【特集】学生スタッフ特集『Be the best』【第4回】TR小西結×TR河村彩希×TR柳澤小夏

ラグビー男子

 第4回は、ラストイヤーとなる4年トレーナーの小西結(スポ4=埼玉・大宮)、河村彩希(スポ4=東京・小山台)、柳澤小夏(スポ4=東京・山脇学園)による対談をお送りする。挫折や困難を乗り越え、彼女たちが今立っている場所。彼女たちを強くしたものは――。トレーナーの魅力や自分にとっての早稲田ラグビーの存在について熱く語り合う。

※この取材は8月9日に行われたものです。

互いに信頼し合う存在

お互いのことを紹介する個性の強い3人

――お互いを紹介していただけますか。まずは、小西さんについていかがですか

河村 一言で言うと、なんでも出来るというイメージが一番最初に浮かびます。自分でなんでも出来てしまいますが、上手に周りを巻き込んでくれるので学生トレーナー全体のリーダーとかは詳しく決まってないのですが、自然とそういう立ち位置にいてくれるのは結(小西)だなと思います。でも普段は抜けているところがありますし、誰でも親しみやすい人なのかなというイメージがあります。

小西 ありがとうございます(笑)。

柳澤 私は3年生のときも、4年生がやることや4年生にお願いされたこととかを何でも受け入れちゃうだけなんです。でも結は本当にそれが正しいのかとか、言われたことを鵜呑みにするのではなくて、色々考えて、正しいと思ったことを自分の言葉で人に言えるところがすごいと思います。リーダーシップを取れる人がいない中で、結が皆を引っ張ってくれているなというのを感じていますし、4年生になった責任感をすごく感じます。

小西 わぁすごい嬉しい(笑)。

――では河村さんについてはいかがですか

小西 彩希(河村)はマスコットキャラクターというか。普段もそうですし、選手との関わり方も自分の世界観を持ちながら、癒しみたいな場が和む感じですね。結構ほんわかしているように思われるのですが、でも私たちの中で一番ビシって怒ってくれたりとか、後輩を怒れたりもできますし、考え方も一番理論的に考えられて説明できる人です。トレーナーの勉強に対してもすごく熱心で、選手思いです。後輩からも慕われていて、マスコット的な感じなのですが、内に秘めた熱があります。

河村 照れちゃう(笑)。

柳澤 普段すごくフワフワしていて、毎日楽しそうだなって感じで(笑)。どんな状況でもニコニコしていて、いっぱい話しかけてくれて楽しいのですが、トレーナーの勉強やリハビリのこととかに関しては誰よりも選手と向き合っていて、選手のことを一番に考えています。すごく尊敬しています。

――柳澤さんについてはいかがですか

小西 小夏(柳澤)は本当に痒いところに手が届く人です。私が結構大雑把で、細かいところを気にかけられないのですが、日常の普段の練習とかで、あれやらなきゃって心の中で思ったことを全部小夏がやってくれたりとか。誰もが見えない部分や小さなこともやってくれているので、小夏がいなかったら回っていないなとよく思っています。

河村 学生トレーナーの中でも、グラウンドとリハビリで部門分けされていて、この2人(小西と柳澤)がグラウンドで私だけがリハビリなので一緒に仕事をするとかはあまりないのですが、仕事面だけじゃなくてもすごく人をよく見ているなと思います。誰よりも鋭いところまで見ていると思うことがすごくあります。小夏自身は(誰かを)見ている感をあまり出さないのですが、なにか落ち込んでいる時に声掛けてくれたり、すごく気遣いをしてくれる人で、私たちは自分のことでいっぱいになりがちな部分があるのですが、そこを小夏がカバーしてくれています。個性が強い3人が集まっている学年ではあるけれど、小夏のおかげでバランスが取れているんだなと思います。

――お互いの好きなところを教えてください

小西 じゃあ私のことをお願いします(笑)。

河村 言葉にしようとすると難しいね。

柳澤 しっかりしているけど、そう見えて意外と抜けてるところ。そこはなんか特徴というか、可愛らしいところだなと思う(笑)。基本誰でも親しみやすいっていうか、誰が結と関わっても多分100人中100人が親しみやすいと思う人だと思います。でもやっぱりその中でも、結が大事にしようと思ってくれている人への愛をすごい感じます。本当に人に愛を持って接しているんだなって。本当にいい人なんです。人柄がいいですよね。

