【連載】対抗戦開幕特集『Be First』第5回 CTB長田智希×FB河瀬諒介

ラグビー男子

  1年時からレギュラーとして活躍し、今年ラストイヤーを迎えたCTB長田智希主将(スポ4=大阪・東海大仰星)とFB河瀬諒介(スポ4=大阪・東海大仰星)。二人は共に東海大仰星高校出身で、長田がキャプテンを務めた高校3年時には花園で日本一に輝いた。そして現在、再び長田が主将となったチームで挑む大学ラグビー最後のシーズンに向けて、それぞれの思いを伺った。

 

※この取材は9月6日にオンラインで行われたものです。

頼りになる存在

夏に行われた帝京大戦で長田のトライを祝福する河瀬

――今回は東海大仰星高校コンビということですが、高校時代のお互いの印象は覚えていらっしゃいますか

長田 (河瀬は)プレーヤーとしては、言うまでもないですが高校時代からチームのエースのような存在だったので、頼りになるなとはずっと思っていました。

河瀬 (長田は)選手としてはすごくディフェンス力が高い選手で、僕は高校の時WTBをやっていたこともあって、13番と14番で隣になることも多かったので頼りになるなとは思っていました。

――普段の生活ではいかがでしたか

河瀬 長田は、高校では賢いクラスの方にいたので、ラグビーもそうですし、勉強もストイックにやっていて、こんなストイックな奴いるんだなと思っていました。

長田 (河瀬は)負けず嫌いでしたね。

――長田選手は高校3年時にもチームでキャプテンを務めていました。河瀬選手から見て高校時代の長田主将と、現在の長田主将で変わったと感じる点はありますか

河瀬 僕がこんな事言っていいのかという感じですが(笑)。高校の時は自分がなんでも先頭に立ってやらないといけないと思っていたように見えたのですが、今年はいろんな人に頼るようにしていて、そのような部分は良い意味で変わったなと感じます。

――では逆に長田選手から見て河瀬選手が変わったと感じる点はありますか

長田 ラグビーでいうと、強くなりましたね。高校の時はランニングやステップがすごいなと思っていたのですが、そこにフィジカルが加わり、誰も止められない状態になっていて。そこが変わったと思います。

――お互いのうらやましいところや尊敬するところはどこですか

長田 まずは、身長が高いところ。僕よりも少し高いので。あとは足が速い。とにかくなんかすごい(笑)。

河瀬 抽象的やな(笑)。

――具体的にどのようなところがすごいのですか

長田 いやもう、プレーが観ていてすごいじゃないですか。華のあるプレーヤーだと思います。僕はどちらかというと地味に仕事をするというタイプのプレーヤーなので。うやましいかと言われたら正直分からないですが、河瀬選手にしかないところなので、そこは良いなと思います。

――河瀬選手は

河瀬 僕は、自分の芯をしっかり持っているところ、妥協しないところはすごく尊敬しています。うらやましいところは…そうですね、僕は男女問わず脚を見るのが好きで、結構太ももとかを見てしまうのですが、長田選手の脚はすごくかっこいいなと(笑)。太いし、筋肉質ですし。僕はどちらかというとそんなに太くなく、筋肉質でもないので、そこはすごくうらやましいなと思います。

――高1から7年目の仲になると思いますが、試合中にやりやすいと感じる場面などはあるのでしょうか

長田 やりやすいというよりは、とりあえず河瀬がボールを持ったら安心して見れますね。

河瀬 長田はプレー中によく喋ってくれるので。その辺は安心していますし、長田がどこでキャリーしそうなのか、抜けそうやなという感じが分かる時はあります。

「チームとして良い方向に向いている」(長田)

強靭なフィジカルを武器に突破をはかる長田

――春シーズンはそれぞれどんなことにフォーカスして練習されていましたか

長田  僕は監督が代わってラグビーのスタイルや全体でも変わったことが多かったので、まずはそこに適応するというか、今年やろうとしていることに対してそこを磨いていくという感じでした。

