第3弾はWTB槇瑛人(スポ3=東京・国学院久我山)とWTB松下怜央(スポ3=神奈川・関東学院六浦)の同学年で同じポジションの二人組。松下は夏季オープン戦で2試合連続の先制トライを決め、槇は関東大学対抗戦(対抗戦)初戦で3トライを挙げるなど今年度大活躍のお二人に、春、夏シーズンの振り返りから秋の意気込みまで幅広くお話を伺った。
※この取材は9月8日にオンラインで行われたものです。
同期として
対抗戦初戦で3トライを決め活躍した槇
――お互いの他己紹介をお願いします
槇 怜央は、試合や練習は真面目にやっていますが、ラグビー以外のところではいつもふざけていて、とても面白い人だと思います。
松下 槇くんは、ムードメーカーです。練習でみんなの元気がない時や、私生活でも常に一発ギャグをしています。すごく楽しい存在ですね。
――お互いのプレーに対する印象はいかがですか
槇 怜央はサイズも大きくて、ディフェンスでもアタックでもそれを生かしたプレーをするので、安心して見ていられるなと感じます。
松下 同じWTBとして、瑛人は足が速くて絶対にトライを取り切れるところがうらやましいと思います。
――お互いの尊敬するところと、直してほしいところを教えてください
槇 怜央くんの尊敬するところは、いろいろな人と仲良くしていて人望があるというか、コミュニケーション能力が高いところです。直してほしいところは、なんだろうな…。朝すごい勢いで起こすなどの嫌がらせをたまにしてくるところですかね(笑)。
松下 瑛人の尊敬するところは、面白いので先輩やコーチに一発ギャグを振られるのですが、即興ですぐに考え付くところですかね。たとえそれが面白くなかったとしても、すぐに思いつくのですごいなと思います。
槇 面白いだろ!
松下 直してほしいところは、みんなで遊びに行く時に絶対に来てくれないところです。そこだけ直してほしいです。(槇は)自分中心なので。
――槇選手はどうして参加されないのでしょうか
槇 なんだろうな。行ったら楽しいのは分かっているのですが、釣りが趣味でどうしてもそっちを優先してしまいます。
――同期より釣りの方が楽しいと
槇 そうですね。
松下 釣りなんていつでもできるじゃないですか。みんなで遊ぶのはあまりできないので、そこを直してほしいです。
――ポジションも学年も同じですが、普段からどんな話をされますか
槇 良いのか悪いのかは分からないですが、普段はラグビーの話はあまりしないですね(笑)。
松下 一緒にゲームなどをしています。
「バックスリーを引っ張っていける存在に」(槇)
――春、夏シーズンを振り返っていかがですか
槇 監督、コーチ陣が今年から変わって、新しいラグビーで春シーズンを戦うことになりました。うまくいっているなという感じはありながらも、これでいいのかなという不安も正直ありましたね。ただ夏の試合の結果が良かったのは、春の厳しい試合を乗り越えたからだと思うので、新しいことに取り組みながらも、チームは変化に対応して良い流れで来ているのではないかと思います。
松下 春シーズンに監督もコーチも変わって、相良さん(相良南海夫前監督、平4政経卒=東京・早大学院)の時代から今までやっていた早稲田のストラクチャーが一変しました。春シーズンの最初は個人ではなくチームとしてそのストラクチャーに慣れていくことをメインにやっていましたね。初戦の東海大戦では負けてしまったのですが、そこでチーム、個人の課題がたくさん見つかって、そこからチームでどう勝つかという風にフォーカスすることができました。夏シーズンはチームもだいぶ完成してきて、個人の技術や隣とのコミュニケーションなど、個人のことにフォーカスをしていました。ただその中で夏の試合を勝ち切ることが、選手権優勝に向けて一番大事なことだと監督や長田さん(長田智希主将、スポ4=大阪・東海大仰星)からも言われていたので、個人として成長しつつも、チームでどうしたら勝てるかを考えた夏だったと思います。
――ラグビースタイルが変わったというのは具体的にどこが変化したのですか
槇 FWとBKがより密にコミュニケーションをとって連動しないと成り立たないアタックになりました。その面では、チーム内のコミュニケーションがすごく大事になったと思います。
松下 瑛人も言った通りなのですが、今まではBKはBK、FWはFWに分かれていました。プレーの中でもトライを取るときは、一発でトライを取ったり、FWのモールで(トライを)取ったりというのが多かったです。今年は、FWとBKがミックスになっていて、少ないフェーズではなく、相手に良いディフェンスをされてもしっかりトライを取り切るアタックに変化しました。
――今年から新しい練習としてレスリングなどが取り入れられたとお聞きしました。その成果は感じていますか
槇 レスリングで、タックルの技術のトレーニングをしています。チーム全体のタックル成功率など細かいデータを見た時に、昨年、一昨年と比べて、それらの数値が上がっているので、チームとしてすごく強くなったと思います。
