「新人早明戦は四年間で一回しかないので、この学年で絶対に勝つ」(SO岸岡智樹、教1=大阪・東海大仰星)。新人戦とはいえ伝統の早明戦。早大1年にとって、最初で最後の舞台であるだけに意気込みは十分だった。その気合から、明大1年と好ゲームを繰り広げる。前半で先制こそ許したが、2トライを奪い返し逆転。リードをして試合を折り返す。後半は序盤で立て続けに2トライを決められ逆転されてしまったが、再び2トライを決め再逆転。し烈なシーソーゲームとなる。しかし終盤、明大1年の猛攻を抑えきれず、痛恨の失トライ。最終スコアは28―28で、勝利を目前にしながら、惜しくもドローとなった。
前半は序盤こそ両チーム共にミスが目立ち落ち着かなかったが、徐々にペースをつかんだ早大1年は敵陣でアタックを続ける。しかし、試合の均衡を破ったのは明大1年だった。自陣から一気に突破を許し、先制点を与えてしまう。その後もチャンスは幾度となく訪れるものの決めきれずにいた中、突破口を開いたのはやはりAチームで活躍する選手たちだった。32分に岸岡が敵陣ゴール前でディフェンスのギャップを突きラインブレイク。中央にトライを決め、同点に追い付く。すると前半終了間際にも、ゴール前ラインアウトのチャンスを得る。そこからCTB中野将伍(スポ1=福岡・東筑)がタテに突進。その後の接点で、SH齋藤直人(スポ1=神奈川・桐蔭学園)、岸岡を経由し、最後はFB梅津友喜(社1=岩手・黒沢尻北)がインゴールに飛び込んだ。14-7と勝ち越して試合は後半へ。
ディフェンスのギャップを突き、先制トライを挙げた岸岡
このまま勝ち切りたい早大1年だったが、後半開始早々4分にトライを献上。13分にも、ゴール前で相手FWにインゴールをこじ開けられ、逆転を許してしまう。しかし、試合の流れが明大1年に傾くかと思われたところでWTB加藤皓己(創理1=北海道・函館ラサール)のランが流れを早大1年に引き戻した。加藤皓の自陣からのキックカウンターで大幅にゲインすると、最後は中野将が豪快なランでインゴールを陥れ同点とする。35分にはペナルティーから齋藤がクイックリスタート。ボールを受けた岸岡が相手ディフェンスの裏に出ると、サポートに入った中野将へボールが渡り、勝ち越しに成功した。再度勝ち越しに成功し、このままノーサイドを迎えたいところだった。しかし、試合終了間際に明大1年が意地を見せトライ。ゴールも決まり、同点とされてしまう。新人戦とはいえ、負けられない伝統の一戦。ラストワンプレーとなっても、両者ボールを蹴り出すことなく攻め合った。結局、ノーサイドの笛が鳴り響いたのは50分過ぎ。死闘とも言える過酷な戦いは、28-28のドローで終戦となった。
この試合で2トライを奪う活躍を見せた中野将
ドローではあったがライバル明大1年と善戦。タックル、スクラム、ブレイクダウンと、試合内容は良かった。アタックも、一人一人が確実にゲインしていた。Aチームでも活躍する選手の圧倒的な存在感が目立ったが、そのほかの選手も躍動。体格で勝る明大1年相手に、引けを取らない好ゲームを演じた。厳しい夏の合宿を超えて、この中から新たに赤黒ジャージーに袖を通す選手は出てくるかもしれない。早大の未来を担う1年生の成長に大いに期待が持てる内容で春季を締めくくった。
(記事 萩原大勝、写真 寺脇知佳、本田理奈)
☆PICK UP PLAYER
サポートプレーが光った増原。何度もビッグゲインを見せた
SO岸岡やCTB中野将、FB梅津など、Aチームでも活躍している選手たちが存在感を示したこの試合。しかし、ひときわ小柄なこの選手も躍動した。抜け出した味方選手へのサポートプレーが光ったフランカー増原龍之介(教1=広島・崇徳)だ。トライには結びつかなかったものの、常にチャンスを伺い大事な場面で確実なサポート。するすると相手の間を抜けていくロングゲインを何度も見せる。守っても、みずから踏み込んだ低いタックルで体格に勝る相手に立ち向かった。「自分の体の小ささを、運動量であったりタックルであったり、そういうプレーでカバーできる選手になりたい」と試合後に話した増原。これからの四年間で、どんな選手になっていくのか。低くて速いプレーに磨きをかけ、上のチームを目指していってほしい。
