新体制が発足してからおよそ2カ月が経つこの春、副将に就任したプロップ小林賢太(スポ4=東福岡)と寮長に就任したフッカー原朋輝(スポ4=神奈川・桐蔭学園)は、それぞれの立場からどのようにラグビーに向き合っているのか。最終学年になった今何を思うのか。その胸中を伺った。
※この取材は3月23日にオンラインで行われたものです。
それぞれにとっての昨シーズン
――昨シーズンはどのようなシーズンでしたか
小林 コロナウイルスの影響がとても大きかったシーズンでした。思い通りにいかないことが多くあり、その中で自分たちができることを見つけて最高の準備をしようと思っていました。適応力を養うことができたシーズンだったと思います。
原 コロナの影響も大きくありましたが、僕は1年間ケガをしていて、最後の1カ月でようやく復帰してラグビーができたというシーズンでした。久しぶりにラグビーができたことで楽しさを実感したのですが、やはりケガで試合に出られなかった点について悔しさが残ったシーズンだったと思います。
――原選手は入学当初フランカーでしたが、どうしてフッカーに転向されたのですか
原 最初は監督からの指示で、自分自身あまり納得していなかったのですが、結局フッカーになりました。自然となってしまったというところではあります。しかし、フッカーに転向したことによって試合に出られる場面も多かったので、後悔などはありません。
――ここからは小林選手にお聞きします。昨シーズン委員になられて意識していたことはありますか
小林 1、2年生の頃は先輩たちについていけば良い環境で、自分のプレーにフォーカスしていた部分はありました。しかし、委員になった昨シーズンは、それ以上に周りに対して自分の発する言葉や態度が見られる立場になりました。そのような面で昨年委員になってから、責任感を持ち始めました。
――全国大学選手権決勝で試合終了のホイッスルが鳴った時はどのようなお気持ちでしたか
小林 僕は単純に悔しかったです。全員に悔しいという気持ちがあったと思います。本当に悔しくて、それ以外何も考えられませんでした。やってきたことに対しては自信があったので、あそこまで通用しなかったことには悔しさしかありませんでした。
原 僕はもちろんチームが負けて悔しいという気持ちはあったのですが、おそらく試合に出ていた賢太たちに比べたらその気持ちは小さかったと思います。それよりも、自分が出ていない試合だったからこそ、来年自分が絶対に出場するのだという思いの方が強かったです。あまり悔しいという気持ちはなかったと思います。
副将として、寮長として
昨季はケガに苦しんだ原(提供:早稲田大学ラグビー蹴球部)
――副将はどのような経緯で決まったのでしょうか
小林 まず主将を誰にするかということを決めることが必要でした。一人一人が意見していく中で、主将は長田(長田智希、スポ4=大阪・東海大仰星)に決まり、その後で長田から副将に指名してもらって、副将をすることになりました。
――任命された時のお気持ちはいかがでしたか
小林 1年生の時から試合に出させてもらって、昨年委員もやらせてもらったので、意外ではありませんでした。しっかりリーダーとして昨年以上にチームを引っ張っていかなければいけないと思いましたね。
――副将や寮長になる予感はあるのでしょうか
小林・原 (顔を見合わせた後に)まあ(笑)。
――小林選手が目指す副将像はありますか
小林 自分は高校の時も副将だったのですが、その時はあまり副将の役目を果たしていたとは言えませんでした。そのため高校の時の反省を生かしたいと思っています。また、昨年は副将が二人いて、今年は体制も変わりますが、その先輩方のようにチーム全体を見ながら長田のサポートもできる副将になりたいですね。
――具体的にやっていることはありますか
小林 昨年も意識していましたが、全体練習の時には自分が発言するということを意識しています。自分が発言することによってリーダーシップが発揮されると思っていて、自分はコミュニケーションを取ることが得意だと思うので、そのようなところでチームに働きかけていきたいです。
