関東大学対抗戦 10月11日 対筑波大 大和スポーツセンター競技場
雨の中にも関わらず、大和スポーツセンター競技場は満席であった。多くの観客が足を運んだのは全勝対決の行方を見届けるため。例年通り着実に白星を重ねる早大と対戦したのは明大、慶大を破って2連勝と波に乗る筑波大。対抗戦後半戦に向けて大きな意味を持つ一戦は早大に軍配が上がった。ペナルティーゴールによる先制点を許したが、『先手』というテーマを掲げていた早大はその後すぐに今試合最初のトライをマーク。3点を重ねながら点差をじわじわと広げ、20ー3でファーストハーフを終えた。続く後半はピンチを迎えながらも堅牢なディフェンスで筑波大をはね返し、連続トライで試合を決定づけると、39ー13でノーサイド。筑波大を下し、関東大学対抗戦(対抗戦)無傷の3連勝を飾った。

コンバージョンキックを蹴るCTB野中
筑波大の左足のキックオフで始まった今試合はいきなりターンオーバーを許し、早大は立ち上がりで痛恨のペナルティー。ショットを選択した筑波大は中盤からのキックを難なく決め、早大は0ー3と先制を許すかたちとなった。『先手』というテーマのもと、先にトライをマークし、試合を優位に進めたい早大はCTB福島秀法(スポ4=福岡・修猷館)とFB矢崎由高(スポ3=神奈川・桐蔭学園)の前進をきっかけに好機を得る。5分、敵陣相手ボールスクラムを一次攻撃でターンオーバーした早大はLO栗田文介(スポ4=愛知・千種)の豪快なラインブレイクでゴール前まで侵入。筑波大のペナルティーを誘い、今試合最初のトライチャンスへ。『One Shot』という部員たちの掛け声とともに開始されたラインアウトはスティールを許すものの、早大FW陣の間髪入れないプレッシャーで筑波大のボールキャリアーをインゴールへ運び込む。ラックからこぼれたボールをPR杉本安伊朗(スポ3=東京・国学院久我山)が抑え、今試合最初のトライを生み出した。続く14分、早大は敵陣10メートルライン付近で組んだマイボールスクラムを大きくプッシュ。筑波大スクラムを破壊しながら前進すると、BKラインのオフサイドを誘発した。グラウンド中央で得た反則をCTB野中健吾主将(スポ4=東海大大阪仰星)が3点へ変え、10ー3と着実に流れを掴む。その後もフェーズアタックでSH糸瀬真周(スポ4=福岡・修猷館)やWTB山下恵士朗(スポ2=早稲田佐賀)がラインブレイクに成功し、筑波大ディフェンスを崩しにかかる。敵陣で粘り強くFWがアタックを継続したことでノットロールアウェイの反則を得ると、早大が選択したのはまたもショット。さらに3点を追加し、点差を広げていく。30分にはPR前田麟太朗(スポ2=神奈川・桐蔭学園)が渾身のスティールでチャンスを創出するものの、ラインアウトのミスで得点に繋げることができない。逆に早大はここから2連続の反則で自陣22メートルラインまで戻されてしまう。モールを組まれ、ピンチを迎えた早大だったがこの窮地を救ったのはWTB田中健想(社2=神奈川・桐蔭学園)。強烈なタックルでターンオーバーに成功すると、矢崎がすぐに攻撃に転じ、中央でラインブレイク。矢崎からのキックパスをドリブルでインゴールまで持ち込んだ山下だったが、惜しくも筑波大のキャリーバックの判定。依然、早大のチャンスは続く。37分、ゴール前でのスクラムを得た早大は矢崎が二次攻撃で前進。タックルされながらもボールを離して再び立ち上がり、フィジカルの強さを見せつけながらトライラインを叩き割った。キックも決まり、20ー3で前半を終えた。

ラインブレイクするLO栗田
続く後半も先制点を挙げたのは筑波大。スクラムで早大は反則を犯し、ペナルティーゴールで3点を返された。中盤での激しいボールの奪い合いが続く中で11分、早大は自陣でのノックフォワードからピンチに陥る。筑波大にゴール前のラインアウトを献上し、モールを形成される。しかし、ここで光ったのは早大の見事な守備。「ブレイクダウンでプレッシャーをかけることができた」とFL田中勇成(教4=東京・早実)が振り返ったように、強烈なタックルと密集地帯での素早いリアクションでペナルティーを獲得。一気に陣地を回復して難を逃れた後の19分、LO新井瑛大(教3=大阪桐蔭)が守備の隙間に走り込み、インゴールをこじ開けた。続く25分にはスクラムで反則を奪い、流れを完全に奪った早大だったが、続くラインアウトのアタックで痛恨のノックフォワード。ボールを相手に渡してしまうものの、そのスクラムでFWがまたもペナルティーを獲得。攻撃のリズムに乗る早大は29分、前田の巧みなオフロードパスからインゴールに飛び込んだのはまたも矢崎だった。連続トライで34ー6とさらにリードを広げ、試合は残り10分となった。筑波大の再開のキックオフからノーホイッスルトライを許してしまった早大だったが、35分にはNO・8粟飯原謙(スポ4=神奈川・桐蔭学園)がインゴールを叩き割って勝負あり。39ー13と26点のリードを奪って全勝対決を制して見せた。

