【連載】対抗戦開幕対談『Challenger』第1回 粟飯原謙×野中健吾

ラグビー男子

 初回を飾るのは、粟飯原謙(スポ1=神奈川・桐蔭学園)と野中健吾(スポ1=東海大大阪仰星)だ。早大ラグビー蹴球部に入部してはやくも約5カ月。関東大学対抗戦(対抗戦)が開幕し、1年生ながらに存在感を発揮するルーキーが抱く思いはいかなるものか。早大入学を決めた理由や春夏シーズンの振り返り、初めて挑む対抗戦への思いなど幅広く伺った。

※この取材は9月7日に行われたものです。

お互いのこと

――はじめにお互いのことを紹介してください

野中 (粟飯原は)常に面白くて、場を和ますという面では、すごく一緒にいて楽しい存在です。ラグビーになるとオンとオフの切り替えがすごくて、ラグビーに関してすごい熱い男だなという印象です。

粟飯原 (野中は)出身が関西というのもあって、僕がボケるとツッコミ役に回ってくれるので、プライベートでは非常に助かっていますね(笑)。場を引き締めるという面ではグラウンド内外において、1年生がまとまるきっかけになってくれているような存在で、個人的にはプライベートよりラグビーしてる姿が好きです。かっこいい男です。

――プライベートでの交流はありますか

粟飯原 僕が入寮したのが7月後半くらいからで、それ以前は、寮生と外勤生であんまり遊ぶというのがなかったのですが、寮生になってから休みの日は少し外出て遊んだりとか、っていう感じだよね?

野中 そうです。

粟飯原 (笑)。

――高校時代からお互いのことを知られていましたか

粟飯原 知らないです(笑)。僕浪人していたので、世代も違うので。ちょっと、僕だけしゃべってるわ(笑)。

野中 一個上の代で桐蔭学園が優勝していたので、まあ(優勝)してるなあという感じのイメージだけですね。

粟飯原 僕は全く知らなかったです(笑)。

早稲田ラグビーの始まり

早大入学を決めた理由を話す粟飯原

――なぜ早稲田を志望したのですか

野中 小さい頃から一番身近に早稲田がありました。テレビを通してですが、(早稲田の試合を)見る機会が多くて、その中で自分もジャージーを着たいという思いが高まってきました。

――東海大大阪仰星高から早稲田に来た先輩の姿も影響したのですか

野中 そうですね。去年卒業された長田さん(長田智希、令3スポ卒=現埼玉ワイルドナイツ)と河瀬さん(河瀬諒介、令3スポ卒=現東京サントリーサンゴリアス)の二人の存在は大きかったです。僕は中等部から(東海大大阪仰星)入ったので、お二人が高等部にいるときに一緒にプレーさせていただいていました。高校の姿と比べて大学ラグビーで強くなっていく姿を見ていて、自分もここで成長したいなということは感じましたね。

――では粟飯原選手はなぜ早稲田を選んだのですか

粟飯原 正直こだわりはありませんでした。高校のときに大学でもラグビーをやるんだろうなと思っていて、それが早稲田だったという感じです。やるのであれば、文武両道でやりたい気持ちがあったので、その環境がある早稲田になりました。

――高校ラグビーと大学ラグビーの違いはありますか

野中 フィジカルの面とスピード感の違いが一番かなと思っていて、外国人選手だったり、日本屈指のFWだったり、BKだったり、フィジカル面の差っていうのをこの半年で感じましたね。

粟飯原 ラグビーのフィジカルもそうなのですが、規模感というのが一気に広くなった気がします。例えば、施設だったり、メディアの関係だったり、バックアップしてくれる環境が高校よりは大きく変わってきたかなと思います。