松下 レスリングの練習の中で、高低差という高い位置から低い位置にセットしてタックルするという練習があります。早稲田は全体的にサイズが小さいので、明治、帝京、東海などと比べても、自分たちよりも大きい相手が来た時に勝負するとなると、コンタクトで勝負していかなければなりません。しっかり下に入って相手の動きを止めるという部分に関してはチーム全体としてできているので、成果が出ているかなと思います。
――コロナ渦で昨年は合宿が開催されませんでした。今年、合宿ができたことで得た一番の収穫は何でしたか
槇 昨年はチーム全体での交流が少なかったのですが、今年は夏合宿を通してグラウンドなどの密にならないところで、(交流を通して)チームビルディングやチームの絆を深めることができたことです。お互いを知ることもできたし、チーム力の向上にもつながったのではないかなと思います。個人としては、3年という立場で自分たちがどういう風にチームに貢献していけるのかというところを学年で話し合いました。少しずつではありますが、チームに少しでも良い影響を与えられるような発言やプレーをするように、心がけや意識をするようになったことです。
松下 僕はラグビーの点からなのですが、チームとしては、(相手に)どれだけ良いディフェンスをされても、自分たちのクオリティを保つことで、最後まで(トライを)取り切れることが強みになったことです。また、ディフェンスでもレスリングや普段のブレイクダウンの練習が生きてきて、強い相手を押し戻せることができるようになり、ディフェンスをしていけばターンオーバーすることができるということが明治戦でわかったことも良かったです。アタック、ディフェンスでもチームの強みを知れたことが収穫だと思います。個人としては、瑛人が言っていたように、来年4年生になる自覚や責任感を持つようになりました。ラグビーでは、CTBからWTBにポジションが変わったのですが、どのポジションでもできるオールマイティさも強みとして得られたのではないかなと思います。
――松下選手は、春・夏でポジションが変わりましたが、ポジションへのこだわりというのは何かありますか
松下 僕自身は、ポジションへのこだわりはないですね。やはりいろんなポジションをできることは1つのポジションを(固定して)やるより自分自身の幅も広がるし、いろんなところでチャンスを与えてもらえてチャレンジできるので、僕は好きです。
――槇選手は、昨シーズンもレギュラーで試合に出場して活躍されていましたが、昨シーズンから成長した部分や意識を変えたところはありますか
槇 まだ大きく変わったと自信を持って言えるところはないのですが、昨年までは2年生という立場で試合に出ていて、WTBに古賀由教さん(令3スポ卒=現リコーブラックラムズ)や、南さん(南徹哉、令3文卒)や河瀬さん(河瀬諒介、スポ4=大阪・東海大仰星)など頼りになるバックスリーの先輩方が多くいました。今はもう高学年で、よしさん(古賀由教)たちも抜けて、バックスリーを引っ張っていく立場にならないといけないという自覚の芽生えはありますね。
プライベートの時間
――槇選手は釣りが趣味とおっしゃられていましたが、釣り以外で好きなことはありますか
槇 ドラマを見ますね。最近は、『TOKYO MER』を見ています。
松下 僕はドライブが趣味で、よくオフの日はドライブに行っていました。
――マイブームはありますか
槇 僕は今完全に釣りに没頭しているので、マイブームも釣りですね。
松下 ドライブのほかに服が好きなので、古着屋さんに行って服を買うことがマイブームです。
――試合前のルーティーンや試合前に必ずすることはありますか
松下 僕は、音楽を聴くことと、ラグビーのスーパープレー集を見ることです。
槇 僕は、音楽を聴くくらいですね。ルーティーンはないです。
「ボールを持ったら必ず前に出る」(松下)
自身の強みであるボールキャリーを見せる松下
――初戦が控えていますが、今の心境はいかがですか
槇 初戦は正直自分たちの思い通りに行くとは思っていないです。初戦の立教戦のチームのテーマとして『FIRST』が挙げられていて、先手を取って固いプレーを意識した試合にするということがあります。初戦だからこそ、難しいプレーにはこだわらず、シンプルに強いプレーをやっていければ、良いゲーム展開になると思いますし、この後の対抗戦の試合を良いかたちで迎えられるのではないかと思っています。
松下 やはり初戦なので、しっかりと早稲田の強みを出していきたいです。夏合宿が終わって練習が始まりましたが、その時に権丈さん(権丈太郎アシスタントコーチ、平20卒=福岡・筑紫)から、「常に決勝で戦っているつもりでいろ」と言葉をいただきました。どのレベルのチームに対しても常に本気で、全力でプレーしたいと思います。
――対抗戦のヤマ場となる試合はどこですか
