炎天下の中、熊谷ラグビー場にて早大は昨年王者・帝京大を相手に関東大学春季大会(春季大会)の最終節に臨んだ。両者ともに春シーズンの集大成を表すことができるか、注目が集まった試合。前半、早大はスクラムで圧倒され、立て続けにトライを許してしまう。点差を離され、0ー33で試合を折り返した。無得点のまま終われない早大は、後半10分に先制点をマーク。その後もチャンスを得点につなげ、計3トライを獲得した。しかし、帝京大の猛攻にディフェンスが崩され、最終スコアを21ー60とし、敗北を喫した。今日の試合をもって、春季大会は閉幕。早大は3勝2敗という戦績で終えた。
前半は、帝京大にスクラムから試合の主導権を握られ、厳しい試合展開となった。開始8分、早大は自陣ゴール前のスクラムで押され、ボールを奪われてしまう。帝京大FWの連続攻撃を止めきれず、先制トライを許す。その後も、一つ目の接点でコミットしきれず、帝京大のギャップを突くアタックに翻弄(ほんろう)され、得点を重ねられる。早大は、アタックでチャンスメイクできていたが、なかなかトライに結びつけることができない。無得点のまま計5トライを奪われ、前半を0ー33で終えた。
相手ディフェンスを突破するFL粟飯原謙(スポ2=神奈川・桐蔭学園)
後半、追い上げを図りたい早大は、序盤から果敢に敵陣へ攻め入る。しかし、CTB岡﨑颯馬(スポ4=長崎北陽台)が自分たちの課題として「フィニッシュまで行ききれない、相手ボールで終わってしまう」と語るように、LO池本大喜(文構4=東京・早実)らが大きくゲインするものの、その後のプレーで精度を欠き、ボールロストしてしまう場面が目立った。後半10分、自陣22メートル付近で早大がディフェンスでプレッシャーをかけ、帝京大が乱れたところをWTB杉野駿太(政経3=東京・早大学院)がパスカット。インゴールまで走り切って後半の先制点を獲得した。勢いに乗りたい早大だが、帝京大のテンポの早いアタックにディフェンスがついていけず、連続3トライを献上してしまう。試合終了間近の43分、SO吉岡麟太朗(スポ3=東京・本郷)のスペースを突いたキックにBKが反応し、最後はFB久富連太郎(政経4=島根・石見智翠館)がトライ。しかし、点差を縮めることは叶わず、最終スコア21ー60で早大の春シーズンは幕を閉じた。
スピ―ドに乗って自陣からインゴールまで独走するWTB杉野
スクラムで押されてしまったものの、ラインアウトではかなりの精度が見え、早大のセットプレーの成長がうかがえる。試合を終えて、大田尾竜彦監督(平16人卒=佐賀工)は「進むべき道、課題が明確になった」と語る。夏以降は、アタックの精度やスクラムなど取り組むべき課題をクリアすることが重要となってくるであろう。王者・帝京大との差を埋めるべく、奮闘し、更なる成長を遂げていく選手たちから目が離せない。
(記事 長野恵治、写真 川上璃々)
コメント
大田尾竜彦監督(平 16 人卒=佐賀工)
――本日の試合の振り返りをお願いします
試合は得点差がつきましたが、早稲田として進むべき道がしっかり見えたと思います。この先の夏、秋に向けてどういったトレーニングをしていかなければならないのかというのが、すごく明確になったという意味で非常に収穫は大きかったです。やはり最後のトライにも集約されますが、代わった選手もしっかりプレーしていましたし、収穫の多い試合だったと思います。
――今日は点を取れなかったことに関して、ディフェンスを破られるシーンがあったりといったところですか
そうですね、ラインブレイクの数は結構あったと思いますし、最後どうやってフィニッシュに持っていくか、どういったところで誰がボールを触ったらどうなるのかというところですね。スクラムはかなりプレッシャーを受けましたが、ブレイクダウンのところはきちんと整理すればやれるという感覚があります。
――今このような点差になった理由は
まずは自分たちがボールを持っているところで、いろいろな形でロストしていることが一番大きなポイントになります。また、セットプレーからのボールの運びも全然上手くいっていないので、その辺を整理していくことは必要かなと思います。
――スクラムについては自信がある部分もあったと思いますが、今試合を受けていかがですか
仲谷(仲谷聖史スキルコーチ)も入れて、スクラム強化をやっていますが、(今試合では)スクラムはメンバーを少し入れ替えて合っていないところがあったのと、マインドセットのところでも足りていなかったと思っています。要は練習でやっていたことが試合になると少しバタバタしてしまったのかなと思います。春に東海大とやったときにはスクラムは合ってきていたので、その辺は今までやってきたことがゼロになるわけではないですし、自信と見つめ直すことを両方やってより良いものを作っていきたいと思います。
