【ラグビー】102回目の早慶戦で手堅い勝利 対抗戦首位を守り、早明戦へ

ラグビー男子

関東大学対抗戦 11月23日 対慶大 秩父宮ラグビー場

 赤と黄、二色の紅葉に彩られた神宮外苑の景色を背に、秩父宮ラグビー場で赤黒と黒黄を身にまとった戦士たちが102回目を迎える伝統の一戦に臨んだ。前節で接戦の末に敗北している者同士、今節は絶対に負けられない。前半から主導権を握る早大は豊富な引き出しから多彩な攻撃を繰り出す。FWがスクラムでプレッシャーをかけ、ボールを有利に支配したかと思えばキックパスを織り交ぜながらBKが慶大のディフェンスを翻弄(ほんろう)。先に2トライを挙げる。対する慶大も突き刺さるディフェンスやSH橋本弾介(慶大)の持ち出しでチャンスを作り反撃し、14-7。しかし勢いの衰えない早大は連続で3トライを奪い、35-7で試合を折り返した。変わって後半、息を吹き返した慶大が19分にはモール、26分には劇的なインターセプトから好機をものにし、35-21と追い上げる。これ以上差を縮められるわけにはいかない早大は途中出場の選手らが躍動し、2本を返すとスコアは49ー21。試合終盤にゴール前まで攻め込まれるも、ディフェンスでプライドを見せた早大がゴールを守り切り、ノーサイド。早慶戦は早大に軍配が上がった。

コンバージョンキックを蹴るCTB野中

 天高く蹴り上げられたキックオフのボールは慶大の胸に収まらず、いきなりファーストスクラムとなる。ここでフリーキックを得た早大はクイックスタートでチャンスを演出するが、ボールを失ってしまう。しかし5分、慶大ゴール前での相手ボールスクラムで組まれたと同時にFWが押し切ってペナルティーを獲得。早大の選手たちの咆哮が響き渡る。再度チャンスを得た早大はラインアウトからモールで押し込み、最後はHO清水健伸(スポ3=東京・国学院久我山)がグラウンディング。今試合初の得点を挙げる。10分には慶大に攻め込まれるもWTB山下恵士朗(スポ2=早稲田佐賀)がチームを救うスティール。相手のノットリリースザボールを誘う。マイボールラインアウトを獲得した早大は外に展開。CTB福島秀法(スポ4=福岡・修猷館)が芸術的なオフロードでボールをつなぐとFB矢崎由高(スポ3=神奈川・桐蔭学園)がゲインする。すると一気に逆サイドへとSО服部亮太(スポ2=佐賀工)がロングパス。福島とNO・8粟飯原謙(スポ4=神奈川・桐蔭学園)でパスをつなぎ大外にトライした。対する慶大は14分に早大陣内でラインアウトを獲得するとモールで前進。そこから左に展開していき、最後は橋本が持ち込み、NO・8中野誠章(慶大)に早大ゴールをこじ開けられた。それでも攻撃の手を緩めない早大はマイボールラインアウトからフェーズを重ね、魂のタックルをはねのけながら前進。服部が一つステップを挟み、走りこんできたLO栗田文介(スポ4=愛知・千種)がインゴールに飛び込んだ。勢いに乗る早大は25分にはモールから、37分にはラインアウトのサインプレーから清水がトライを奪い、ハットトリック。35-7で前半を折り返す。