(記事 進藤翔太、写真 坂巻晃乃介)
新人早明戦 | ||||
---|---|---|---|---|
早大1年 | スコア | 明大1年 | ||
前半 | 後半 | 得点 | 前半 | 後半 |
2 | 2 | T | 1 | 3 |
2 | 2 | G | 1 | 3 |
0 | 0 | P | 0 | 0 |
0 | 0 | D | 0 | 0 |
14 | 14 | 計 | 7 | 21 |
28 | 合計 | 28 | ||
【得点】▽トライ 岸岡、中野将×2、梅津 ▽ゴール 岸岡(4G) | ||||
※得点者は早大のみ記載 |
コメント
SH齋藤直人ゲームキャプテン(スポ1=神奈川・桐蔭学園)
――1年生ばかりの試合でしたが、振り返っていかがでしたか
1年生だけで合わせる時間もあまりなくて、木金土の三日間しかありませんでした。そのわりには頑張れました。
――チームとの連携は先週と比べていかがでしたか
周りのメンバーも違いますが、サインもだいぶ覚えて、前回よりは馴染めたと思います。
――ご自身のボックスキックの出来はどのように評価しますか
2回連続でマークされたことがあったので、50点くらいです。
――ディフェンスのコーリングはいかがでしたか
あまり覚えていないですが、疲れていないうちはだいぶ頑張れたと思います。
――先週の試合後、山下大悟監督(平15人卒=神奈川・桐蔭学園)から高く評価されていましたが、どのように感じますか
うれしいことですが、個人的に先週はあまり良くありませんでした。評価されるために頑張るわけではありませんが、もっと良い状態で評価されたいです。
――夏合宿ではどのような点を強化したいですか
まずはきょうも足をつってしまったので、フィットネスです。スキルの部分では速くて長いパスをできるようにしたいです。
プロップ武田雄多(文1=東京・早実)
――非常にハードな後半となりましたが、この試合を振り返っていかがでしたか
FWがディフェンスの部分で相手に食い込まれていたところがあったので、そこをもっと詰めていかないといけないと思いました。
――新人早明戦にあたって、どのような気持ちで臨まれましたか
明大相手なので、絶対勝つ、勝ちにこだわる、という思いでやっていました。
――スクラムの感触はどうでしたか
自分が前に出れている時は押せたのですが、気を緩めてしまったときに高くなって押し込まれてしまったので、一回一回大切にスクラムを組んでいかないといけないなと思いました。
――後半ではボールキャリアーとして前へ出るシーンも見受けられました。アタックに関してはどのように臨まれましたか
一歩一歩前に出て、レッグドライブしながら、一歩でもゲインラインを上げようと思っていました。
――後半2本目のトライを奪われた後にどのような切り替えをなされましたか
FWで前へ出て止める。フォーピットを意識して止めるということを意識していました。
――チームのディフェンスに関してはいかがでしたか
外に振られるとセットが遅れて、フォーピットができず、食い込まれてしまうところがあったので、そのあたりをもっと整備していきたいと思います。
――夏に向けた意気込みをお願いします
自分はスクラムしかないと思っているので、スクラムが武器にできるよう夏に頑張ってやっていきたいと思います。
ロック中尾悟(スポ1=神奈川・桐蔭学園)
――引き分けということでしたが、内容としては良い試合だったと思います。振り返ってみていかがでしょうか
後半に差し掛かって、中野(将伍、スポ1=福岡・東筑)がトライとって良いムードになってたところで(トライを)取られたというのが自分たちの課題だと思います。ずっと同じようなかたちでトライを取られてしまったので、自分もFWとして見直していきたいです。
――この一週間はどのようなことを強化してきましたか
とにかくチームが決まってすぐだったので基礎に立ち返ろうということを意識しました。
――スクラムやラインアウトで意識した部分はありますか
スクラムは上手くいったんですけど、ラインアウトは自分たちのコミュニケーション不足なところもあったので修正していきたいです。メンバーが決まってから二日間しかないなかでやってきたので、一旦基礎に立ち返ってワセダのなかでやっているラインアウトを意識しました。
