第1回目を飾るのは、今季U20日本代表としてワールドラグビーU20チャンピオンシップに出場した栗田文介(スポ2=愛知・千種)、野中健吾(スポ2=東海大大阪仰星)、矢崎由高(スポ1=神奈川・桐蔭学園)だ。下級生ながらチームの中心で活躍を見せる3人に、世界の舞台で戦い肌で感じたこと、そして秋以降の赤黒への思いについて伺った。
※この取材は9月8日にZoomで行われたものです。
桜のジャージーを身にまとって
U20日本代表の対ニュージーランド学生代表戦でゲインする野中
――最初に、他己紹介をお願いします
矢崎 2年生の野中健吾さんです。みんなからは、健吾と言われています。ラグビーが上手で、今年も10番の司令塔としてチームをリードしてくれると思います。口数はそんなに多くないですが、喋ると優しくて面白いです。
野中 2年生の栗田文介くんです。みんなから文介と呼ばれていて、ラグビー面では、寡黙(かもく)に自分の責任を全(まっと)うするタイプで非常に頼もしく思っています。私生活ではすごくシャイなので、可愛い部分があって(笑)。みんなからは、たまにぶんちゃんと言われていることもあります。
栗田 1年生の矢崎由高くんです。先輩に人懐っこくて、可愛い面があります。ラグビーになったら皆さんも知っている通り、スーパープレーヤーで、いつも助けてもらっています。
――では、U20日本代表での経験についてお話を伺いたいと思います。まず、それぞれ選抜された時のお気持ちをお聞かせください
矢崎 僕は、U20の選考合宿に途中参加で、最後の最後まで招集してもらえるかすごく不安でした。飛び級だから落ちる、というのは嫌だったので、実際に遠征に行けることが決まった時は素直にすごく嬉しかったです。
野中 僕は、サモア遠征から続いての選出だったので、率直に嬉しかったです。やってやるぞという強い気持ちが芽生えました。
栗田 僕は、2月あたまの合宿でケガをしてしまい、2カ月ぐらいラグビーできなくて復帰後に全然呼ばれる気はしていませんでした。ですが、秩父宮で行われた対学生代表ニュージーランド戦の試合前に呼ばれて。まさか選抜していただけるとは思っていなかったので、素直に嬉しい気持ちと責任感がありました。
――1番印象深い試合を選ぶならどの試合ですか
矢崎 僕は初戦のフランス戦です。同年代の選手なのに、自分たちとこれだけ差があるのかということをすごく痛感させられた試合でした。
野中 僕はニュージーランド戦です。前半リードする場面もあり、世界との壁を少し縮められたかなと感じました。そこは自信になった試合になりました。
栗田 僕は初戦のフランス戦です。(僕は)その試合に出ていませんが、外から見ていて前半に相手との差がもう歴然だったのが印象に残っています。全局面で押されていましたが、後半はFWがスクラムとモールで相手に勝てていてすごいなと思いました。
――世界と戦ってみてそれぞれ学んだことや、収穫点があれば教えてください
矢崎 僕は高校日本代表の遠征でアイルランドと試合した時に、一勝一敗で自分たちとも互角にやり合えた感触がありました。ですが、ひとつ学年が上がるだけで手も足も出ないようなすごいレベルが上がったという、世界の壁を痛感しました。
野中 やっぱり日本人とは違った強さを持っている相手に対して、どうやって戦っていくかというのを考えることが多くて。その中でスキル面は通用する部分もあったかなというのは感じました。
栗田 僕は、自分よりフィジカルの大きな相手と当たったことで、日本の帝京大や明治大といった大きい相手に当たるときの自信のようなものがついた気がします。
――遠征中に早大の試合は見ていたのでしょうか。見ていて何か感じたことや印象があれば教えてください
矢崎 1番印象に残ったのは、やっぱり帝京大戦です。 昨季優勝して今年も強いと聞いていたのですが、(今年も)やはり本当にすごい強いメンバーが残っていて差があるということを感じました。僕たちはチームに帰って、秋シーズンに向けてチームのレベルアップにつなげないといけないなという思いもありました。
野中 思っている以上に点差が開いていたので、びっくりしたのですが、帰ってから少しでも力になれたらいいなとは思っていました。
栗田 僕も帝京戦です。FWがラインアウトでもスクラムでもモールでも帝京大に圧倒されていて。でも、帰ってきてから合宿などでFWはその部分をしっかり強化したので、秋シーズンではリベンジできるように頑張ります。
