【連載】『不撓不屈』第1回 フランカー宮里侑樹×WTB桑山聖生

ラグビー男子

 今季の早大には赤黒で活躍を見せる2人のルーキーがいる。高校時代は無名ながらここまで3試合すべてに先発しているフランカー宮里侑樹(スポ1=沖縄・名護商工)と、7人制日本代表に選出されるなど鳴り物入りで入学したWTB桑山聖生(スポ1=鹿児島実)だ。初めて故郷を離れ上井草で生活する2人のルーキーに、大学に入学してからの苦労やこれまでの振り返り、来る大一番への意気込みを語っていただいた。

※この取材は10月14日に行われたものです。

「自分の人生は奇跡できている」(宮里)

笑顔で話す宮里


――寮生活は高校までの生活とは違いますか

桑山 そうですね、高校時代までは実家だったので。毎朝グラウンドが目の前にあって、帰ってきたらグラウンドでそのまま練習というのは高校時代とは違います。高校では帰ってきたらラグビーは終わりだったんですけど、いまは学校から帰ってきたら練習、それが終わって起きたら練習みたいな。日々ラグビーに取り組めるのでそこが全然違いますね。

宮里 ここはプライベートがないなって(笑)。家より全然プライベートがないなというのと、これまでは洗濯も全然やらないでいたのでそこは苦労しました。

桑山 私生活が変わりましたね。親に頼っていた部分が全部変わっちゃって、自分でやるようになったので。

――東京と地元の違いは感じますか

桑山 鹿児島には桜島があるので灰が降ります。あとは私生活で鹿児島だったら電車があまり通っていなくて、バスとか電車よりは路面電車があったのでそれを使っての移動とか自転車が多かったんですけど、東京は電車がいっぱいあるので、電車でどこでも行けるというのは全然違うかなと思います。

――最初に来たとき、迷子になりませんでしたか

桑山 初めて東京に来たときは電車の乗り換えがすごく難しかったです。何番線とかの見方もまずわからず、という感じだったので。

――宮里選手は沖縄と比べていかがですか

宮里 まず人の数が全然違うのと、電車が沖縄にはないので、乗り換えがどこから乗ればいいのか何もわからなくて。最初はアプリも取っていないし、アプリがあることもわからなくて(笑)。それで最初のころは(桑山選手に)ずっとついていってて。

――それまでに東京に来たことはなかったのですか

宮里 来たことはありますけど、電車はずっと監督につきっぱなしだったので。監督がチケットを取ってくれて、監督の後ろをずっとついていくみたいな。自分でやったことはなかったです。

――授業に行くのも大変でしたか

宮里 それは大丈夫です!ほとんど授業は(桑山選手と)一緒なので、ずっとついていくだけです(笑)。いまは1人で帰れるようになったけど(笑)。

――お2人とも地元が大好きなようですが、この夏は帰省されましたか

桑山 僕は合宿後に帰りましたね。

宮里 自分は2回帰りました。無理やり合宿前に入れて帰りました。もうあまりにも帰りたくて。

――帰りたいと思うのは地元に魅力的な何かがあるからですか

宮里 雰囲気が好きですし、家族とか親戚と仲が良いので会いたいなというのと、あとは友達もいっぱいいるので。それで帰りたくて、のんびりしています。

桑山 僕は桜島が好きなので(笑)。普通に高校のときも桜島がドンって見えるので。

宮里 お前、桜島はやめておけよ、家族って言っとけ(笑)。

桑山 でも桜島がある感じが土地としてはすごく好きで。あと、姉はこっちに来ているんですけど、親は鹿児島にいるので。祖母も高齢なので毎年帰っていきたいなと思っています。