河瀬  僕も同じです。昨年からラグビーのスタイルが結構変わったので、監督、コーチ陣が何をしたいのかを理解して実行しようとしていました。

――お二人にとっては3年間同じ監督のもとでプレーし、4年目に監督が代わったことになりますが、大変だったことはありますか

長田 今も言ったようにやるラグビーが変わったので、もし監督が以前と変わらなかったとしたら、同じようなラグビーをして、新しく何かを変えるということはなかったと思います。そこの変化に適応するところが大変でした。

河瀬 練習のスケジュールやレスリングを取り入れ始めたことで、昨年よりもタイトになったので、そこが慣れるまで大変だったと思います。

――昨年はコロナ禍で中止になった夏の菅平合宿ですが、今年は開催できました。率直に感想はいかがでしたか

長田  昨年はなかなか試合ができなかったので、今年はシーズンが始まるまでにいろいろな試合ができたというのが大きいなと感じていて。試合の内容としても、変化に対応するところなど、春から積み重ねてきた部分がチームとして良い方向に向いているなと感じられた試合だったと思います。

河瀬 やはりチームとして合宿をすることで、昨年できなかった分より今年は(チームが)ひとつになれたかなと合宿を通して感じました。

――夏合宿の試合について、それぞれのプレーを10段階で振り返っていただけますか

長田 6くらいですかね。今年はポジションも変わってやる役割も変わったんですが、その中で自分がしないといけないことをしっかりと理解したうえで、プレーできたかなと。それでもまだまだチームとしても、個人としても成長できる部分があったので、残りの4の分、成長したいなと思います。

河瀬 僕は7くらいです。帝京大戦は自分自身のコンディションも良くやりたいことができたのですが、明大戦ではやりたいことができず、ノックオンなどのミスもあったので、そこは修正というか、もっと成長できる部分だと思い7にしました。

――昨年度の大学選手権決勝の反省から、フィジカルの強化に取り組まれているとお聞きしています。具体的にどのような取り組みをされているのですか

長田 まずみんなの中で最も変わったところが意識の部分だと思っていて。天理大に負けてフィジカルの必要性をみんなが痛感したと思うんです。そこの必要性をみんなが感じているというその部分が今年の一番の変化かなと。それがあるからこそ、ウエイトトレーニングやレスリング、普段の練習もそうですし、そういったところでコンタクトの局面をより意識できています。その積み重ねがうまく試合につながっているのかなと思います。

河瀬 僕もそれがすべてだと思います。

――河瀬選手は昨年度の対抗戦、筑波大戦でSO起用がありましたが、そのような経験が今に生きていると感じる場面はありますか

河瀬 SOをやって、ゲームの流れであったりとか、点数を考えたりするようになって、FBの時にはあまり考えていなかったことなどをプレー中にも考えられるようになりました。あとはSOでプレーすると相手との距離も近かったので、ボールのもらい方などはすごく勉強になって今年にも生きているのかなと思います。

――長田選手は今年13番から12番になったことで試合中の運動量が増えたように思います。そのために個人的に取り組んでいることはありますか

長田 昨年からフィジカルの強化は課題にしていて、昨年の自粛期間で体重が増えたのでそこが一番大きいです。その体重を今もキープしながらやっています。もちろん体を強くするというのも大事なのですが、プラスでコンタクト局面で体を当てる経験をたくさんするというのが一番大事だと感じていて。なので練習でしっかり体を当てる、コンタクト局面をより多くするというのは意識してやっていますね。

――春、夏を通して感じた今年のチームの強みはなんだと思いますか

河瀬  今年のチームの強みは、昨年と違ってボールを継続しながらでもトライを取れるというのが強みの一つだと思います。

長田 それに加えて、あとはコンタクト局面に対するこだわりですね。強いかどうかは置いておいて、それに対するこだわりは昨年よりは強みかなと思います。

――お二人から見て現在のチームの雰囲気はいかがですか

長田 ラグビー面ではチームとして良い状態だと思います。やるラグビーが変わったことに対しての適応は、Aチームから下のチームまでしっかりできていて、夏合宿中の試合も悪くない試合をしているチームが多かったので。ただグラウンド外のところで、規律に関してはまだまだ甘さが残るなとは感じています。

河瀬 良い意味で上下関係があまり厳しくないので、学年関係なくプレー出来たり指摘し合えたりしているのではないかと感じます。

――オフの日や時間がある時の過ごし方について教えてください

長田 僕は部屋にこもって映画を観るか、YouTubeを観るかです。あとは気が向いたらトレーニングをします。この3つですかね。

河瀬 僕もあまりアウトドア派ではないので部屋にいるのですが、1人でいるのは寂しいので誰か同期の部屋に行って映画を観ています。あとは、最近携帯のゲームで麻雀ができるので、麻雀をやったりしています。

長田  MJですね。

河瀬 MJです、はい(笑)。

――4年生がとても仲の良い印象があるのですが、実際のところはどうですか

長田 そうですか?

