【ラグビー】計12トライを奪う華麗なアタックを披露した早大 立大に快勝し対抗戦2連勝

ラグビー男子

関東大学対抗戦 9月28日 対立大 秩父宮ラグビー場

 秩父宮ラグビー場は暗闇に包まれていた。漆黒の舞台に響く『赤黒』の戦士たちの雄叫び。学生ラグビーではほとんど例を見ないナイターの試合。そんな特別な光景の中で対抗戦第2節・立大戦が始まった。試合が始まるとすぐにSO服部亮太(スポ2=佐賀工)の右足から繰り出されるロングキックでエリアを掌握し、主導権を握る。FB矢崎由高(スポ3=神奈川・桐蔭学園)が次々とトライを決めてハットトリックを達成。立大に付け入る隙を与えず無失点に抑える。スコアは24-0と早大が大きくリードして前半を終えた。後半もなお、早大BK陣がフィールドを躍動する。FWが接点で押し込み、BKがスペースを突いて次々とトライ。「流れで得点を奪うことができた」と服部が語るように、最後まで試合を支配し、ノーサイドの笛を迎えるとスコアは78-0。圧巻の勝利を飾った。

インゴールへ走るFB矢崎

 立大のキックオフで始まった試合。直後、早大は服部のキックで敵陣深くへ攻め込み、主導権を握った。この服部の右足から放たれる鋭く、そして大きな弧を描くキックが試合を最後まで支配する。5分、服部からCTB野中健吾主将(スポ4=東海大大阪仰星)、そしてCTB黒川和音(人4=茨城・茗渓学園)からのロングパスを受け取った矢崎がライン際を大きくゲイン。ディフェンスの背後にボールを転がすと立大はたまらずペナルティー。SH糸瀬真周(スポ4=福岡・修猷館)がすぐさま仕掛けると、矢崎からボールを受け取ったPR新井瑛大(教3=大阪桐蔭)が起点を作る。NO・8粟飯原謙(スポ4=神奈川・桐蔭学園)の突進でゴール前まで攻め込むと、糸瀬が素早くボールを捌いて展開。服部が守備を引きつけ、空いたスペースに走り込んだ矢崎がゴールラインを駆け抜けた。このトライが表しているように、今試合では矢崎がランとキックを巧みにおり混ぜ、幾度となく好機を作り上げた。10分には早大は敵陣ゴール前のラインアウトで野中から服部にボールをつなぎ、黒川へフラットなパスを放る。一度はボールがファンブルしたが、再び服部の手にボールが渡ると、矢崎へラストパス。矢崎が立大ディフェンスを突破し、インゴールに力強くボールを押し込んだ。18分、服部が細かなステップでゴール前に迫ると、糸瀬、野中と素早くつなぎ、最後はWTB田中健想(社2=神奈川・桐蔭学園)がハンドオフで相手を振り切り、右隅に飛び込んだ。26分には、立大からターンオーバーしたボールを糸瀬が素早く捌き服部へ。利き足とは逆の左足でスペースにボールを落とすと、そのままバウンドが矢崎に入り、早くもハットトリックに成功。野中のゴールも決まり、24ー0とする。その後は両LO小林光晴(文2=福岡)と栗田文介(スポ4=愛知・千種)が接点で前に出続ける。リードを保ち、24ー0でファーストハーフを終えた。

ラインブレイクするSO服部

 続くセカンドハーフ、服部のキックオフで試合が再開される。早くも2分、矢崎がラックからのこぼれ球を自ら持ち出してボールを蹴ってドリブル。WTB池本晴人(社3=東京・早実)の胸に収まると、粟飯原が相手を引きずりながらゲインに成功。服部とHO清水健伸(スポ3=東京・国学院久我山)がそれぞれ起点を作ると、野中からのキックパスを受け取った矢崎がこの日4本目となるトライを華麗に決めた。続く得点は9分、早大はスクラムから服部、矢崎、そして池本とボールをつなぎビックゲイン。相手をしっかり引きつけて黒川にボールを放ると、そのままゴールラインに滑り込んだ。ゴールも野中がきっちり決め、38ー0とする。続く12分、FL城央祐(スポ2=神奈川・桐蔭学園)がこぼれ玉に素早く反応し、ターンオーバーに成功すると、野中から服部、そしてロングパスが大外に待っていた田中健に渡り、ゴールラインを切り裂いた。そして14分には、黒川がこの2本目のトライ、そして野中のゴールも決まり、52ー0にする。15分、『赤黒』を身にまとったNO・8松沼寛治(スポ3=東海大大阪仰星)が秩父宮の芝を踏む。1年生の頃は全試合に出場するも、2年生では出場機会に恵まれず、迎えた2年ぶりの対抗戦。「返り咲いてみせる」という言葉の通り、力強いプレーとともに秩父宮の舞台に戻ってみせた。そして17分には矢崎に代わってFB山下恵士朗(スポ2=早稲田佐賀)が堂々たる対抗戦デビュー。20分には「初『赤黒』、初対抗戦、初秩父宮」と振り返ったルーキーSH川端隆馬(スポ1=大阪桐蔭)が待望のデビューを果たすなど、早大は攻撃の手を緩めず、メンバーを大きく変えて立大に攻め込む。26分、清水から投げ込まれたスローイングを起点にして城がモールを形成してコントロールする。川端から野中、そして服部がタイミングをずらしてスペースを作ると山下が走りこみ、デビュー戦でのトライをマークした。野中のゴールも決まり59ー0に。続く30分、ラインアウトモールから松沼、FL田中勇成(教4=東京・早実)、黒川が起点を作る。池本がゴール前まで迫ると、最後は川端がわずかな隙も見逃さずにラックサイドを突きゴールラインをこじ開けた。33分には、小林がインターセプトからそのままゴールラインへ。続く39分には立大ゴール前のスクラムで早大がプレッシャーをかけると、最後は最後尾に位置していた松沼がスクラムトライを挙げた。立大のキックで試合が続くも、最後は野中が観客席にボールを蹴り込み試合を終わらせた。最終スコアは78ー0。勢いに乗る立大を相手に大量得点を奪い、無失点で守り切って2連勝を収めた。

