ヤマハ発動機と真剣勝負!惜敗喫するも、収穫は十分

ラグビー男子

 早大フィフティーンが、上井草の地でトップリーガーと熱戦を繰り広げた。対するは、シーズン真っ只中のヤマハ発動機だ。ヤマハ発動機は、先週のパナソニック戦でも見せた強力なスクラムを武器とするチーム。控え選手を中心としたメンバー編成ではあったが、ファーストスクラムからその強さは圧倒的だった。スクラム、ブレイクダウンでプレッシャーを受け、前半17分までに3トライを立て続けに奪われてしまう。しかし、早大もやられてばかりではない。前半で2トライを返し、試合は後半へ。両チーム共にゴール前まで攻め込む場面はありながら、結局スコアが動くことはなかった。早大が自陣から最後のアタックに出たところでノーサイド。12-19で試合を終えた。

 早大ボールのキックオフで始まった前半。序盤はヤマハ発動機ペースで試合が進んでいく。個々のドライブやブレイクダウンでさすがの強さを見せられ、テンポの良いアタックを許してしまった。17分までに3トライを献上。ペナルティーまでは取られなかったものの、スクラムでも圧倒される場面が目立った。それでも、ここから早大がスコア差を詰めていく。20分に中盤でのマイボールスクラムを耐え、良い状態でボールをBKに供給。CTB付近でのループパスでディフェンスを崩し、ラストパスを受けたWTB本田宗詩副将(スポ4=福岡)が3人に囲まれながらもトライを奪った。34分には敵陣ゴール前でラインアウトというチャンスを迎える。良いかたちでモールを組み相手のペナルティーを誘うと、アドバンテージを生かしてSO岸岡智樹(教1=大阪・東海大仰星)がディフェンス裏のスペースにショートパント。CTB宇野明彦(スポ1=神奈川・横須賀)が反応し、ボールを押さえた。キックも決まり、12-19で試合を折り返す。

早大最初のトライを挙げた本田副将。春シーズンぶりのトライだった

 後半はなかなかスコアが動かなかった。要所でのタックルが精度高く決まり、トライまでは許さない。逆にアタックはゴール前での決め手を欠いた。後半最初のヤマ場は後半18分、自陣ゴール前での相手ボールスクラムの場面だった。早大がペナルティーを犯し、スクラムを選択したヤマハ発動機。こだわりを持って押し続ける相手に、早大も意地を見せる。ヒット後の伸びを耐えると、逆に早大がプッシュ。ヤマハ発動機を相手に、ターンオーバーに成功した。その後、試合は一進一退の攻防が続く。FW、BK共に好機を演出するも、トライにはつながらなかった。前半とスコアは変わらず、12-19でノーサイド。負けはしたが、攻守で大きな収穫を得た試合となった。

両チーム共に力を入れているスクラム

 「スクラム、ディフェンス、ブレイクダウンの場面でビッグチャレンジをしよう」(ロック桑野詠真主将、スポ4=福岡・筑紫)。その言葉通り、日本のトップレベルで戦っている相手に対し、挑戦者として堂々としたプレーを見せた早大。圧倒される場面はたしかにあった。しかし、それ以上に通用した部分が多くあったことも事実だ。夏合宿からの成長が著しい早大。この日の善戦は、再来週に開幕を控える関東大学対抗戦に向けてチームにさらなる勢いをもたらす結果になったはずだ。

(記事 進藤翔太、写真 本田理奈、桝田大暉)

秋季オープン戦
早大 スコア ヤマハ発動機
前半 後半 得点 前半 後半
12 19
12 合計 19
【得点】▽トライ 宇野、本田 ▽ゴール 岸岡(1G)
※得点者は早大のみ記載
早大登録メンバー
背番号 名前 学部学年 出身校
鶴川 達彦 文構3 神奈川・桐蔭学園中教校
  後半40分交代→16佐田    
貝塚 隼一郎 政経4 埼玉・早大本庄
千葉 太一 教4 東京・早実
山口 和慶 スポ4 福岡
◎桑野 詠真 スポ4 福岡・筑紫
加藤 広人 スポ3 秋田工
佐藤 真吾 スポ2 東京・本郷
宮里 侑樹 スポ2 沖縄・名護商工
  後半6分交代→22柴田徹    
齋藤 直人 スポ1 神奈川・桐蔭学園
10 岸岡 智樹 教1 大阪・東海大仰星
11 桑山 聖生 スポ2 鹿児島実
  後半5分交代→28緒形    
12 宇野 明彦 スポ1 神奈川・横須賀
13 黒木 健人 教3 宮崎・高鍋
14 本田 宗詩 スポ4 福岡
15 梅津 友喜 スポ1 岩手・黒沢尻北
リザーブ
16 佐田 涼祐 社4 東京・早実
17 峨家 直也 商2 兵庫・報徳学園
18 柴田 雄基 文3 愛知・千種
19 三浦 駿平 スポ1 秋田中央
20 吉満 慎吾 人3 東京・本郷
21 千野 健斗 人2 東京・成蹊
22 柴田 徹 社1 神奈川・桐蔭学園
23 中山 匠 教1 東京・成城学園
24 吉岡 航太郎 スポ3 国学院栃木
25 横山 陽介 スポ3 神奈川・桐蔭学園
26 桐ケ谷 稜介 スポ2 群馬・太田
27 船越 明義 社2 東京・早大学院
28 緒形 岳 スポ2 新潟・新発田
29 水谷 彰裕 商2 埼玉・早大本庄
※◎は主将、監督は山下大悟(平15人卒=神奈川・桐蔭学園)
コメント

