冬日和の青空の下、4年生にとって最後となる追い出し試合が行われた。昨年同様無観客での開催となったが、上井草グラウンドは部員の輝かしい笑顔であふれていた。4年生全員が赤黒に袖を通し、生き生きとした表情でグラウンドに立つ。短い時間ではあったが、終始笑いの絶えなかった今日という日は、選手たちの青春の1ページとして刻まれるだろう。
主将としてチームをけん引してきたCTB長田主将
はじめに、4年生と現役から選抜されたチームの対戦が2試合行われた。4年生チームが先制トライをおさめたが、ポジション関係なく、終始グラウンド内を楽しく駆け回る選手たちの姿が見受けられた。そのなかでも、トレーナー武者太郎(スポ4=東京・江戸川)が「落とすなよ!怖い怖い」とラインアウトに参戦し、場の笑いを誘う場面も。4年生の攻撃を次々と防御する現役チームであったが、最後は、満面の笑みを見せたCTB長田智希主将(スポ4=大阪・東海大仰星)が中央へトライ。その直後、これまではベンチから選手を見守ってきた森谷隆斗主務(商4=東京・早大学院)がコンバージョンキックを確実に成功させ、試合終了を告げるノーサイドの笛が鳴り響いた。
想いを伝えるフッカー川﨑太雅(スポ2=東福岡)とプロップ小林賢太 (スポ4=東福岡)
試合後は、下級生が4年生をそれぞれ指名し、学年ごとに1対1で抱く思いをぶつけた。なかには「たまには、帰ってきてください!」という愛のあるメッセージも。また一言に加え、タックルや熱いハグを交わして、下級生は4年生との交流を楽しんだ。終盤には、ロック桑田陽介(スポ4=愛知・明和)をはじめとする4年生4名がコーチへの感謝の思いをつづった。その後、後藤翔太コーチ(平17教卒=神奈川・桐蔭学園)へタックルに向かったロック桑田が、恒例の水をかけられるという場面もあり、上井草が活気ある笑い声で包まれた。
4年生とコーチ陣の集合写真
全国大学選手権準々決勝では、明大に敗れ惜しくも『年越し』がかなわなかった。この悔しさと4年間の早大ラグビーでの経験を胸に、4年生は、春からまた新たなフィールドへと飛び込む。「本当に仲の良い学年だった」(桑田)。この言葉の通りに、後輩だけでなく同期と笑顔で接する4年生の姿が多く見られた。そんな彼らが後輩に託す思いは、もちろん『荒ぶる』奪還だ。あの日悔し涙を流した先輩の思いを受け止め、再起に燃える早大ラグビー蹴球部の新たな挑戦。昨季の経験を糧に、今年こそ日本一をつかみ取る。
(記事 谷口花、写真 森田健介、塩塚梨子氏)
コメント
CTB長田智希主将(スポ4=大阪・東海大仰星)
――今日一日を振り返っていかがですか
まだ予餞会があるのですが、終わりだな、という感じですね。負けたあの時からあまり振り返る時がなかったのですが、ここで区切りができるのでしっかり振り返って次に向けて進んでいきたいなと思います。
――どんな4年間でしたか
あっという間でした。いい4年間でしたし、早稲田を選んでよかったと感じていますね。
――次のステージに向けて意気込みをお願いします
次はさらにレベルも上がりますし、簡単に試合に出れるとは思っていないので、しっかりそこにチャレンジして、また個人としても成長していけたらと思います。
プロップ小林賢太(スポ4=東福岡)
――今日の追い出し試合を振り返って
今日で卒部だなということを感じています。
――早稲田での4年間を振り返って
4年間本当に早かったなというのが正直な感想で、そのなかでも優勝を経験したり、最後は年越しができなかったり、4年間で色々なことが経験できて、本当に人としてもラグビー選手としても成長させてもらえたなと思っています。
――4年生はどんな学年でしたか
和気あいあいとすごく仲良い学年でした。
――この一年、副将として心掛けていたことはありますか
僕自身、コミュニケーションを取るリーダーだと思っていたので、周りの選手とよく話したりするという部分は心掛けていました。
――小林選手にとって早稲田ラグビーとは
『自分を成長させてくれた場所』です。
――後輩たちへの思いをお聞かせください
