【特集】学生スタッフ特集『Be the best』【第3回】AN日暮大×AN神亮輔

ラグビー男子

 第3回は、アナリストの日暮大(文構4=東京・早実)と神亮輔(商3=愛知・千種)による対談をお送りする。客観性を大切にし、細やかな作業から早稲田ラグビーを支えるアナリスト。彼らに影響を与えたOBの存在やチームの勝利にかける思いを語る。

※この取材は7月29日に行われたものです。

早稲田ラグビーに導いてくれた人

――お互いのことを紹介していただけますか

日暮 3年の神亮輔です。彼は二浪して入っていて、(大学に)入るための努力がすごかったので、その熱が今の部活に生きていると思います。プライベートな面で言うと、お酒が全く飲めません(笑)。

 4年の日暮大さんです。僕は二浪していて、日暮さんは一年間留年しているので、一応同じ年です(笑)。僕はラグビーばかりなのですが、日暮さんは野球やサッカーなどいろいろなスポーツが好きなので、スポーツ全般詳しい方です。4年生として見習うべき点はたくさんあります。

日暮 いいよ、そんなビッグサービスは(笑)。

――ラグビー蹴球部に入部した理由を聞かせてください

日暮 小さい頃から父の影響で早稲田ラグビーを見ていましたし、あとは中西亮太朗(令3商卒)と小川瑞樹(令3文卒)、木村晴季(令3社卒)、清水竜成(令3教卒)という早実の4人組が試合に出ているのを見て刺激を受けたので、その4人の影響もあって入部することを決断いたしました。

 僕は、去年卒業した池本暖(令3人卒)の存在が大きいです。僕は2年間浪人しているので、本当は池本と同期で、中学からの知り合いなんですよ。その子のお兄ちゃんである池本翔一さん(平28スポ卒)が早稲田大学ラグビー部であることを知っていたので、高校時代から何回か早稲田の試合を見ていました。もちろん高校の先輩にも何人か早稲田ラグビーOBの方がいましたし、大学のラグビーといえば早稲田ラグビーという馴染みがあったので、ラグビーを大学でやるとしたら早稲田かなと思っていました。池本がいたからラグビー界に入って今ここまで来ていますし、池本が誘ってくれたおかげで今があると思っているので本当に感謝してもし切れない存在です。

――お二人はラグビー経験はあるのですか

 僕は高校から始めました。高校3年間はプレイヤーとしてやっていたのですが、浪人したのもあって大学からはスタッフの中でもできるだけラグビーに近いアナリストとして貢献できればと思っていました。

日暮 僕は中学校から(ラグビーを)やっていて、中学校の時はキャプテンをしていたんですよ。高校に入ってからは、高校の壁とケガに苦しみ、大学で(ラグビーを)続けられる自信がなかったのでアナリストとして入ることになりました。

――実際に入部してみていかがでしたか

 自分は高校時代無名な選手で、有名な選手だったり有名なコーチがいたりして全国に出れるようなチームでなかったんですよ。だからこそ日本一を目指すべき組織に身を置くとなると責任を伴う仕事だったり、一つ一つの行動が本当に大切というか周りからも評価されるので、しっかりしないといけないと、ここにくるだけで身が引き締まる気持ちになりました。

日暮 一般入学などで入った無名の選手と日本代表になるような選手が一緒に競争してるという環境で、自分もその一員として日本代表になるような有名な選手と接していく中で、意外と人間的な部分は皆変わらないんだなというところが最初入って感じた大きなギャップでした。でもそこがこのラグビー部の良さなのかなって思っています。

「いかに客観性を持って伝えられるか」(神)

深みのある言葉でアナリストとしての思いを語る神

――アナリストの仕事内容と活動時間帯を教えてください

 活動時間帯は、基本的には選手が活動する時間に伴って僕たちも活動するというのが練習がある時のスタンスです。もちろん練習前のミーティングから始まって練習中は撮影をして、練習後は撮影した映像の編集だったりデータだったりを扱う作業をしてます。唯一選手と違う点としては、試合後だったり公式戦シーズンになると相手校の分析をすることになるので、そういうときはプレーを数値化したり映像を集めたりという作業が少し忙しいかなという感じです。

――今アナリストは何人在籍していますか

 5人ですね。

――分析をもとに選手が自身のプレーを振り返る様子を伺う時が多くあるのですが、そういう面で個人的な達成感はありますか

 アナリストとして未熟だった1年生の頃は、なにが正しくてなにが間違いなのかわからないまま、先輩に言われるがままに作業していました。自分で考えるというよりかは任されたことをやる作業だったのですが、早慶戦のときに対戦相手のタックルの成功率を分析して、事前に僕が出したデータの中で相手選手に関するデータが、実際に試合で活きて、隙を突いてトライにつながったというのが自分がアナリストを始めた中で、一番初めにアナリストのやりがいに気づけた瞬間でした。

