昨季のリベンジ達成 強固なディフェンスでリードを守り、京産大を撃破

ラグビー男子

全国大学選手権 1月2日 対京産大 国立競技場

 赤黒ではなく、白。白地に臙脂色の襟と背番号が映える白装束。昨季、京産大に敗れた時と同じユニフォームだ。しかし、そのプレーは同じではなかった。自信に満ちた前に出るディフェンスと、次々と反則を奪い取る強烈なスクラムであの京産大に苦戦を強いた。京産大がじわじわとフェーズを重ねながら前進しても、ハードタックルでボールを奪い取るとロングキックで自陣へと追い返す。逆に、攻撃ではテンポの早いパス回しで相手を翻弄し、少ない手数でインゴールに飛び込んだ。今季の早大らしい見事なラグビーで京産大を31ー19で撃破し、昨季のリベンジに成功。そして全国大学選手権(大学選手権)決勝へと早大は駒を進めた。

トライを取り、雄叫びを上げるHO佐藤

 前半が始まり、いきなり魅せたのは早大。硬いディフェンスで京産大のノックオンを誘うと、そのマイボールスクラムでアーリーエンゲージの反則を奪った。昨季との違いをまざまざと見せつけ、試合の立ち上がりを制した。6分に得たスクラムでは京産大のコラプシングを誘発すると、一気に敵陣深くまで侵入。ラインアウトではモールを組まず、HO佐藤健次主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)がボールを持った状態で回り込む。その内側にスピードをつけて走りこんできたWTB池本晴人(社2=東京・早実)がパスを受け取ってゴール前まで前進すると、守備が整う暇を与えずにSH細矢聖樹(スポ4=国学院栃木)がLO栗田文介(スポ3=愛知・千種)にボールを繋いでそのままグラウンディング。鮮烈な先制トライを挙げた。続く13分にもスクラムでペナルティーを獲得し、陣地を拡大。FB矢崎由高(スポ2=神奈川・桐蔭学園)のキャリーから得たオーバーザトップの反則をクイックで再開したCTB福島秀法(スポ3=福岡・修猷館)がインゴールにねじ込み、早くもスコアは12ー0に。スクラムで優位に立ち、試合を組み立てた早大がさらにリードを広げていく。23分には早大らしいハイテンポのアタックで右サイドに数的優位を作るとインゴール右に飛び込んだのは佐藤。主将が雄叫びを上げてチームを鼓舞すると、早大はさらに加速する。30分、京産大が着実にフェーズを重ねてゲインを奪いに来るが、早大はこだわってきたディフェンスでミスを誘い、ターンオーバーに成功した。池本が左サイドでブレイクすると、細矢に繋いでさらに前へ。素早くアタックラインを作ると、右サイドまで大きくボールを展開して受け取ったのは関東大学対抗戦トライ王のWTB田中健想(社1=神奈川・桐蔭学園)。インゴールを駆け抜け、CTB野中健吾(スポ3=東海大大阪仰星)のキックも成功すると26ー0とリードを大きく広げた。前半の終盤は京産大の圧力あるアタックに苦戦を強いられるものの、最後は佐藤がジャッカルに成功し、ハーフタイムを迎えた。

ディフェンスに仕掛けるCTB野中

 迎えた後半も先に試合を動かしたのは早大。オフサイドのペナルティーから自陣ゴール前まで侵入を許すものの、強固な守備とSO服部亮太(スポ1=佐賀工)のロングキックでエリアを回復。7分には矢崎の50ー22で一気にチャンスを迎えた早大はラインアウトのアタックでキレのあるサインプレーを披露する。矢崎のカットインでディフェンスラインを引き裂くと、最後は池本がトライ。31ー0とさらに京産大を突き放した。しかしここから早大は反則が重なり、思うようなラグビーを展開できない。23分にFWに押し込まれてトライを許すと、続く32分にも失点。「チームの悪い流れを断ち切れなかった」と佐藤が振り返るように、苦しい時間が続く。38分には2連続の反則からまたもFWにインゴールを叩き割られ、31ー19と点差は12に。試合はノータイムを迎えるが、京産大は最後までアタックを継続。意地の攻撃でゴール前まで前進を許すものの、最後は京産大がノックオン。早大が前半に得たリードをキープし、大学選手権準決勝を勝利した。