小西 小夏はいつも言ってくれるんです(笑)。

柳澤 シラフでも飲んでても語ってるよね(笑)。

小西 彩希は、一緒にいると和むというか、自分が精神的に追い込まれている時や余裕がない時も、基本このテンションでいてくれるので。ペースダウンできるというか、気持ちを落ち着けられる存在でいてくれるところが好きです。

柳澤 (河村は)自分が悩み事を抱えていたり、忙しくてしんどいなという時に寄り添ってくれることがよくあるので、一緒にいてすごく落ち着く存在です。

河村 嬉しいですね(笑)。

小西 小夏は頼りたくなっちゃう。甘えられるところ、勝手に(笑)。甘えていい存在でいてくれるので、毎日部活をしていても「あぁ〜小夏〜」と言って泣きつくことがよくあるんです。そういう頼っていい存在でいてくれて、安心感があるところが好きです。

河村 本当に小夏は私たちのお姉さんみたいなところがあります。3人の中で一番プロ意識が強いなと思うことが多くて、好きなものに対する熱みたいなもの、エネルギーを高く持てる人ですね。そういうものに対しての意識の高さとかを本当に誰が見ても感じられるようなところは他の人にはないところだなと思って。そういう人がチームに、スタッフの中にいると、選手と同じ熱量を持って私も頑張ろうと思わせてくれる。そこがすごくいい所だなって思います。

小西 同感です。

――この数日間もオフがあったと思うのですが、御三方のオフの過ごし方を聞かせてください

小西 初日に3人で夜ご飯を食べに行きました。初めてだね(笑)。あとは祖父母の家に行ったり、島に行ったり。アクティブなことが大好きなので、自然の森とか海とか激しく行ってました!

河村 私は初日に3人でご飯を食べて、それがドライブみたいな感じで(笑)。

小西 部活の用事があって部車で行かないといけなかったので、私だけ行けばよかったのですが、結構遠いところだったので2人を引き連れてドライブみたいなことをしていました(笑)。

河村 結はアクティブなのですが、私はそんなにアクティブじゃないので、友達と遊んだり海行ったりというのもしたのですが、家でピアノ弾いたり音楽聴いたりして過ごしていました。

柳澤 私も2人と初日を過ごして、あとは夏っぽいことがしたくて花火大会に行って。でもそれ以外は何もしてなくて、家でずっと甲子園を見ていました(笑)。

「1対1のクオリティは下げてはいけない」(河村)

トレーナーとしての思いを話す河村

――早稲田ラグビーに入部した理由を教えてください

小西 早稲田のスポ科(スポーツ科学部)に入りたかったのと早稲田で学生トレーナーの活動がしたいなと思っていた中で、早稲田にいた先輩に「ラグビーのトレーナーは全身のケガを勉強できるから、ラグビー部の学生トレーナーが一番トレーナーになるにはいいんじゃない?」と言われて検討しました。早稲田のラグビー部はほぼ知らないと言っていいほどだったのですが、入部してみるとあのジャージー見た事あるなと。今はもう(トレーナーとは)違う道に進むと決めたのですが、そもそもは将来トレーナーになりたいと思って選びました。

――高校時代にラグビーと関わりがあったというわけではないのでしょうか

小西 一切ないですね。試合も見た事なかったです。自分が高校時代ケガで苦しんだこともあって、トレーナーになりたいと思って入りました。

河村 私も似ていて、高校生の時にケガをしてトレーナーになりたいなと思っていました。あとは私の兄も早稲田ラグビーの分析スタッフ(アナリスト)をやっていたので。(年は)離れているのですが、小学校の頃から早稲田ラグビーは家族皆で応援するものみたいな意識は何となくあったので、トレーナー活動をするなら早稲田ラグビーがいいという愛着みたいなものもありました。それで見学に行って、先輩たちも優しそうだな、教えてくれそうだなと思って入部しました。