ロック桑野詠真主将(スポ4=福岡・筑紫)

――この試合に向けて、どのような点にフォーカスしてきましたか

今まで自分たちがやってきたブレイクダウン、ディフェンス、スクラムの場面でビッグチャレンジしよう、ということをチームで話していました。相手がヤマハだから特にこれ、ということではなくて、自分たちがやってきたことをしっかりやろうということで試合に臨みました。

――実際に戦ってみていかがでしたか

最初からしっかりとファイトしていこうという話はしていたんですけど、最初の10分間でトライを立て続けに奪われてしまって。それでも、その後は我慢できていましたし、前半で2つのトライを返せたので、そこは良かったと思います。

――ファーストスクラムからすさまじいプレッシャーを掛けられましたが、その後にチームに何か声はかけましたか

相手どうこうではなくて、自分たちのやってきたことにもう一度戻ってやっていこう、という話は全員でしました。

――ヤマハ発動機はスクラムを強みにしているチームだと思います。実際に組んでみてどう感じましたか

やっぱり、強かったです。組んだ後のまとまりと、FW8人全員がスクラムに懸けていますし、意思統一もしっかりされていました。そこは他のチームと全然違うなと感じましたね。

――後半、自陣ゴール前スクラムの場面でターンオーバーしていました。何か変えたことがあったのでしょうか

試合の前半はダメだったんですけど、途中から貝塚さん(フッカー貝塚隼一郎、政経4=埼玉・早大本庄)を中心に徐々に修正できてきていました。あの場面では対応できつつあった場面でもありましたし、良いコミュニケーションも取れて、良いスクラムが組めたんだと思います。

――ラインアウトモールで得たアドバンテージから得点につながる場面がありました

そうですね。でも、あの場面は倒れずに押し切って、モールでトライを取りたかったです。

――その他にも、いくつかラインアウトモールを組む場面がありました

そうですね。でも、ラインアウトのボール獲得率が悪かったので、そこは試合を通じての反省点だと思います。

――試合を通してディフェンスの精度が高かった印象です

ディフェンスについては、春からずっと取り組んできたことなので。夏を越えてからもっと精度高くやっていこうという話もしていますし、最近かたちになりつつあるんじゃないかと思います。BKが良い連携をしてくれていましたし、そのおかげで相手を抑えられていたんだと思います。

――この試合を経て、チームとして自信になる部分もあったのでしょうか

そうですね。BKのアタック、ディフェンス共にスピードがあるところはすごく良かったと思います。後半は0点に抑えられましたし、中盤のエリアでしっかりとディフェンスできていたと思うので良かったと思います。

――夏合宿を終えて、チームの状態はいかがですか

良いですね、すごく。雰囲気も良いですし。それでも、まだまだ日本一には遠いので、気持ちを緩めずと言いますか、しっかりと上を見て、一つずつステップアップしていくしかないと思います。

――Aチームとしての次の試合は9月17日の関東大学対抗戦、対成蹊大になりますが、それまでの期間をどう過ごしていきたいですか

対抗戦が始まるので、まずはコンディションをしっかりと整えていきたいです。ワセダはこれからチームとして登り続けるしかないので、一戦一戦をしっかりと戦っていきたいと思います。

WTB本田宗詩副将(スポ4=福岡)

――きょうの試合を振り返ってみていかがでしたか

9月になってシーズンも始まってくるというところで、チームとしては10月頭の筑波大戦にターゲットを当てています。それに向けた初戦として、清宮さん(清宮克幸氏、平2教卒=現ヤマハ発動機監督)のご厚意もあって組んでもらった試合なので、恥ずかしい試合はできないなということで気合いを入れて臨んだ試合でした。

――強豪ヤマハとの試合となりました

Aチームとスクラムを組んでいるBチームで、スクラムは日本で二番目に強いと思います。早大も今シーズンはスクラムに注力してやっていこうとしている中で、FWを中心にスクラムを意識してやりました。

