2年ぶりの『年越し』 明大へリベンジを果たす!

ラグビー男子

 宿敵・明大に敗れ、悔し涙を飲んだあの日から1年が経った。全国大学選手権準々決勝、奇しくも昨季と同じ状況で迎えた本試合。リベンジに燃える早大は、再び明大戦に臨んだ。前半は、展開ラグビーからWTB松下怜央(スポ4=神奈川・関東学院六浦)が先制点を挙げる。中盤にはCTB吉村紘(スポ4=東福岡)がPGの成功でリードを保つが、終盤に逆転を許し、1点差で試合を折り返した。後半はまたもや松下のトライで流れを引き寄せ、攻守で凌駕(りょうが)。最後は相手の反撃を振り切り、27ー21で勝利を挙げた。大きな壁をひとつ破り、早大は2年ぶりの『年越し』を決めた。

 順調な滑り出しを見せ、先にスコアを動かしたのは早大。前半11分、BK陣を中心に左右へと展開し、最後はスピードに乗った松下が左隅を駆け抜け、先制トライを挙げた。28分、30分には明大の反則からPGを選択。これをCTB吉村紘(スポ4=東福岡)が敵陣右10メートル付近から冷静に沈め、スコアを13ー7とする。以降は拮抗(きっこう)したものの、ひとりひとりの前に出るプレーでプレッシャーをかけ続けた。36分にはPGのチャンスを得るが、ここは失敗。終盤に差し掛かった39分、明大のモールを起点に逆転トライを奪われてしまう。そして、13ー14と1点ビハインドで試合を折り返した。

 

先制トライを挙げたWTB松下

 後半も意地を見せ合う展開となった。入りこそは明大優勢の時間が続いたが、接点で競り勝ち、スクラムでもペナルティーを誘発する。すると後半17分、敵陣22メートルラインでの早大ボールスクラムからNO・8村田陣悟(スポ3=京都成章)が抜け出し前へ。その後、SH宮尾昌典(スポ2=京都成章)から、ラックサイドに駆け込んだ松下へとパスが渡り、松下が再びインゴールへ駆けこんだ。吉村のゴールも成功し、20ー14と再逆転に成功する。直後の19分にも、自陣22メートル付近での相手攻撃を宮尾がインターセプトし、華麗な独走トライを挙げた。その後はオフサイドを連発し、明大アタックの時間となる。28分にはモールで押し切られ、認定トライを献上。スコアは1トライ差の27-21に。互いにせめぎ合う試合展開が繰り広げられ、死闘は終幕へと向かった。ラストワンプレーとなった終盤、自陣に攻め込まれ会場に緊張が走る。しかし、強固なディフェンスで隙を与えず、最後はフランカー相良昌彦主将(社4=東京・早実)のジャッカルでボールを奪取。すぐさま吉村が外に蹴り出し、試合はノーサイドを迎えた。最終スコア27-21で雪辱を果たし、早大は1月2日に控える準決勝へ駒を進めた。

 

ボールキャリーするフランカー相良主将

 振り返ればこの1年、多くの選手は昨季の悔しさを口にしてきた。本試合のテーマは「苦しい展開の中でもみんなで一つのことを描いて一つのチームになっていく」(大田尾監督)ことを示す『ワンビジョン』『ワンチーム』。全部員の思いを背負ったこの一戦は、全部員の想いをつないだ勝利となった。特に接点で見せた芯の粘り強さは、今試合の勝敗を分けたポイントともいえるだろう。「チームがまとまるようになったことが一番の成長」(相良主将)。部員150人の日本一への挑戦は、まだまだ終わらない。京産大戦までの短い期間でさらに結束力を高め、早稲田ラグビーの真価を証明してみせる。

(記事 谷口花、写真 冷水睦実、山田彩愛)

コメント 

大田尾竜彦監督(平16人卒=佐賀工)

