【連載】新体制特集『Be Hungry』第4回 CTB長田智希主将

ラグビー男子

 第104代主将に就任したCTB長田智希(スポ4=大阪・東海大仰星)。1年時からスタメン入りしチームの主力を担ってきただけでなく、昨年度は委員としても活動してきた。『荒ぶる』奪還に向け主将という大役を任された今何を思うのか、その心の内を伺った。

※この取材は3月24日にオンラインで行われたものです。

奮戦1歩及ばず

――はじめに、昨年度の振り返りをしていただきます。新型コロナウイルスの影響でイレギュラーな1年となりましたが、何か学んだことはありますか

長田 コロナで練習ができない期間があったり、自分たちではどうしようもないことが多くありました。そういうときに不満を持っても仕方がないので、自分たちができることは何なのか、置かれた状況で何ができるかを考えて行動できたことは、大きな学びだったと思います。

――全国大学選手権準優勝という結果に終わりましたが、決勝を振り返っていかがですか

長田 誰が見ても分かるようにシンプルに接点で負けていました。完敗というか、自分たちのやりたいことができなかったですし、天理の強みを抑えることもできず、悔しい結果でした。

――決勝では、長田選手がゲインする場面や接点で負けていない場面も見られました。フィジカルの強化に取り組まれたと以前お聞きしましたが、成果は感じられましたか

長田 そうですね。局面で当たるというところは成長できたと思います。

――優勝するには何が足りなかったと考えますか

長田 チームとしては、決勝までに積み重ねたものが早稲田より天理の方が上回ったからあの結果になったと思います。チーム全員で一日一日を大事にしようと話していたし、そういう思いで全員が過ごしていたのですが、やはりその思いが足りなかった。個人としては、ケガもいくつかしましたし、プレー面でも体の面でもうまくいかないことが多くて。ケガはどうしようもない部分もあるのですが、そこは改善して、ずっとチームに関わり続けていけるような1年にしたいです。

――1年を通して、良かった部分や成長した部分は何ですか

長田 チームとしては、最初の状態は関東大学対抗戦の初戦の結果から見てもあまり良くないと感じていましたが、そこから帝京や慶応には勝つことができました。一試合ごとに出た課題をしっかり修正して成長していくというところに関しては良かった部分だと思います。個人としては、コロナの影響で自分にフォーカスする時間が増えて、2年の時の試合を観て課題などを振り返ることができました。フィジカルの部分では体重や筋量の増加を達成でき、前年より成長したと思います。

――逆に、課題や伸びしろといえる部分は

長田 天理との決勝で明確になった部分なのですが、コンタクトのシチュエーションでいかに前に出るかがこのチームが今年勝つために必要なことだと感じました。

新チームの船出

――主将の就任はいつ決まったのですか

長田 決勝が終わった次の日くらいに全員で集まって、そこである程度固まったので、1月の半ばですね。

――主将になりたいという思いはあったのですか

長田 昨年くらいから、同期のことを考えた時に僕がやらないといけないだろうなとは思っていましたし、気持ちの面では3年の時から準備していました。

――丸尾崇真前主将(令3文構卒)から何か声をかけられましたか

長田 決勝で負けた後に、来年は任せたぞといったことを言っていただきました。

――どんな主将になりたいと考えていますか

長田 言葉でうまく伝えるのが苦手なので、まずは自分がやって、チームが大事にするべきところやこだわるべきところを全体に示せるような主将になりたいです。言葉よりも行動で。その後大事な場面で、言葉でみんなをまとめられたらと思います。

――長田選手は高校時代にも主将を経験されています。その経験が生きていると感じることはありますか

長田 そうですね。あのの経験があったから、今回みんなにキャプテンになってほしいと言われた時にスッと受け入れられました。高校のにやっていなかったら、僕自身やりたくないと言っていたと思いますし、みんなの中でも僕がキャプテンになるという意識は無かったのかもと感じます。あの1年でラグビープレイヤーとしてだけでなく人間としても成長できたので、必ず(経験が)生きると思っていますね。

――どのようなことを通して「人間としても成長できた」と感じたのですか

長田 高校で主将だった時は、基本的に周りよりも自分がやればいいと思っていたんです。でもリーダーになるとそうはいかなくて、周りに対しての要求もしないといけなくて。自分だけでなくチームが良くなるために何をすべきかを考えられるようになりました。それに、リーダーは単純にたくさん前に出て喋る機会が多いじゃないですか。それがすごく苦手で、意見を言えなかったんです。でも、キャプテンを経験して皆に対して意見を発信することは苦手ではなくなりましたね。

――主将に就任して1カ月ほど経ちますが、何か心掛けていることはありますか

長田 まだ主将らしいことはあまりしていないと思いますが、まずは練習などで誰よりもハードに取り組むことは心掛けていますね。それが自分の基礎になると思っています。そうしないと、僕のリーダーとしての良さがなくなると思うので、それは大切にしていますね。

――副将に小林賢太選手(スポ4=東福岡)を選出した理由は

長田 単純に、僕を除いたときにチームを引っ張れるのは小林しかいないと思ったので選びました。早い段階で試合に出ていましたし、チームを引っ張ってくれている存在なので、小林しかいないと思いました。