インゴールに向かって走るWTB池本

 「早稲田のディフェンスができた」と語ったのは豊富な運動量で守備の要を担ったFL田中勇成(教3=東京・早実)。身体の大きな京産大FWに対し、低く鋭いタックルで簡単に前進を許さず、粘り強い組織ディフェンスで一発でトライを取られることがなかった。昨季の敗戦を糧に、『武器はディフェンス』とプライドを持てるほどに成長した早大。大学選手権準決勝という難しい試合でも安定したパフォーマンスを見せつけ、天敵を撃破した。ついに次戦は決勝戦。帝京大との対戦を前に「今年の過去2戦は関係ない。チャレンジャー精神で常にアタックマインドを持ち続けたい」(佐藤)と、あくまでも挑戦者の心意気。『荒ぶる』に向けた長い長い道のりも、残り1試合となった。『Beat Up』し、早大が大学ラグビーの頂点に君臨するその瞬間を見逃すな。

(記事 村上結太、写真 濵嶋彩加、権藤彩乃)

コメント

※一部記者会見抜粋

大田尾竜彦監督(平 16 人卒=佐賀工)
ーー今日の試合の振り返りをお願いします
 前半から攻め込まれる場面も多かったですが、スクラムを中心に組み立ててくれた結果、前半は上手くいったかなと思います。後半は規律が乱れるシーンがあったので、そこは修正ポイントだと思います。

ーー佐藤主将の交代の意図を教えてください
 決勝のことも考慮して、そしてリザーブの選手たちのパフォーマンスも確かめたかったので交代に踏み切りました。

ーー今日の試合でのディフェンスはいかがでしたか
 非常に良かったと思います。取り返したボールへのリアクションが特に良かったかなと思います。

ーー昨年の悔しさを晴らす形となりましたが、今どのようなことをお考えですか
 しっかり昨年の4年生の思いも持って試合してくれたのが非常に嬉しかったです。

ーー昨年、京都産業大学に敗れてからスクラムを鍛えてきました。その京産大のスクラムに負けないFW陣はどのように見ていましたか
 スクラムは非常によく組んでくれましたし、特に前半、ゲームが上手くいった要因なのかなと思います。

ーーそしてFW、BKが上手く連携して、敵陣でボールを運ぶ場面も多く見られましたがアタックはいかがでしたか
 アタックはまあまあかなと思います。ディフェンスが良かったですね。

ーー決勝の相手は対抗戦で勝った帝京大学となります。選手たちのどのような姿を期待していますか
 とにかく今まで積み上げてきたことを全部出し切って、自分たちにフォーカスしてのびのびやってほしいなと思います。

HO佐藤健次主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)
ーー今日の試合の振り返りをお願いします
 率直に勝てて良かったです。去年4年生が(京産大に)負けて引退して、リベンジすることをターゲットにしていました。しかし、試合最後までグラウンドに立てなかったことや、試合終盤に守りに入ってしまって攻めの意識が薄れてしまった結果反則が増えてしまったなど、反省点はまだまだ挙げられるので、決勝までにもっともっとこだわっていかなければならないかなと思います。

ーー試合終盤の反省点はありますか
 60分ぐらいから僕は何もできていなくて、チームの悪い流れを断ち切れなかったところが反省点だと思っています。決勝戦があるのでしっかりビデオ見て修正したいです。

ーー決勝に向けた準備はどんなことを考えていますか
 リカバリーをしっかりするのと同時に、練習ではもっとゲームライクなものをしていかなければいけないと思っています。決勝ともなると相手の集中力も全然違うと思うので、コンタクトの強度など変えていきたいです。

ーー今日の試合でのディフェンスはいかがでしたか
 強いランナーがいるのはわかっていたので、弾かれてもいいからとにかくタックルに入ろうと言っていました。弾かれても内側から何度もタックルに入れていたのと、タックラーを一人にすることがなかったことが良かった点だと思います。

ーー昨シーズンの負けから、この試合に何かテーマはありましたか
 『プライドを取り戻す』ということをテーマにしていました。心のどこかに京産大にやり返したいと思っており、その中でこの準決勝という舞台でそのチャンスが回ってきました。今日勝てたのは去年の4年生のおかげだと思っています。伊藤組のみんながいなかったらここまで成長できていないですし、今日の勝利はなかったと思います。今年だけの勝利だけではないと思うので、今の部員たちだけではなく去年の4年生にも感謝したいです。

ーー決勝の帝京戦への思いをお聞かせください
 今年の過去2戦は関係ないと思っています。大学選手権決勝という、一発勝負の舞台を帝京大は4年連続で経験しているので、チャレンジャー精神で常にアタックマインドを持ち続けて、自信を持って取り組みたいです。