――春シーズン最終戦となりました。春シーズンの総括をお願いします
春シーズンは、昨年の負けからどのようなものを自分たちで作り上げていくかというのを考えた時に、昨年一昨年よりも厳しいトレーニングを積んでいくことが大事だと話をして、選手もそれを感じてくれて、トレーニングをしてきました。結果として、今日は40点差となりましたが、自分たちがこの春に積み上げてきたものは、僕は必ず秋に昇華して上に上がっていくと思っています。結果としては明治さんと帝京さんに負けてしまいましたが、秋につながる春を過ごせたのでは思います。
――春シーズンで伸びた選手を挙げるとしたら
結構いますが、今日で言えば12番の守屋(CTB守屋大誠、政経3=東京・早実)とか伸びましたし、成長してるのは吉岡ですね。あとは金子(CTB金子礼人、法2=福岡・西南学院)、磯崎(WTB磯崎錬太郎、商4=徳島・城東)も非常に安定してきています。大祐(SO伊藤大祐主将、スポ4=神奈川・桐蔭学園)や颯馬を(CTB岡﨑颯馬、スポ4=長崎北陽台)をはじめとする軸となる選手に加えて、あとはどれだけの選手が伸びてチーム力を高めるかという意味では、昨年まで経験がそこまで無い選手たちが戦えるようになってきたのがポイントだと思います。
SO伊藤大祐主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)
――試合の振り返りをお願いします
負けて悔しいという気持ちが一番強いです。正直、今は振り返りができていないので、これから自分のプレーの何がいけなかったのか見つめ直して夏合宿に向けトレーニングしていきたいと思います。
――昨年の王者との戦いで感じた収穫と差を教えてください
試合をして、帝京の方が疲れていると感じました。今までタフな練習をしてきて最後に点が取れたのは大きな収穫だと思います。差を感じた部分はミスをミスにしない帝京と、ミスをミスにしてしまった早稲田という感じです。
CTB岡﨑颯馬副将(スポ4=長崎北陽台)
――今日の試合を振り返っていかがでしたか
今日は勝ちにいったのですが、そこに届かなかったというのがすごく悔しいです。また、(試合をして)1つのミスが帝京大と戦う上で大きな結果につながると感じました。これから、次の試合に向けてやるべきことを一つずつクリアにし、リベンジできるようにしていきたいです。
――王者と戦った上での収穫と、これから高めていきたい点はどこでしょうか
ボールアタックを仕掛けるというところで、早稲田が結構チャンスメイクできたことに関してはいい印象を持っています。ですが、そこで取り切れるのが帝京大学で、フィニッシュまで行ききれない、相手ボールにして終わってしまうというところが自分たちの今の課題です。どれだけ良い崩しをしても、取り切る精度をこれから積み上げていかないといけないですし、チームとして高い意識を持ってやっていかなければと思っています。
WTB杉野駿太(政経3=東京・早大学院)
――今日の試合を振り返っていかがでしたか
帝京大の強いコンタクトに対して、受け身になってしまう部分があり、全体的にディフェンスが後手に回ってしまったと思います。その影響で、早稲田の時間というのが少なかった印象です。アタックに関しては、早稲田として継続できればトライまで持っていける自信はありましたが、最後まで取り切る力というのが、自分を含めて今後の課題だと思いました。
――後半先制トライをマークされましたが、どのような気持ちですか
早稲田がやりたいかたちでのトライではなかったですが、全体としてディフェンスで前へ出ることを意識し、実行できていた結果、功を奏して自分のトライにつながったと思います。
――個人としての課題はありますか
今日の試合では、体力不足が顕著に出てしまい、そこは改善しなければならないと反省しています。WTBとして自分のボールキャリーで継続を途切れさせてしまったのも、課題だと思いました。
――最後に今後の意気込みをお願いします
夏合宿や秋に向けて、チームとしての課題、体力面やボールロストなどの個人の課題に向き合って、少しでも成長していきたいと思っています。
関東大学春季大会 | ||||
---|---|---|---|---|
早大 | スコア | 帝京大 | ||
前半 | 後半 | 得点 | 前半 | 後半 |
0 | 3 | T | 5 | 5 |