――お二方ともケガで苦しんだとおっしゃっていたと思うのですが、なにかスポーツをされていたのですか

小西 私は10年くらいずっとバスケをやっていました。

河村 私は中高で6年間バドミントンをやっていました。

柳澤 私は弟がラグビーを中学生からしていて、その影響でラグビーをずっとみていて、(ラグビーが)すごく好きでした。高校ラグビーをメインで見ていて大学ラグビーは早慶戦とか早明戦くらいしかあまり見ていなかったのですが、早稲田を目指している中で、大学生になったら早稲田ラグビー部でスタッフとして選手をサポートしたいなという気持ちがすごくありました。トレーナーを選んだのも、2人(小西と河村)は将来トレーナーになりたいと思って入ってきているのは知っていたのですが、私は単純に選手を一番近い存在で支えたいと思っていて、グラウンドでも試合でもどんな時でも選手を一番近くでサポートしているのがトレーナーだったので、トレーナーを志望しました。

――先程、リハビリとグラウンドで業務内容が分かれているとおっしゃっていましたが、業務内容について詳しく教えてください

河村 リハビリは試合や練習でのケガでチームから離脱した選手が、体力的にも精神的にも無理なくチームに戻れる状態にするまでのリハビリメニューを考えて、トレーニング指導をして、復帰後どういうサポートをしていくかというのを考えた上で、テーピングや薬、治療をどうするかというのを本人に伝えます。私がそのままテーピングを継続してやったり、グラウンドのトレーナーに共有して、練習の時にこういうテープをこの選手に巻いてくださいというのを共有したりしています。簡単に言うと、ラグビーが出来なくなった人が、またチームに戻れる状態まで戻すのが仕事ですね。

柳澤 グラウンドは選手が練習に行く前にテープを巻いたり、練習中はケガをした時や足をひねった時とかにテーピングを巻いたりして応急処置をします。遠征や対抗戦(関東大学対抗戦)の時もトレーナーは必ずついて行くので、試合準備もあるのですが、それにプラスしてベンチにいる選手たちの対応とか、ハーフタイムに選手が飲むドリンクやタオルを用意したり、緊急時に使うボードや松葉杖を持っていくというのもあるので、他のスタッフとは違って、試合に集中して、練習もハードな時とかは気をつけて見ています。

――今年は最上級生となりましたが、昨年までのご自身を振り返ってみていかがですか

小西 1年生の時は覚えることがたくさんでした。私は2年生の一年間リハビリのトレーナーをやっていて、3年生でグラウンドに戻ってきたのですが、上にいて引っ張っていてくれる先輩がいたので、去年までは自分のことと選手に向き合おうっていうことに集中していたなと思います。(昨年までは)自分軸で対選手という考えでずっといて、今年は選手だけじゃなくてスタッフやトレーナーの後輩と向き合わないといけない存在が必要だと思っています。

河村 私は1年生の時に体調を崩していて一度チームを離れていたので、2年生再入部で戻ってきました。2年グラウンドで3年からリハビリだったので新しいことだらけというか、トレーナーの知識の使い方はグラウンドとは大きく違うなっていう部分があったので、知識を再構築が自分軸になりがちではあったのですが、リハビリは1対1で選手を見ないといけない役割でもあるので、自分のトレーナーとしての成長にだけに集中するわけにもいかないですし、担当が10人くらいになっても1対1のクオリティは下げてはいけないと思って、自分がトレーナーとしてどういるべきなのかと悩みながらトレーナーをしていたなというイメージが強いです。

柳澤 私は、1年生の時の4年トレーナーの先輩がすごく私の尊敬している人たちでした。同じ環境にいられることが嬉しくて日々楽しかったのですが、2年生になって4年生が抜けて、私たちが2年生の時は4年生がいない状態でトレーナーをやっていて、3年生の先輩も色々考えながらやってくれていたのですが、私自身も本当になにをしていたんだろうなと思い出せないくらいしんどかった時期でした。3年生になったら色々仕事を任せてもらえたり、自由にやらせてもらうことが多くなり、多分1年生の時と同じくらい楽しかったのかなと思います。今まで自分のことしか考えていなくて、4年生になってもやっていたつもりでしたが、周りに気を配ることができていなかったですし、実際相手には届いていないっていうことがわかって、4年生って大変なんだなって思いました。自分の考えることだけだと後輩たちに上手く伝わっていなかったりするので、もう少し周りに気を配ってやらなければいけない、自分のことよりも後輩やスタッフ、チームのことを考えてやらないといけないとすごく反省している部分ではあって、少しずつ変えていかないといけないと思っています。