――トライの場面を振り返っていかがでしたか

夏合宿でノートライだったことが個人的にとても悔しく、トライという結果が一番WTBには求められていると思っています。BKに関してはヤマハのBKよりうちの方が速いと試合前から思っていたので、思い切って勝負しました。

――サインプレーだったのでしょうか

そうですね。

――春に比べ、アタックの精度向上がみられましたがそのことに関してはいかがですか

春は全くアタックに手をつけていなかったので、その分ディフェンスにばかり時間を取られて苦しい展開が多かったです。それでも、網走合宿からアタックも整備されてきてから、よりディフェンスに集中できていると思います。

――いよいよ対抗戦が始まりますが、意気込みをお願いします

僕は2年生の頃から対抗戦に出ているのですが、特に今年は4年生ですし、始まってしまうと本当に一瞬です。ことしは(全国大学選手権への対抗戦からの)出場校も一つ減りましたし、どれも落とせない試合となってくると思うので、どこが相手でも一つ一つの試合をしっかりと戦っていきたいと思います。

――目標は何ですか

全勝して帝京大にも勝利することです。ヤマハも勝つと思うのでぜひ日本選手権で日本一を懸けて戦いたいです。

プロップ千葉太一(教4=東京・早実)

――トップリーグのチームとスクラムを組んでみて、手応えはどうでしたか

やれることとやれないことが明確になりました。大学生相手では味わうことのできない重さと強さを実感できて良かったです。

――前半、トライに結び付いたスクラムはそれ以前のスクラムと比べると安定していた印象を受けました。組み方など変えた部分はありましたか

変更したポイントはないです。自分たちのやれることを出しきれた結果として、あのスクラムが組めたと思います。チームとして意図したことを引き出せた良いスクラムだったと思います。

――後半の序盤では相手のスクラムに圧倒されていた印象を受けました。何が原因だったと思いますか

スクラムで相手とヒットするまでの細かい一つ一つのスキルから、トップリーグと自分たちの違いを見せつけられました。スキルの違いだと思います。

――自陣ゴール前のスクラムではスクラムで相手を押しきり、見事ボールを奪いました。他のスクラムと何が異なっていたのでしょうか

最大集中というようなかたちで、チームのFWが一つにまとまって集中して組めたスクラムでした。全員が集中していた非常に良いスクラムだったと思います。

――帝京大、東海大といった強豪大学のスクラムと比べて、何か実際に組んでみて感じた違いはありましたか

こだわりですかね。ヤマハさんはスクラムに対するこだわりが全然違いました。ワセダもスクラムにはこだわりを持っていましたが、その2ランク上をいくこだわりがヤマハさんにはありました。ただ、その相手に対して受け身ではなく、挑戦者としてスクラムを組めたのは非常に良かったと思います。

――スクラムの修正点はありますか

先程、ヤマハの方から、スクラムのヒットした後の重さ、強さをもう一段階上げれれば、スクラムがもっと良くなると言われたました。この辺りをチームとしてしっかりと取り組んでいきたいと思います。

――ラインアウトではあまり成功率が高くないように思えましたが、何が原因でしたか

相手のコール、言葉でのプレッシャーを受けてしまい、皆が一つのことに集中し切れなかった結果が獲得率に現れたと思います。

――関東大学対抗戦がいよいよ始まります。対抗戦に向けた意気込みをお願いします

もちろん、全勝で。現時点は筑波大をターゲットにその先の帝京大、早慶戦、早明戦に向けて戦っていきたいと思います。個人的にはスクラム、フィールドプレーでチームを引っ張っていこうと思っています。

ロック山口和慶(スポ4=福岡)

――本日はヤマハ発動機との試合でした

ワセダとしてはスクラムやブレイクダウン、アタックというちゃんとしたところで真っ向勝負で戦えるかということを意識していました。やっていることはしっかり出せて、良いかたちになったと思います。

――相手は格上でしたが、善戦しました

スクラムではやられた部分もあると思うんですけど、戦えた部分もあって刺激になりました。あとは、アタックの部分でもっとゴール前でかたちを作って取り切れるようになりたいなと思いました。