――新人練習についてはいかがでしたか

野中 きつかったです。毎日が地獄で楽しいと思ったことはなかったです。

粟飯原 右に同じです。結構しんどい思いをしました。でもずっとしんどかったわけではなくて、終わりが近づくにつれて同期の結束感の高まりは確かにありました。

ルーキーのプライベート

仲良く話す2人

――オフの日の過ごし方は

野中 午前はとにかく寝て、午後から活動し始めます(笑)。映画を見たり温泉に行ったりたまにしているかなという感じです。

粟飯原 オフの日は寝たりだとか、ラグビー部の人たちと少し遠出したり夏シーズンはしていましたね。

――1年生は仲が良いのですか

粟飯原 仲良いと思います。

――同期はどんな学年ですか

野中 すごくいろいろなキャラがいて、いろいろな人がいる中でも仲は良いのかなという感じです。

――ムードメーカーは誰なのですか

粟飯原 皆…? 本当にたくさんいるのですが、僕の中では福島秀法(スポ1=福岡・修猷館)ですね。おもしろいですね(笑)。

野中 僕も福島秀法(スポ1=福岡・修猷館)かなと。良い意味で空気が読めないというか、自分が好きなこと、やりたいことをやるタイプで、それがすごく面白くて、良いムードにしてくれます。

――お互いの良いと思うところ、好きなところを教えてください

一同 (笑)。

野中 恥ずかしいな(笑)。

粟飯原 いっぱいあるな(笑)。

野中 (粟飯原の良いところは)人思いなところですね。友達と接しているときにいろいろな場面で友達思いだなということを感じますね。

粟飯原 まず友達思いな…。

野中 同じやん(笑)。

粟飯原 というのは冗談で、やはり風格があって、ラグビーをしている姿からも言葉で言い表せないような雰囲気を醸し出しています。それでみんなが同じ方向を向けるというか、リーダーシップもあるのでそういう意味では同期としては良いところでもあり、助かっている部分でもあります。

早稲田での初めての春と夏

初となる対抗戦でPOMに選出された野中

――春、夏シーズンを振り返って

野中 早稲田に入学して、わからないことばかりの状態でとにかく付いていくのに必死でした。上のチームで経験させていただく中で、先輩方にすごく温かく教えていただけた環境で、僕もやりやすく100パーセントでできたかなと思います。その中で課題も見えて、その課題が一番上のカテゴリーでプレーする中で見えたということは、自分の中でもすごく収穫なのかなと思っているのでそれを秋に生かしていきたいです。

――見えた課題というのは

野中 スピード面であったり、フィジカルの差があるなかでのディフェンスであったりというところです。そういうところを秋でしっかり修正していければなと思います。

――粟飯原選手はいかがですか

粟飯原 浪人をしていたので周りの選手と比べてブランクが1年間ほどありました。春は体の使い方など一日ずつ思い出すことから始めました。そこから何とか上のカテゴリーでプレーさせてもらって、完璧ではないですが、ある程度7割くらい満足できるような結果が残せたシーズンでした。上のカテゴリーに定着していく中で夏を迎えて、夏の中で僕も野中君と同じように課題を見つけました。弱みというのはいろいろ見つかったのですが、今は1年生なので弱みはある程度捨てて、強みを伸ばしていく秋シーズンにしたいと思います。

――夏はどこを強化されたのですか

粟飯原 ケガで夏合宿を迎えて、最初はケガ人としてリハビリに取り組んでいました。足をケガしていたので、できることだけやろうと上半身を強化して帝京大戦に臨みました。ある程度相手のことを抑えることだとか強化させた部分での収穫はあったので、これからも継続して取り組んでいこうと思います。

野中 個人的というよりかは、チームに順応するという部分です。やはりディフェンスで、チームとして強くならなければいけないなということで、そこでの課題をチームになじみながらレベルアップさせていきました。

――その手応えはいかがでしたか

野中 手応えというよりかは、少しずつですが自分の中で自信がついてきました。

――新人早明戦で勝利したときの気持ちはいかがでしたか

野中 正直、戦う前は勝てるとは思っていませんでした。ですが、僕たちのチームにはやれるだけやろうという雰囲気があって、自分たちができることを出そうとして(試合に)臨んだ結果、勝利に結びつきました。一人一人の能力では(明大に)劣っているかもしれませんが、チーム力では僕たちの代は強いのではないかなと思っています。

