4年早明戦は悔しさにじむ敗北  『荒ぶる』に向けた糧にできるか

ラグビー男子

 関東大学対抗戦(対抗戦)最終節、伝統の早明戦で赤黒のジャージーを着ることが叶わなかった4年生のため、最終学年の誇りがぶつかり合う4年早明戦が上井草グラウンドで行われた。両チームの気持ちがこもったプレーが連発し、序盤からタフなゲーム展開となった今試合。前半はミスボールが明大に収まるなどアンラッキーな場面も多く、12ー21と9点のリードを奪われる。後半にも早大選手たちの果敢なタックルが見られたが、明大の圧力に苦戦を強いられ、12ー40で敗戦となった。

 明大のキックオフから始まった前半は序盤から押し込まれる。2分、明大のプレッシャーを受け、自陣ゴール前でターンオーバーを許した早大は開始早々からピンチを迎える。気迫のこもったタックルで明大の強力なFW陣の前進を許さなかったが、ノットロールアウェイの反則を取られる。明大ボールのラインアウトは後ろにそれたものの、ボールは再び明大のもとに収まり、先制点を許した。早い時間で得点が生まれたが、その後は膠着(こうちゃく)した緊張感のある展開に。8分、NO・8渡辺駿斗(商4=東京・早実)のインターセプトからビックゲインを得た早大だったが、トライに結びつけることができない。続く13分にもLO松下慶伍(教4=東京・早実)のラインブレイクから一気に明大ゴール前まで攻め込むが、キックパスがつながらず、トライを取り切れないシーンが続く。しかし19分、FB京山秀勇(人4=福岡・東筑)のナイスキックから敵陣10メートルライン付近でラインアウトを得るとPR池田裕哉(スポ3=東京・明大中野)が力強いヒットで確実にゲイン。早いテンポでフェーズを重ねてCTB岡本大輝(スポ4=東京・本郷)が抜け出し、最後はフォローに走っていたSH井上泰志(スポ3=福岡・東筑)がボールを受け取りトライ。試合を振り出しに戻した。FL宮本大生(文構4=埼玉・早大本庄)の鋭いタックルやFL小池航太郎(商4=東京・早実)のジャッカル、半年ぶりに対外試合復帰を果たしたLO藤井将吾(スポ4=大阪・早稲田摂陵)の強烈なタックルなど迫力のあるプレーが飛び出したものの、明大の素早いアタックにディフェンスラインを崩され、2トライを追加される。しかし37分、WTB磯崎錬太郎(商4=徳島・城東)のゲインから明大のオフサイドを誘発し、ゴール前でのラインアウトを得た早大はモールを形成。明大をインゴールまで押し切り、待望の追加点を挙げると部員席からも歓声が沸き起こった。前半終了間際に反撃の狼煙を上げ、12ー21で試合を折り返した。

半年ぶりの対外試合となったLO藤井の力強いゲイン

 後半は両チームともペナルティーが重なり、エリアの取り合いが続く展開となった。7分、早大の反則からゴール前ラインアウトを獲得した明大は変化をつけたサインプレーでゲインラインを切ると、FWで押し込み、追加点を挙げた。早大は反則が重なり、苦しい時間が続くが、19分にはWTB鈴木陽結(政経4=東京・早大学院)の前に出るディフェンスで明大のミスを誘うなど4年生の意地を見せたプレーも光る。しかし29分、自陣から積極的にボールを回した早大だったが、ミスからスクラムを献上。一次攻撃でそのままトライを許し、33ー12とさらにリードを広げられてしまう。「後半になって明大の勢いのあるアタックにのまれてしまった」と宮本が振り返るように、後手に回ってしまう場面が多かった早大。35分にはPR新井瑛大(教1=大阪桐蔭)が力強いドライブで前進するが、ボールを奪われてしまう。大きく展開されると明大のラインスピードに追い付けず、トライを許した。さらに37分、岡本をきっかけにラインブレイクし、敵陣深い位置でペナルティーを獲得した早大はタップで再開するものの、明大の鋭いタックルに押し込まれノックオン。12ー40と点差を離され、ノーサイドとなった。