――夏の練習の成果が出たのですね

はい、そうですね。

――スクラムの強さを売りにしているチームでしたが、組んでみていかがでしたか

最初は相手チームのスクラムの勢いに驚かされたんですけど、こうしたら勝てるというのが分かったので、それをもっと突き詰めて練習したいと思います。

――こうしたら、とは

最初のセットで相手よりも速く自分たちが良い姿勢をつくること、それができたら良いスクラムが組めたので、そこをもっと突き詰めていきたいと思います。

――自陣深くで相手ボールのスクラムを押し返してボールを奪ったシーンがありましたが、そのシーンも速く良い姿勢が作ることができたということでしょうか

そうですね。速くセットできて勝てました。うれしかったです、単純に。

――山口選手自身、良いアタックができていた印象を受けました

もっとキャリアーとしてレッグドライブ、脚を掻いて立って後ろを待つことをもっと意識してやっていきたいと思います。

――ラインアウトに関してはいかがでしたか

相手の枚数が分からなかったりしたときに、もっと速く対応して相手にプレッシャーを掛けられるようになりたいと思います。

――次はいよいよ対抗戦ですね

勝つということだけではなくて、しっかり圧倒したいです。日本一を目指すチームであることを自覚して、現状に甘んじることなく頑張っていきたいと思います。

――最近、強豪と良い試合をすることが増えてきて、前季と比べるとかなりチームが強化されてきていると感じるのですが、秋に向けて仕上げるという監督の計画通りということでしょうか

そうですね。計画通りしっかり結果も出て良いと思うんですけど、秋は相手チームも伸びてくると思うので、僕らもここで満足することなく上を目指してやっていきたいと思います。

フランカー加藤広人(スポ3=秋田工)

――この試合はどのようなこと意気込みで挑んだのですか

山下監督はことし、夏合宿をターニングポイントに一気に上がっていくというワセダの上昇曲線、ロードマップを描いていています。夏合宿で東海大、帝京大としっかり戦える部分が出てきて、その成果が出てきた中で、上昇を止めない、ここで更に成果を出して勝ちにいくんだ、という意気込みで臨みました。

――ブレイクダウンなど、トップリーガーと体を当ててみてどう感じましたか

受ける部分も多かったのですが、全然通用しなかったわけではなかったです。しっかりずらしてレッグドライブしたら前に出ることができることもありましたし、しっかり低くタックルに入れば良いかたちでラックに入れることもありました。全く通用しないということはなくて、これから帝京大や東海大などの学生トップレベルの相手にも通用する部分が見えてきたのではないかと思いました。

――スクラムに関して手ごたえはありましたか

最初の方は相手にやりたい放題やられてしまったのですが、前半の1本や後半からはしっかり組み合うことができました。ターンオーバーの部分など、収穫はたくさんあったと思います。

――随所に対抗できる部分があったからこそ、後半敵陣で長くプレーできたのでしょうか

スクラムだったりラインアウトだったり、セットプレーが安定することで、若いBKがしっかり前に出てゲインしてくれたので、それで敵陣にいる時間が長くなったのかなと思います。

――対抗戦への意気込みをお願いします

初戦は成蹊大なのですが、昨年2部から上がってきたチームだとかそういったことは関係なく、ことし自分たちがやりたいラグビーのスタイルをしっかり貫いて圧倒して、ことしのワセダは強いんだ、日本一を目指しているんだということを周りに見せつけたいと思います。

CTB宇野明彦(スポ1=神奈川・横須賀)

――トップリーグのチームを相手に善戦となりました。試合を振り返っていかがでしょうか

アタックもそうなんですが、特にディフェンスの面、ブレイクダウンやワセダの強みの部分で戦うことを意識して臨むことができました。とてもタフなゲームでしたね。

――相手を苦しめることができたのは大きな収穫でしたか

自分たちの強みとヤマハの強みは似ているので、その部分でいい戦いができたのはすごくよかったことです。

――ボールに触れる機会が多くありましたが、ご自身のプレーを振り返っていかがでしょうか

アタックは良いところがあまりありませんでした。キャッチミスがあったり、ボールキャリアーの部分でレッグドライブをして前に出ることができなかったのでそこは反省点だと思います。

――大学生よりも体が大きい相手に対しての守備はいかがでしたか

やっぱりまだフィジカルが足りないので、いい間合いで詰めることができても前に倒せず引いてしまいました。フィジカルの差が出たので、そこの面を上げていきたいです。

――追撃のチーム2トライ目をあげました。その場面を振り返っていかがでしょうか

SOの岸岡(智樹、教1=大阪・東海大仰星)のナイスキックに反応しただけです。キャッチしたらトライゾーンだったので、本当に(トライを)取るだけでした。

――トップチームでの出場機会が増えてきていますが、実際にプレーしてみての感触はいかがでしょうか

いまケガをしているもう一人のCTBの中野(将伍、スポ1=福岡・東筑)が戻ってきたときに、代わりに入っても遜色がないと言われるよう、もっと体を張って強いプレーでチームをけん引していきたいです。

――どのように中野選手との違いを見せていきたいですか

彼はやっぱり体が大きくて強いので、僕はその分よく走ってタックルの回数を増やしたり、体を張る姿勢をアピールしていきたいです。

――これから始まる対抗戦に向けて意気込みをお聞かせください

今後もAチームで戦えるように、体を張ってやるべき仕事をやりたいです。反省点を練習で解決して、もっと上達してチームに貢献していきたいです。