スクラムでペナルティーを獲得し、雄叫びを上げるHO清水

 後半に入り、流れを渡したくない早大だったがキックオフ直後、自陣深くでノックフォワードをしてしまう。いきなりピンチを迎えてしまうが、ここは矢崎のスティールが光った。その後は互いに好機を生み出しながらもミスやディフェンスの圧で得点につながらない時間が続く。13分には交代で入ったPR平山風希(スポ1=大分東明) が力強いキャリーで突破し、敵陣深くまで攻め込むも決定機を作れない。この膠着状態に終止符を打ったのは慶大だった。19分に敵陣22mライン上でラインアウトを獲得するとモールを形成。早大を後退させると、大きくボールを展開して左隅にトライを挙げた。ここから慶大がギアを上げると、26分にはCTB野中健吾主将(スポ4=東海大大阪仰星)が放ったロングパスをインターセプト。独走トライを献上してしまい、後半無得点の早大は35-21と慶大の猛追を受ける。突き放したい早大はすぐさま平山などの突破を重ね、ゴール前まで攻め込む。力と力のぶつかり合いとなるが、この裏を突いたSH川端隆馬(スポ1=大阪桐蔭)が持ち込んでゴールをたたき割った。続く36分にも得点し、点差を戻した。負けられない慶大は獲得したペナルティーからクイックで仕掛け、じりじりと早大インゴールへと攻め込む。乱れ打ちのようなアタックから再度ペナルティーを誘うとゴール前でのラインアウトを得てラストワンプレー。BKも入ったモールで執念のトライを狙うも早大が守り切り、49-21でノーサイドの笛。拍手が鳴り響く秩父宮には勝利した早大サイドから真っ赤な夕陽が降り注いだ。

ディフェンスに仕掛けるPR平山

 対抗戦優勝に向けて手堅い勝利をつかんだ早大。お互いの早慶戦にかける想いが伝わり、長所を前面に出し合う試合となった。次戦はついに宿敵・明大との一戦。対抗戦優勝が決する事実上の決勝戦だ。FW・BKの完成度の高さを見せつけた早大が紫紺の壁を突破できるのか。全国大学選手権に向けた大きな一戦は、ついに目前に迫っている。

(記事:髙木颯人 写真:安藤香穂、植村晧大、伊藤文音、吉田さとみ)

コメント

※記者会見より一部抜粋

◆大田尾竜彦監督(平 16 人卒=佐賀工)

ーー今日の試合を振り返ってみていかがですか
 前節帝京大に敗戦してから球際とディスシプリンを課題に上げていました。3週間準備してきて、前半はいい圧力を与えることができたと思います。しかし、後半の入りにミスが続いてスコアできなかったことが課題で、非常によい経験をもらいました。

ーー前半のテーマはどんなものを意識していましたか
 前半は1対1の強さとセットプレーを意識していた。僕個人としては、帝京大戦で敗戦したあとどうプレーするか楽しみにしているということを伝えて試合を送り出しました。

ーー非常にいい収穫となった課題とはどういうものですか
 自分たちが判断する上で、個々の判断とチームの判断の配分だと思います。詳しくは話していないのでわかりませんが、個々の判断が勝っているような気がしていて。ボールをどこの位置に運ぶのかというところで、前半の方がよかったのかなと思います。後は22mラインを超えたあたりから一気に大きく回すといった、トライを狙いすぎたプレーが多かったかなと思っていて、着実なプレーを続けるほうがよかったと思います。

ーー早明戦に向けての意気込みをお願いします
 早明戦は対抗戦優勝決定戦になると思います。自分たちが持っているものを全てを出して、そのための準備をする。優勝するためにもう1回自分たちを見つめて、どう明治と戦ていくか考えていきたいです。

◆野中健吾主将(スポ4=東海大大阪仰星)

ーー今日の試合を振り返ってみていかがですか
 帝京大に負けてから自分たちのやるべきことを明確にして臨みました。前半よくて後半悪いといったわかりやすい結果でした。上井草で練習して次の試合に臨んでいきたいと思います。

ーー前半のテーマはどんなものを意識していましたか
 最初の10分にフォーカスして流れを自分たちにもってこれたと思います

ーーチーム的に後半のパフォーマンスはいかがですか
 自分たちの簡単なミスがあったのがいけなかったと思います。集中力を80分間続けることに課題はあると思います。

◆HO清水健伸(スポ3=東京・国学院久我山)

ーー早慶戦にはどのような思いで臨まれましたか
 伝統の一戦ということで、勝負にこだわることを考え続けていました。

ーースクラムで優位に立ちましたが、手応えはいかがでしたか
 慶応大学さんは力強いスクラムであるとは分かっていたので、自分たちから仕掛けることを意識していましたし、できた部分も多かったと思います。

ーーセットプレーの現時点での完成度はどのように感じていますか
 7割程度かなと感じていて、ディテールの部分をもっと詰めていきたいです。

ーーボールキャリーの回数も多かったと思いますが、コンタクトではどんな手応えがありましたか
 まだまだ足りないなという印象で、もっとFWを前に進めるように頑張りたいです。