粟飯原 僕は逆で正直勝つと思っていました。当日に明治サイドの雰囲気を見て、足元をすくってやろうかなというマインドになりました。その日のゲームキャプテンが高校時代に後輩であった中島潤一郎(教1=神奈川・桐蔭学園)で、中島のリーダーシップは(高校時代に)1個上の立場から見てもあったので、それも相まって勝てるのではないかなと思っていました。正直、試合後の感想というのはあまり覚えていないのですが、新人早明戦を試合前に見返したりはしていますね。夏の帝京大戦前にも実際にそのときの映像を見て試合に臨みました。

――新人早明戦のときの先輩たちの声かけについてはどうでしたか

粟飯原 早稲田は全員でゲームを応援するので、ゲーム中もそうですし、試合後にもいろいろな先輩に声をかけていただきました。それは選手だけではなくて、トレーナーの人やマネジャーの人など早稲田ラグビー部全員で喜びを分かち合った瞬間でした。

野中 試合中の声援というのは、すごく感じていました。タックル一つ入るときであったり、ボールをもってキャリーするところだったり、一場面一場面で盛り上がってくれるのを感じたので、それが僕たちを後押ししてくれたのかなと思いますね。

初めての対抗戦で7番を背負って出場した粟飯原

――春、夏シーズンで一番印象に残った試合は

野中 春(関東大学春季大会)の帝京大戦です。僕は13番として出場したのですが、そこで自分の課題を突き付けられたというところと、チームとして一つにまとまらないと大差で負けてしまうのだなということを感じました。そういう試合を続けていたら、日本一には近づかないと思ったのでそういう点で一番印象に残った試合ですね。

粟飯原 夏の帝京大C戦です。夏の復帰戦になった試合で、(春は)帝京大に全カテゴリーで負けていて、その中で夏の初戦がC戦でした。全員でここから流れを生んでいこうという気持ちがあって、自分ができることを改めて考え直せた試合で、今のばねになっているものが要所にある試合でした。勝ったこともそうですし、自分の中で大切な試合ですね。

――粟飯原選手は夏合宿で京産大B戦後にすごく落ち込まれていた姿が印象的でした。その後の同志社大でA戦にスタメン出場されていましたが、その短い期間に何か変化などあったのですか

粟飯原 京産大B戦はゲーム内容が良くなくて、自分自身が思い詰めた部分もありました。落ち込んでいても周りの雰囲気を下げるだけなので、次の試合にフォーカスして、頑張るという意思を固めたことですかね。

――ちなみに同志社大はA戦のスタメンで出場されることは予想されていましたか

粟飯原 全く思ってなかったですね。本当に全く。なんならカテゴリーが落ちてしまったのかなくらいに思っていましたね。

――ではバックローのポジション争いが激化している中で、どういった部分で自身をアピールしていきたいですか

粟飯原 僕は誰でもできるようなことを一つ一つクオリティ高く発揮することがバックローの仕事だと思っています。できないことよりも、できることを突き詰めてやることが大事なのかなと思います。

――野中選手はCTBのポジション争いが激しい中、ご自身がアピールしていきたいところはどんな点にありますか

野中 僕が一番意識しているのは、安定感というところです。プラスを求めすぎず、マイナスを削除していくというところで、欲張りすぎず自分の責任を全うするべきだと思っているので、負けないところというかは、自分の安定感を伸ばしていきたいと思います。

――反対に自分自身と周囲に差を感じているところはありますか

野中 経験値の部分でもそうですし、まだ1年生なので緊張感だったりは劣っているところなので、自分にできるところというのを一つ一つ意識していきたいなと思います。

――CTBのプレースタイルの中で参考にしている先輩はいますか

野中 早稲田を卒業されている長田さんですかね。すごい方というのは接していても、プレーを見ていてもすごく感じるので、目標とする人ではあります。

夢見ていた舞台へ

初めての対抗戦へ意気込む野中

――初めての対抗戦となりますが緊張していますか

粟飯原  まだ実感が湧いていないという感じです。

野中 実感がないだけかもしれませんが、あまり緊張するタイプではないので。新人早明戦以外は緊張しません(笑)。

――対抗戦に対する印象はいかがですか

野中 今までテレビでしか見たことがなかったので、それをいざ自分がその場に立つとなると自分もそういう位置になったんだということは感じますし、負けられない一つ一つの試合が始まるなというのは実感としてあります。