――1年時に日本一を経験していると思うのですが、当時の景色はいかがでしたか

小西 決勝の試合自体とか見た景色とかはすごく、ものすごく鮮明に覚えています。ですがやっぱり1年生だったので、私は1年間何もチームにできなかったという気持ち、荒ぶるの景色と対比して虚無感が大きかったです。感動して先輩方がすごく喜んでいる姿とか円陣の中の皆の顔とかも覚えているのですが、その時に自分がしっかりチームに対して貢献出来たのか、自信を持ってチームの一員だと言えるまでに何か力をつけないとチームが日本一をとっても喜べないというか、自分の事として喜んではいけないという気持ちでした。すごくいい景色を見させてもらったのに虚無感を感じてしまったことが悔しくて、一人でも多くの選手にとって必要なスタッフになりたいなと決意した景色なので、ほんとに日々思い出す景色でもあります。

河村 私は1年の4月くらいにはチームを離脱してしまっていたので、決勝も国立競技場には行っていたのですが部員席ではなくて観客席からいち観客として優勝を目の当たりにしました。新チームが始まる2、3月くらいにチームに戻ることになって、トレーナーとしても、スポ科生が授業でやることしか勉強していないし、早稲田ラグビーがどういうものかというのもチームの中にいなかった分、分からないことも多かったので、こんなにすごいチームに戻っていいのかっていうか、復帰が嬉しい気持ちもありつつ、ちょっと不安になる気持ちもありました。でもこんなチームに戻れるなら頑張らなきゃといろいろと複雑な気持ちだったなというのを覚えています。

柳澤 私は皆が感動したり、嬉しくて泣いている中で、全然涙が出なくて。すごく良い試合でしたし、うれしかったのですが、それも含めて1年が終わったんだという安堵が大きかったです。皆でグラウンドに降りて『荒ぶる』を歌った時とか、ここにいなかったらこんな景色は見られなかったですし、今でも本当にその場にいられたことが誇りでした。ただ、4年生が大好きだったので、私これから先大丈夫かなってちょっと心配でした。それくらいです。あまり私は皆みたいに色々思っていないです。考えていなかったです(笑)。

「早稲田ラグビーでしか味わえない」(柳澤)

トレーナーの魅力を語る柳澤

――4年目となりますがトレーナーとして印象的だった出来事はありましたか

小西 私が高校のときに膝のじん帯で(ケガが)起きていて、それにすごく苦しんで、ケガで最後の引退まで間に合わなかったというのが、自分がトレーナーを選んだターニングポイントでもあって、ラグビー部に入る時も、リハビリに携わって、自分と同じ状況にいる人を一人でも減らしたいという思いがずっとありました。2年生になって、初めて自分がリハビリを任せてもらえた選手がラストイヤーの4年生で、私と時期やケガの状態も全く同じケガをした人でした。その先輩と二人三脚でリハビリをしてきて、その選手が復帰した練習試合は印象深いというか、ああもう私はこれで死んでもいいと思えました。それくらい嬉しかったですし、試合前後でもすごく「ありがとう」と声をかけてくださって、自分が入部したきっかけを果たせた一つの試合でしたし、その選手の努力がかたちになったというのも嬉しかったですし、まさか私が選手に「ありがとう」を言ってもらえるなんてという、全てが嬉しくて。試合を見ながらずっと泣いていました(笑)。

――ちなみにその選手を教えていただけますか

小西 長嶋一光さん(令2スポ卒)です。全く話したこともなかったところから始まって、ラストイヤーだったこともあり私が任せてもらっていいのかと責任重大だなと思いました。最後はたくさん優しい言葉をかけてくださったので印象に残っています。

