関東大学対抗戦 12月7日 対明大 国立競技場

にじり寄った。試合を振り返って見れば、明大のトライは3つだったのに対し、早大は1。しかしながら、CTB野中健吾主将(スポ4=東海大大阪仰星)の正確なペナルティーキックで常に明大を射程圏内にとどめた。しかし、最後の一押しが足りなかった。捉え続けた背中を追い抜くための決定的なトライを生むことができなかったのだ。前半は先制に成功するも、すぐに明大に得点を許す。10ー10という緊張感のあるゲーム展開で後半を迎えた。優勝を決する40分、早大はPGで明大に詰め寄りながら逆転の隙を虎視眈々と狙う。しかし、ノーサイドまでに逆転のトライを挙げることはできず、悔しい敗北となった。2敗を喫し、3位で終えた関東大学対抗戦(対抗戦)。昨年とは異なる、負けて臨む全国大学選手権(大学選手権)の景色はどうチーム野中に影響を与えるのだろうか。

PGを決めるCTB野中
試合前から国立には早稲田コール、明治コールが響き渡る。早明戦らしい異様な雰囲気の中、明大のキックオフで第101回の伝統の一戦が始まった。キックを蹴り合う固い展開のなか、先手を取ったのは早大。6分、自陣マイボールスクラムでコラプシングの反則を奪うと、敵陣に侵入。さらに8分にもスクラムで反則を誘い、一気にゴール前へ。ここではチャンスを生かせないが、13分にSO服部亮太(スポ2=佐賀工)の好キックで50:22に成功。敵陣でのプレータイムを伸ばした早大はいよいよ得点を生み出す。17分、ラインアウトのアタックから素早くパスを回すと、ボールはFB矢崎由高(スポ3=神奈川・桐蔭学園)のもとへ。細かなステップでディフェンスを崩すと、自らインゴールを駆け抜けた。すぐに明大にPGで3点を返されたものの、早大らしい連続攻撃で反則を奪い、選択したのはショット。野中が確実に決め、スコアを10ー3とした。しかし30分、ラインアウトモールからボールをインゴールにねじ込まれる。平翔太(明大)のキックも成功し、10ー10という均衡したゲームはそのまま40分を迎え、ハーフタイムへと突入した。

ラインブレイクするFB矢崎
優勝を決する勝負の後半。またも先にチャンスを生み出したのは早大。服部の鋭いステップでラインブレイクすると、PR杉本安伊朗(スポ3=東京・国学院久我山)、矢崎、LO新井瑛大(教3=大阪桐蔭)が力強くゲインし、一気にゴール前へ。インゴールにボールをグラウンディングすることは叶わなかったが、アドバンテージを得ていた早大は得点機を継続する。巧みなパスワークで見事にディフェンスのギャップを突き、矢崎がインゴールに飛び込んだ。しかし、判定はオブストラクション。得点は認められず、スコアは10ー10のまま。チャンスから一転、キック処理でミスが出た早大に明大が一気に襲い掛かる。自陣深くでチャージされると、ボールはそのまま紫紺のジャージに。後半最初のトライを奪われることとなった。重戦車相手にスクラムで反則を何度も獲得するなど、確実に明大を押し込んでいた早大。しかし、アタックのミスから後退を余儀なくされるとPGで3点を重ねられ、10ー18と点差は8点に広がった。「追っている場合なら7点差以内に持っていくというのは大事なセオリー」と大田尾竜彦監督(平 16 人卒=佐賀工)が述べたように、敵陣での長い笛は野中の正確なキックで3点に変え、明大の背中を常に捉え続けた早大。2本のPGを決め、2点差にまで詰め寄ると試合は残り15分。時間を考えると、次のトライが試合の結果を大きく左右することは間違いなかった。そんな重要な局面を制したのは明大だった。モールを押し込み、手を伸ばした先は早大のトライライン。難しい角度のキックも決まり、16ー25と今試合最も大きな点差をつけられた。早大はすぐにPGを沈め、6点差に詰め寄る。早大が欲しかったのはここまで奪われてきたリードを一発でひっくり返すトライ。ノータイムを迎え、早大は中央で獲得したハイタックルのペナルティーをキックパスで再開。右ライン際から大きく展開したボールはWTB鈴木寛大(スポ3=岡山・倉敷)の手に渡り、迎えた最終局面はまさに昨年、早大がリードを守り切ったラストプレーの場面と重なるものがあった。ブレイクダウンでのノックフォワードの反則を取られ、優勝をこぼした早大。明大の歓喜の声とともに、ノーサイドの笛が鳴り響いた。

