛田組が第1レースを1位で通過するも、次のレースでリコール(※1)を取る痛恨のミス。しかしそこからの立て直しに成功し、他艇が伸び悩んだ最終日に全レース2着でのフィニッシュを決め、入賞圏内に食い込んだ。
 今大会で見つかった課題について、スナイプ級リーダー三ツ木は「第一線でしっかりフレッシュ(※2)を受けられるようなスタート」と「安定したボートスピード」を挙げた。早大ヨット部悲願の全日本インカレ優勝には、スナイプ級全体のさらなる躍動が不可欠だ。荒波を乗り越え、学生ヨット最高峰の舞台がエンジに染まる日も近いだろう。

(記事 丸山美帆、写真 細矢大帆)

※1 スタート信号前にスタートラインを越えてしまうこと
※2 他艇に風を遮られない状況のこと

結果

▽470級

小泉颯作・槌谷祥吾組:6位入賞

山口祥世・谷口諒介/谷口柚香組:8位

山口優・石原裕太組:24位

▽スナイプ級

桐岡洋平・櫛田佳佑組:6位入賞

平川竜也・三ツ木駿組:7位

島本拓哉・花岡航組:18位

コメント

470級スキッパー山口祥世(スポ4=長崎工)

――今大会を振り返っていかがでしたか

1日目の1レース目で大きく崩してしまったことが今回の大きな反省です。これから全日本インカレで戦う上でも1日目は大切なので、そこを改善したかったですね。

――470級のリーダーとして臨んだ今大会、チーム全体の印象はいかがですか

3艇とも今回大きく崩してしまっているのですが、全日本インカレで勝つためには大きく崩さないことが重要になってくるので、崩さないレースをしていきたいです。

――チームの今大会の結果についてはいかがですか

小泉艇、私たちの乗っていた艇は優勝を狙える位置にいたのですが、そこで崩してしまい、負けてしまったことが心残りです。

――どのようなことを改善すれば優勝に一歩でも近づけると思いますか

やはり、今大会で分かったのは470級だったら日経大が技術的には上回っているのですが、それを見て、自分たちの劣っている部分を再確認できました。メンタル的な部分でも、1日目の1レース目で崩し、それを立て直せなかった人たちがほとんどなので、もっと切り替えていかなければ勝てないと思います。

――全日本女子インカレ(全日本女子学生選手権)、全日本インカレに向けて意気込みをお願いします

全日本女子インカレは女子部だけの遠征になるのですが、そこで2カ月後の全日本インカレにつながるレースをしていきたいです。

スナイプ級クルー三ツ木駿(スポ4=東京・明学東村山)

―今大会のスナイプ級全体の目標は何ですか

3艇がまとまって10位以内に入ることが目標でした。結果的には良い面と悪い面がありましたが、やはり他大と比べたときに関学大や慶大も上位に入賞しているので、自分たちはまだまだだなという感じがします。

――1日目と2日目の個人の走りとスナイプ級全体を振り返って

今大会は軽風が中心だったのですが、その中でいかにボートスピードを出してスタート第一線でフレッシュを受けられるかというのがカギだったと思います。やはり3艇まとまってボートスピードがいいという瞬間はなくて、まだばらつきがあったりするため、その辺りが良くなかったです。自分たちはボートスピードに関しては割と良かったのですが、やはり46艇の中でどういうコースを引くのかというのはまだまだ考えていかなくてはいけないと思います。

――最終日である3日目を振り返って

きょうは風向が西の方で自分たちにとってはすごく難しかったです。きょうの1レース目で30番をとってしまったので、スタートを失敗した後どうやって上げていくのかをもっと考えていかなければいけないと思います。

――今大会で見つかった課題はありますか

平川との個人的な課題はやはり第一線でしっかりフレッシュを受けられるようなスタートをしなくてはいけないのと、スタートを失敗したときにすぐに見切りをつけて逃げるというのがありました。スナイプ級3艇の課題としては、今大会は出場するのが46艇でしたが全日本インカレでは72艇とさらに艇数が増えるので、スタートがさらに重要になってきます。さらに軽風が予想される西宮でインカレが開催されるため、そこでの安定したボートスピードというのは3艇獲得しなくてはいけないと思います。

――今回の結果を踏まえて全日本インカレへ向けての意気込みをお願いします

桐岡が6位入賞したというのもすごく励みになりますし、自分のチームの中に入賞した人がいるというのはすごく良い点だと思います。まずは総合優勝のためにスナイプ級が3艇まとまって安定した順位を取ることが重要です。これからジュニアワールドという大会があって、島本と平川がブラジルに行くため、そちらでも世界のレベルを知ってもらいたいです。さらにそこでいろいろな人と関わって実力を上げてもらいたいなと思います。スナイプ級はまだまだ伸びるところがあるので、これからも向上心をなくさず、どんどん上を目指していきたいです。

470級クルー石原裕太主将(文構4=東京・早大学院)

――今大会のご自身の結果を振り返って

結果に上下があって、調子のいいときと悪いときのレースの結果がはっきりと出てしまいましたが、調子がいい状態でレースに臨めば全日本級の大会でも戦えるということがわかりました。

――風の影響等でコンディショニング面において難しい大会となりましたが

強風が予想されるこの海陽ヨットハーバーで微風のレースが続いて、自分の考えとは違う風が吹いていた時に平常心のままレースに臨むことが難しかったです。

――ワセダ全体の結果を振り返って

先ほど自分が話した反省がチーム全体の反省にもつながってきますが、チームの調子がいいときのレースでは上位を取れましたが、チームの状態が悪いときは(個選であっても)他の大学に前を取られてしまっていて…。今後は技術はもちろんのこと、自分のベストな走りを3艇それぞれがいかに出すかが重要になってくると感じました。

