【連載】新体制特集『九折不撓』第4回 佐藤真吾主将

ラグビー男子

 新体制対談第4回を飾るのは第101代主将に任命された佐藤真吾(スポ4=東京・本郷)だ。2年時からスタメンとして試合に出場する一方、ケガにも悩まされてきた佐藤真。最終学年を迎え、主将として臨む1年へ向けた想いなどを語っていただいた。

※この取材は3月20日に行われたものです。

「成長しているなと感じる部分はありました」

昨季はケガに苦しんだ佐藤真

――昨季に比べてオフが長かったですが、オフシーズンはどのように過ごしていましたか

佐藤真 就活していましたね。なので、どこにも出かけていないですね。僕膝がずっと悪いのでスキーとかも行けないので。アウトレットに行って買い物をしたりはしましたけど、他は特別なことはしていないですね。

――就活とラグビーの両立は難しいですか

佐藤真 大変ですね。僕が知る限りキャプテンで就活している人っていないと思うんですよね。相当前まで遡らないといないと思います。チームのことを考えながら就活するっていうのはなかなかチャレンジングなことではあるんですけど、いい経験をさせてもらっているなと思います。

――昨年の短かったオフと今季の長かったオフでの違いなどはありますか

佐藤真 監督が決まらなかったので。例年だったら2月にある予餞会が去年は1月の早い時期で、今季は2月25日になって。チームはその前に練習が始まってはいたんですけど、みんな不安を抱えた状態で心配な部分は多くありました。

――監督がなかなか決まらなかったことによる影響は少なからずあったんですね

佐藤真 古庄さん(古庄史和ヘッドコーチ、平15教卒=国学院栃木)と大峯さん(大峯功三ジュニアコーチ、平27スポ卒=福岡・東筑)はいたんですけど、監督が代わればチームの方針もわからないので、「どうなるんだろう」と思いながら過ごしていました。

――昨季のチームを全体的に振り返っていかがですか

佐藤真 (苦笑)。ポッドの精度などシステムとしては2年目ということで定まり始めていました。1年生も何人かいましたけど、その中でも2、3年生などは1年目から大悟さん(山下大悟前監督、平15人卒=神奈川・桐蔭学園)とやってきたので、意図を理解してラグビーができた人も多かったので、僕らの感覚としては帝京大ともいい勝負ができましたし、早慶戦でも自分たちのテンポに持っていければトライを取ることができたので、成長しているなと感じる部分はありました。

―― 一方でフェーズを重ねるとアタックが手詰まりになったり、セットプレーの精度など課題も残りました

佐藤真 そうですね。外国人選手が要所にいると、僕らがずっとあのポッドをやってきたので、相手としては対策を講じるべき場所がわかってそこに外国人選手を置かれたりと、対策され始めましたね。そこを対策されると厳しかったです。

――昨季のチームに足りなかった部分はどこでしょうか

佐藤真 今季も言われているんですけど、各々の判断力ですね。一人一人が判断をしてラグビーをしていくのが今季のテーマだと思っているので。

――今季も引き続き判断力の部分を伸ばしていくのですね

佐藤真 いや、今季は昨季よりもより主体的に判断していくラグビーをしようと思っています。昨季は細かいところでは判断しているんですけど、どちらかというと大きな枠組みはチームが決めていたので。ポッドの細かいところとかも監督やコーチが決めてそれに従って動いていたので、各々が判断するっていうのがそこまでできていなかった部分がありました。だから、今季は主体的に自分たちで判断して、相手がどういうラグビーをしてきても対応できるようなラグビーをしたいと思います。

――今季は昨季までAチームでプレーした選手が多く残っていますが、そこについてはどのように感じていますか

佐藤真 それはメリットだと思います。特にバックローは幸重(幸重天、文構3=大分舞鶴)や下川(下川甲嗣、スポ2=福岡・修猷館)はジュニアジャパンにも行ったので頼もしいですね。

「風通しのいい環境をつくりたい」

主将として新チームについて語る佐藤真

 