――寮長はどのような経緯で決まったのでしょうか
原 僕も賢太と同じように長田に指名されたかたちです。
――任命された時はどのようなお気持ちでしたか
原 オフ期間に指名されなかったので、僕は寮長をやらないんだと思っていたというのが正直なところです。しかし、新体制発表の前日に指名されて「俺が寮長になるのか」と驚きました。
――寮長の具体的な仕事は何でしょうか
原 部や寮で出た問題に対してどのような改善策を出したらいいかということを考えたり、部の雰囲気に対して自分が注意をしたりルールを作って対処したりすることが仕事です。
――寮長として意識していることはありますか
原 注意をする立場なので、まずは自分が普段の生活態度をしっかりするということは意識しています。
――お二人から見た今の寮の雰囲気はいかがでしょうか
小林 僕たちが1年生だった頃に比べると、学年関係なくコミュニケーションが取れているという印象です。コロナウイルスの影響でオフも寮を出られないので、全員が寮にいるという状況下で多くの人と話す時間が増えたのも要因の1つだと思います。学年ごとに仲が良いというより、寮生みんなで仲が良いのかなと思いますね。
原 賢太と内容がかぶってしまうのですが、僕らが1年生の頃よりも学年関係なく仲良くできているのかなと思いますね。
――入寮してきた新1年生の印象はいかがですか
小林 若いですね。
原 (笑)。
小林 若いっていいなと思いますね。
原 やはり入寮した当初は1つの部屋に1年生が集まるのですが、そのような姿は自分たちが1年生の頃と一緒なので、懐かしく思えたりします。
――お互いのことをどう思っていますか
小林 原くんはムードメーカーです。大きなケガをして、自分だったら立ち直れないと思ってしまいます。しかし、原くんはくじけることなくずっと努力していて、尊敬できる部分がいっぱいあります。
原 恥ずかしいな、これ(笑)。
――原選手から見た小林選手はいかがでしょうか
原 賢太は普段一番うるさくて、一番ふざけています。しかし、ラグビー面ではプレーでも副将としてもチームを引っ張っていってくれて、そこのギャップがすごいです。普段の生活からラグビーの対する姿勢は誰よりもまっすぐなので、そのような部分は尊敬しています。
――チームの中で自分自身の役割は何だと思いますか
小林 試合中や練習中に折れてしまえば、それがチーム全体に影響を及ぼしてしまう立ち位置に自分はいると思います。自分は主にFWのリーダーなので、そこでのプレーや言動、態度など全てにおいて中心にいなければいけないと思っています。
原 フッカーは重要なポジションだと思うので、そのような面で引っ張っていったり中心になったりしていかなければいけないと思っています。
――お二人から見た4年生はどのような学年ですか
原 他の学年と比べると、一緒にいる時間が長いので、仲が良いのかなと思います。今はコロナの影響で外出ができないのですが、それ以前のオフも寮に残ってみんなで遊んでいました。ゲームやBBQをしたり、思いつきで料理を作ったりしていましたね。
――主将の長田選手はどのような人物ですか
小林 『THE・主将』という感じです。プレーでもそうですし、私生活でも、一番態度で見せてくれる人です。そのような面を知っているからこそ、長田の言葉はとても僕たちに伝わってきますし、僕たちもやらなきゃとこちら側に思わせてくれる人です。
原 その通りですね。全てにおいて尊敬できる人だと僕自身は思っています。
小林 全体を見ているというか、みんなで強くなろうとしているということを感じます。昨年の丸尾主将(丸尾崇真、令3文構卒)と同じタイプではありませんが、自分の行動で示すという部分では同じかもしれません。
原 その上で全員に気を配っているという印象です。
小林 周りの力も頼る人物ではありますね。みんなでチームを作っていこうという人物だと思います。
――長田選手の意外な一面はあるのでしょうか
原 真面目そうに見えますが、案外ふざけるタイプです(笑)。僕も最初に抱いていた印象と、仲良くなって知った長田の人柄にギャップを感じました。あと、パンケーキ作るのが好きです(笑)。