スピードある攻撃で、相手ディフェンスを翻弄するWTB磯崎

 「勝ち切れなかったことが一番の反省点」とゲームキャプテンの藤井が語るように、敗戦に悔しさがにじむ早大。お互いの気持ちがぶつかり合った本試合は、今季随一のタフなゲームとなった分、収穫も多い。「この試合を最後にするつもりは僕を含めて4年生全員ない」(宮本)、「赤黒を着る、『荒ぶる』を歌うことを諦めていない」(藤井)、「上に這い上がっていくという気持ちを忘れない」(磯崎)、「最後の最後まで『荒ぶる』に向けて努力する」(京山)と赤黒、そして『荒ぶる』に強い思いを見せる4年生一同。今試合の敗戦を糧に、4年生は一段とギアをあげ、集大成に向けて駆け抜ける。全国大学選手権(大学選手権)の初戦は12月17日、目前に迫った『荒ぶる』に向け、負けられない戦いが始まる。

(記事 村上結太、写真 濵嶋彩加)

コメント

LO藤井将吾(スポ4=大阪・早稲田摂陵)ゲームキャプテン

――半年ぶりの対外試合となりましたが、どのようなお気持ちで試合に挑まれましたか

 もう一度、赤黒を着る、『荒ぶる』を歌うというところだけを考えて半年間やってきたので、4年生試合をチームに勢いをつけるためだけの記念試合にするつもりは全くありませんでした。チームのために戦って、それが自分のためになればと考えていました。チームのために、自分自身がもう一度赤黒を着て『荒ぶる』を歌う。そんな気持ちで試合を迎えました。

――試合前、同期から何か声をかけられましたか

 試合中はバイスキャプテンの岡本(大輝、スポ4=東京・本郷)を中心にキャプテンシーのある選手に本当に助けてもらっていました。今週の4年生のミーティングでは、Aチームの4年生が「試合には出ることはできないけど、できることは全力でするつもりだ」と言ってくれていました。実際、今日のウォーターでも主将や副将2人がやってくれたり、ジャージーの配るところにAチームの4年生がいてくれたり、そういう所で4年生が一体となって試合に挑めたのではないかなと思います。

――では改めて今試合のゲームテーマは

 本当に勝ちきるという所だけを考えていました。ここから先の大学選手権は負けたら終わりなので、対抗戦で負けた明治が相手ということもあって、とにかく勝ちきることだけを考えていました。

――チームとして試合を振り返っていかがですか

 本当に勝ちきれなかったのが一番の反省点です。勝つために、まずはコンタクトエリアでしっかり勝つというのを目標に掲げていて、そこは随所に強さが出ていたと思いますが、結果は負けてしまったので。どれだけ内容に対して満足しても結果として負けてしまっているので、そこは反省点です。

――ご自身、久しぶりにプレーしてみた感想はいかがですか

 久しぶりに長い時間試合に出ることができて嬉しかったです。とにかく自分自身の強みであるワークレートの部分を体現しようと考えていたので、そういうところは、ある程度良い感覚を得ることができたと感じています。

――残すシーズンに向け意気込みをお願いします

 本当にここから負けたら終わりで、アピールできる機会も少なくなって行くと思います。ですが僕は、本当に赤黒を着る、そして『荒ぶる』を歌うことに関してあきらめていないので、一日一日を大切に集中力高く、目標をぶらさずに頑張っていこうと思います。

FL小池航太郎(商4=東京・早実)

――この試合をどのような心境で迎えましたか

 楽しさ半分、悔しさ半分という感じです。

――藤井選手の復帰についていかがでしたか

 素直にうれしかったですね。というのは、僕は1年生の時から約3年間、ずっと藤井とお互いのことはプレー中だったら何でもわかるくらい一緒にやってきたので、こういった機会で一緒にプレーをできてすごくうれしかったです。