力強くゲインするLO新井
「相手の勢いに飲まれないように、自分たちにフォーカスして自分たちから仕掛けていこうと話した」と試合後の記者会見で野中主将が語ったように、容易にキックを蹴らず、積極的に攻撃を仕掛けてテンポをつかんでいった早大。先週行われた関東大学ジュニア選手権で東海大Bを相手に立ち上がりで苦戦を強いられたことも影響しているだろう。シーズン中に見つかった課題に正面から向き合い、修正を重ねていく姿勢は試合中にも表れていた。ラインアウトでプレッシャーを受けながらもスクラムとフェーズアタックを中心に立て直し、先制点を奪われながらも焦ることなくトライを量産した今試合の早大からはこれまで以上の安定感が見えた。『荒ぶる』へのピースを一つずつ集めながら、シーズンの深まりとともに完成度を高めていく早大。昨季掴めなかった栄光に向け、赤黒の戦士たちは歩みを止めない。
(記事:村上結太、写真:清水浬央、大林祐太、伊藤文音)
コメント
※記者会見から一部抜粋
◆大田尾竜彦監督(平 16 人卒=佐賀工)
ーー今試合の総括をお願いします
今日の試合のポイントは『先手を取る』ということでした。ゲームとしてはしっかり戦ってくれたと思うのですが、日本一を目指して行くうえで修正しなければならない課題がいくつもあるなといった印象です。しかしながら、非常に力のある筑波大学さんから勝ち点を取って勝つことができたことは評価できるので、勝って反省していきたいと思います。
ーーチームがひとつになれていなかったということに関して、詳しく教えてください
苦しくなるときのスタートは自分たちのエラーであったり、チームのルールから逸脱したプレーであることが多いと考えています。ひとつになれなかったというのはそういったプレーが特に後半にいくつかあったのかなという印象です。
ーーディフェンスの手ごたえについてはいかがですか
ディフェンスに関してはみんなも自信を持って取り組んでくれていると思いますし、特に抜かれた後の粘りのディフェンスというのは評価できるのではないかなと思います。リザーブの選手が入ったときにギャップのようなものが見えたので、23人誰が出ても強固なディフェンスをできるように強化していきたいと思います。
ーーセットプレーでプレッシャーを受けるシーンもありましたが、どのように感じていましたか
試合前から、スクラムでペナルティーを取られたり、ラインアウトをスティールされても引きずる必要はないと話していました。そこだけで勝負しているわけではなく、フェーズでも勝てる練習はしてきているので、逆にミスに引っ張られてメンタルが落ちていくことのほうが怖かったので、気にせず、やるべきことに集中しようとチームに話していました。
◆CTB野中健吾主将(スポ4=東海大大阪仰星)
ーー今試合の総括をお願いします
チームテーマとして『先手』を掲げた中での試合でしたが、80分間通してチームが一つになれていなかったことは課題だと思います。練習から大事にしていきたいです。
ーーチームがひとつになれていなかったということに関して、詳しく教えてください
チームのやるべきことを遂行する上で15人それぞれに役割があるのですが、その役割の遂行というところが上手くできていなかったと感じたので、修正ポイントだと感じています。
ーー抜かれた後のディフェンスについてどのような感触ですか
チームとしてのレベルも上がってきているなと率直に思いますが、トライを取られてしまっているので、ノートライで抑えるという意識は持っていかなければならないなと思います。
ーー今試合に臨む思いはこれまでの試合と異なりましたか
前回の2戦よりレベルが上がってくるなというのは感じていたので、チームとして自分たちから仕掛けようということを意識していました。
ーー勢いに乗っている相手に対して受けないようにするためにチームにどのような声かけを行いましたか
相手の勢いに飲まれないように、自分たちにフォーカスして自分たちから仕掛けていこうという話は練習から何度も伝えてきました。
ーーセットプレーでプレッシャーを受けるシーンもありましたが、チームでどのように修正しましたか
試合前からラインアウト、スクラムである程度のプレッシャーを受けるのはわかっていたので、目の前のミスからすぐに切り替えて対応していくことができたので、悪くなかったのではないかと思います。目の前のことに集中することはできたと思っています。
◆FL田中勇成(教4=東京・早実)
ーー今試合はどのような意識で試合に臨みましたか