小林 確かに(笑)。オフの日の朝ごはんに一人でパンケーキ焼いています(笑)。
「今までやっていたことだけでは勝てない」(小林)
昨季フィールドプレーでも活躍した小林
――今シーズンから監督が変わりました。練習の雰囲気はいかがですか
小林 監督交代当初はチームの雰囲気が大きく変化して、新しいことが増えていくことにあまり適応できておらず、マイナスな気持ちになってしまう選手も多かったと思います。しかし、昨年負けてしまって新しいことに挑戦する中で、今までやっていたことだけでは勝てないということは自分たちも分かりました。そのため新しいことにチャレンジしていこうという方針は、徐々にみんなの意識として変わってきていると思います。
原 その通りです。
小林 特に最近の雰囲気は良いと思います。新しい取り組みが増えて練習自体の強度も上がったこともあり、気持ちが落ちていたこともありました。しかし、今は本当に強くなるためにどんなにきついことでも立ち向かっていくという雰囲気に変わってきていますね。
――具体的に一番何が変化したのでしょうか
原 練習の強度ですかね。一日一日の強度が上がりました。
小林 昨年はやっていなかったレスリングなどを取り入れていますね。以前は前のシーズンが終わって春シーズンが始まるまではウエイトやフィットネスの部分だけにフォーカスしていたのですが、今年からそれに加えてラグビーに関する練習も取り入れています。
――スクラム強化のために今年始めたことはありますか
小林 首のトレーニングをしています。「FW全員が首回りを50センチにしよう」という取り組みを始めました。まだ50センチになっている人はいないのですが、全員がそれを目指すために毎日の練習とは別に首のトレーニングをやっています。今週からはスクラムに必要な筋力をつけるためにプラスアルファの練習をコーチから提示していただいてやっています。
原 スクラムは前3人だけの力と思われがちですが、今年は特に8人で押すということを意識しています。先ほども話にあった通り、首に関するメニューを全員でやったり、昨年ならばFWだけで映像を見ていたのですが、今年はBKもスクラムの映像を見たりして改善点を共有しています。そのような部分でもチームで押すという感覚が今年は特にあるのではないかと思います。
――春シーズンの意気込みを教えてください
小林 昨年は春シーズンがなかったことはチーム作りにとって痛いところでした。そこの重要性に昨年気づくことができたので、一試合一試合確かに実践経験を積んで、成長の糧にしていかなければいけません。自分たちの武器を作る期間だと思っているので春シーズンに向けてしっかりと準備をして、シーズンに入って自分たちの積み上げてきたものがどこまで通用するのかというところを明確にすることで、夏につなげていけたらいいと思います。
原 今はたくさん新しいことに取り組んでいるのですが、その成果を春シーズンの試合で出せたら良いと思っています。これはAチームだけの話ではなく、BチームやCチームなどチーム全体としてレベルアップできるような春シーズンにできたらいいです。
――理想のチーム像は
小林 理想のチームは全員がリーダーです。実際に全員がリーダーというのは不可能だと思いますが、全員が自分たちのプレーに対して意見し、その意見を共有すれば必ず良いチームになるのではないかと思います。
原 全くその通りで、先ほどもお話ししたのですがAチームだけでなく、一人一人が日本一になるためにやるべきことをやるというチームが良いと思っています。また、プレー面だけでなく生活態度なども日本一と思えるようなチームになりたいです。
――期待している後輩はいらっしゃいますか
小林 僕は2年生の細川大斗(社2=東京・早実)です。結構期待していますね。今同じ部屋なのですが、夜ご飯を食べてからトレーニングをするなど本当に頑張っている選手です。昨年上のチームに入ってきて、出場する機会はなかったのですが、良いプレッシャーを与えてくれた選手でもあったので、今年は細川大斗に期待です。