槇 ヤマ場は、後半にある帝京と明治です。個々としても非常に強い選手が揃っていますしすごく良いチームなので、その中で自分たちが常にこだわっているコンタクトの部分で引かずに強気に倒せれば、良い流れになってくると思います。そこで少しでも引いたり、弱気になったりしてしまうと、すごく厳しい展開になってしまうのではないかと思います。
松下 僕は11月3日にある帝京戦だと思います。夏合宿で帝京には勝ちましたが、今シーズンに入るにあたって絶対に(帝京大は)目の色を変えて勝ちに来ると思うので、夏のようなゲーム展開になるとは言い切れないと思います。そこで勝つか負けるかによって、その後の明治戦の試合内容も変わってくるのではないかと思います。
――他大学の選手でライバル視している選手はいますか
槇 僕は、明治大学のWTBの石田吉平くんです。良い選手だと思います。オリンピックにも出ているし、高校の日本代表で一緒にプレーしているのですが、ボールを持ったら止められないような選手で、ステップもキレキレです。吉平が11番で僕のトイメンになると思うので、彼を止めることが僕の仕事だと思います。ディフェンスは特に気を張って頑張っていきたいです。
松下 僕はいないですね。
――早稲田のBK陣は層が厚く、同じポジションには、今駒選手(今駒有喜、文3=東京・早実)や小泉選手(小泉怜史、文構3=東京・早実)などがいらっしゃいますが、チーム内のライバルについてはいかがですか
槇 バックスリーというところでいうと、同期が多く、(選手の)層も厚いです。今駒も、小泉も、平田(平田楓太、スポ3=福岡・東筑)もポテンシャルがある選手で、今駒と小泉に関しては、昨年対抗戦も経験している選手です。非常に良い選手たちなので、普段アタックやディフェンスをやりあっているのですが、そういうところから負けないように頑張っていきたいですね。
松下 僕も瑛人と同じ意見です。バックスリーは同じ学年が多く、平田や、今駒、怜史、みんな自分にはないものを持っています。僕は今Aチームですが、Bチームだからこそ出せるハングリーさがあるので、そのハングリーさに負けないように自分も頑張っていきたいと思います。
――ご自身のプレーの強みやアピールポイントはどこですか
槇 僕の強みとしては、アタックのところでトライを取り切るところです。そこは強みでもあり、自分でもこだわっている部分ではあるので、対抗戦、選手権と厳しい試合が続いていく中で、そこでもしっかりアタックの部分でボールを呼んで存在感を出していければと思います。
松下 僕自身の強みは、ボールキャリアとロングキックです。ボールを持ったら必ず前に出るということを意識してやって、チームの流れに勢いを付けられたらと思います。
――「大事なところでトライを取り切る」と槇選手はおっしゃっていましたが、WTBというポジション柄、試合のプレッシャーは大きいのですか
槇 プレッシャーはありますね。一番外でボールをもらう機会がすごく多く、ゲインができるポジションではあるので、自分がそこで前に出れば出るほど、次の良いアタックにつながっていくと思っています。逆に自分の外に人がいないことが多いので、一度ミスしたり、タッチに出たりすると(ボールを)相手に取られてしまうので、プレッシャーというか緊張感はありますね。
――秋シーズンの目標を教えてください
槇 昨年の対抗戦と選手権で負けてしまった明治と天理の試合ではトライを取ることができませんでした。厳しい試合になったときこそ、チームを勢いづけられるようなアタックやトライをとれるように、しっかり準備をして頑張っていきたいと思います。
松下 昨シーズンはあまり試合に出られていなかったのですが、今年はずっとAチームで試合に出させていただいているので、このままずっと自分の強みを出して、選手権優勝に向けて頑張っていきたいと思います。
――対抗戦に向けての意気込みをお願いします
槇 選手権もありますが、まずは目の前の一試合をしっかり良い状態で勝利するために、毎日の練習を大切にして濃い時間にしていきたいと思います!
松下 一番の目標は優勝することですが、その前に勝てなければ元も子もないので、しっかり一戦一戦やっていくとともに、普段の練習から一つ一つのプレーを突き詰めて、貪欲にやっていきたいと思います!
――ありがとうございました!
(取材・編集 山田彩愛、塩塚梨子)
今シーズンの意気込みを書いてくださいました!
※撮影時のみマスクを外しています (写真提供:早稲田大学ラグビー蹴球部)
◆槇瑛人(まき・えいと)(※写真右)
2000(平12)年10月18日生まれ。176センチ。88キロ。東京・国学院久我山高出身。スポーツ科学部3年。普段からムードメーカーだという槇選手。取材陣の一発芸の無茶ぶりにも素早く応えてくれました。持ち前のスピードを生かしたランでトライを取り切り、早大を勝利へと導く姿に注目です!
◆松下玲央(まつした・れお)(※写真左)
2001(平13)年1月31日生まれ。182センチ。93キロ。神奈川・関東学院六浦高出身。スポーツ科学部3年。今シーズンは安定してスタメンを勝ち取っている松下選手。対抗戦では前に出るプレーでチームに勢いと流れを与えてくれるでしょう!