――今日の試合を振り返って

 今日の試合は最初の50分をしっかりと我慢してそこからギアを上げて頑張ること、そして最後22メートルの中の勝負になると思ったので、集中してやりきろうというふうに話をして、選手たちをグラウンドに送り出しました。本当によく頑張ってくれたなと思いますし、今日の試合に出た23人だけでなく、部員150人が対抗戦が終わった後に成長して来れたことが今日の試合につながったかなと思います。

――成長した部分は

 自分たちがやろうとしているゲームに対する実行力はかなり伸びてきたなと思います。そこにチーム力がこの3週間でついたなと思います。まだまだ伸びしろはあると思うので、いい状態かなと思います。

――伸びしろはどこでしょうか

 状況の見極めです。残り3分で敵陣にいて、3点がほしい、もしくは最悪DGを狙うこと、22メートルのセットプレーなど、そうした部分の状況判断がもう少しかなと思います。また、前半のゲームの作りかたも、このフェーズは取り切りたいだったり、引くだったり、の状況判断が難しいかなと思います。

――対抗戦期間で宮尾選手(昌典、スポ2=京都成章)をメンバーから外していたこともありましたが、その点についてお聞かせください

 宮尾は力のある選手なのですが、やはりまだ19歳ですし、彼自身目標を失ったり、自分自身の立ち位置に満足しているわけではないというのがありました。それがプレーに現れ、宮尾と話をし外していました。その間にSH小西泰聖(スポ4=神奈川・桐蔭学園)が出てきましたが、よく修正してくれたなと思います。

――試合展開は予定通りだったのでしょうか

 勝つのだったらこの展開かなと思っていました。先ほどのスクラムの話でも、こちらが、後半20分くらいに明治スクラムでペナルティーを出して、そこから22メートルに入られて繰り返しやられるというのが一番嫌だなと思ったので、井元(正大、文4=東京・早実)をリザーブに持っていき、野中(健吾、スポ1=東海大大阪仰星)も後半から出場させるという部分は非常にうまくいったなと思います。

――3週間を経て同じカードはいかがでしたか

 選手がかなり傷んでいたのですが、相手の実力も本物ですし、そこでチームがかなり一つにまとまっていました。先週の4年生による早明戦でも4年生がすごく引っ張ってくれて、対抗戦を終えて皆が必死に、がむしゃらにやってきたからこその今日というイメージが強いです。なので、きれいにデザインしての3週間ではなく、1週1週というイメージでした。

――早明戦のレギュレーションについては

 なんとも言えないですし、これについては厳しい戦いを2年連続でしたことは間違いないです。ただ何が正解かと言われればわからないですが、年を越したあたりで当たれればいいなとも思いますが、本当に与えられたものでやっていくしかないなと思います。

――昨年越せなかった年を越せることに関して

 率直に申し上げますと、うれしいです。やはりこの時期になると、チームがぐんぐん成長してきて、もう1週もう1週という欲がすごく出てきます。去年は志半ばでそれを達成できませんでした。タレントとしては去年の方がいたとは思いますが、今年のチームにはチームワークがあるので、少なくともあと1週見られるということは非常にうれしいです。

――伊藤選手がチームに入ったことでの変化について教えてください

 いろいろありますが、ミスもすればビッグプレーもします。でも彼がいれば対戦校に与えるプレッシャーが違うのではないかと思います。今日のゲームプランの中で小泉(怜史、文構4=東京・早実)を最初に出しておきたいという思いがあったので、大祐をSOで使いました。プレーのスピードが上がるので、そこが彼を使う要因です。

――今日のゲームテーマは

 『ワンビジョン』『ワンチーム』というもので、80分間の中で必ず苦しい展開が訪れますが、その都度みんなで一つのことを描いて一つのチームになっていくということを話していました。

フランカー相良昌彦主将(社4=東京・早実)

――今日の試合を振り返って

 今日、明治と試合するということは、去年の明治と同じ対戦カードで同じ準々決勝で当たっていたということもあった中で、先週4年生の早明戦があったのですがそれも負けてしまったので、同期の分もリベンジをしようと臨みました。結果、去年負けていたスクラムや接点の部分で成長した部分は見れたと思うので、今日の勝利は収穫の多い試合だったと思います。

