終わらない夢
早大不動のNO・8、佐藤穣司副将(スポ=山梨・日川)が赤黒のユニフォームを脱ぐ時がついにくる。一年時から赤黒を経験し、体を張るプレーでチームを支え続けた四年間。その競技生活は成長と苦難の連続であった。「でも、早大に来てよかったと思います」。佐藤穣は自身の過ごした時間をこう振り返った。
高校日本代表に2年生ながら選出されるなど高校時代からその才能を開花させていた佐藤穣。高いレベルでの成長を目指し、数ある大学の中から早大を選んだ。入学時から、大きな体格と豊富な運動量を武器に活躍し、1年時には早くもスタメン入りを果たす。この時、初めて袖を通したユニフォームには確かな『重み』が感じられた。「プライドをもってやらなきゃいけない」。選手としての自覚が芽生えた瞬間であった。赤黒の誇りを胸にさらなる躍進を続ける。その活躍が認められ、2年時にはU-20日本代表に選出される。基礎技術の向上など、代表における経験は自身の成長の大きな糧となった。さらに上級生に頼らず、チームを盛り上げるために積極的に発言する機会も増えていく。いつしか佐藤穣は早大にとってなくてはならない存在へと成長した。しかし自身の成長とは裏腹に、チームは思うように勝ち切れず、長きにわたり日本一の称号から遠ざかっていた。やがて上級生が去り、環境が大きく変わるなか、副将に選ばれる。王座奪還を目指し、岡田一平主将(スポ=大阪・常翔学園)、藤田慶和副将(スポ=東福岡)らリーダー陣とともに新体制への模索が始まった。
体を張ったプレーでチームを引っ張った佐藤穣
そして迎えた最終学年。日本一への道のりは当然のことながら険しく、数々の困難が降りかかる。新チーム発足後、主将の岡田が怪我で離脱し、もう一人の副将、藤田はワールドカップ(W杯)2015イングランド大会の日本代表選手に召集された。春シーズンの多くを、ただ一人のリーダー陣として奮闘する。主将と副将の一人が不在のなか、チームを率いるのは負担が大きかった。チームがうまく機能せず、思うような結果が出ない試合も多い。しかし佐藤穣はどんなに苦しいときでも声を張り上げ、チームを引っ張っていく。「すべては日本一のために」。立ち止まる暇はどこにもなかった。やがて二人が復帰し、チームの完成度も次第に高まっていく。そして迎えた全国大学選手権。悲願の優勝を果たすため奮闘するもセカンドステージで敗退、大学日本一の夢は途絶えた。
大学卒業後も挑戦は続く。次なる戦いの舞台はトップリーグだ。トヨタ自動車ヴェルブリッツへの加入が決まっている佐藤穣。新天地で新たな仲間とともに大学で果たせなかった日本一を目指す。「一年目からレギュラーを狙う」と気合も十分だ。そしてさらなる夢を口にした。「2019年(W杯日本大会)の日本代表に向けて頑張りたい」。赤黒の戦士は世界に向けて成長を続けていく。
(記事 服平周、写真 桝田大暉)