1年時から赤黒に定着し、『荒ぶる』獲得にも貢献したフランカー相良昌彦(社4=東京・早実)。今季は第104代主将に就任し、チームの先頭に立って率いることになった。新チーム発足から2カ月経った今の気持ちを伺った。
※この取材は3月23日にオンラインで行われたものです。
「敗戦を受け入れられなかった」
――相良主将が1、2年生の時は全国大学選手権(大学選手権)決勝進出を果たしていましたが、昨年度は大学選手権準々決勝敗退という結果となりました。年越し、そして荒ぶる奪還がかなわなかったという結果を振り返っていかがですか
相良 正直かなり落ち込んだと言いますか、敗戦を受け入れられなかったです。決勝まで行って勝つイメージしかなかったので、2週間ぐらいは試合が見ることができなかったです。
――関東大学対抗戦(対抗戦)での早明戦勝利、大学選手権での早明戦敗戦。2度の早明戦で勝敗が別れてしまったこと、改めて振り返っていかがですか
相良 どちらの試合もスクラムで劣勢だったと思うのですが、1試合目の内容から考えると攻めれば勝てるということは分かっていました。しかし、2回目の早明戦は取り切るべきところを取り切れずに、チャンスを作りましたが勝てなかった試合でした。後半、相手にリードされた段階でスクラムに時間が使われてしまい、自分たちがボールを保持する時間が少なくなり負けてしまった印象です。
――昨季のチームで『荒ぶる』に足りなかった部分はどこでしょうか
相良 セットプレーの部分、とりわけスクラムの部分と、明大戦で出たようなイージーなエラーが多かった部分が足りなかったのかなと思います。
――昨シーズンを振り返って、相良さんご自身が成長できた部分はありますか
相良 1、2年生のときはただラグビーをやっていればいいという感じでしたが、昨年は委員に入ったこともあってFWでの発言も増えましたし、練習でもプレー中にしゃべれるようにはなったのかなと思います。リーダーシップの部分では少しは力がついたかなと思います。
――では、足りなかったと感じる部分はございますか
相良 パフォーマンスの部分が1、2年生のときに比べて一番悪かったかなと思います。アタックのキャリーの部分で1、2年生のころはゲインやチャンスメイクができていたのですが、昨年はそういったシーンがあまり作れませんでした。この部分が足りなかった部分だと思います。
――ゲインやチャンスメイクの回数が減ってしまった要因は
相良 昨年からチームの戦術が変わり、それにうまく対応できなかったことがあります。自分のスタイルと合っていなかった部分がありました。また、昨年は肩のケガを立大戦でしてから体重が落ちてしまい、フィジカル的な部分で相手に勝られることが多かったので自分の力不足だったと思います。
「お互いに要求し合う環境を作りたい」
――主将の就任はいつ決まったのでしょうか
相良 1月21日です。大田尾監督(大田尾竜彦監督、平16人卒=佐賀工)から電話をいただき、「主将をお願いしたい」と言われて就任しました。
――長田智希前主将(令4スポ卒=現埼玉パナソニックワイルドナイツ)から、昨年あたりからリーダーをやるという雰囲気が出てきていたとお聞きしました。自分がなる気はされていましたか
相良 何となくですがずっとしていました。自分たちの学年はリーダー的存在が少なく、試合に出ているようなメンバーもあまりおらず、僕は1年のときからレギュラーで出ていたので、僕がやるしかないのかなと思いました。
――主将になる気持ちに決心が着いたのはいつごろでしょうか
相良 3年生が始まったぐらいから決心していました。1年後にキャプテンをやるだろうなって。ずっとプレッシャーを感じていました。
――今年のチームをどうしていきたいか、相良主将のビジョンをお聞かせください
相良 スローガンの『Tough Choice』は厳しいことを選択していくという意味なのですが、チーム全体で練習でも楽をしない、さぼらずに妥協しないということをやっていきたいです。これをするためにお互いに要求し合い、できていない選手には言いますし、自分にも厳しくやっていきたいです。普段から言い合える環境を作っていきます。
――同期から選出された時のお気持ちをお聞かせください
相良 素直にうれしかったです。みんなが僕のことを信頼してくれている、頼ってくれているというのが目に見えて分かった瞬間だったので、やるしかないのだと感じました。
――長田前主将から何か声はかけられましたか
一切話してないです(笑)。
――お父様(相良南海夫前監督、平4政経卒=東京・早大学院)から何か声をかけられましたか