ライン際でゲインするWTB鈴木
「トライを取り切っていたらというシーンはいくつもあったと思う」。試合後の記者会見で大田尾監督は振り返った。帝京大には5点差で敗れ、明大には6点差での黒星となった。そのどちらも、1トライ1ゴールでひっくり返せる僅差の勝負での敗北。課題だけではなく、収穫の多い敗戦であったことは間違いない。しかし、もう敗北は許されない。負ければ引退のノックアウトステージは来週から始まる。決勝で敗れたあの日から走り続けてきたチーム野中。これまでの日々の努力を肯定するために、今日の敗北を肯定するために、早大は最終局面へと向かう。
(記事:村上結太、写真:植村晧大、清水浬央、大林祐太、伊藤文音)
コメント
◆大田尾竜彦監督(平 16 人卒=佐賀工)
ーー今日の試合を振り返っていかがですか
今日はたくさんの観客の方々に来ていただいて、 101回目の早明戦らしい非常に緊張感のあるゲームを両校の学生がしてくれたのではないかなと思っています。試合は明大さんが勝ちましたし、対抗戦も優勝されたので、そこは素直におめでとうと思います。我々は今までやってきたことの精度を高めて、選手権に優勝できるように明日からまたやっていきたいなと思います。
ーー選手権に向けてはかなり手応えの感じる場面もあったかと思いますが、いかがですか
一年で振り返ってみると、春季大会で明大さんに30点差ぐらいで力負けだったわけですが、そういう長い目で見ると今日はあの点差を縮められていて、その要因としてはやっぱりスクラムとブレイクダウンの安定ですね。やや固いゲームになってしまったかなという印象ですが、選手たちは本当によくやってくれたと思いますし、選手の成長を非常に感じる一戦だったかなと思います。来週から選手権も始まりますが、しっかりと準備してなんとかまた国立に戻ってきたいなと思います。
ーー固いゲームになってしまったとお話がありましたが、具体的にどういう感触だったのか、本来はどういうゲームにしたかったのかを教えてください
やっぱりキック合戦に付き合うところは付き合っていくのですが、もう少し判断の中で行けるところは思い切って大胆に行ってもいいかなと思っていて、後半は強気で行くようにという指示をしました。本当にたらればですが、トライを取り切ってたらというシーンはいくつもあったと思いますし、そこまでは来てると思うので、その回数をいかに増やせるかが重要だなと思います。スクラムもラインアウトも非常によくやってくれたと思うので、そういうものをあのをベースにもっともっとアグレッシブなゲームをしたいなと思います。
ーー適陣に入ってのペナルティーでショットを選択する場面が多かったかなと思いますが、実際に固い展開になってしまったとお話があったようにそのショットの選択というのは、外から見られてどのように感じられていましたか
戦前から点差がつくような試合にはならないだろうなという思っていましたので、得点を7プラス1の領域に持っていくか、追っている場合なら7点差以内に持っていくというのは非常に大事なセオリーだと思いますし、ショットの選択は問題なかったかなと思います。ワンチャンスで最後もトライを取ってショットが入ればというところだったので、今日のペナルティーの判断については、そんなに間違っていないのかなという風に思って見ていました。
◆CTB野中健吾主将(スポ4=東海大大阪仰星)

ーー今日の試合を振り返っていかがですか
負けてしまいましたが、まだ終わっていないので『荒ぶる』まで残り一戦一戦、チーム一丸となって戦っていきたいなと思います。
ーー得点を取るチャンスはたくさん作っていたと思いますが、あともう一歩で取り切れなかったのはどういう部分が課題としてありますか
本当に自分たちの精度だなと思います。相手どうこうというよりも、自分たちの精度にいかにこだわってこれからやれるかが一番重要かなと思います。自分たちにフォーカスを当ててやってきたいなと思います。
ーー最後のペナルティーをタッチキックせずに、タップで再開したあの時の判断を教えてください
外側にスペースがあるというのが聞こえていたのと自分たちもしっかりそこに反応するオプションがあるので、そういった選択を取りました。
ーーチャンスで自分たちの精度が足りなかったというお話がありましたが、要因としては明大のディフェンスが良かったのか、自分たちの何かが足りなかったからなのか、どのようにお考えでしょうか
敵がいるスポーツなので、やっぱり自分たちが取れると思っていても取れないところもあると思うので、自分たちは我慢しながらアタックし続けるというところはこれからフォーカスしていかなければなと思います。
◆PR杉本安伊朗(スポ3=東京・国学院久我山)