日暮  僕も1年生の話になっちゃうのですが、(2019年度全国大学選手権)準決勝の天理戦で相手のラインアウトを研究してるときに、相手のラインアウトの特徴をつかみ、弱点を見抜いたものをデータ化してコーチにわたした上で、対策を打ってもらえたので、相手の攻撃の芽を摘めたというか、その試合はラインアウトを相手ボールで取らせなかったという経験があるのでそれがすごく良かったなと思いました。

――反対にこれまで大変だったことはありますか

 今部員が選手130人ほどいる中で、僕たちは上の選手から下の選手までカテゴリーを問わずにいち選手として見なければならないので、試合がたくさん続いた時に一人一人のデータを出さないといけませんし、手作業が多いのでそこが試合後は忙しいかなと感じています。他のチームでも、一人一人(のデータ)を出すとなるとマンパワーも必要ですし、どうしても時間もかかってしまうので、やられてないチームがほとんどだと思います。選手にとっては、おそらく僕たちがそれらを扱うことによって、そのデータから自分の弱点であったりを振り返ってくれて参考にしてくれるという体制が早稲田ラグビーにはあるので、大変ですが僕たちが今頑張るべきところなんだと捉えています。

日暮 今の話に追加すると、全てのカテゴリーを見ているので、その中で雰囲気が違うというのが出てくると思うのですが、4年生のミーティングとかで、そこを客観的に見て「こう思うよ」というのを発信する、自分の意見を持つことが最近は自分の中でとても大切だなと感じています。客観的にチームを見ることというのは難しいです。どうしても自分の仲良い人だったりというのは好感度が高くなって、主観が入ってしまうことがあるので客観的に見ていかに動かせるかというのは今難しいなと思っています。

――アナリストをするうえで常に大事にしていることはありますか

 アナリストというのはやっぱりチームの勝利に貢献しないといけません。特にラグビーに特化した話になるのですが、例えば自分が相手を見たり、練習試合を見て気づいたことをコーチや選手に対して伝えるにあたって、いかに客観性を持って伝えられるか、データであったり、映像などで説得力のあるものでいかに伝えられるかということは大事にしている部分です。

日暮 僕は、周りに流されずに自分の主張を持つことを意識しています。もともと流されやすい性格なので、自分の芯を持って、それを軸に判断しようと思っています。

――アナリストをやっていて一番嬉しかった瞬間はありますか

日暮 僕は、大学一年生の優勝したときですね。自分もそうですが、苦しんでいる早稲田ラグビーを見ていたので、そこから入って一年で優勝できたことはすごくよかったなと思います。

 僕は優勝の経験もしていませんし、具体的なシーンを選ぶというのは難しいのですが、シンプルに実力が出せる相手であったり、僕たちも選手たちもきちんと準備するという流れで、必然的に勝ったなという試合を目の当たりにしたときが、一試合一試合達成感があっていいなと思う瞬間です。

――春シーズンを通して、チームの変化、成長を数値などで感じられていると思いますが、チームの仕上がりはアナリストのお二方からみていかがでしたか

 正直まだまだこれからなのかなと思います。去年は4年生が上のチームに多くいたということもあって初めは心配もあったのですが、(最近は)4年生のリードであったり下級生のチーム全体を引き上げるという雰囲気があって、そういう点では春シーズンは上手くいったのではないかなと思います。でも春季大会(関東大学春季大会)の結果からすると帝京、明治、東海という最終的にはベスト4であたるような相手に負けてしまっているので、まだまだこれから経験を積んで、夏合宿を経て自信もつけて、対抗戦(関東大学対抗戦)で勝ちを重ねていく中で、皆が日本一になれるかもしれないと思えるようなチームになっていけたらいいなと思っています。

日暮 まだまだ強くしていかなければならないという部分もあると思います。4年生ミーティングは春期間も定期的に開かれたのですが、4年生の中でも積極的に声を出してチームの雰囲気を作っていくという気概というか、気持ちが見え始めたので、これから明るく活きていくのかなと思っています。

プライベートな話

最近ハマっていることを考えるお二方

――オフはどのように過ごされるんですか

 基本的に試合後の1日はオフということになるのですが、僕たちはデータを集める作業をしなければならなくて。リフレッシュする手段としては映画を観に行ったり、あえて外に出かけてみたりだとか気持ちをリフレッシュさせるということ、体をリラックスさせるということに重きを置いています。