――ブレイクダウンも上手くいったのではないでしょうか
ブレイクダウンは自分のなかではタックルしてから立つのが遅くてそのせいで(ボールを)取れる場面でも取り切ることができなかったので、そこは自分で体力をつけてやっていきたいです。
――ロックとして、ゴール前ではどのような点を意識しましたか
ゴール前ではワセダのプライドを持って臨みました。ですが、惜しくても何でも、結果は引き分けだったので。そこは反省して、ここはもう負けだと思って、見つめ直していきたいです。
――今後の個人の目標を教えてください
一日でも早く上のチームでやりたいですし、山下監督もおっしゃっていたのですが、一日一日の試合をトップの意識でやっていきたいです。
フランカー増原龍之介(教1=広島・崇徳)
――ナイスゲームでしたね
ありがとうございます。でも、勝つことはできなかったので、早明戦である以上は残念でした。自分の力不足を痛感しました。
――この試合に懸ける思いは強かったのでしょうか
そうですね。新人早明戦というように、新人はついていますけど早明戦なので。勝ちにいかなければいけないということはみんなが思っていたと思います。その中でも、もっと自分の気持ちを出した試合ができたら良かったですね。
――ご自身の評価としてはまだ足りなかったということでしょうか
そうですね。
――山下大悟監督(平15人卒=神奈川・桐蔭学園)などから、何かこの試合に関してのお話はあったのでしょうか
山下監督が現役の時は、この新人早明戦で大敗して、でも、4年生の時は24-0勝てた、という話を聞いていました。なので、今回は同点ではあったんですけど、そこにおごらずに練習をこれからもどんどん積み重ねていって、4年生のときには完封で勝てればと思います。
――この試合でのご自身のプレーを振り返ってみていかがでしたか
目立ったプレーはあったと思うんですけど、地道なプレーをもっとひたむきにやっていければ、と思いました。
――良いかたちでサポートする場面が多く見られましたね
そうですね。自分は、他の選手に比べて体が小さいので、そういったフォローとか、サポートプレーで生きていかなければいけないと思っています。なので、もっと走って、そういった場面で顔を出せたらなと思います。
――そこは試合中から意識されているのですね
そうですね。体が小さいからこその強みとして出していきたいと思っています。
――タックルの場面を振り返ってみていかがですか
タックルは、体が小さいので自分からいかずに相手を受けてしまうと、引いたタックルになってしまいました。でも、自分からタックルに踏み込めたときは良いタックルができているので、そこをもっと磨いていきたいと思います。
――この試合に向けて、1年生の中で良い練習ができていたのでしょうか
そうですね。みんなで雰囲気を盛り上げてやらなければいけない、ということを自覚できていたので。良い練習ができていたと思います。
――新人練が厳しかったという話を聞きました。それを乗り越えてのこの試合結果というのはうれしいものだったのではないでしょうか
そうですね。新人練を乗り越えて、ワセダの部員の一員になれたという誇りはありますし、そのワセダの名に恥じないプレーをしようという気持ちを、みんなが持っていたと思います。
――夏に向けて、ご自身のどんな点を強化していきたいですか
夏になると暑くなると思うんですけど、秋に向けた重要な期間でもあるので、一人一人が日本一に向けた意識をしっかりと持って、これから練習していきたいと思います。
――具体的には、今後どんなプレーヤーになっていきたいですか
自分の体の小ささを、運動量であったりタックルであったり、そういうプレーでカバーできる選手になりたいです。「タックルといえばあいつだな」と思わせられるようなプレーヤーになっていきたいです。
SO岸岡智樹(教1=大阪・東海大仰星)
――敵陣でプレーができていた印象を受けました、振り返っていかがでしたか
前半は風上だったのでキックとかをうまく使いながら敵陣に入れていたと思います。FWもスクラムでだいぶ辛抱してくれましたし、その辺はSOとしてFWの力の出しどころというか、前半はうまくコントロールできたのかなと思っています。