――最後のジャッカルの狙いや気持ちと、ノーサイドの瞬間の気持ちを教えてください

 今年のチームは、誰でもできることを全力でやろうということで、『1/1000の拘り』と『Tough Choice』をテーマに設定していました。抜かれそうになったら全員で帰ろうだったり、誰かがケガをしたら全力でサポートしようというような意味があったので、それを自分がライン際まで帰って、ジャッカルをできたことはすごく良かったと思います。ノーサイドの後には、去年の先輩たちの顔や3、4年生の顔が浮かびました。

――チームが一番成長したのはどの部分でしょうか

 疲れている時や劣勢の時にチームがバラバラになってしまうことがあったのですが、僕が抜けていた1ケ月間で、吉村(紘、スポ4=東福岡)を中心に4年生がひとつになって、(普段)引っ張るキャラでない人も声を出すようになり、その結果チームがまとまるようになったことが一番の成長かなと思います。

――前半PGの選択は意図がありましたか

 全員とは共有せずに、ゲームリーダーと事前のミーティングで刻めるところは刻んでいこうと話はしてました。

――後半のスクラムではどのような感触がありましたか

 フロントローではないので分かりませんが、1年間かけてスクラムをやってきたので、そこの対応力はチーム全体として増しているのかなと思います。1年間やってきたことが出たのかなと思います。

――ペナルティーも選択されていましたが、いかがですか

 そこのプライドも1年を通してできてきたので、FWで勝負できるチームになったのだと思います。

――後半最初のトライにつながった部分ではいかがでしたか

 トーナメントに入っていく中でいろいろなオプションを持つことは当然なので、あそこの位置では最善の選択ができたと思います。

――最後には石田吉平選手(明大)とかなり讃え合っていましたが、どのようなお話をされていましたか

 以前から交流があったので、次頑張れよだったり、絶対に優勝してくれよ、次のステージでまた会おうといろいろ言ってくれたので、その言葉を力にして次も頑張りたいです。

――(相良選手は)どのような言葉をかけられましたか

 「優勝する」と言いました。

――長い間試合に出られなかったことに関しては

 夏まではケガをせずにやってこれたのですが、シーズンに入ってからなかなかうまくいきませんでしたが、逆にチームを一歩引いて見られたことは自分にとって大きなプラスになっているかなと思います。これまでの自分はとにかく厳しくやればいいという考えだったのですが、それが全員の正解ではないのだと感じました。一人一人に対して接し方を変えてみたりなどと、チームを俯瞰(ふかん)して見られるようになったことは大きかったと思います。

CTB吉村紘副将(スポ4=東福岡 )

――前日練習でいつもより長く蹴りこんでいたと思うのですが

外したこと自体は気にしなかったのですが、いい当たりでの外し方ではないというか、軌道が良くなかったので、しっくりくる感覚になるまではやっていました。(対抗戦の)早明戦と、この前の東洋戦では(決定率が)パーフェクトということを言われていて気にしないつもりでも意識してしまうところがありました。1個1個のキックを、意識せずに蹴ることができるかということを考えてこの1週間練習してきました。

――前日の練習はあまり決まってなかったと聞きましたが

 そうですね。練習のときはいつもそんな感じです。入ったかどうかではなくて、いつものリズムで蹴れてるかどうかにフォーカスしているので、まあ外れたら嫌ですが、そこまで悲観して試合には臨んでいないです。

――今回伊藤選手(伊藤大祐、スポ3=神奈川・桐蔭学園)とスタセンということで、実際組んでみていかがでしたか

 やりやすかったです。(伊藤には)野中(健吾、スポ1=東海大大阪仰星)と違って、ランが特徴です。しっかり大祐がそれを生かせるように外側の情報を、彼がそこに注力しなくてもいいようにを見て、与えようとしていました。大祐自身もスタンドとしての能力が非常に高く、スペースを探す力もすごくあるので、(僕に)その負担がかかる訳でもなくいい関係で試合ができたと思います。