粟飯原 試合とかをあまり見ないタイプなので印象は特にありませんが、やはり(桐蔭学園の)先輩たちが出てたり、元々(高校の)同期だった佐藤健次(スポ2=神奈川・桐蔭学園)が出ていた中で、自分もやっと大学ラグビーらしいことができるという実感があったりだとか、今は国立競技場でラグビーやってみたいな、どういう景色なのかなというのは少し気になります。

――早稲田ラグビーの中で尊敬している先輩はいますか

野中 僕は吉村紘さん(スポ4=東福岡)です。私生活の面でもラグビーの面でもすごくストイックなのはすごいなと思いますし、何に対しても手を抜かないという姿勢はこれから見習っていきたいなと思っています。

粟飯原 僕は二人いて、一人目が4年生の鏡さん(鏡鈴之介副将、法4=東京・早大学院)です。今はケガをされててチームを内側からのプレイヤーとして支えている状況ではないのですが、自分にできることを探している姿というのが後輩から見ても尊敬できるものが多くて、ラストシーズンなので少しでも試合に出ていただきたい先輩だなと思います。もう一人は小池くん(小池航太郎、商3=東京・早実)です。小、中学時代からの仲でずっと付いていっている選手なのですが、小池くんは良い意味でストイックではないというか、ラグビーを純粋に楽しんでいるような印象があって、自分にはまだラグビーを楽しめる余裕がないので、いずれは二人みたいになりたいなと思っています。

――自身のアピールポイントは

野中  このプレーというよりかは、80分間を通してプレーの精度を落とさないというのが僕の強みかなと思っています。

粟飯原 ひたむきなところを見てもらいたいと思います。あまり目立つタイプのプレイヤーではないので(笑)。

――今年の注目選手はいかがでしょうか

野中 キャプテンの相良さん(相良昌彦主将、社4=東京・早実)です。あの人がかける言葉の一つ一つはチームが一つにまとまり結束力が増すので、相良さんの思い切るプレーに注目してほしいです。

粟飯原 僕は4年生で1番をしている井元さん(井元正大、文4=東京・早実)です。この春夏を通して、早稲田の中でスクラムが自信になってきていて、その印象をつけさせてくれたのもスクラムの前3人だと思うのですが、井元さんが体を張ってくれて早稲田により自信をつけさせるという意味では、すごくお客さんも盛り上がるのではないのかなと思います。

――それでは対抗戦に向けての目標と意気込みをお願いします

野中 まずは試合に出ることが目標ですが、試合に出れたら自分にできること、責任を全うしたいなと思います。

粟飯原 僕も試合に出ることを目標にして、1年生なので自分にできることを見つけて、今後4年間の糧になるような試合を経験したいなと思います。

――最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします!

野中 もう一度強い早稲田というのを今年見せられるように頑張るので、応援よろしくお願いします!

粟飯原 お楽しみに!!

一同 (笑)。

――ありがとうございました!

(取材・編集 谷口花、宮下幸、山田彩愛)

今シーズンの意気込みを書いていただきました!

◆粟飯原謙(スポ1=神奈川・桐蔭学園)(※写真左)

2002(平14)年12月8日生まれ。180センチ。88キロ。神奈川・桐蔭学園高出身。スポーツ科学部1年。ボケ担当として場を明るくしてくださった粟飯原選手。色紙は細部にこだわり力強く丁寧に書いてくださいました。『果敢』に鋭いタックルを仕掛け、攻撃を封じるプレーには見応えあり!

◆野中健吾(スポ1=東海大大阪仰星)

2003(平15)年4月29日生まれ。181センチ。94キロ。東海大大阪仰星出身。スポーツ科学部1年。ツッコミ担当として雰囲気を和ませてくれた野中選手。春から頭角を現し、対抗戦初戦となった青学大戦ではPOMに選出されました。素早い状況判断で、グラウンドを駆け回る野中選手の躍動に注目です!