原 3年の鏡鈴之介(法3=東京・早大学院)ですね。昨年BチームのFWとして一緒にやってきた分、今年はAチームとして一緒に試合に出たいという気持ちがあります。彼も努力家な面があって、そのような部分も僕は見てきているので、一緒に頑張りたいですね。
――最終学年として思うことはありますか
小林 本当に4年間は早かったです。あっという間でした。昨年はコロナウイルスの影響でとても早く感じましたが、今年もこの後のイベントのことなどを考えるとあっという間にシーズンが始まって終わってしまうと思いますね。
原 僕はこの3年間ずっとケガをしていたので、その分とても早く過ぎていってしまったということは感じています。
――ご自身の強みは何でしょうか
小林 僕はプロップなのでスクラムと言うべきなのですが、個人的に僕の強みはフィールドプレーだと思っています。
原 僕もフッカーとしてスクラムやラインアウトと言いたいところなのですが、僕はタックルや運動量に関しては自信を持っているのでそこを強みとしています。
――個人として課題に感じていることは何ですか
小林 僕の場合はスクラムです。3年間試合に出ている中でレベルが上がるにつれて、自分のスクラムは押すことができず、押されることも多くなっています。3年間試合に出続けても、そこがうまくいっていません。4年生になって「早稲田はBKだ」と言われるのは悔しいので、スクラムを強くしたいと思っています。
原 僕はスクラムとラインアウトのスローです。2年間それをやってきて成長を感じていますし、自信もついてきているのですが、チームが日本一になるためにということを考えると、まだまだそこはレベルアップしなければいけないと思います。そこをこの1年間で磨きをかけていきたいです。
――今年の目標は何でしょうか
原 僕は今年の初めにケガをしないという目標を掲げたのですが、結局すぐケガをしてしまいました。これを最後にして、ケガなくAチームとして試合に出場することを目標にしたいと思います。チームとしては昨年優勝できなかった分、必ず日本一を取るということを目標に頑張りたいです。
小林 ケガをしないこともそうですが、健康で元気に1年を過ごすことが目標です。チームとしては日本一です。2年生の時に優勝して、3年生の時に決勝で負けてしまって、その両方を知っているのは自分たちの強みなので、そこを経験している僕たちだからこそできる準備もあると思います。隙のないチームを作って日本一を目指したいです。
――ファンのみなさんにメッセージをお願いします
小林 例年だと上井草のグラウンドに来ていただくなどして実際に僕たちが何をしているか見てもらえたりするのですが、コロナウイルスの影響で試合会場でしか僕たちの姿が見てもらえない状況なので、僕たちがファンのみなさんにできるのは勝つことしかないと思います。勝つために今から上井草で準備をして、昨年とれなかった『荒ぶる』を今年は取ります。今年の早稲田に注目していてください。よろしくお願いします。
原 昨年優勝できなかった分、今年は絶対に『荒ぶる』を取るので応援よろしくお願いします。
――ありがとうございました!
(取材・編集 内海日和、塩塚梨子)
今季に向けた一言を書いていただきました!(写真撮影・提供 早稲田大学ラグビー蹴球部)
◆小林賢太(こばやし・けんた)(※写真右)
1999(平11)年6月2日生まれ。181センチ。115キロ。東福岡高出身。スポーツ科学部4年。1年時からスタメンとして試合に出場し続けている小林選手。「早稲田はBKだと言われるのは悔しい」と春の練習ではスクラム強化に力を入れているそう。実力と経験を併せ持った頼れる副将がチームを『荒ぶる』まで引っ張ってくれることは間違いありません!
◆原朋輝(はら・ともき)(※写真左)
1999(平11)年6月13日生まれ。174センチ。91キロ。神奈川・桐蔭学園出身。スポーツ科学部4年。高校時代はフランカーとして花園にも出場していた原選手ですが、大学では気がつくとフッカーに転向していたそう。寮長としてチームの規律を正しつつ、ケガで苦しんだ3年間の思いをラストイヤーで爆発させてくれることでしょう!