先手を取るという部分で、自分たちから仕掛け続けることをテーマにしていました。
ーー勢いに乗っている筑波大を相手に、どのような試合運びを意識しましたか
相手にやられてからやるのではなく、自分たちからスタンダードを示すということを一週間言い続けてきて、良い練習ができたなと思います。
ーーゴール前のディフェンスが光るシーンもありましたが、振り返っていかがですか
1トライを取られてしまったので、そこはやっぱり自分たちに隙があったと思います。良い場面もありましたが、ノートライに抑えることが自分の役目だと思うので、特に後半のそういった部分を課題として次に生かしたいなと思います。
ーーチームとして、今試合のディフェンスの完成度はいかがでしたか
筑波大のアタックをしっかり研究して、対策もしてきたので、コミュニケーションという面では良かったかなと思います。また、自分たちが一番取りたい部分である、ブレイクダウンでもプレッシャーをかけられていたので、そこはすごく良い所がでたなと思います。
ーー具体的にはどのような対策をされましたか
すごく長いパスを放るとは分かっていたので、自分たちがみんなでしっかり出るということと、特に外側でもワンラインに出るということを意識してやりました。
ーー対抗戦後半戦に向けた意気込みをお願いします
次が青学大戦で、帝京大との試合ももうすぐなので、どの相手でも自分たちにフォーカスし続けて成長していきたいです。特にディフェンスは自分の役割だと思うので、コーチともコミュニケーションを取りながら、そこをもう一度整備し直していきたいと思います。
◆LO新井瑛大(教3=大阪桐蔭)
ーー今試合はどのような意識で試合に臨みましたか
チームとしては『先手』というのがゲームテーマで、全てのプレーに対して相手より先手を取って上回っていこうというのを意識して臨みました。
ーーLOでの起用でしたが、どんなことを意識しましたか
自分自身、PRとLOっていう全然違うポジションをやらしてもらっていて、自分の中ではいいことだと捉えています。難しいこともあるんですが二つできることでいい方に捉えて練習を頑張っています。
ーーボールキャリーで印象に残るプレーが多かったと思いますが、今試合の自身のアタックを振り返っていかがですか
チームとして上井草で練習してきたことをしっかり今日は試合で出せたかなと思います。
ーー今後の意気込みをお願いします
まだまだディフェンスの部分だったり、アタックもそうですけど、課題があるのでそれを上井草でしっかり修正して試合に臨みたいと思います。
◆SH糸瀬真周(スポ4=福岡・修猷館)
ーー高校の同期も所属する筑波大学との対戦でしたが、どんな思いで試合に臨みましたか
4年目という最後のシーズンで、陽冬(大内田、筑波大)とか幹志朗(楢本、筑波大)とか福岡の時から仲良かった子と試合するの初めてで楽しみでしたし、フィールドで目を合わせる時も含めてワクワクすることが多かったです。
ーー勢いに乗っている筑波大を相手に、どのような試合運びを意識しましたか
自分たちのゲームテーマが『先手』で、自分たちが先に受けて勢いづけられる前に最初の10分でへし折るというところを意識しました。
ーーアタックで特にこだわった点はありますか
早稲田は10番15番に走れる選手がいることが強みなので、自分が9番という立場で前を見ながら走る選手に預けるというところで、ラック回りでのパスを捌くスピードは意識していました。
ーー今後の意気込みをお願いします
3連勝している中、いいところも課題もあるので、毎試合成長して課題を修正しながら日本一に向けて頑張っていきたいです。
◆CTB福島秀法(スポ4=福岡・修猷館)
ーー高校の同期も所属する筑波大学との対戦でしたが、どのような思いで臨まれましたか
大学に入って初めてのマッチアップだったのですごく楽しみで、わくわくした気持ちで臨みました。
ーーアタックでゲイン奪うなど、攻撃の起点となるプレーが印象的でしたが今日の自身のプレーはいかがですか
自分的にはあまりいいプレーではなかったです。最後の隙の部分でノックオンしてしまったり、ランボールが雑だったりしたので次に向けてしっかりしないと行けないなと思います。
ーー今試合のディフェンスを振り返っていかがですか
自分が原因で2、3本ラインブレイクされてしまったので、もっと練習しないとだめだの感じました。
ーー今後の意気込みをお願いします
会場のファンの方からの『One Shot』のコールで後押しされて勇気づけられたので、プレーと勝利で恩返しできるように体を張って頑張りたいと思います。
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