――関東個選(関東学生個人選手権)の時はチーム力で戦うと語っていただきましたが、全日本個選も同じような意識を持っていましたか

はい、そうですね。全日本インカレ前最後の全日本級のレースだったので、個選というイメージを捨てて、他の大学とチームとしてどのくらい開きがあるのかを確認しようと意識して臨みました。

――全日本インカレを戦う上で、いまのワセダに足りない点は

シーズンが始まってからずっと言い続けていることですが、1レース1レース自分のやるべきことをしっかりやれば、全日本インカレの結果も望めるチーム状態だとは思っているので、やるべきことをしっかりやることが全日本インカレのカギになると思います。

――現在の調子は決して悪くないという認識でよろしいでしょうか

はい、全く悪くないです。

――今後への抱負を

2か月後には西宮という地で全日本の優勝する大学が決まっています。そこにワセダの名前を刻めるように部員全員で頂を奪いにいきたいと思います。

470級スキッパー小泉颯作(スポ2=山口・光)

――3日間お疲れ様です

ありがとうございます

――いまの率直な気持ちを教えてください

2日目まで暫定1位だったのですが、きょうの2レースで1位から6位まで落ちてしまったのと船のトラブルがあったのがもったいなかったです。

――3日間のレースを振り返っていかがでしたか

きょねんはかなり苦戦してどこまでいけるか全く分かりませんでした。ことしはとにかく自分のやるべきことをしっかりやっていけたと思うのですが、最終日でちょっと崩してしまったのでまだまだだったと思います。

――今後の課題は何ですか

風が吹いてくる前まではスピードとかも速くて全国でも戦えているのですが、風が上がってくると若干きついので、これから苦手な風域をなくしていって全日本インカレと来年のこの全日本個選で優勝できるように一年間頑張ろうと思います。

――全日本インカレに向けて抱負をお願いします

いまの4年生に2年間お世話になっているのもあって、最後このチームでしっかり勝てるように残りの4年生と一緒にできる期間は短いですがしっかり頑張っていこうと思います。c

スナイプ級スキッパー桐岡洋平(社学4=東京・早大学院)

――3日間のレースを振り返っていかがですか

自分の甘さが出てしまったレースが結構ありました。今回の大会ではカットレースで救われて入賞を果たすことができたのですが、全日本インカレではカットレースがなく、ミスが出たときにチームに影響が出てしまうので、『英語』をたたかないということを次回からの課題にしたいと思います。

――初日の第1レースが1着と、いいスタートが切れました

初めて全日本個選に出られて、その始めのレースで1番になれたのは素直に嬉しいです。

――最も印象に残っているレースはどのレースですか

1レース目もそうなんですが、やはり2レース目のリコールが印象深いです。絶対に『英語』をとってはいけないということを感じました。

――最終日は他の艇が伸び悩むなか、2レースとも2着でしたね

1日目・2日目と振るわない結果が続いてしまいました。3日目のきょうは、外に展開するということを課題にあげていました。クルーと話し合って実行できたことが順位を上げられた要因だと思っています。

――関東個選のときもチームで走ることを意識されていましたが今回はいかがですか

他大学は個人選手権という名につられて個人で走るという意識があると思います。自分たち早大は個人選手権でもチームで走るということを全日本個選でも掲げていて、それを実行できたのですが、スナイプ級では3艇ともシングルを目標としていたなかで1艇が崩してしまいました。そこの引き上げができれば、全日本インカレでは上位に食い込めるのではないかと思います。

――関東インカレと全日本インカレに向けて課題と意気込みをお願いします

今回は『英語』という絶対にやってはいけないことをしてしまったので、本番である全日本インカレでは、絶対に『英語』を取らないということを課題にあげたいと思います。また、個人としては、1番艇としてチームを引っ張っていけるような役割を果たしたいです。

スナイプ級クルー花岡航(創理2=京都・洛北)

――3日間のレースを振り返っていかがですか

思っていたより遅かったです。もっといい順位が取れたなと思います。大会期間中、スピードもなかったのですが、遅いスピード以上に順位が悪かったですね。遅いのにさらに落ち込んで順位がとれないというスパイラルにはまって、3日間結局抜け出せないまま終わりました。悔いが残ります。

――全6レースの中で最も印象に残っているレースは

2日目の1レース目です。風が振れてノーレースになりました。僕たちの艇は遥か彼方に行ってしまって、最後から何番目かでマーク回航しました。蒲郡は風が振れやすいんです。いいときだと風が振れる方に自分たちの艇がいるんですけど、悪いときだと、まったく違う方にいて、自然にさえ見放されるような感じでした。

――全日本の大舞台は初めてでしたが、プレッシャーはありましたか

注目されてないので、のびのび自由にできました。

――2年生ペアでしたが、島本選手とのコミュニケーションはうまくとれましたか

遅いと2人とも気持ちが落ちちゃいましたね。スキッパーの島本は遅いと落ち込んでしまうタイプです。僕が声をかけられればいいのですが、僕も気持ちが落ちちゃうタイプなので、コミュニケーションはあまり取れなかったです。レース中も会話がなかったので、そこを直していきたいと思います。いまの課題です。

――関東インカレと全日本インカレに向けての課題と意気込みをお願いします

インカレは団体戦です。僕たちが遅くて落ち込んでいるのが自分たちだけではなくてチームに返ってしまいます。切り替えて、チームのために走れるように頑張りたいと思います。