今の3年生は優勝も経験しているし、それこそ先日の負けてしまった試合も経験しているので、色々な経験をしているというところが強みだと思うので、そこの悔しさを糧にして来年こそは日本一になってほしいなと思います。
――個人のこれからの抱負をお願いします
僕はまだラグビーを続けるので、僕自身も負けをしっかり自分の活力にするための糧にして、これから頑張っていきたいと思います。
フッカー原朋輝(スポ4=神奈川・桐蔭学園)
――追い出し試合を終えていかがですか
今までは送る側でしたが、初めて送られる側になり、ようやく卒部するのだという実感がわきました。
――早大ラグビー部で過ごした4年間を振り返っていかがですか
けがやポジション変更などつらいことも多くありましたが、最後の1年間はとても充実しており楽しかったと思います。
――最後の関東大学対抗戦や全国大学選手権にかける思いに今までとの違いはありましたか
下級生のころは絶対に試合に出なければいけないというストレスがあったのですが、4年生になってからはどの立ち位置にいても日々の過ごし方を意識していたので、最後はリラックスした状態で試合に臨むことができ、その結果自分のパフォーマンスも上がって、Aチームの試合に出ることができました。
――今後ラグビーとはどのように関わっていきますか
大学でやってきたような本気でプレーすることはないかと思いますが、クラブチームに入ったり、自分の子どもをラグビーチームに入れたりして関わっていけたらなと思います。
――同期への思いは何かありますか
苦しい時に支えてくれたのは同期の仲間なので、卒業しても仲よくしていきたいと思います。
――最後に後輩に向けてメッセージをお願いします
僕たちの代は最後に悔しい結果で終わってしまったので、後輩たちにはぜひとも優勝して終わってほしいと思います。
ロック桑田陽介(スポ4=愛知・明和)
――今日の追い出し試合を振り返っていかがですか
一部参加できなかった人もいますが、僕らの代も今日で終わりということで、久しぶりに皆の顔が見えて嬉しいという反面、寂しい気持ちがあります。
――早稲田での4年間を振り返ってみて
4年間を振り返ってみてあっという間だったなと感じています。そのなかでも本当に濃い4年間を過ごせたなと。4年間一緒に戦ってきた仲間なので、苦しい練習を乗り越えてきたグラウンドで、最後にこうしてみんなで集まれたことに感慨深いものがあります。この先も会える機会は全然ありますが、このグラウンドで最後に締めることができて良かったです。
――同期はどんな学年でしたか
自分たちでも話すのですが、本当に仲の良い学年だったなと思います。お互い気を遣う部分はありましたが、1年を通して同期が喧嘩ということもなく、本当に仲の良い集団で… そこが自分たちの自慢できるところです(笑)
――同期とのなかで一番心に残っている思い出はありますか
コロナ前とかだと学年会でのバーベキューとかですかね、本当にこういう(楽しい)雰囲気で。場所を問わず今日のような雰囲気をつくり出すことができるというところが、その瞬間が一番いい思い出です。
――後輩に伝えたい言葉はありますか
今年は満足いかない結果となってしまって、後悔ではないですが、自分たちが出した結果に対して後輩たちが感じたことを終わってからも聞きます。そういうことを感じてくれているので、来年はそういう気持ちにさせたくないですし、こういう経験ができたからこそ何か伝えられたものがあるのではないかなと思っているので、来年はその気持ちを忘れずに頑張ってほしいですし、絶対大学日本一を奪還してほしいなと思います。
――個人のこれからの抱負をお聞かせください
社会人でもラグビーを続けるのですが、自分が早稲田大学ラグビー蹴球部出身であるということでその名に恥じぬように、社会人としてもラグビープレイヤーとしてもしっかり活躍していきたいなと思っています。また、その姿を見て後輩たちも勇気をもらってくれたり、自分も後輩を見て勇気をもらおうかなと思います。そういうところで、社会に出ても恥ずかしくない振る舞いをしていきたいです。
――桑田選手にとって早稲田ラグビーとは
『最大の青春』ですかね(笑)