日暮 さっき他己紹介でもあったように、野球やサッカーをよく見るので、他のスポーツを見たり、ゲームをしたり、買い物をしたり、さまざまなことをやっています。

――最近のオフは何をされましたか

 実家が愛知なので帰省しました。コロナも落ち着いてきたこともあって、あまり会えなかった人や高校の同級生、地元の友達に会って、今大学でこういうことをしているなどとお互いに共有しました。

日暮 多分野球を観に行ったと思います(笑)。

――最近ハマっていることは

 僕は格闘技にハマっています。なんでハマっているのと以前聞かれたことがあって、自分でいろいろ考えてみた時に、僕は高校でサッカーをしていたのですが、高校に入る時にすでにサッカーに飽きていて、ラグビーを始めたのですが、そこから格闘技となったときに、どんどん激しいスポーツに移っているという、見ててドキドキとか興奮するようなスポーツが好きなので、多分格闘技にハマっているのかなと思います(笑)。

日暮 ハマっていることは、趣味のスポーツ観戦で人と違う野球の見方をしているなと思います。自分の中で考えているのは、相手の配給を読んでこの球を狙ったら打てるのではないかということをいろいろ考えて、一人ブツブツ言いながら野球をみることが最近はハマっています(笑)。

――野球でもアナリストが生かされるのですね

日暮 そうですね。野球はデータのスポーツなので、そのデータを照らし合わせながら、この球は来たら打てるというような感じで、テレビの前で文句を言いながら見ています(笑)。

――お二人は一緒に出掛けたりはされるのですか

 学年が違うのであまりないですね。でも練習が早く終わったときには、昼ご飯や夜ご飯を食べにいったりはします。二人というか、分析(アナリスト)全体で行ったりしますね。

――同期でも後輩でも仲の良い選手やスタッフはいますか

  同期スタッフに関してはプライベートでは遊びにいったりします。部活の方に関しても、何事も隠すこともなく、何事も気軽に話すことができるので同期スタッフは仲が良いと思っています。選手に関しては分析の立場で、基本的にはフラットに見なければならないので、あまり入り込まないようにしています。どうしてもオフが忙しいということもあって、遊ぶことはできていないですね。

日暮 そんな深く考えたことなかったな(笑)。僕は早実出身で、今の4年生が高校の一個下なのですが、高校のときから仲良くさせてもらっています。その中でも井元(正大、文4=東京・早実)ですね。高校の時からずっと一緒にいて、今も家が近いのでよく最寄りの駅で会います。

ラストイヤーへの思いを語る日暮

――日暮さんはラストイヤーとなりますが、ラストイヤーどんな一年にしたいですか

日暮  最終的には、一番になって終われるようにしたいです。その中でどれだけ自分の色を出せるかということを意識しているのですが、自分の色を出そうと思っていても周りに流されてしまう部分があるので、そこが難しいのかなと思っています。その中で最終的に勝って終われるように、最善を尽くしていきたいと思っています。

――そのなかでこだわっていきたい点は

日暮 こだわりというとすごく難しいのですが、僕はなんでも70点で終わらせてしまう部分があるので、そこを100点に持っていくというのが4年生としてのこだわりだと思っています。

――神さんは上級生になったと思いますが、どの点にこだわった一年にしたいですか

 アナリストとして、言われたことだけに従っているだけだと、自分としてもやりがいが薄れてしまいますし、自分は誰よりも勝ちたいと思っている自信があるので、思ったことを言う時に、仮に何かを言われたとしても、チームが勝つためなら何でもするぞという勢いで、勝ちに貢献するためにやれることは全て全うしたいと思っています。上級生になった身として、やはり後輩たちにもしっかりと行動で示すことでできるように、下級生のとき以上に責任を持った行動を心がけていきたいと思います。

秋シーズンに向けて

――今シーズン期待している選手は

日暮 吉村紘(スポ4=東福岡)には注目してほしいです。2年生の頃から去年の途中までレギュラーで張っていたのですが、最後の3試合ほどの大切な試合で出られなくなってしまって、本人もすごく悔しかったみたいで、今すごく努力しています。吉村紘と伊藤大祐(スポ3=神奈川・桐蔭学園)の二人のコンビがうまくハマると、うちのチームは爆発すると思うので、吉村紘に期待してください。

 同期の川﨑太雅(スポ3=東福岡)です。2番から1番にコンバートして、今後要となる選手になると思います。見てて苦労しているなと現段階では思っているのですが、最終的に考えた時に、去年やられてしまったスクラムで優位に立つためには彼の力が必要だなと思っているので、期待しています。