――オフェンスでは多彩なプレーが出ましたがいかがでしたか
(FWが)ディフェンスの面で頑張ってくれたぶん、相手にも疲れが見えました。相手のFWの方がサイズはありましたがスクラムで頑張ってくれたFWが相手のスタミナを消耗させてくれたおかげで、BKのスキルが生きたと思います。
――SH齋藤選手とのコンビネーションはいかがでしたか
先週の東海大戦の後半で一緒に出たんですけど、まだまだ合わない部分だったり分かち合えるところがあるかなと思います。まだ試してみたい部分が多いです。
――それは夏で調整していきますか
そうですね。これからどんどん組む中でもっと経験していけたらな、と思います。
――春の締めくくりの試合でしたが、どのような意気込みで臨みましたか
新人早明戦というのは、この学年だけでできる唯一の試合ということで、4年間で一回しかないので楽しみを覚えてこの学年で絶対勝つんだという強い意思を持って臨みました。
――周りがほとんど1年生ということで、いつもと違いはありましたか
いつも練習とかは一緒にやってないんですけど、試合の中でこれからの楽しみだったり、こいつはこういうプレーするのかだったり新たな発見がありました。馴れない中でうまくはできたかなと思います。
――前半のトライは自ら抜けていきましたが、どのような判断でしたか
Aチームの中でもあのようなプレーは必要とされていて、Aチームでその点を評価されているんですけど、ようやくそういうプレーができたのかなという感じです。あのプレーをこれからの持ち味にしていけたらと思います。
――夏の練習に向けて意気込みをお願いします
まずは体作りと、チームの新しい戦略だったりチームディフェンスのさらなる向上というのを掲げているので、そこをレベルアップしていけたらなと思っています。
WTB加藤皓己(創理1=北海道・函館ラサール)
――きょうの試合を振り返っていかがですか
勝てた試合だったと思うので、同点で終えてしまったのは悔しさが残ります。
――後半に反撃の起点となるカウンターからの大幅なゲインがありましたが、振り返っていかかですか
後半にリードされていてトライを取ってやると意気込んでたんですけど、自分は捕まってしまいました。でも仲間がつないで決めてくれたので本当にうれしかったです。
――終盤は多くの選手に疲れが見られましたが
あそこまで行くと皆が(足を)つったりだとかしていたと思うんですけど、どれだけ勝ちたいかという気持ちで(勝負が)決まると思っていました。その気持ちを大切にしていけばああいった状況でもうまくいくのかなとは思います。
――合宿へ向けての意気込みを教えてください
まずはチームに馴染むこと。あとは何かしらを必ずつかんで、一回りも二回りも成長して合宿を終えたいです。
CTB中野将伍(スポ1=福岡・東筑)
――新人戦ということでしたが、どのような意気込みで試合に臨んだのですか
1年生だけでやる試合は今回が最後だったので、80分みんなで思い切りやろうということで試合に臨みました。
――前半は敵陣でプレーする時間が多かったですが、振り返っていかがですか
敵陣には入ることができましたが、そこでミスが重なってしまいました。敵陣に入ったときに、もっとミスを減らすことができれば良かったかなと思います。
――ご自身のトライを振り返っていかがですか
2トライを取ることはできたのですが、形の中で自分からしっかりリズムを作っていけるようにして、もっとBKらしいトライができればと思います。
――抜かれてしまう場面もありましたが、BKのディフェンスに関してはどうでしたか
崩れるというほどではなかったので、まずまずという感じですね。
――山崎海学生コーチ(スポ4=神奈川・桐蔭学園)から「将伍、お前しかいない」という声かけがありました
やはり勝負どころでは、(自分が)いかないといけないなというのを思っていました。
――夏合宿ではどのようなところを練習していきたいですか
もっと積極的にボールをもらうこともなのですが、自分がおとりになって味方を生かす部分や、自分のパスで味方を生かすという部分をこれから増やしていきたいです。ディフェンスでもターンオーバーが狙えるようにしていきたいです。