――海外の滞在先で面白いエピソードがあったら教えてください
野中 南アフリカで由高が散髪屋さんに行って、そのときちょっと面白い髪型になって帰ってきたことです。結構短髪になって(笑)。みんなに笑われていましたね。
――日本に帰ってまず1番にしたかったことはなんでしょうか
栗田 僕はベタですが、日本食を食べたかったです。
野中 お風呂に入りたかったですね(笑)。湯ぶねがなかったので、それがしたかったです。
矢崎 僕はウォシュレットを使いたかったです(笑)。便座が冷たくて。なんか改めて日本のトイレって優秀だなと思いました(笑)。
夏季シーズンを振り返って
関東大学春季大会(春季大会)明大戦にて、スクラムを組む栗田
――いつ早稲田に合流したのか教えていただいてもよろしいですか
一同 7月末です。
――ありがとうございます。では、何か合流してからチームメイトや監督から声をかけられたことがあれば教えてください
矢崎 「お疲れ様」とすごいたくさんの人に言ってもらえましたが、やっぱり「世界はどうだったか」と聞かれることがまあ多くて。あとは、「どこが1番強かったか」とかという質問はすごいされました。
栗田 僕はちょっと先発で1試合も出ることがなかったので、「先発になりなよ」とはみんなから言われました(笑)。
――戻ってきた時、正直チームの雰囲気をどのように感じましたか
野中 ラグビーに対する姿勢がすごくみんな前向きになっていて、全員で勝つというところが意思統一されている雰囲気を感じました。
栗田 僕たちがいない間、きつい練習があったと思いますが、本当に全員がレベルアップしていてすごいなと思いました。
――では、夏合宿のことについてお聞きします。矢崎選手、初めての早稲田の夏合宿はいかがでしたか
矢崎 合宿の初めに大田尾さん(大田尾竜彦監督、平 16 人卒=佐賀工)がしんどい合宿になるというのをお話されて、その想像通りと言いますか、しんどい合宿で。でもチームとしても、個人としても、すごく身になる合宿だったと思います。
――夏合宿で意識したことや目標と、その達成度具合を教えてください
矢崎 僕はやっぱりまだ早稲田でラグビーをしている時間が皆さんより少ないので、早くチームに戦術的にもフィットしなければいけないというのはすごく考えていました。戦術やどの選手がどういう動きをするのか、ということへの理解を意識していました。もちろん、自分のスキルアップは前提として、自分がどれだけ秋シーズンに向けて(チームに)ハマれるかというのを意識していました。
野中 僕は、毎日成長し続ける、昨日よりも成長するという部分で、個人としてもチームとしても成長した合宿になったと思っています。
栗田 特にFWの部分、本当にスクラムとモールは、合同練習や自己練習でもたくさん練習しました。なので、本当にそこの部分で秋シーズン、絶対勝ちたい気持ちになりました。
――夏合宿で今季初めて帝京大と試合をしてみての感覚を教えてください
矢崎 BKからするとモールやスクラムの強さは正直分かりませんが、(相手の)BKはすごくディフェンスも強くて。アタックでも、力のあるランナーがどんどん走り込んできて手強い相手だと思いました。
野中 やっぱり自分たちの形を作れなかったなというところが1番です。相手どうこうよりも、自分たちで崩れていったという感じなので、スコアに向けて自分たちの形を確立して戦っていきたいと思っています。
栗田 前半はしっかり戦えていましたが、後半はフィジカルの面や、健吾がさっき言ったように自分たちで崩れてしまった部分があったので、そこは修正していきたいです。FWはスクラムで競えていたので、そこは成長の部分かなと思います。
――夏合宿での何か思い出エピソードがあれば教えてください
野中 昨年に比べて合宿がしんどすぎて、みんな寝るのがすごく早かったです。もうみんな暗かった部屋が(笑)。なんかはしゃぐ元気もなかったので、すぐ寝てましたね。
栗田 特にFWは体重増量ということで、本当に10時までに目標体重をクリアしないといけないということで、みんな必死にご飯とかを食べていました。
矢崎 僕も体重増量はすごくしんどかった。
対抗戦に向けて
春季大会の明大戦で初の赤黒デビューを果たした矢崎