相良 色々言われましたが、「自分らしくやれ」と言われました。自分のチームなのだから、自分らしく、自分のやりたいようにやれと言われました。
――親子で早大ラグビー部の主将になるのは史上初のこととなりますが、その点についてはいかがですか
相良 僕が絡むとすべてが史上初になってしまうので(笑)。1年生のときも親子優勝は史上初でしたし、特に気にはしてないです。
――就任してから2カ月ほど経ちましたが、チームの状態はいかがでしょうか
相良 今日(3月23日)から全体練習が始まって、それまではウエイトや軽いスキル練習がメインだったのですが、今日やった感じでは要求し合えていましたし、体もみんな大きくなっていたのでチームの状態はいいかなと思います。
――現在、部では体重を増やす取り組みをされているとお聞きしました
相良 部内で毎週体重増加ランキングが出るのですが、上位にFWが並んでいるのでいい状態だと思います。1番多い人で7キロほど増えているので、体重を増やすという面では順調かなと思います。
――現在のチーム状況を見て、昨年から継続していく部分と改善していくべきところはどこでしょうか
相良 昨年とはチームが丸っきり違うと思うので、継続していく部分は昨年のスローガンである『Be Hungry』、一つ一つの部分に貪欲になる部分は継続していきたいと思います。変えていくべき部分は、一人一人の意識を変えていくことです。フロントローを例にあげると、スクラムを押すことが仕事であり、昨年はその部分ができていなかったという危機感をもって取り組んでほしいです。一人一人それぞれ課題があると思うのですが、自分の頭で考えて日々の行動に移してほしいなと思います。
――監督からはこだわりを持ってほしいという旨をお聞きしました。どの部分にこだわりを持ちたいですか
相良 父に昔から言われてきたことですが「こぼれ球やサポートの部分で誰でもできるプレーは常に全力でやれ」と言われていました。この部分は早大に今一番足りていない部分だと思うので、誰でもできるプレーをさぼらずにやることを追求していきたいです。
――副将を選ばれた理由を教えてください
相良 吉村(吉村紘、スポ4=東福岡)を選んだ理由は、グラウンドでの統率力やコミュニケーションの部分に期待して選びました。僕自身話すことがあまり得意ではないので、戦術などのグラウンドで必要な部分を持ち合わせていると思ったので、任せたいと思いました。鏡(鏡鈴之介、法4=東京・早大学院)は1、2年生のころは下のチームでやっており、下から上のチームまですべて経験しているような選手なので、そういった選手が副将にいることによって、現時点で下にいる選手も頑張れば副将になれることを後輩に伝えてほしいです。コミュニケーション能力が高く、学年の隔たりなく誰とでも話せる性格をしているので、そういった部分がチームに一体感をもたらしてくれるのではないかという期待があります。鏡は本当に努力家で、練習が終わってもウエイトトレーニングをしたり、メニューに出されていないような練習をしたりしているので、こういう姿を見せてくれる選手が副将にいると心強いので副将にしました。
――委員の選手を選ばれた理由は
相良 植野(植野智也、法4=東京・早実)に関していえば、自分の思ったことを素直に言える人なので、チームの状況に関して思ったことを委員会で言ってくれるのではないかと思います。平田(平田楓太、スポ4=福岡・東筑)も同じように思っていることを素直に言ってくれますし、ミーティングをまとめてくれるリーダーシップもあるので選びました。3年生は来年リーダーになるであろう選手を考えて選びました。特に岡﨑(岡﨑颯馬、スポ3=長崎北陽台)はミーティングでも発言してくれますし、グラウンドでの発言も多いので選びました。
――周囲に対して何を求めたいか、個人としてチームとして、それぞれについてお聞かせください
相良 思っていることをどんどん言ってほしいと思います。思っていることをどんどん言ってくれないとチームは成り立たないと思うので、言いたいことがあれば話してほしいと思います。プレーで言えば、一つ一つのプレーに対して何が良くて何が悪かったのか言い合えるチームにしたいです。また、プレーするうえで自分のプレーに責任を持ってほしいなと思います。パスにしても、タックルにしても、1人1人がその役割を果たさなければならないので、タックルでミスをしたら必死に追いかけるだとか、パスをミスしたら自分でセーブしに行くといった責任やこだわりを見せてほしいです。この間のキックオフミーティングでも監督が仰っていた、『1/1000』という部分までこだわってやってほしいです。