ーー今日の試合はどのような思いで臨みましたか
対抗戦の優勝がかかった試合だったので、中今までやってきたことを出し切れば勝てると思い臨みました。
ーーどのようなプレーを意識していましたか
ブレイクダウンの精度とスクラムを意識していました。
ーースクラムの手応えはいかがでしたか
8人でまとまって組むことが試合を通して出来て、優位に立つことができたのでいい感触でした。
ーーアタックでのハンドリングエラーが多かったですが、どんな課題が挙げられますか
フォワード間でのコミュニケーションと早いリアクションがもっと必要かなと思います。
ーー来週からの大学選手権に向けて意気込みをお願いします
負けたら終わりの試合が始まるので、もっとプレーの精度にこだわり、優勝に向けて頑張りたいと思います。
◆LO栗田文介(スポ4=愛知・千種)

ーー今試合にどのような思いで臨みましたか
ラストの早明戦っていうのと、対抗戦優勝がかかった大事な試合っていうことで、絶対勝つんだっていう気持ちで臨んだんですけど、こういう結果になって、ほんと悔しいです。
ーーどのようなプレーを意識していましたか
やっぱり自分の得意なコリジョンバトル、をゲームテーマに今回も掲げて、自分が先頭に立ってコリジョンバトル引っ張っていくっていうのを意識してやりました。
ーーコンタクトの手応えはいかがでしたか
キャリーでも前に出れた部分はあったし、タックルも刺さった部分あったんですけど、やっぱり重要な部分であと1歩、2歩出なかったっていうのは個人的にちょっと悔しかったなと思います。
ーートライを取り切れないシーンもありましたが、どんな課題が挙げられますか
やっぱり22メートルラインに入って目前に迫ってる中で、反則であったりノックオンであったり、そういったミスが続いてしまった。そこを修正できなかったっていうのが本当に今回の課題だと思います。
ーー来週からの選手権に向け意気込みをお願いします
今日の敗戦は悔しかったんですけど、もう切り替えても来週の関学大戦に向けてしっかり明日からいい準備して、必ず優勝します。
◆NO・8松沼寛治(スポ3=東海大大阪仰星)

ーー悪い流れからの出場でしたが、どんな思いで臨まれましたか
今シーズンはリザーブからの出場が多い中で、チームの厳しい状況を打開するような勢いが求められていると思います。そこはよかったのですが、勝ち切れなかったのが課題だと思います。
ーー力強いゲインも見られましたが、今試合の手応えはいかがですか
チームとしては負けのきっかけになるプレーがたくさんあったので、そこは直すべき点だと思いますし、手応えはそこまでよくないのかなと思います。
ーートライを取り切れないシーンもありましたが、どんな課題が挙げられますか
レフリングもいろいろとあるんですけど、ペナルティーが重なってしまって、自分たちがやりたいことができなかったのが課題なのかなと思います。
ーー久しぶりの国立での早明戦でしたが、いかがでしたか
1年生以来の国立での早明戦ということで、去年はいろいろあって出場できなくて、この舞台に戻ってきたいと強く思っていました。そういう点ではその舞台に立てたのはよかったのですが、もっとチームのためにどういうことをすればいいのかを考えていきたいと思います。
ーー来週からの選手権に向け、意気込みをお願いします
負けたら終わりなので、大好きな4年生と1試合でも長くプレーできるように、健吾さんや大田尾さんをど上げできるように自分の持ってるものを全て出し切ります。
◆SH糸瀬真周(スポ4=福岡・修猷館)

ーー今試合にどのような思いで臨みましたか
優勝がかかってたし、ここで勝つと負けるじゃ組み合わせも全然違うので、なにがなんでも勝ち切るってところを意識していたんですけど、だめでした。
ーーどのようなプレーを意識していましたか
基本的には早稲田のスクラムハーフとして亮太にいいパスを渡し、捌き続けるっていうのを意識していました。
ーーアタックではどんな手応えがありましたか
自分たちが継続してボールを持った時は外にスペースがあり、ゲインしてたのでアタックは通用してたと思います。そもそもアタックの時間が短くディフェンスは苦しかったので、そういったところも敗因かなと思います。
ーー率直に敗因はなんだと思いますか
前半は10ー10のフラットで折り返した後、後半の一発にいってやろうと話していました。やはりキックチャージからのトライだったり、流れを手寄せることができなくて、要所要所で自分たちのミスから流れがいってしまったのが、最後まで取り返せなかったなという印象です。
ーー来週からの選手権に向け、意気込みをお願いします
厳しい山に入ったことはもちろんわかってますし、やるしかないっていうのはもちろんそうなんですけど、一試合一試合負けたら終わりっていうその緊張感を持って、絶対もう一回明治の決勝でやるために死ぬ気で戦うだけなんで。気合入れて臨みたいなと思ってます。
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