――新チームの雰囲気というのは現在いかがですか

佐藤真 良いと思います。4年生が40人いるんですけど今までの代に比べて人数が多いと思うので、そういう意味では4年生の色が凄く出ると思います。その中でも4年生が主体的に熱い思いを持ってラグビーしているなと思うので。あと、皆しっかり自分の意見を言ってくれるので、いいと思います。

――それは役職の有無にかかわらずですか

佐藤真 はい。昨季に比べて下のチームの人も意見を言ってくれるので、そこは良いと思っています。

――ファーストミーティングは行われましたか

佐藤真 いえ、まだやっていないです。近々行われます。

――ではスローガンもまだ決まっていないのですね

佐藤真 はい。そのときに決めます。4年生が主体で決めるらしいです。

――山下前監督のときは監督からスローガンを提示されましたが、そこは違いが出ていますね

佐藤真 そうですね。結構僕らに判断を委ねる部分がありますね。僕らで判断していくラグビーを今季はやっていくので、ラグビーだけでなくほかの部分でも自分たちに考えることをさせているのかなと思います。

――相良新監督の印象はいかがですか

佐藤真 難しいですね。加藤さん(加藤広人前主将、平30スポ卒=現サントリーサンゴリアス)が1年生のときにコーチをやっていたそうなんですけど、僕はあまりわからなかったので。ただ、すごい優しい人です。僕らもそんなに関わっていないのでわからない部分は多いんですけど、熱いを持っている方だと思います。

――主将に就任して約1カ月が経ちましたが、現在意識していることはありますか

佐藤真 色んな人の意見をくみ取ろうと思っています。風通しのいい環境をつくりたいですね。色んな人が僕らに何でも言ってきてくれるような環境をつくろうと思っています。あと、4年生が本当に熱くて、後輩もあっと思うような先輩だったらチームとしても雰囲気が良くなると思うので。例えばとても小さいことなんですけど、先輩全員が挨拶を絶対返してくれるとか、自分のことを見てくれる先輩がたくさんいるとか。そういう先輩がいることって下のチームの選手からすれば出られなくても応援したくなる先輩だと思いますし、チームの雰囲気の向上につながって、それはAチームやBチームの人たちのモチベーションにもつながると思うので。要は風通しのいい環境をつくりたいですね。あとは、僕は喋るのが上手くはないので、背中で見せていこうとは思っています。

――山下前監督も以前対談の中で佐藤真選手は発信することが苦手とおっしゃっていました

佐藤真 そうなんですよね。僕、昨季全く喋ってないんですよ。練習中もです。思っていることはあるんですけど、喋ることもないなと思っちゃうので。今までキャプテンもやってないですし、そういうの苦手なほうだったので。でも、これは自分を成長させるいい機会だと思います。

――改善するために取り組んでいることはありますか

佐藤真 練習で毎日同じことをしているとモチベーションを維持することが難しいと思うんですけど、そのなかで僕が練習前に新鮮な言葉を言えたら、それだけでもチームの雰囲気が少しでも変わるんじゃないかなと思います。あと、4年生から発信していくことが本当に大事だと思います。ことしから練習前に4年生が集まって話し合ってから練習を始めているんですけど、4年生から発信していこうという話はずっとしていたので、そういう意味で4年生のモチベーションをずっと上げようと思っています。

――副将の西田強平(スポ4=神奈川・桐蔭学園)選手に求めることは何でしょうか

佐藤真 僕が彼を副将にしたのは、彼に対してラグビーでも私生活でも一番信頼できる男だと思ったからなので、僕が求めるというより、彼は僕が何も言わなくても自分からやってくれると思うので、そこは大丈夫だと思います。

――具体的にはどのような部分を信頼していますか

佐藤真 熱いですね。ラグビーでも私生活でも、芯を持っているなと思います。

――また、委員の人数が例年に比べてかなり多いですが、意図は何でしょうか

佐藤真 直人(齋藤直人、スポ3=神奈川・桐蔭学園)とか岸岡(岸岡智樹、教3=大阪・東海大仰星)、将伍(中野将伍、スポ3=福岡・東筑)は試合にずっと出ているので。4年生が引っ張ると言ってもその3人はラグビーに対する理解が高いので、委員にしようとは考えていました。また、4年生の中で強平と聖生(桑山聖生、スポ4=鹿児島実)や岳(緒形岳、スポ4=新潟・新発田)は自分の意見を持っていて、僕に対してもしっかりと意見を言ってくれたりしますし、聖生は真面目なので寮長にしました。勘太(辺津勘太、スポ4=東京・早実)は下からの意見をたくさん聞いてまとめようと思って入れました。