0 | 3 | G | 4 | 1 |
0 | 0 | P | 0 | 0 |
0 | 0 | D | 0 | 0 |
0 | 21 | 計 | 33 | 27 |
21 | 合計 | 60 | ||
【得点】▽トライ 杉野、佐藤、久富 ▽ゴール 伊藤(1G)吉岡(2G) | ||||
※得点者は早大のみ記載 |
帝京大戦早大メンバー | |||
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背番号 | 名前 | 学部学年 | 出身校 |
1 | 門脇 浩志 | スポ3 | 神奈川・桐蔭学園 | 前半38分交代→17山口 |
2 | 佐藤 健次 | スポ3 | 神奈川・桐蔭学園 | 後半29分交代→16安恒 |
3 | 池田 裕哉 | スポ3 | 東京・明大中野 | 前半38分交代→18川﨑 |
4 | 細川 大斗 | 社4 | 東京・早実 |
5 | 池本 大喜 | 文構4 | 東京・早実 | 後半23分交代→19若松 |
6 | 粟飯原 謙 | スポ2 | 神奈川・桐蔭学園 | 後半17分交代→24鈴木 |
7 | 田中 勇成 | 教2 | 東京・早実 | 後半0分交代→20永嶋 |
8 | 村田 陣悟 | スポ4 | 京都成章 |
9 | 宮尾 昌典 | スポ3 | 京都成章 | 後半25分交代→21島本 |
10 | ◎伊藤 大祐 | スポ4 | 神奈川・桐蔭学園 | 後半19分交代→22吉岡 |
11 | 杉野 駿太 | 政経3 | 東京・早大学院 | 後半24分交代→26鈴木 |
12 | 守屋 大誠 | 政経3 | 東京・早実 | 後半35分交代→25岡本 |
13 | 岡﨑 颯馬 | スポ4 | 長崎北陽台 | 後半29分交代→23金子 |
14 | 磯崎 錬太郎 | 商4 | 徳島・城東 |
15 | 久富 連太郎 | 政経4 | 島根・石見智翠館 |
リザーブ | |||
16 | 安恒 直人 | スポ3 | 福岡 |
17 | 山口 湧太郎 | スポ2 | 神奈川・桐蔭学園 |
18 | 川﨑 太雅 | スポ4 | 東福岡 |
19 | 若松 泰佑 | 文構3 | 東京・早実 |
20 | 永嶋 仁 | 社4 | 東福岡 |
21 | 島本 陽太 | スポ4 | 神奈川・桐蔭学園 |
22 | 吉岡 麟太朗 | スポ3 | 東京・本郷 |
23 | 金子 礼人 | 法2 | 福岡・西南学院 |
24 | 鈴木 風詩 | 社3 | 国学院栃木 |
25 | 岡本 大輝 | スポ4 | 東京・本郷 |
26 | 鈴木 陽結 | 政経3 | 東京・早大学院 |
※◎はゲームキャプテン、監督は大田尾竜彦監督(平16人卒) |
関東大学春季大会Aグループ星取表 | ||||||
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帝京大 | 明大 | 早大 | 東海大 | 東洋大 | 流通経大 | |
帝京大 | * |
中止 不成立 |
○60-21 10T5G |
○64-5 10T7G |
○92-14 |
○93-0 15T9G |
明大 |
中止 不成立 |
* |
○45-24 7T5G |
○41-31 7T3G |
○102-7 16T11G |
○58-12 10T4G |
早大 |
●21-60 3T3G |
●24-45 4T2G |
* |
○33ー19 5T4G |
○48-26 8T4G |
○50-31 8T5G |
東海大 |
●5ー64 1T0G |
●31-41 4T4G1PG |
●19ー33 3T2G |
* |
○113-21 17T14G |
○40-21 6T5G |
東洋大 |
●14-92 2T0G |
●7-102 1T1G |
●26-48 4TG |
●21-113 3T3G |
* |
●21-29 3T3G |
流通経大 |
●0-93 0 |
●12-58 2T1G |
●31-50 5T3G |
●21-40 3T3G |
○29-21 5T2G |
* |
※帝京大Gは帝京大百草園グラウンド、静岡・エコパは静岡県エコパスタジアム、熊本・えがおSは熊本県えがお健康スタジアム、山梨・JITスは山梨県JITリサイクルインクスタジアム、早大Gは早大上井草グラウンド、神奈川・小田原は神奈川県小田原市城山陸上競技場、東洋大Gは東洋大川越ラグビーグラウンド、流通経大Gは流通経大第一ラグビー場、埼玉・熊谷は埼玉県・熊谷ラグビー場