トライを喜ぶLO小林とFL田中勇

 今試合、格の違いを際立たせたのは服部と矢崎だ。服部は「自信を持ってプレーできるようになった」と語り、キック、パス、ランのすべてで幾度となく好機を生み出し、早大のアタックを巧みにコントロールした。矢崎は華麗なランニングで相手を寄せつけず、計4トライを奪取。それぞれが非凡な才能を存分に発揮する試合となった。松沼の復帰や山下、川端のデビューが象徴するように、関東大学ジュニア選手権で活躍した選手たちが『赤黒』に袖を通し、激しい部内競争が繰り広げている。何よりも今試合、無失点で終えたことは高評価だ。チーム佐藤の躍動の理由の1つとして挙げられる鉄壁のディフェンスを継承してみせた一戦であった。もちろん、規律の面のように修正しなければならない部分もあるだろう。しかしチーム野中は進化を止めない。季節が進むにつれて稲穂が実るように、チーム野中もシーズン終盤にかけて黄金の実を結ばせてみせる。『荒ぶる』という唯一無二の目標へ狙いを定めて突き進む。

(記事:大林祐太 写真:安藤香穂、伊藤文音)

コメント

※記者会見より一部抜粋

◆大田尾竜彦監督(平 16 人卒=佐賀工)

ーー今試合を振り返って総評をお願いします
 試合前に細かいところの一戦一戦の積み重ねを意識するように伝えました。前半はやや課題の残る展開でしたが、後半は切り替えて戦うことができたのが良かったと思います。リザーブから入った選手たちもキャプテンを中心にまとまってプレーできていたので、良かったと思います。

◆CTB野中健吾主将(スポ4=東海大大阪仰星)

ーー今試合を振り返って総評をお願いします
 大田尾さんからもあったように、細かい積み重ね、どんなにきつい状況でも自分たちにフォーカスできるかということを意識していました。前半は固い印象のなかで、全体としては良かったかなと思いますが、まだまだ課題は残るので修正していきたいです。

ーー後半に入ってさらに圧倒しましたが、どんな修正を行いましたか
 自分たちのスタンダードに立ち返って、基本に忠実に仕掛けたことでこの結果になったかなと思います。

ーー今試合を勝利したことで成長したところはありますか
 日本一を目指す中で、全ての試合で成長しつつも修正を重ねていく必要があると思いますし、その点では今試合もたくさんの修正点が見つかったかなと思います。

◆LO栗田文介(スポ4=愛知・千種)

ーー今日の試合のテーマをチームと個人それぞれ教えてください
 チームテーマは『One Shot』で、全員で勝ちにいくことと、一つ一つのプレーの隙をなくしてこだわって勝っていくことを掲げていました。個人としては、コリジョンバトルにこだわってプレーしていました。

ーー接点で力強さが光っていましたが、振り返っていかがですか
 日体大戦では自分の雑なプレーでボールをロストしてしまったので、アグレッシブに、強いプレーにこだわってやっていました。しかし今節でも二つミスをしてしまったので、これから修正していきたいと思います。

ーー前半は苦戦していたセットプレーが後半では修正された印象がありますが、振り返っていかがですか
 スクラムとラインアウトのリーダー陣を中心に、ハーフタイムにきちんと話し合えて良い修正ができたので、それが後半の得点につながったのかなと思います。
 
ーー最後の対抗戦へ向けて、今後の意気込みをお願いします
 対抗戦も残り数えられるほどしか試合がないので、ラストイヤー楽しみながら『荒ぶる』に向けて一つ一つ勝っていきたいと思います。

◆NO・8松沼寛治(スポ3=東海大大阪仰星)

ーー今日の試合の個人としてのテーマを教えてください
 1年生ぶりの対抗戦だったので、新鮮な気持ちだったのですが後半からの出場でチームを前に出すことを意識して臨みました。

