関東大学春季大会 ６月２２日 対帝京大 早大・上井草グラウンド
灼熱の春を笑って終えた。関東大学春季大会最終節、早大・上井草グラウンドで行われた早大と帝京大の一戦は赤黒のジャージーが36ー35と１点差の激戦を制した。試合開始３分、ペナルティーゴールで先制に成功した早大は続く10分に待望のトライを上げる。帝京大相手に先制し、幸先良い立ち上がりを見せた早大だったが20分、22分に帝京大にインゴールを明け渡した。ＨＯ清水健伸（スポ３＝東京・国学院久我山）が一矢報いるものの、さらに２トライを追加され17ー28で前半を折り返した。後半は立ち上がりにトライを奪われたがＣＴＢ野中健吾主将（スポ４＝東海大大阪仰星）の復帰もあり、勢いづく早大。暑い中でも15人が走り続けた早大が38分についに逆転。１点のリードを守り切り、早大が春の帝京大から白星を上げた。
インゴールに走るＮＯ・８城
大観衆の中、早大のキックオフで始まった春季大会最終戦。立ち上がりから中盤での激しい攻防となり強度を増していく。３分、帝京大のペナルティーでショットを選択した早大はＳＯ服部亮太（スポ２＝佐賀工）が中央に沈め、先制に成功した。続く10分、帝京大アタックのミスに反応したＣＴＢ黒川和音（人４＝茨城・茗渓学園）が素早くボールを奪うと一気に攻勢に出た早大。敵陣22メートルライン付近のラインアウトから帝京大の硬いディフェンスに苦戦しながらもフェーズを重ね、ラック際の隙を見逃さなかったＮＯ・８城央祐（スポ２＝神奈川・桐蔭学園）がインゴールに飛び込んだ。15分に帝京大スクラムから反則を奪うなど、着実に勢いを増していく早大。しかし、試合の流れに関係なく得点を奪ってくるのが王者・帝京大だ。20分、キックカウンターからインゴールを明け渡すと、続く22分にもトライ。10ー14と、連続得点で逆転を許した。このまま差を広げられるかと思ったが、帝京大のブレイクダウンの反則からチャンスを得た早大はゴール前でＦＷにこだわったアタックを見せる。帝京大の強力なフィジカルに対しても前に出続け、ついにＨＯ清水がインゴールをたたき割り、17ー14とリードを得た。だが、帝京大はやり返すようにＦＷの強引なアタックで前半終了までに２トライを挙げ、17ー28で前半の40分を終えた。
ディフェンスに仕掛けるＦＢ植木
続くセカンドハーフは立ち上がりから帝京大が追加点。17ー35と差を広げられ、不穏な空気が立ち込める。しかしこの劣勢を打ち破ったのはＦＢ植木太一（人２＝神奈川・関東学院六浦）。６分、帝京大のハイボールキックが落下し、植木の前に転がるとドリブルでボールをインゴールまで運んでグラウンディング。22ー35と反撃ののろしを上げた。ＦＬ田中勇成（教４＝東京・早実）の積極的なブレイクダウンのファイトで反則を奪うなど、着実に逆転の糸口をつかみ始める。17分には帝京大に自陣ゴール前まで攻め込まれるものの、昨季のような規律乱れぬディフェンスで帝京大のペナルティーを誘発し、難を逃れた。主将のＣＴＢ野中がグラウンドに入り、勝利に向けてギアを上げた早大は27分、途中出場のＦＬ久我真之介（文構２＝東京・早実）が激しいタックルでキャリアーをタッチに押し出してラインアウトを獲得。２回のフェーズを重ね、一気に逆目に攻めた早大はＳＯ田中大斗（教２＝東京・早実）の内側から飛び込んできた植木がブレイク。持ち前の俊足でインゴールまで走りきった。キックも成功し、29ー35と１トライ１ゴール差にまで詰め寄る。31分、田中大のスティールで敵陣に入り込んだ早大はＷＴＢ池本晴人（社３＝東京・早実）やＣＴＢ福島秀法（スポ４＝福岡・修猷館）などがゲインを奪いながら着実に帝京大を追い込んでいく。