――次は関東大学対抗戦(対抗戦)に向けてのお話を伺います。矢崎選手は初めての対抗戦になりますが、今の心境はいかがでしょうか。
矢崎 昔から見てきた早稲田の対抗戦が、実際、自分にも始まるというので、すごい緊張感と試合に出させてもらう責任感が両方あります。いいシーズンにしないといけないなという自覚があります。
――野中選手、栗田選手は2度目の対抗戦となります。心境はいかがですか
野中 これから負けられないシーズンに入ってくると思うので、目標はやっぱり優勝ですが、目の前の一試合一試合を丁寧に大切にして戦っていきたいと思っています。
栗田 赤黒を着る責任や、早稲田の代表として戦う責任を選ばれた23人がしっかりと持って荒ぶるに向けて一戦一戦、戦っていきたいなと思います。
――楽しみな試合はありますか
矢崎 僕は、やっぱり早明戦です。僕が春に赤黒デビューしたのが明治大学戦でした。そこでは負けてしまいましたが、たくさんのいい選手たちが揃っている中で、早稲田が明治を倒すというのを実現したいと思っています。
野中 僕はやっぱり初戦ですね。やっぱりシーズンインで全てが1発目という点で、すごく緊張感もありますが、そこを楽しんで試合に臨めたらいいなと思ってます。
栗田 僕は、帝京大戦です。春と夏、本当に大きな差で負けてしまったので、しっかり勝って借りを返したいなと思います。
――では、その春に負けた明大や帝京大にリベンジを果たすために、今チームに必要だと思うことを教えてください。
野中 やはり、よりチームになることが大事だと思っています。秋シーズンレベルアップして、チームで成長し続けたいと思っています。
栗田 これから一戦一戦本当に大切になってくるので、チームとしてミーティングなどのグラウンド外の部分でもしっかり準備していきたいなと思います。
矢崎 これからシーズンが進んでいく中で、試合ごとにチームとしてレベルアップしていけたらと思います。
――自分のどのようなプレーでチームにインパクトを与えたいですか
矢崎 僕はやっぱりボールキャリーの、特にランを見ていただけたらと思います。
野中 僕は10番として、冷静なゲームメイクをしていきたいなと思います。
栗田 僕は器用なプレーヤーでもないので、激しいコンタクトの部分を見てもらいたいなと思います。
――最後に、対抗戦に向けて意気込みとファンの方へメッセージをお願いします
矢崎 対抗戦の目標は優勝ですが、一戦一戦しっかり勝ち上がって、チームも個人もレベルアップしていきたいと思います。ファンの方々はすごい楽しみにしてくれていると思うので、春や夏合宿より強くなった早稲田を期待していてほしいです。
野中 去年よりも違った早稲田を見せることができるように一戦一戦を戦っていくので、応援よろしくお願いします。
栗田 夏合宿などを乗り越えて、レベルアップした姿を見せることができるように頑張るので、応援の程よろしくお願いします。
――ありがとうございました!
(取材・編集 川上璃々、戸祭華子、西川龍佑)
意気込みを書いていただきました!
◆栗田文介(くりた・ぶんすけ)(※写真左)
2003(平15)年12月18日生まれ。184センチ。104キロ。愛知・千種出身。スポーツ科学部2年。昨季、対抗戦の青学戦でLOとして赤黒デビューを果たした栗田選手。「選抜していただけると思っていなかった」というU20日本代表の切符をつかみ、世界舞台での経験を糧に今年も急成長を遂げる。低く鋭いタックルやパワフルなボールキャリーで今年もチームに勢いを与えます!
◆野中健吾(のなか・けんご)(※写真中央)
2003(平15)年4月29日生まれ。181センチ。94キロ。東海大大阪仰星出身。スポーツ科学部2年。取材では質問一つ一つに真剣に答えてくださり、野中選手の堅実さが伝わってきました。毎回安定したゲームメイクを見せ、チームを勝利へ導く早大期待のスタンドオフ。秋シーズンでもチームの大きな力となること間違いなしです!
◆矢崎由高(やざき・よしたか)
2004(平16)年5月12日生まれ。180センチ。85キロ。神奈川・桐蔭学園出身。スポーツ科学部1年。1年生とは思えない突破力とスピードで春シーズンから赤黒をつかみ、大活躍を遂げる矢崎選手。人懐っこい性格ということで、対談中も微笑みながら先輩と掛け合って話している様子が印象的でした。鍛練の夏を超え、ひと皮むけた矢崎選手の会場を沸かすスーパープレーに期待です!