――後半の、明大・石田選手のインターセプトについて

 焦りました。モニターを見たらペナルティーとなっていて、リプレイが流れているのかと思ったのですが、リアルタイムでのペナルティーだったので安心しました。

――次戦の相手のイメージをお願いします

 この試合に向かっていく上での準備もそうですが、僕たちには『荒ぶる』という目標があります。この試合も早稲田でやる最後の試合と思ってこの1週間すごしてきました。次の準決勝も(相手が)どちらにせよ手強いので、準決勝が最後の試合のつもりで準備して、パフォーマンスしたいです。ある程度試合を組み立てる上で、慶應ならキックから組み立て、京産大なら留学生のパワーのあるランニングがベースになってくると思います。どちらにしろ自分の強みをどれだけ長く出せるかが重要になってくると思うので、相手にあまり左右されずに準備をしたいと思います。

――先週の4年生中心の早明戦は、吉村選手にはどのように映っていましたか

 早稲田らしさというのが後輩やAチームに伝わった試合だと思います。最近は、うまい人や(体が)少し大きい人が試合に出る傾向があり、ひたむきに自分の出来ることをやり続ける文化が薄れてきていた中で、そういう文化をもう1回気づかせてくれた一戦になったと思います。大きい相手に向かっていく、自分の出来ることを100パーセント80分間やり続けるひたむきさということを感じ、負けはしましたがチームにとっても成長できる機会でした。今日の試合も、そういった早稲田らしさを体現できるようにということを考えていました。

――チームの雰囲気も、この1週間で変わりましたか

 言葉ではうまく説明できないのですが、チームになっているなという感じはします。具体的に言えば、お互いの雰囲気や練習中の声の掛け合いなどです。練習が終わったあと、今日よい練習だったと思えるような日々積み重ねているので、もっとみんながチームを好きになって最後の日まで駆け抜けたいと思います。

――相良主将(社4=東京・早実)も復帰しました

 最後のプレーも彼に助けられました。それこそチームがひとつになったひとつの要因だと思います。

 

◇試合後の他選手コメントはこちらから◇

「4年生が勝つというマインドを」(松下)/明大戦 試合後コメント集

 

全国大学選手権
早大 スコア 明大
前半 後半 得点 前半 後半
PG
PT
13 14 14
27 合計 21
【得点】▽トライ 松下(2T)、宮尾 ▽ゴール 吉村(3G2PG) 
※得点者は早大のみ記載
早大メンバー
背番号 名前 学部学年 出身校
川﨑 太雅 スポ3 東福岡
後半8分交代→17井元
安恒 直人 スポ2 福岡
後半0分交代→16佐藤
亀山 昇太郎 スポ2 茨城・茗渓学園
前田 知暉 社4 東海大大阪仰星
池本 大喜 文構3 東京・早実
◎相良 昌彦 社4 東京・早実
永嶋 仁 社3 東福岡
後半0分交代→20栗田
村田 陣悟 スポ3 京都成章
宮尾 昌典 スポ2 京都成章< /td>
10 伊藤 大祐 スポ3 神奈川・桐蔭学園
11 松下 怜央 スポ4 神奈川・関東学院六浦
12 吉村 紘 スポ4 東福岡
13 岡﨑 颯馬 スポ3 長崎北陽台
14 槇 瑛人 スポ4 東京・国学院久我山
15 小泉 怜史 文構4 東京・早実
後半8分交代→22野中
リザーブ
16 佐藤 健次 スポ2 神奈川・桐蔭学園
17 井元 正大 文4 東京・早実
18 平山 貴喜 スポ4 北海道・函館ラサール
19 藤井 将吾 スポ3 大阪・早稲田摂陵
20 栗田 文介 スポ1 愛知・千種
21 島本 陽太 スポ3 神奈川・桐蔭学園
22 野中 健吾 スポ1 東海大大阪仰星
23 磯崎 錬太郎 商3 徳島・城東
※◎はゲームキャプテン、監督は大田尾竜彦(平16人卒=佐賀工)