ＷＴＢ鈴木寛大（スポ３＝岡山・倉敷）のゲインでオフサイドを誘発すると、早大はゴール前でラインアウトモールを形成。右に大きく展開し、植木がインゴールに飛び込んだ。しかしボールをグラウンディングできず、惜しくも追加点とはならない。しかしゴールラインドロップアウトをキャッチした清水が中央でラックを作ると、ボールを持ち出したのはＳＨ糸瀬真周（スポ４＝福岡・修猷館）。ゴール中央に逆転を確信するトライを決め、キックももちろん成功。36ー35とついに逆転した。試合時間は残り２分、王者・帝京大は意地を見せるような継続したアタックで早大陣内に襲い掛かる。しかし早大は昨季を彷彿とさせる我慢強いディフェンスでインゴールを守り抜き、最後はノックフォワード。ノーサイドの笛が鳴り、上井草グラウンドは歓声に包まれた。
試合後に勝利を喜ぶ選手たち
試合後は笑顔を爆発させ、うれし涙を流す選手も見られた早大。「目の前の一瞬一瞬を全員が全力で80分通してやり続けた結果」と野中が試合後に振り返ったように、リードしていた瞬間も気を抜かず、劣勢に立った瞬間も最後まで諦めずに戦い続けた早大が勝利を掴んだ。「明大、天理大とに２連敗していたので結果が求められる試合だったが、自分たちなら絶対勝てると思って二週間取り組んできた」（田中勇）。春の努力を疑わず、最後まで自分たちを信じた結果と言えるだろう。自信をつける春になったが、早大の目標はここではない。全国大学選手権で優勝して、『荒ぶる』を歌う。この勝利をきっかけに優勝できたと言えるように、早大は鍛錬の夏に臨む。
（記事 村上結太、写真 安藤香穂、大林祐太）
コメント
◆ＣＴＢ野中健吾主将（スポ４＝東海大大阪仰星）
ーーチームとしてのテーマを教えてください
チームのスローガンである『Ｏｎｅ Ｓｈｏｔ』をチーム全員で体現することです。
ーー今試合、個人的にどのような思いで臨まれましたか
個人的には復帰戦というところで、気持ちが高ぶるところもありましたし、去年決勝で負けた相手というところでより一層気持ちが高ぶった試合でした
ーー帝京大に勝利した率直な思いをお聞かせください
自分としてのやるべき事をすれば結果が実るということが分かったのでこれからどれだけ積み上げられるかが勝負だと思います。
ーーアタックを振り返っていかがですか
試合終わるまで全員が諦めない、スイッチオンするということを練習の時から言ってるのでその練習の成果が出たと思います。
ーー勝因は何だと思われますか
目の前の一瞬一瞬を全員が全力で80分通してやり続けた結果だと思います。
ーー夏への意気込みをお願いします
ここからが勝負だと思っているので、これからどれだけ積み上げられるかが大事なので、いい成長ができるにチーム全員で同じ方向を向いてやっていきたいと思います
◆ＨＯ清水健伸（スポ３＝東京・国学院久我山）
ーー今試合どんな思いで試合に臨みましたか
２連敗していたので、絶対勝って春シーズンを終わりたいという気持ちで臨みました。
ーー帝京大に勝利し、率直な思いをお聞かせください
もう嬉しいです。嬉しいの一言です。
ーーディフェンスの完成度に関してはいかがでしたか
一人一人のタックルのスキルにフォーカスしていたのですが、帝京大さんの強い圧力に負けて精度が落ちてしまっていた部分がありました。今までと比べれば完成度は上がっているのかもしれないですが、もっともっと精度を上げていきたいと思います。
ーースクラムを振り返っていかがですか
やっぱり帝京大さんはすごく強いスクラムを組むので、それに対して絶対に８人でつながっていこう、８人で勝とうと言っていました。結果それが出せたのかなと思います。