河村 去年の対抗戦でラストイヤーだった選手が復帰した試合ですね。全く一緒です(笑)。あとはリハビリ関連になるのですが、初めてリハビリを任せてもらった選手が復帰した練習試合です。例年トレーナーは数カ月の見学期間として勉強することができると聞いていたので油断していたら、二週間くらいで一個下の選手のリハビリを任されました(笑)。何も知らないままで不安でしたが、結(小西)がまだ残っていたので、結の見よう見まねでメニューを組んでいました。でもやっぱり私の経験不足もあり、その選手の症状や筋肉の状態とかもあって、なかなかチームに戻れない期間が長くて。2月に受傷したのですが、完全体で復帰したのが去年の菅平合宿だったんですよ。合宿初日にテストをクリアして、晴れて8月末の練習試合で半年ぶりに試合に出ることができました。(自身が)2年生に再入部してから1年間自分は何の役に立てるのだろうという気持ちでトレーナーをやっていく中で、自分が担当した選手が再発を繰り返してるのを見て、1年半トレーナーとしての自信が持てない状態が続いていたのですが、その選手が試合で活躍し、コンバージョンも正確に決めてチームの勝利に貢献している姿を見て、3年の夏にやっと私はチームに貢献できたなというか、ラグビー部の一員だと胸を張って言えるなというのをはじめて思えた瞬間でした。それがすごく印象に残っていますね。

――ちなみにその選手はどなたでしょうか

河村 3年の京山秀勇(スポ3=福岡・東筑)です。

柳澤 私2人みたいに感動的な話ないよ(笑)。

一同 (笑)。

柳澤 私は、1年時の対抗戦での早明戦です。ロッカーに入らせてもらったことがすごく光栄で嬉しかったのですが、その試合で明治に負けてしまって。ハーフタイムに選手がロッカーに戻ってきたときに、何も声を発することができず、きっと勝ってくれるという思いで皆を送り出していたのですが、(試合終了後)ロッカーに帰ってきた選手の顔を見て不安になっちゃって、1年生だったのもあり先輩に言われたことをやるしかできない中で、負けてしまった事実を受け入られずに悔しがっている4年生の姿がありました。私はスタッフという立場で試合に出られるわけでもないですし、でも本当に何もできない自分が不甲斐なくてとても悔しかったです。これから先、選手を一番近くから送り出す身として、後悔しないように笑顔で選手を送り出せるトレーナーになろうと、その試合が私のトレーナーにおける価値観をつくってくれた試合だったのですごく印象に残っていますね。

――コンディション不良の選手と関わる中で、トレーナーの魅力はいかがですか

小西 私は、選手とトレーナーという枠を超えて、人同士での出会いがあることがとても魅力だなと思っていて、選手自身の悩みや葛藤、弱みを見たり聞いたり向き合っていくことで、一見すごく順風満帆に見える選手であったり、いつも楽しそうに練習をしている選手でもいろいろなことを考えて悩んで日々上井草にいるのだということを毎日感じることができるので、信頼関係を重ねていく中で、どんどん多くの選手のそういった面を見ることができるのがトレーナーの魅力ですし、きっと他の部署に負けないいいところだと思います。一緒に悩んで感情一致したり、考えたりして貢献させてもらえることが大きな魅力だと思います。

河村 トレーナーとしてのあり方がその人の人柄によって全く変わるので面白いですし、難しいところでもあります。例えば選手に対してある人はあえてこれをやらないと思っているところでも他のトレーナーからするとそれは大切なことだということであったり、自分だったらこういうやり方でいくとしていても他の人は違ったりします。結が言っていたように人柄が大きな武器になる役職なので、人によって理想のトレーナー像が変わるというところが見たり聞いたりしていても、自分の理想のトレーナー像を思い描いていく中で面白いなと思っています。私はリハビリの方に興味があるのでケガの方に意識が向きがちなのですが、小夏(柳澤)は選手がどれだけ試合に集中できるかというサポートに尽力していたりであったり、選手のどういった部分に貢献しようとしているところもアプローチも全く違うという点もすごく勉強になりますし、刺激を受ける部分があるので、客観的に見て私とは違う面白い発見があります。

柳澤 私も二人の言ってたことがそうだなと思います。トレーナーというのはいつでも選手の近くでサポートしていて、ロッカーで言うと、試合前の緊張感であったり、これから始まるんだなと自分も鼓舞されるというか、よし頑張ろうとパワーをもらえることができます。あとは、試合前に選手が『北風』を歌っている様子とかも、早稲田ラグビーでしか味わえませんし、雨の日も風の日もどんなに暑い日でも一番近くで感じられる、勝った時の嬉しさも共に味わえるのはトレーナーだからこそだと思います。新入生のトレーナーが入部希望で入ってくるときはこういう話をします(笑)。本当にトレーナーの魅力の一つでもありますし、私はトレーナーが大好きです。