――反対に尊敬しているスタッフや選手は

日暮 OBになりますが、丸尾崇真さん(令2文構卒)です。早実の一個上の先輩なのですが、自我というか、自分の信念を曲げないで突っ走るところをずっと見てきて、こういう人間になりたいなと思っていて。今まで10年くらい見てきたので、丸尾さんはずっと尊敬しています。

 僕は紘さん(吉村紘)です。初めはクールなイメージを持っていたのですが、彼は泥臭くというか、ウエイトトレーニングだったりとかも、時間を見つけてとことんやられていますし、自主練だったりも毎日やっている様子を見かけます。それこそずっとAチームで見るような選手だと思っていたのですが、時には苦労している後ろ姿も見てきましたし、今Aチームの12番という昨年度まではやっていなかったポジションにもチャレンジしていて、クールというイメージとは裏腹にチームを鼓舞するような声かけだったりを今年になってよく見かけるようになったので、そういう面でチームを引っ張っていく存在なのかなととても尊敬しています。

――お二方が思うラグビーの魅力はどんなところにありますか

日暮 いろいろな選手が自分の特性を生かせる部分です。体が大きい選手だったら前に出て体を張るであったり、小さい選手でも細かく動いて相手を交わして前に出る、そういった個人の長所を生かした戦術を組み立てることができるので、その長所が目立つときに自然と盛り上がるというか、短所に目がいかなくなるので、すごくいいスポーツだなと思っています。

 まずは、激しさかなと思います。他にはないスポーツですね。体のぶつけ合いというのがあるので、そこには注目してほしいかなと思うのですが、アナリスト目線から言うと、そういう激しさというか、いわゆる根本というぐちゃぐちゃしている中でも、ラグビーというのは多くの戦術というのが、どのチームにもあって、俯瞰(ふかん)して見た時に相手との駆け引きが多く見られます。チームの個性が出るのでそういう瞬間を目の当たりにしたりだとか気づけたときが僕は楽しいと思います。

――早稲田の個性はどういった部分にありますか

 大田尾監督(平16人卒)になってからは、アタック攻撃が主流になったのかなと思います。他の大学にはない攻撃の仕方であったり、普段他のチームであったら起用しないだろう選手の使い方だったり、他の大学にはないような、見てて面白いアタックをするチームだなと思います。

――アナリストから見て今年の注目ポイントはいかがですか

 バックスの才能ある選手が集まっているので、その選手たちに戦術や動き方の工夫を与えることで、才能だけでやるラグビーとは一線を画したラグビーなのかなと思っているので、アタックを重点的に見てほしいなと思います。

日暮 強みがアタックという中で、僕たちが公式戦に挑むにあたって相手の分析がとても重要になってきています。早稲田のアタックがすごくハマっているなという時は、僕らの分析も合わさって早稲田が得点を取っている、早稲田が優勢であるというように、選手が自信を持って前に出ているときなのかなと思います。

――アナリストとしての今後の目標を聞かせてください

日暮  最後にチームが勝てるように頑張るのみです。勝てなかったらやり方を間違っていたのか、やる努力が足りなかったのというどっちかだと思いますし、(アナリストは)チームの勝ちで肯定される仕事だと思っているので、最後にチームを勝たせることができたらいいなと思います。

 僕も短期的に言ったら日本一、分析がうまくいくにしろいかないにしろ、とにかくチームが日本一になれるように頑張りたいと思います。

――それでは最後に今シーズンの意気込みをお願いします!

日暮  高校からずっと一緒にやってきた相良昌彦(社4=東京・早実)を胴上げして終われたらいいなと思っているので、相良昌彦を胴上げするために頑張りたいと思います!

 今年の4年生は唯一優勝を経験している代なので、僕は日本一のためならなんでもする、何が何でも日本一をとるという、あえて泥臭い感じにはなりますが、やれることはなんでもやって後悔のない一年にしたいと思います!

――ありがとうございました!

(取材・編集 谷口花)

今シーズンの意気込みを書いていただきました!

◆日暮大(ひぐらし・まさる)(※写真右)

1999(平11)年7月24日生まれ。東京・早実高出身。文化構想学部4年。趣味はスポーツ観戦で、東京ヤクルトスワローズを応援しているという日暮アナリスト。仕事柄他のスポーツを見ていても分析の知識を生かして試合にのめり込んでしまうことがあるよう。スポーツに対する強い愛で、チームの勝利に貢献します!

◆神亮輔(かみ・りょうすけ)

1999(平11)年10月26日生まれ。愛知・千種高出身。商学部3年。何事にも誠実に取り組む様子が印象的な神アナリスト。「誰よりも勝ちたいと思っている自信がある」。一つ一つの言葉からチームのために尽くしている様子が存分に伝わってきました。勝利への思いはぶれることなく、一人一人の選手に寄り添います!