◆ＰＲ前田麟太朗（スポ２＝神奈川・桐蔭学園）
ーー今試合どんな思いで試合に臨みましたか
自分たちは明大と天理大に２連敗をしていて、帝京大には昨年のリベンジというところで、勝つ気持ちを持って試合に臨みました。
ーー帝京大に勝利し、率直な思いをお聞かせください
素直にめちゃくちゃ嬉しいです。
ーースクラムを振り返っていかがですか
帝京大さんはスクラムにプライドを持っているチームで、そこでどれだけ戦えるかが、今試合の勝敗をわけるカギだったと思います。自分もそこで体を張って強みを出すことができたのでよかったです。
ーーご自身のアタックはいかがでしたか
もちろん前に出られた場面もあったのですが、自分としてもまだまだ課題はあると思うので、これから修正して夏合宿に臨みたいと思います。
ーー率直に、勝因はなんだと思いますか
全員がひとつになって、勝利に向かってハードワークしたことだと思います。
ーー夏への意気込みをお願いします
このまま切らさずに、日本一に向けてしっかり準備して、夏も勝てるように頑張ります。
◆ＦＬ田中勇成（教４＝東京・早実）
ーー今試合どんな思いで試合に臨みましたか
明大、天理大とに二連敗していたので結果が求められる試合でしたが、自分たちなら絶対勝てると思ってニ週間取り組んできました。結果として自分たちがやってきたことが表れたのが良かったと思います。
ーー帝京大に勝利し、率直な思いをお聞かせください
決勝から帝京大学をターゲットにずっとやってきたので、それが昨日できたので良かったと思います。
ーースクラムを振り返っていかがですか
みんな本当に頑張ってくれて、８人で自分たちのスクラムが組めたなと思います。
ーーアタックはどうでしたか
本当にずっと我慢我慢と言っていたので、自分たちの時間が来ると思って、12点差で耐えられたところ、それがあったからこそ最後のアタックにつながったのかなと思います。
ーー決勝との違い、成長した点はありますか
ホームということで多くの方が応援してくれてそれが本当に自分たちの力になりました。またＢ、Ｃチームが昨日本当に良い試合をしてくれて本当に自分たちのやってきたことが間違ってなかったと証明してくれたのでいい試合ができました。
ーー夏への意気込みをお願いします
今日は自分たちのホームで勝ち切れたのは良かったのですが、目指すべき場所はもっと先にあるのでそこを目指して頑張っていきたいと思います。
◆ＦＢ植木太一（人２＝神奈川・関東学院六浦）
ーー今試合どんな思いで試合に臨みましたか
昨年は帝京大に負けていて、その試合には自分も出れていなかったので、自分としては初めての強敵相手にスタメンでの出場ということで、自分の持ってるものを全て出そうという思いを持って試合に臨みました。
ーー帝京大に勝利し、率直な思いをお聞かせください
まずは春の１番の大勝負で勝つことができてよかったです。ここで気を抜かずにやっていこうと思います。
ーーディフェンスの完成度に関してはいかがでしたか
僕はＦＢとして後ろから見ていたのですが、帝京大のアタックに対して負けていなかったですし、しっかり前に出て止められていましたし、フェーズを重ねられて、乱れとか崩れるところがあったので、これから修正していきたいなと思います。
ーートライやランで活躍されていましたが、アタックはどうでしたか
正直、ほっとしています。自分の持っているものをある程度出せたかなと思います。
写真ギャラリー
ボールを持ち出すＳＨ糸瀬
ヒットするＣＴＢ福島
ボールキャリーするＬＯ栗田
ボールキャリーするＷＴＢ田中健想
逆転トライを喜ぶ選手たち
メンバー表