ーー早明戦に向けて、意気込みをお願いします
 最終戦で重要な一戦になると思うので、絶対に勝つという一言をひたすら意識していきたいと思います。

◆LO栗田文介(スポ4=愛知・千種)

ーー早慶戦にはどのような思いで臨まれましたか
 伝統ある早慶戦という舞台で、自分は1年生から出させてもらっていて今回はラストイヤーということで、自分が引っ張るプレーをして活躍するんだという気持ちで試合に臨みました。

ーーどんなプレーを意識していましたか
 自分らしく強いプレーといったコリジョンのところにこだわってプレーしました。

ーー慶大の強烈なタックルを受けるシーンもありましたが、コンタクトの手応えや課題点を教えてください
 チームとして前半はいい入りができて、自分も前に出るプレーができたのですが、後半は慶大のブレイクダウンでプレッシャーを受けてしまったので、そこは修正して早明戦に臨みたいと思います。

ーーラストプレーではゴール前まで攻め込まれながらも得点を許しませんでしたが、今試合のディフェンスを振り返っていかがですか
 この試合はFWがチームを引っ張ろうということで、「FWプライド」をテーマに掲げて試合に臨みました。モールなど地味なプレーでも身体を張ることを試合前にも話していたので、その部分は最後まで一貫してできたのでよかったと思います。

ーー早明戦に向けて、意気込みをお願いします
 次の早明戦は勝って対抗戦優勝を決める大事な試合なので、上井草でしっかり準備して試合に臨みたいと思います。

◆NO・8粟飯原謙(スポ4=神奈川・桐蔭学園)

ーー早慶戦にはどのような思いで臨まれましたか
 伝統戦ということでプレッシャーのかかる一戦ではあったんですが、いったんそれは置いておいてFWの強みを前面に出せるように意識していました。

ーー校歌を歌っている時には感極まっている様子もありましたが、どんな思いでしたか
 前回の帝京大戦を経て、やはりFWで戦わなければならないとひしひし感じました。今日は慶大のFWとインファイトの部分で戦っていくぞということを決意していたことに加え、ノンメンバーの選手たちの思いも背負って戦うということを意識していました。

ーーアタックでは自分から仕掛ける場面も多く見られましたが、ボールキャリーの手応えや課題点はいかがですか
 球際のところは早稲田の課題としてきていたので、泥くさいプレーをもっとしていきたいと思います。

ーーラストプレーではゴール前まで攻め込まれながらも得点を許しませんでしたが、今試合のディフェンスを振り返っていかがですか
 規律のところで今日の試合は反則など課題が見えてきた中で、最後のプレーは自分たちの原点に立ち返ってFWのプライドを体現できたかなと思います。

ーー早明戦に向けて、意気込みをお願いします
 優勝がかかっているということで、みんな力がこもってしまうとは思うのですが、気楽に取り組みつつも部員全員で勝ちにいくという気持ちを国立の舞台で前面に出していきたいと思います。

◆CTB福島秀法(スポ4=福岡・修猷館)

ーー早慶戦にはどのような思いで臨まれましたか
 最後の早慶戦でしたし、祖母など家族も見に来ていたのでいつも以上に気合いが入った一戦でした。

ーーどんなプレーを意識していましたか
 コンタクトの部分を特に意識しており、アタックでもディフェンスでもチームを前に押し出すことを意識していました。

ーーアタックでは自分から仕掛ける場面も多く見られましたが、ボールキャリーの手応えや課題点はいかがですか
 オフロードパスは上手くつながった場面が多かったんですが、全てのコンタクトで前に出ることができた訳ではなかったのでそこは改善していきたいです。

ーー早明戦に向けて、意気込みをお願いします
 苦しい場面はあると思うのですが、チームでつながり続けて戦いたいと思います。

写真ギャラリー

ラックからボールを持ち出すSH糸瀬

力強くゲインするFL城

ディフェンスに仕掛けるPR杉本

タックラーを引きずりながらゲインするPR前田

ラックからパスするSH川端

メンバー表

星取表