――力強いアタックと積極的なプレーが目立っていました。ご自身の本日のプレーを振り返っていかがでしたか

 ここ1年だったら、1番良かったのかなと思います。最後に足をつってしまうくらい走ったので。その面では、最後に良いプレーを示せたのかなと思います。

――4年生中心のFWメンバーでしたが、連携についていかがでしたか

 実際にこの連携をとり始めたのは今週の火曜日からで、やっぱり合わない部分がどうしてもあって、一週間でそこは埋められなかったのですが、だからこそ誰もがわかるような簡単なところを共有することで、ある程度はその無駄なところを省けて、80分間戦えたと思います。

――残す大学選手権、同期や自分自身にメッセージをお願いします

 自分はまだあきらめてないぞということで、Aチームのメンバーにはまだそのポジションに甘んじないでほしいなと思います。しっかり毎回死ぬくらいまで走ってほしいなと思います。

FL宮本大生(文構4=埼玉・早大本庄)

――4年生中心の試合でしたが、どのような意気込みで挑みましたか

 4年早明ということで、特別な試合として位置付けされがちですが、4年生全員の思いとしては、特別な試合というよりは全員赤黒を目指す過程の一つとして、この試合で終わらせるのではなく、この試合を経て赤黒に挑戦するつもりで挑みました。

――チームとして今日の試合を振り返ってみていかがですか

 とにかくシンプルなことにこだわろうというのは練習中も試合前も話していて、前半は接点というラグビーの一番シンプルなところで勝てていた部分があって良かったですが、後半につれて明治さんの勢いのあるアタックに飲まれてしまったかなと思います。

――個人としては、コンタクトの部分など振り返ってみていかがですか

 自分の強みはコンタクトしかないと思っているので、試合前もそこにフォーカスして臨んだのですが、もっといけたかなという後悔はあります。

――残すシーズンに向けて意気込みをお願いします

 4年早明への意気込みでも話した通り、この試合を最後にするつもりは僕を含めて4年生全員ないと思うので、また練習から自分のアピールを積極的にしていって、少しでも上のカテゴリーに上がれるように励みたいと思います。

NO・8渡辺駿斗(商4=東京・早実)

――今日、4年生中心の試合となりましたが、どのような意気込みで挑んだか教えてください

 相手が対抗戦で負けた明治でコンタクトの強い相手なので、そこで絶対に引かないで前に出るというのを意識していました。ずっと強い気持ちを持って、負けないという思いで挑みました。

――その気持ちが本日のプレーにしっかり体現されていたと思います。ご自身のプレーについて可能な範囲で評価をお願いします

 正直言うと、記憶が飛んでいるので覚えていないです(笑)。何個か自分の中で良いタックルには入れたりとか、しっかり前に出て止めれたりしたプレーは多かったという感覚はあります。

――残すシーズンに向けて意気込みをお願いします

  今回明治に負けてしまったので、Aチームの選手たちにしっかり明治にリベンジしてもらって、あと1カ月やり切ってチーム全員で『荒ぶる』を取りに行きたいと思います。

WTB磯崎錬太郎(商4=徳島・城東)

――4年生中心の試合となりましたが、どのような心境で迎えられましたか

 この試合を最後にするつもりは全くなくて、上のチームに上がるための一つの試合と位置付けていました。この試合をきっかけに上に這い上がるという気持ちで挑みました。

――スピードあるゲインが目立っていましたが、どのようなことを意識して試合に挑まれていましたか

 余計なことを考えずに、自分の強みのスピードあるヒットを思いっきりやる。そして、一つでも前に行ってゲインしていくというのが僕の役割であるので、その役割を全うしようと考えていました。

――実際にその意識されたことを踏まえて、ご自身のプレーの評価をお願いします

 横とコミュニケーションができなくて、外でブレイクされる場面が多々ありました。そこは修正すべきポイントだったので、今後同じような場面があった時は、同じミスを繰り返さないようにしていきたいと思います。