河瀬 他の学年に比べれば、比較的仲はいいと思います(笑)。

――仲が良い秘訣はありますか

河瀬  気が付いたら仲が良くなっていた感じです。特定のグループも特にないので、そういったところが仲の良い秘訣にはなっているのかなと思います。

――今ハマっていることや、部内で流行していることはありますか

長田 やはりMJですかね(笑)。あれは流行りとかではないのかもしれないですけど、とりあえず暇な時に何人かで「やるぞ!」と始まりますね(笑)。

河瀬 個人でハマっていることになってしまうのですが、結構ホラー映画を観るのにハマっています。

――おすすめのホラー映画はありますか

河瀬  おすすめですか!ちょっと待ってくださいね(笑)。

長田 僕はホラー映画に関してはちょっと専門外なので(笑)。

河瀬  菅平で『アナベル』という映画のシリーズを観ました。結構色々なホラー映画を観てきたのですがかなり怖いのでおすすめです(笑)。

対抗戦に向けて

果敢なアタックでボールを前に運ぶ河瀬

――秋シーズンを直前に控えて、現状で見えている課題は何かありますか

長田 ラグビー面でいうと、春シーズンから積み重ねてきた今年必要なスキルややらなければいけないことがある程度僕たちの中にあるのですが、そこの一つ一つのプレーの精度といったところがまだまだなので、そのようなところを高めていくことが必要だと思います。

河瀬 そうですね。プレーの中でのコミュニケーションの量や質、あとはペナルティをしないという規律の部分はもっとできるのではないかと思います。

――対抗戦が始まっていくと思いますが、どのような試合にしていきたいですか

長田 僕は12番というボールを持つ回数が多いポジションで、相手と近いところでのプレーが多くなるので、そこでどれだけゲインラインを切れるか、前に出られるかどうかでチーム全体が良いラグビーが出来るかどうかが決まると僕は思っています。そこでしっかり誰よりも前に出るというところは意識してやりたいです。

河瀬 僕はFBとしてアタックでもディフェンスでも周りに良い選手がたくさんいるので、その周りの選手を生かすことが出来るようなプレーをしていきたいと思います。

――ヤマ場となる試合はどこだと思いますか

長田 全部の試合が大事ですが、まずは初戦どのような試合ができるかというのはやはり大事だと思うので、対抗戦全体に影響を与えるという意味では初戦がヤマ場かなと思います。

河瀬 初戦もすごく大事ですし、あとは帝京戦がヤマ場になるのかなと思います。夏合宿でしっかりと勝ち切れているというところでみるとすごく良いイメージを持ててはいるのですが、そこで慢心してしまうと相手も強いのでどうなるか分かりません。そういったところで帝京戦だと思います。

――他大で意識している、ライバルとなる選手はいるのでしょうか

長田 いないです。やっているラグビーも違いますし、それぞれの持ち味も違うので僕は僕と思っています。すごいなと思う選手はもちろんたくさんいますが、そこに対してライバルだと感じてはいないです。

河瀬 言いにくいな(笑)。僕は明治の雲山(雲山弘貴)です。1年生の時から試合もお互い出ていますし、同じポジションですし、そういう部分ではライバルだなと思います。

――4年生として、後輩たちに対して意識していることはありますか

河瀬  僕は特にないです(笑)。

長田 そうですね。あったほうがいいとは思いますが、僕も正直ないです。特に1年生や2年生の試合に出ているメンバーは思いっきりやってくれたらと思っていますし、あまりプレッシャーを感じずにやって欲しいです。それぐらいです。