――寮長の原朋輝選手(スポ4=神奈川・桐蔭学園)については

長田 細かいところに目が行くというか。寮長は生活の一つ一つを見てここがダメと指摘しないといけないと思うのですが、そういうのをみんなに嫌がられながらもできるのが原だと思ったので、原に任せました。

――委員についてはいかがですか

長田 昨年委員をしていた河村(河村謙尚、社4=大阪・常翔学園)と小林と僕と主務の森谷(森谷隆斗、商4=早大学院)の4人で話し合って決めました。4年に関しては、チームをこれまでも引っ張ってくれている人、3年に関しては、試合に出ていることに加えて、来年チームを引っ張っていってほしい存在である人を選びました。

――4年生の今の雰囲気は

長田 練習に関しては、正直まだまだです。チームを引っ張っていかなければならない学年になりましたが、まだ意識が足りないです。徐々にでもいいので、僕たちがチームを引っ張るんだという気持ちがもう少し行動に表れてきたらいいなと思います。

「日々の練習でどれだけ自分のベストを出せるかが大事」

昨季、筑波大戦で果敢なボールキャリーを見せた長田

――現在の新チームの状態はいかがですか

長田 監督やコーチ陣も何人か入れ替わって、チームのやることが少し変わったので、それに対していろいろとチャレンジしている状況です。チーム全体が新しいことにチャレンジして成長しようという雰囲気になっていて状態は良いと思います。

――具体的に変わったことは何ですか

長田 ディフェンスでいうと今までは形が決まっていたのですが、現在は場面ごとに何が最適な選択なのか考えて、より自分たちの判断を大事にするということが昨年より変わった点だと思います。

――現在の練習で特に重視していることはありますか

長田 先ほども言ったように、新しいことにチャレンジしている中で一つ一つの能力のレベルを上げていくことを重視しています。ディフェンスだったら判断するスピードや正確性を上げる、アタックではそれぞれの局面でいかに最高の選択ができるかというところの能力を上げています。

――これからどんなチームにしていきたいですか

長田 僕らの一番の目標は日本一で、チーム全体でそこを目指していきたいです。これはずっと言っていることなんですが、下のチームの人も日本一を意識して毎日過ごせるかを大事にしたいですし、最初に言ったように毎日の積み重ねが大事だと思うので、先の目標を考えつつも日々の練習でどれだけ自分のベストを出せるか、最高の日をどれだけ積み重ねるかを大事にしていきたいと思います。

――昨年度の秋のインタビューでは「早稲田はディフェンスに自信がある」と仰っていましたが、今年度のチームも同じでしょうか

長田 ディフェンスのところはもちろん大事にしたいですし、強みにしたいです。ただ、アタックしないと点数を獲れないので。早稲田らしく展開してどこからでもチャンスを狙っていきたいです。

――今季キーマンとなる選手はいらっしゃいますか

長田 (しばらく考えて)全員ですね。

――今年のスローガンを教えてください

長田 「Be Hungry」です。ハングリーであれというそのままの意味が一番大きいのですが、一日一日を大事にして貪欲に成長し続けるということ、あとは天理大に負けていた接点などを含めて1センチ、2センチにこだわって追求し続けるということがこのスローガンに込められています。

――春シーズンについてのお気持ちはいかがですか

長田 試合の勝ち負けはもちろん大事ですが、春までに自分たちの積み重ねた部分をまずは出すこと。すべて出したうえでどうしていかなければいけないのか見えてくると思いますし、通用した部分とそうでない部分を見ることでさらに成長できると思うので、そこを大事にしていきたいと思います。あとはまだメンバーが定まっていない状況で全員にチャレンジするチャンスがあるので、メンバーに入るために全員が挑戦する気持ちを持ってほしいなと思います。

――昨季はアングルチェンジと縦のプレーが強みだと仰っていましたが、今季のご自身の強みは

長田 基本的には同じです。強みでもありますし、さらに強化していきたい部分でもあります。

――逆にご自身の課題は何ですか

長田 ディフェンスの面では、アグレッシブに前に出ながら相手をドミネート(相手を圧倒する)タックルをすることがこれからCTBとして伸ばしていかなければいけない部分です。アタックの面では自分のパスで周りにゲインさせる、周りを生かすようなプレーにもっともっと取り組んでいきたいですね。

――今季の目標は

長田 チームとしてはもちろん日本一。個人としてはリーダーとしてもCTBとしてもチームを引っ張っていく。それだけです。

――応援してくださる方へのメッセージをお願いします

長田 昨年は悔しい結果で終わってしまったので、今年はファンの方々も含めて全員が笑顔で終われるように必ず勝ちます。

――ありがとうございました! 

(取材・編集 塩塚梨子、大滝佐和)

丁寧な字で『真摯』と書いてくださいました!

(撮影・提供 早稲田大学ラグビー蹴球部)

◆長田智希(おさだ・ともき)

1999(平11)年11月25日生まれ。179センチ。87キロ。大阪・東海大仰星高出身。スポーツ科学部4年。ポジションはCTB。オフの日にはホットケーキを作るという長田選手。丁寧な受け答えからは意志の強さを感じました。リーダーとしても、CTBとしてもチームを日本一へ導いてくれることでしょう!