――4年生中心のBKメンバーだったと思いますが、周りへの評価はいかがですか

 12番の三浦(称児、人4=大分舞鶴)がかなり良いコンタクトをしてくれて、ディフェンスでもアタックでも前に出てくれました。僕らもそれにかなり鼓舞されました。

――残すシーズン向けての意気込みをお願いします

 一つ一つの練習でも、Aチームの相手をするのではなくて、上に這い上がって行くという気持ちを忘れずにチャンスを大切にしていきたいと思います。

FB京山秀勇(人4=福岡・東筑)

――4年早明戦ということで、4年生にとって思い入れのある試合だったと思いますが、どのような心境で挑みましたか

 先週、明治にAチームが負けて、僕たち4年生らが明治に対して早稲田ラグビーをもう一度体現できるかということをしようとしていたのと、ただ良い試合をするのではなく、絶対に勝って結果で残そうと思っていました。

――実際に今日の試合を振り返ってみていかがでしたか

 前半は結構体を当てることができていたと思いますが、やっぱり途中で受けだしてしまって、全然勝てるゲームだったというか、流れをもうちょっとつかめれば、もっと違う結果になっていたのに、そこを逃してしまったという部分ですごく悔しいです。

――藤井選手の復帰戦でもありましたが、ゲームキャプテンとして帰ってきた藤井選手に対していかがですか

  ふじはすごく自分に対して厳しく取り組んでいて、去年もずっと一緒にやっていたのですが、そのふじが帰ってきたというところで、ふじをゲームキャプテンにして勝たせてやりたいという気持ちがありました。ふじは自分に厳しくやるタイプなので、そこはキャプテンとして言葉に重みがあるというか、すごく尊敬できる部分です。

――ご自身のプレーについて、キックやゲームメイクなど振り返っていかがですか

 後半は特に風上の中で、少し奥にキックを蹴りながら、敵陣でプレーをするべきだったのですが、そこをうまくコントロールできなくて、自陣に張り付きになってしまった時間がとても多かったです。僕自身の強みがキックなので、そこをより磨いていかないといけないと思います。

――残すシーズンへの意気込みをお願いします

 僕自身まだこれからのチャンスはあると思いますし、最後の最後まで『荒ぶる』に向けて努力して頑張っていきたいと思います。

 

ジュニア冬季オープン戦
早大 スコア 明大
前半 後半 得点 前半 後半
12 21 19
12 合計 40
【得点】▽トライ 井上、山野▽ゴール 鳥海(1G)
※得点者は早大のみ記載
早大メンバー
背番号 名前 学部学年 出身校
後藤 良太 文4 埼玉・早大本庄
山野 裕都 教4 東京・早実
池田 裕哉 スポ3 東京・明大中野
松下 慶伍 教4 東京・早実
◎藤井 将吾 スポ4 大阪・早稲田摂陵
小池 航太郎 商4 東京・早実
宮本 大生 文構4 埼玉・早大本庄
渡辺 駿斗 商4 東京・早実
井上 泰志 スポ3 福岡・東筑
10 鳥海 雄図 教4 東京・早実
11 磯崎 錬太郎 商4 徳島・城東
12 三浦 称児 人4 大分舞鶴
13 岡本 大輝 スポ4 東京・本郷
14 鈴木 陽結 政経4 東京・早大学院
15 京山 秀勇 人4 福岡・東筑
リザーブ
16 真田 稜大 教2 東京・早実
17 下間 元貴 スポ4 秋田
18 新井 瑛大 教1 大阪桐蔭
19 若松 泰佑 文構3 東京・早実
19 佐土原 脩 基理4 埼玉・早大本庄
20 野島 信太郎 教1 東海大大阪仰星
6’ 飯田 開登 教4 愛知・千種
20 西浦 剛臣 社3 ニュージーランド・ハミルトン・ボーイズ・ハイスクール
10’ 大賀 雅仁 スポ1 神奈川・桐蔭学園
22 木村 晴 スポ4 北海道・函館ラサール
13’ 仲山 倫平 法2 ニュージーランド・ウェリントン・カレッジ
11 三浦 哲 文構3 東京・早実
23 溝井 颯太朗 スポ3 北海道・函館ラサール
※◎はゲームキャプテン、監督は大田尾竜彦(平16人卒=佐賀工)