ーー最初のスクラムから3本連続で反則を奪ったその要因は何だと思いますか
 今週1週間は京産大のために準備してきました。特殊なスクラムの組み方に対策するために清水健伸や勝也、前田が京産の組み方をマネして練習相手になってくれたことで、落ち着いてスクラムを組むことができました。3人が良い経験をさせてくれたことで今日の結果が生まれたかなと思います。

ーー帝京大とはどのようにスクラムを組んでいきたいですか
 帝京大は全員良い選手が揃っていると思っています。なので、個人でバラバラに組んでしまったら負けるので、8人でまとまりたいです。スクラムで優位を取るとイレギュラーなことがあっても崩れることがないので、まずはスクラムでリードしていきたいです。

ーー昨年敗れた京産大に勝ちましたが、今どんなお気持ちですか
 昨年の4年生のリベンジをしようという話をしていて、結果としては勝てたので良かったのですが、内容としてはまだまだ成長できるところがたくさんあるので、決勝に向けて頑張っていきたいなと思います。

ーーご自身は大活躍も見せてくれましたが、キャプテンとしてどんな意識でプレーをしていましたか
 最後までグラウンドに立てなかったですし、トライチャンスもトライできず終わって、もっともっとハードワークできたと思うので全然良い点数はあげられないのですが、仲間が頑張ってくれて勝てたので、自分自身しっかり反省して、決勝戦はもっと良いプレーができるように頑張りたいと思います。

ーーこの京産大ではスクラムをカギに挙げていました。鍛えて磨いてきたスクラム、今日はいかがでしたか
 スクラムでペナルティーが取れて、前半は良い流れで試合を持っていけたのですが、後半は相手にアジャストされてしまってゴール前のペナルティーや、流れを上手くつかめなかったのはまたスクラムだったので、課題が多く残ったのかなと思います。

ーーまた、FWでプレッシャーをかけたこともチャンスにつながったと思います。BKもトライを取ってくれましたが、どんな風に感じましたか
 全員がハードワークして相手の強いランナーに良いタックルを入れていたので、FWのバトルのところは良かったのですが、もっとターンオーバーのチャンスはあったと思うので、次戦に向けて修正して頑張っていきたいと思います。

ーー『荒ぶる』まであと一勝となりましたが、決勝ではどんな戦いをしたいですか
 最後1点でも勝っていれば良いので結果にこだわって、その中で自分たちにフォーカスしてディテールのところを詰めていけたらいいなと思います。

LO栗田文介(スポ3=愛知・千種)
ーー今日の個人としてのコンセプトを教えてください
 京産大は大きな選手が多いので、コリジョンで負けないことが僕の役割だと思ってプレーしていました。

ーー昨季敗れた京産大が相手でしたが、どんな思いで試合に臨みましたか
 昨季、大好きだった伊藤組を引退させてしまったので、今日は必ず勝たなければならないと強い気持ちを持って戦いました。

ーー京産大は強力なフィジカルで突破を図るシーンがいくつもあったと思いますが、実際に身体を当てて、得た手ごたえなどお聞かせください
 外国人相手でも下に入れば止めることができると分かったので、ディフェンスでは低く入ることができたかなと思います。

ーーチームとしてのディフェンスの出来はいかがでしたか
 前半は前に出る良いディフェンスができたかなと思うのですが、後半は接点の部分でやられてしまう場面が増えたので、決勝までに修正したいです。

ーー決勝への意気込みをお願いします
 僕らが1年間取り組んできたことをしっかり出せれば帝京相手でも必ず勝てると思うので、最後までこだわって取り組んでいきたいです。

FL田中勇成(教3=東京・早実)
ーープレッシャーもある中での戦いだったと思いますが、今どのようなお気持ちですか
 やっぱり最後の部分で、すごくFWが圧力をかけたのですがペナルティーも多かったので、そこは本当に次に向けて成長の部分だと思います。

ーー前半は0点で抑えましたが、ディフェンスはいかがでしたか
 前半はみんな頑張ってくれて、本当に早稲田のディエンスができたのかなと思います。

ーー田中選手ご自身もタックルやジャッカルが光りましたが、ご自身のプレーを振り返っていかがですか
 本当にみんなが頑張ってくれて、個人として良いタックルもあったと思うのですが、これからもっと仕上げていかなきゃいけない部分があるなと思います。

ーー決勝の相手は帝京大ですが、優勝が懸かった試合、意気込みをお願いします
 本当に決勝までの期間で、部員全員で準備していきたいなと思います。

NO・8鈴木風詩(社4=国学院栃木
ーー今日の個人としてのコンセプトを教えてください。
 セットプレーの安定です。京産大さんはセットプレーを強みとしているチームだったので、NO・8としてセットプレーを安定させることを意識していました。