――3年生が4人入ったというのは下の学年からの意見も吸収したいという意図はありますか

佐藤真 いや、その4人には4年生と同じくらい発信してほしいなと。役職つけたほうが彼らにとっても責任感出ていいかなと思ったので。

――2年生から選ばなかったことに理由はありますか

佐藤真 適した人がいなかったので選びませんでした

――加藤広前主将からはどのような言葉をかけられましたか

佐藤真 僕って何も考えてないように見られるんです。でも、加藤さんは「あまり考えてないように見えるけど、すごい考えてると思うから、自分で抱え込まずに周りに頼ってキャプテンやっていきな」と言われました。

――また、先日まで英国遠征に行っていたそうですが、試合以外にはどのようなことをしましたか

佐藤真 日本大使館にいったり、Vincent’s Clubっていう一般の方は入れないオックスフォード大学から認められた人しか入れない場所とか、一般の方では絶対入れない場所などに行きました。あと、僕知らなかったんですけど、オックスフォード大学って大学の世界ランキングで1位らしいんですよ。色々な項目があるらしいんですけど。そんな大学と試合ができたことも光栄ですし、アフターマッチファンクションとかでも気さくに話しかけてくれたので、日本人よりもオープンだなと思いました。

――コミュニケーションなどは大丈夫でしたか

佐藤真 一応僕も受験で入ったので(笑)全くわからないわけではなかったんですけど、2年生の高吉(高吉将也、教2=神奈川・桐蔭学園)が英語喋れたので、結構喋ってくれました。

――遠征を通じて得られたことなどはありますか

佐藤真 今回の試合に対してのテーマを掲げていて、相良監督も来てすぐだったんですけど、そんな中でできることは『体を張ること』と言われいて、僕らもそう言いました。体を張ることをオックスフォード大との試合でやろうって言って、そこの部分について少し見えたのは収穫かなと思います。

――昨季東海大戦後に「外国人選手にやられすぎた」というお話もありましたが、今回の遠征では1対1の部分などはいかがでしたか

佐藤真 そこの部分は負けている感じはしなかったです。

――今季いよいよ創部100周年のシーズンを迎えますが、どのような風に戦っていきたいと思いますか

佐藤真 チームとしてまだ何も決まってないので、詳しくは言えないんですけど、先ほども言った通り自分たちで判断するラグビーをやっていくと思うので、自分たちで主体的に考えて行動して大学日本一へ向けてやっていきたいなと思います。

――例年に比べて周囲の期待値も高まっています

佐藤真 100周年のプレッシャーは相当大きいですね。

――この春シーズンはどのように戦っていきたいですか

佐藤真 今季は最初ディフェンスの面を整備していくので、結果よりも過程なんですけど、勝たなかったらチームの意識も良くないので。あと、昨季(関東大学対抗戦)4位だったので、Bリーグということで負けるわけにはいかない、1敗でもするわけにはいかないなとはもちろん思っています。

――それでは最後に今季にかける意気込みをお聞かせください

佐藤真 やはり100周年ということで周囲からの期待値も高くて、ワセダが勝たなかったら大学ラグビー盛り上がらないと思うので、大学日本一になって『荒ぶる』取りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集、新開滉倫 写真、佐藤詩織)

色紙に今季の決意を書いて頂きました!

◆佐藤真吾(さとう・しんご)

1996(平8)年8月29日生まれ。179センチ96キロ。東京・本郷高出身。スポーツ科学部4年。色紙の執筆をお願いしたところ、すぐに『大学日本一』と力強く書いてくださった佐藤真選手。大学日本一へ向けた決意の強さが表れていました!