――お二人にとって大学ラグビーはラストイヤーとなりますが、それに向けた思いはありますか

河瀬  最後だからという訳ではないですが、やはり日本一にはなりたいですし、優勝するために一戦一戦頑張っていきたいと思います。

長田  僕もほとんど同じですが、自分たちの代なので今までとは日本一への思いが少し違うものがあります。しっかりやらなければいけないなという意味で頑張りたいと思っています。

――1年生から試合で活躍されているお二人にとって4年間は早く感じましたか

長田 早いですね。

河瀬 そうですね。早かったですね。

――そのように感じるのは、充実していたからですか

長田 充実していたからですかね。僕たちは基本1年単位で考えているので、日本一のためにやっているとあっという間に過ぎていったなという感じです。

――1年時から自身が成長したと感じる点はありますか

長田 1年の時から試合には出させていただいていましたが、周りで出ている先輩に後ろから付いて行っているというか、特に自分がチームを勝利に導いたり、チームの勝利に貢献したりしている意識がほとんどありませんでした。そういう意味では、今は4年になって自分がよりチームに勢いを与えないといけない立場になったので、そういう自覚も含めてプレーできるようになっているのかなとは感じます。

河瀬 難しいですね。長田が言った自覚の部分ではすごく自分でも変わったなとは思いますが、今思ったら成長しているのかなという感じはします。あまり成長している実感はないです(笑)。

――お二人はプレッシャーを感じることはあるのでしょうか

長田 プレッシャーかどうかは分かりませんが、毎試合前はすごく緊張します。自分たちがやらないとという思いがすごく大きいので、そういった意味では無いことはないと思います。

河瀬 僕も試合前はすごく緊張します。でもそれをあまりプレッシャーと感じたこともないです。それをプレッシャーだと感じてしまうと、僕は弱気なプレーになってしまうので。あまり考えないようにはしています。

――緊張を和らげるために行っていることはありますか

長田 僕は自分の中で緊張に種類があって、感覚的な話にはなるのですが、緊張の仕方でその日の調子が分かると思います。緊張している時に「今日はいい感じだな」と自分に言い聞かせて、緊張を受け入れるように意識しています。

河瀬 僕も緊張している時は自分が緊張しているということを認めるということと、緊張する時はミスにビビっている時なので、自分の良いプレーをイメージするといったことは意識しています。

――対抗戦で注目して欲しい自分のアピールポイントを教えてください

河瀬 僕はハイボールキャッチに注目して欲しいと思います。大学に入ってからハイボールキャッチを強みにしようと4年間練習してきたので、絶対に落とさない自信もありますし、そのキャッチ1つでチームの流れを変えることもできると思うのでそこに注目して欲しいです。

長田  僕は注目ポイントが少ないことで有名なんです(笑)。あまり注目するところはないと思います。

――では、チームとして注目して欲しいポイントはありますか

長田 コンタクト局面のところもそうですし、継続して取り切るアタックも注目ポイントだと思います。

――最後に、対抗戦への意気込みをお願いします

長田 僕たちの目標は日本一で、対抗戦の後にある大学選手権で優勝することなのですが、そのために対抗戦でどういった試合ができるのかがとても大事だと思います。初戦はとても大事な試合になると思うので、そこから一戦一戦自分たちの出来ることをしっかりとやって勝ちたいと思います。

河瀬 僕も似たような感じになりますが、優勝するためには一つ一つ勝っていくしかないので、初戦から一戦一戦大事に頑張っていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 荒舩渚生、塩塚梨子)

今シーズンの意気込みを書いていただきました!

※撮影時のみマスクを外しています (写真提供:早稲田大学ラグビー蹴球部)

◆長田智希(※写真左)

1999(平11)年11月25日生まれ。179センチ。90キロ。大阪・東海大仰星高出身。スポーツ科学部4年。映画鑑賞が趣味だという長田選手。最近のおすすめ映画は『42~世界を変えた男~』だそうです。主将として、CTBとして『荒ぶる』奪取のキーマンとなってくれるでしょう!

◆河瀬諒介(※写真右)

1999(平11)年7月21日生まれ。183センチ。89キロ。大阪・東海大仰星高出身。スポーツ科学部4年。ホラー映画にハマっているという河瀬選手は、夏合宿の自由時間にもチームメイトと鑑賞していたそう。長田主将からも信頼される早大のエース、河瀬選手のプレーに大注目です!