帝京大戦でボールキャリーをする相良
「背中で見せること」
――ご自身についてうかがっていきます。先輩方が卒業され、ポジション変更も想定される中で、今年もポジションはフランカーでしょうか
相良 わからないですね。8番やるかもしれないですし、6番やるかもしれないという感じです。ポジションに関してはスクラムを組む位置が変わるだけだと自分は思っているのでそんなに深く考えていないです。
――プレーヤーとして今季意識したい役割はなんでしょうか
相良 やはりワークレートの部分ですかね。多くボールを持つとか、たくさんタックルするとか、あとは要所でジャッカルをするとか。そうしたすべてのことを求められていると思います。今年は特に長田さん、河瀬さん(FB河瀬諒介、令4スポ卒=現東京サントリーサンゴリアス)、賢太さん(プロップ小林賢太、令4スポ卒=現東京サントリーサンゴリアス)のような選手がいなくなり、ボールを持って前に出ていく選手がいないと思うので、自分がその役割を担えたらなと思います。
――プレーヤーとしてここを改善していきたいという部分はありますか
相良 昨年に関してはジャッカルなどでボールを取り返すようなプレーがなかったので、そういう部分は改善していきたいなと思います。あと、キャリーの部分で前に出ることを今年は改善していきたいと思います。
――FWにおいて前列の選手が多く卒業されます。セットプレーやコンタクトの面での懸念点はありますか
相良 あります。フロントローは本当に昨年までC、Dチームにいたような選手が多く、そこの部分は意識のところから変えなくてはならないと思います。
――ご自身の中での理想の主将像はありますか
相良 理想の主将像は長田さんみたいなキャプテンが理想なのかなと思います。体で張って背中で見せて、その上言葉でもまとめる力があるので、そういうところが理想です。でも、自分はしゃべることが得意ではないので、背中で見せること、自分のプレーに集中してチームを引っ張っていきたいなと思います。
――どのようなチームにしていきたいですか
相良 1つ1つのプレーにこだわって、お互いに要求しあえるようなチームにしたいです。
――個人としての目標は
相良 チームを優勝させることです。
――今季のスローガンを教えてください
相良 『Tough Choice』です。
――意味を教えてください
相良 厳しい選択をし、1つ1つのプレーをさぼらずにきついことを選択していくという意味です。
――スローガンはどのような経緯で決まったのでしょうか
相良 まず、今年何を大事にしたいかを委員で話し合いました。そのときにお互いに求め合うというワードがあがり、そこからどんな言葉がいいかなと考えました。そのときに『Tough Choice』がいいかなと思い、スローガンにしました。1年生の時にS&Cコーチに臼井さん(臼井智洋、平26スポ卒=東京・早稲田)という方がいて、その方がウエイト中や練習中に『Tough Choice』という言葉を使っていました。妥協せず、自分の限界まで追い込むという意味の言葉です。例えば、ウエイトでいつもやっている重さをあげられたら、もっと上を目指してどんどん重りをつけていくとか、フィットネスだったらタイムに入っていても出し切ってもっと早く走るとか、自分に厳しくなるという部分が大事だなと思い、その言葉を借りて今年のスローガンにしました。
――チームとして今季の目標は
相良 大学選手権で優勝して、日本一になることです。
――春シーズンの意気込みをお願いします
相良 春シーズンはどのようなメンバーで臨むか分からないのですが、フィールドプレーに関しては昨年から積み上げてきたものがあると思うのでそこはあまり心配していません。ですが、セットプレーでどれだけやれるかが春シーズンはカギになると思います。あと1カ月、早明戦に向けて鍛えていきたいと思います。
――最後に、ファンの方々にメッセージをお願い致します。
相良 ここ2年『荒ぶる』を取れていないので、今年はチーム一丸となって『荒ぶる』を取りに行きたいと思います。応援よろしくお願いします。
今季の意気込みとして『タフ』と書いてくださいました!
――ありがとうございました!
(取材・編集 森田健介、川上璃々)
◆相良昌彦(さがら・まさひこ)
2001(平13)年2月1日生まれ。180センチ。98キロ。東京・早実高出身。社会科学部4年。順調に体重が増加しているという相良選手。主将として、プレーヤーとしての活躍に目が離せません。