ーー今日の試合の手応えはいかがですか
 キャリーで前に出ることは何度かあったのですが、エラーもしてしまったのでそこはまだまだかなと思います。

ーー実際に今日『赤黒』に袖を通して今どんな気分ですか
リハビリをする中で、トレーナーや家族に支えられたからこその今日だと思うので、改めて感謝を感じました。

ーー試合に出られなかった期間を経て、ラグビーに対する姿勢に変化はありましたか
 一時期はラグビーに対して向き合えないような時期もあったのですが、頑張っている仲間の姿や同じ怪我でリハビリして復帰していく同期の姿を見て、このままじゃいけないな、もう一度返り咲かなきゃいけないなという思いで戦いました。

ーー大田尾監督からはPUPに選出されましたが、ご自身で成長をふりかえっていかがですか
 ラグビーでの成長に関してはまだまだですが、人間的な部分では懐が深くなったのかなと思います。広い心を持って物事を捉えることができるようになったと思います。

ーー松沼選手の『赤黒』復帰を心待ちにしていたファンの方が多くいらっしゃると思いますが、ファンの方々への思いを教えてください
 今日はリザーブでの出場でしたが、自分はやはりスタメンで出場してチームの勝利に貢献したいという思いがあるので、ジュニア選手権と並行しながら自分の強みをアピールしていきたいです。

ーー今後の意気込みをお願いします
 大学のバックローの中でも代表的な選手になること、そしてチームの中でもあいつがいなかったら大変だと思ってもらえるような核の選手になりたいです。ここから大事な試合が続くのでまずはケガなくグラウンドに立ち続けたいと思います。

◆SH川端隆馬(スポ1=大阪桐蔭)

ーー今日の試合の個人としてのゲームコンセプトを教えてください
 後半からの出場だったので、テンポを上げることとゲームの流れを変えることを意識しました。

ーー今日の試合を通して印象に残った瞬間やプレーを教えてください
 初めての対抗戦、初めての赤黒、初めての秩父宮という中でトライできたことは印象的です。

ーー『赤黒』を初めて着られましたが、今の心境はいかがですか
 赤黒を着たからにはという思いで、プライドと覚悟を持って試合に臨みました。

ーー春シーズンはなかなかカテゴリーが上がらずに辛抱の時期も経験されたと思いますが、夏にかけて着実に結果を出されてきたと思います。これまでのご自身の取り組みを振り返ってみていかがですか
 自分としては夏にカテゴリーを上げて、秋冬で赤黒を着るという目標を立ててたので、今試合でそれが達成できて嬉しいです。

ーーどこを強みとして勝負していきたいですか
 素早いボール捌きと、空いていたら積極的にランで仕掛ける姿勢に自信を持っているので、そこにもっと注目して欲しいです。

ーー今後の意気込みをお願いします
 この4年間で『荒ぶる』に貢献できる選手になりたいと思います。

◆SO服部亮太(スポ2=佐賀工)

ーー今日の試合の個人のテーマを教えてください
 前節の試合には出れず、個人としては初戦ということだったので難しい試合になるなとは思っていました。前半はあまり強みを出せず、難しかったなという印象です。

ーー今日の試合で特に印象に残っている瞬間やプレーはありますか
 後半は流れでトライを取れるシーンが多かったので、それは次の試合にも活かしていきたいと思います。

ーーご自身にとっては対抗戦初戦ということもありましたが、いかがですか
 これまでとは雰囲気や環境というところで大きな違いはあったのですが、みんながいいプレーをしてくれたので助かりました。

ーー裏のスペースへのキックもありましたが、どんなことを意識していましたか
立教の裏のディフェンスは固かったのですが、滞空距離を伸ばしたキックなど工夫してエリアを奪うことができたかなと思います。

ーー今後の意気込みをお願いします
 チームを勝たせられる選手になりたいです。

◆FB山下恵士朗(スポ2=早稲田佐賀)

ーー今日のゲームコンセプトはなんですか
 今日はこれからのAチームの試合につながるような試合をできればいいなと思いました。

ーー初めての対抗戦出場となりましたがいかがでしたか
 ゲーム始まる前まではピッチに立ったら緊張するのかなと思っていたんですけど、最初に出たメンバーのいい試合の作り方もあって緊張せずに自分のプレーができました。

ーーこれから伸ばしていくべきポイントはなんですか
 今日もラインブレイクできたもののミスで終わって相手ボールになってしまったので、自分が後半から入ってしっかりトライを勝ち取って流れを変えられるような選手になっていきたいです。

ーーチームにとってどのような存在になりたいですか
 自分の強みはランだったりステップなのでWTBとして入った時に、健想や晴人くんはフィジカルだったりコンタクトの部分が強みだと思いますが、自分はスピードとステップという違う強みで流れを変えれるようになりたいです。

ーー今後の意気込みをお願いします
 自分としては今日は納得いくゲームではなかったので、まずは次のジュニア東海戦に向けて切り替えていきたいと思います。

写真ギャラリー

ディフェンスに仕掛けるFL田中勇

ライン際を駆けあがるWTB田中健

ラインブレイクするCTB黒川

トライを喜ぶ選手たち

インターセプトからインゴールへ走るLO小林

メンバー表

星取表