「自分を変えてくれた場所」(小西)

早稲田ラグビーの存在を語る小西

――今年のチームの雰囲気と注目選手はいかがですか

河村 去年からチームビルディングなどはあったのですが、昌彦(相良昌彦、社4=東京・早実)の代になってからスモールグループという学年混合の縦割り班で週に1回30分時間を取って自由に交流するという試みが始まっていて、絆というかチーム力というのを特に大切にしているのが今年の早稲田ラグビーなのかなと思います。スタメンであるとかそうでないというのは関係なく、いろいろな人がコミュニケーションをとることができる場を作っている今年のチームであるからこそ、何か変化があるのではと思います。注目選手は、やはりリハビリを見た選手が今年は上に上がっている印象なので、一人とは選べないですが、先ほど言った京山秀勇もこの前出場しましたし、渡辺駿斗(商3=東京・早実)、磯崎錬太郎(商3=徳島・城東)、平山貴喜(スポ4=北海道・函館ラサール)などリハビリで見た選手は見てほしいです。その中でも貴喜(平山)は同期なので、マジで頑張れ!と思っています。Eチーム始まりからBチームに上がった時も、Bチームになったことを報告してくれて、そういうのが去年の私の支えになっていたりしたので、貴喜は本当に頑張ってほしいなと思います!

小西 マジで頑張れ(笑)。

柳澤 主将やチームスローガンが発表されて、チームが始まるとなったときに、昌彦が「自分たちの代にはスターがいないから、皆でチームを作り上げていこう」ということを言っていて、今までの先輩たちみたいにスター揃いの代ではないかもしれないですが、だからこそそこで一人一人が自分のやるべきことや一つ一つの試合に対して泥臭いプレーをがむしゃらにやっていくのが今年なのかなと春シーズンの試合を見ていて感じました。皆が体を張っていますし、そういうところは本当に早稲田ラグビーらしいなと、すごくかっこいいなと思っているので、私は今の代が好きです。私はスクラムが好きなので、FWを特に注目してほしいなと思います!

小西 この代はリーダーがいない、リーダーシップを取れる人がいないというのをよく言われているのですが、その分私たちを含め皆が悪戦苦闘しています。同期たちがチームをどう引っ張っていくか、自分がどういう先輩であるべきかというのを考えている人が多く感じるので、すごく強烈なリーダーはいないかもしれませんが、それぞれがそれぞれのかたちでもがいているのが泥臭くてすごくいいなと客観的に見て思います。注目選手は、どうしても同期を一番に応援してしまいますが、今の委員の人たち、リーダー陣の中でも、ケガで苦しんでいたけど委員になるくらいに這い上がった人や今も苦しんでいる人もいます。同期は見かけると全員のことを毎日観察しているのですが、全てのカテゴリーに4年生がいるので、Aの試合だけでなくすべてのカテゴリーで引っ張る4年生の姿を自分も見たいですし、皆さんにも見てほしいなと思います!

――早稲田ラグビーは皆さんにとってどんなものですか

柳澤 私にとっての早稲田ラグビーは、原動力です。早稲田ラグビーがなかったらどんな大学生活を送っていたのかなとか本当に想像できないですし、ラグビー部が自分のこの4年間の生活の中心で、自分のすべてを捧げているつもりでいます。辛い時も同期選手の笑顔や優しさにたくさん救われてきて、やっぱり私はラグビーが好きだし、何をするときも一番最初に考えるのはラグビー部の皆のことだし、ここは自分が全力をかけられるところで、自分にはなくてはならないものです。頑張ろうと思えるのもラグビー部の皆がいるからだと思っています。

小西 私にとっては、自分を変えてくれた場所です。私はケガで高校3年間ずっとプレーができなくて、高校の記憶がないくらいに本当に腐っていたんですよ。(ケガをしたことで)全然前を向けなくて。トレーナーになりたいという思いだけで入ったのですが、同期や先輩、後輩などここで出会えた人たちの姿を見たり、自分と向き合ってくれたことで、腐ってひねくれていた私を180度変えてくれて、前を向けるようにもなりましたし、人とも真正面から向き合えるようになれましたし、自分のことも好きになれました。本当にここに入っていなければ、あの時のままに腐っていた私なんだろうなと思います。暗闇にいた自分だったので、光が差してきたというか、自分を救ってくれた人に出会えた場所です。