ーー昨季敗れた京産大が相手でしたが、どんな思いで試合に臨みましたか
 僕は1年生の時に学生スタッフをやっていたので、元同期が負けてしまった相手に対して、仇をうつと強い思いを持ってプレーしていました。

ーースクラムの手応えはいかがでしたか
 前半は僕たちのやりたいスクラムが組めて、いい流れだったのですが、後半になって相手選手が変わるとまた組み方も変わって僕たちのスタンダードが崩れてしまった場面がありました。

ーーチームのアタックを振り返って収穫、課題点を教えてください
 試合の入りの部分は集中してよくできたのですが、後半は気が緩んでしまう場面もあったので、4年生としてチームに声かけしていくことが必要だったのかなと思います。

ーーチームとしてのディフェンスの出来はいかがでしたか
 前半においては僕たちが1年間取り組んできたことを出せたのではないかと思っています。前に出るディフェンスに自信を持てたことで良い流れを掴めたと思います。

ーー決勝への意気込みをお願いします
 決勝の舞台に立てるということに感謝しないといけないと思いますし、負けてしまったら何位でも変わらないと思うので、あと一戦、勝って全員で『荒ぶる』を歌いたいです。

SH細矢聖樹(スポ4=国学院栃木)
ーー試合前に昨年の4年生から何か言葉などはありましたか
 特になかったですが、先輩の思いを背負って、今年やり返そうという気持ちを全面に出せて良かったと思います。

ーーアタックの部分を振り返っていかがですか
 アタックは今まで通りプレッシャーを持って自分たちから仕掛けるというところにフォーカスしてできていたので、それがいい形でトライにつながったところもあったと思います。ルーズボールへの反応も良くて、そこから守って取り返してトライを取るシーンも良かったです。前半の最後の方にフェーズが重なり、結構しんどい場面も多くてテンポが落ちた部分があったので、そこをしっかり決勝までに修正していきたいです。

ーーディフェンスの部分で前半は完璧だったと思いますが、チームとして試合を振り返っていかがですか
 相手を見てセットするというところがすごく今日よくできていて、そこで後手を踏まなかったところが良かったかなと思います。

ーーついに決勝ですが、どのようなプレーでチームを勝利に導きたいですか
 僕がしっかりとコントロールをして、チームの指揮をとっていければいいかなと思います。

CTB野中健吾(スポ3=東海大大阪仰星)
ーー今日の個人としてのコンセプトを教えてください
 相手のプレッシャーがかかる中でしたが、自分たちにフォーカスして、いつも通りのディフェンスをすることを意識していました。

ーー昨季敗れた京産大が相手でしたが、どんな思いで試合に臨みましたか
 悔しい気持ちを1年間抱いており、その気持ちを持ったまま今日臨むことができたことで結果がついてきたかなと思います。

ーー昨季の敗戦と大きく違った点はありましたか
 ここ1年間は細部までこだわったプレーを意識してきたので、その成果が出たのかなと思います。

ーー後半、ペナルティーが重なってしまうシーンを振り返っていかがですか
 今日の後半は最大の課題だと思っています。チーム全体としてはまだまだ成長できる部分だと思うので、決勝に向けて準備していきたいです。

ーー昨季のリベンジを果たしたことに関して、今の思いを聞かせてください
 率直に嬉しいですが、僕たちの目指しているところはここではなく、決勝で勝つことなので、ラスト1勝できるようにチームとして成長していきます。

WTB池本晴人(社2=東京・早実)
ーー今日の個人としてのコンセプトを教えてください
 昨年の4年生が京産大に負けていて、そこのリベンジというので、とにかく勝つ。リベンジを果たすという思いでした。

ーー相手にはフィジカルの強いプレーヤーが何人もいたと思います。戦ってみた感触はいかがでしたか
 練習からBチームが京産大のプレーをやってくれていたので、練習通りあたるだけでした。強い相手にも低く刺さるというのを意識していました。

ーー前半から大きくゲインを奪うなど、個人としてチームに勢いをもたらすプレーが目立ちました。率直に振り返って、今日の自身のプレーはいかがですか
 正直とても疲れていてあまり覚えていないですが、とにかく昨年の借りを返してやるという思いで必死にやっていました。

ーーチームのディフェンスに関して、収穫などはありましたか
 メンバーが変わったりして難しい部分もあったので、そこは次に向けて修正するところかなと思います。

ーー決勝への意気込みをお願いします
 もうあと一勝なので、何が何でも勝って、『荒ぶる』をとりたいと思います。

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早大メンバー