河村 本当に自分を支えてくれたものでもありますし、私の生きがいだなと思います。1年生の時に病気したり、復帰してもまた体調を崩すというのを繰り返しているので、なんで大学生活苦しいことが起きるんだろうと思ったことも目の前が真っ暗になることもありました。その時に早稲田ラグビーにいるから頑張ろうというような、早稲田ラグビーという概念に寄りかかっていた部分もあると思うのですが、その中で部員やこの二人(小西と柳澤)、大人スタッフの方も支えてくださったりしていて、早稲田ラグビーのために頑張りたいという思いだけを頼りに4年まで続けてこられているので、早稲田ラグビーは私の生きる理由になっています(笑)。

――最後にラストイヤーである今シーズンの意気込みをお願いします!

河村 私はラストイヤーですが、成長し続けたいという気持ちがあります。今までの4年生も4年生だからはなくてずっと進化し続けていたのですが、実際4年生になって来年のために後輩を指導するというところに気が向いてしまい他に手が回らなくなると、「私は4年生なのに。しっかりしないと」と思考がストップしてしまう部分があります。それでも、4年生である前にいちトレーナーとして選手を支える存在であることは変わりないので、人間としての成長も大切ですが、トレーナーとしての知識や技術アップなどさらに経験を積んで、最後の最後まで自分が任せてもらっていることは高いクオリティで還元できるようにこの夏はトレーナーとして成長していきたいと思います。

柳澤 ラストイヤーだからこれまでと違うことをするではなくて、今まで通りに自分にできることを日々の練習や試合でもやり遂げ、一つ一つのことに全力を出して選手をサポートし試合に送り出すということが私たちスタッフにしかできないことだと思うので、準備を怠らないということを常に継続しつつ、後輩のトレーナーに遺せることを遺して、安心して次の代に引き継いでいきたいです。そして、最後は国立(国立競技場)で皆で『荒ぶる』を歌いたいです。

小西 トレーナーとして、スタッフとしてできることは、選手が日本一へ向かう道の中で、ラグビーができるという当たり前の環境をつくるということだと思いますし、そこに対するこだわりというか、毎日の当たり前をしっかり積み重ねていくことが一番大切だと思っているので、そこは変わらず継続していきたいです。夏秋冬、ここからは時間もあまりないですし、『荒ぶる』の景色を見ている最後の代でもあるので、そこで感じた自分の思いを大切に受け継いでいかないといけないと思っています。この部活にいて得たこと、感じたこと、学んだこと、先輩から受け継いだことというのを後輩に感じ取ってもらえるように、残り最後の決勝まで日々自分に何ができるかというのを問い続けていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 濱嶋彩加、谷口花)

今シーズンの意気込みを書いていただきました!

◆小西結(こにし・ゆい)(※写真左)

2001(平13)年1月21日生まれ。埼玉・大宮高出身。スポーツ科学部4年。自身の挫折経験から一人一人の選手と真剣に向き合おうとする姿勢が印象的な小西トレーナー。明るく親しみやすい性格から周囲の信頼も厚い。あの日見た『荒ぶる』の景色を胸に、全身全霊を尽くした選手のサポートに励みます!

◆河村彩希(かわむら・さき)(※写真中央)

2000(平12)年7月21日生まれ。東京・小山台高出身。スポーツ科学部4年。優しい笑顔で、和やかな雰囲気をつくってくださった河村トレーナー。一人一人のケガと向き合い、復帰に向けて全力でサポートしようとする熱意が印象的です。ほんわかした性格とリハビリに対する熱で温かい居場所づくりを徹底します!

◆柳澤小夏(やなぎさわ・こなつ)

1999(平11)年7月8日生まれ。東京・山脇学園高出身。スポーツ科学部4年。3人の中でお姉ちゃん的存在であるという柳澤トレーナー。今年の高校野球は愛工大名電を応援しているそうです。細かい部分にも気を配り、安心感のあるトレーナー体制を整えるとともに、試合に向かう選手を笑顔で送り出します!