――とても仲が良い印象のお2人ですがお互いの印象は

宮里 桑山は真面目です。でも真面目でもないか(笑)。基本は真面目なんですけど、気を抜くところは抜いています。全部真面目っていうわけではないです。

桑山 オンオフがはっきりしているって言って。

宮里 遊びもしますし、遊ばないときは遊ばないときでしっかりしてます。

――桑山選手から見た宮里選手はいかがですか

桑山 仲良くなってからの第一印象というか、寮に入ってからは…。

宮里 率直に言っていいよ。大体わかってるから。

桑山 言葉は悪いんですけど、最初はちょっとおバカだなと思って。でもいまはすごくて、1年生で一番Aチームでプレーしているので、そういうところでは最初会ったときより自覚が出てきて、同級生にも真面目な話をするので、器のある人間なんだなと思っています。

宮里 恥ずかしいです。

――大学ではお2人は同じ授業をとっていますか

宮里 とっています。前期は全く同じ授業をとりました。今回も結構一緒です。

桑山 半分くらいかな…。何でも一緒ですね(笑)。

――とても仲がいいんですね

宮里 寮生でも1番遊んでますね、たぶん。

桑山 ずっと一緒にいます。

宮里 メシをこいつは本当にいっぱい食べるんですよ。それなので一緒について行ったりします。

――2人で食べに行くことも多いのでしょうか

宮里 2人のほうが多いよね?

桑山 2人で行くことが多いです。

宮里 寮生は結構みんな面倒臭がり屋なので。「メシ行く?」って聞いたら「行く」って答えるの桑山くらいしかいないです。

桑山 あとは東京に友達がいる人は、こっちの友達と食ったりとかするので。あとは部屋で行く人は行っていますね。

宮里 寮生の1年生でご飯行って、食べたあとにまた行くんですよ。そのときに誰もついてこないので、一緒に行こうかってなるんですけど。

――ちなみに好きな食べ物はなんですか

桑山 僕はラーメンが好きですね。

宮里 自分はカレーです。

――おすすめのラーメン屋やカレー屋はこのあたりで見つけることはできましたか

宮里 食えればいいって感じです(笑)。

桑山 ここだったらハンバーグかカレーですかね。アオヤギさんの豚丼とかオムライスとか。ラーメンは下井草にある…、なんだっけ?

宮里 上石神井のホルモンラーメンでいいじゃん。

桑山 まあ基本ラーメン好きで、なんでも食べますけど、でも鹿児島のラーメンが1番好きだなって(笑)。

――オフの日はご飯を食べに行く以外に一緒に何かされますか

宮里 基本、疲れて寝ちゃっているよね。

桑山 僕は朝から授業があるので、授業に行って午後からは教職の授業なので一緒なんですけど、午前中は基本授業なのでそんなにですね。

宮里 午前中はずっと寝ています。

桑山 本当にぐったり寝るか授業に行くかです。

宮里 たまに先輩と買い物に行くくらいです。

――お2人ともハードな生活をされているのですね

宮里 2人とも遠いところから来てるじゃないですか。だから友達いないんですよ(笑)。桑山は結構知り合いがいるんですけど、自分に関しては沖縄人がここには近くに1人くらいしかいないので。会うこともないですし、遊びに行くことはもないですね。

――趣味や最近はまっていることはありますか

宮里 Youtubeです。本当にここに来てYoutubeを見る数がえげつなくなりましたね(笑)。見過ぎてこいつに怒られるくらいです。「またYoutube見てるの?」みたいな感じで。怒られるのは桑山からだけじゃないですけど(笑)。桑山はドラマじゃない?ドラマを観尽くしてるよね。

桑山 それもYoutubeじゃん。なので僕もYoutubeですかね(笑)

宮里 東京って結構お金を使うじゃないですか、外に遊びにいくのに。

桑山 最近本を読もうかなと思うんですけど、なんか買いに行くのもな~っていう感じになっちゃうんですよ。最近流行ってるじゃないですか、本を持ち歩く人みたいな(笑)。この前ニュースでやっていたんで、本を読もうかなと思ったんですけど。

宮里 読めないじゃん。

桑山 読めるよ!高校の時は結構読んでいたんですよ。

――どんな本がお好きですか

桑山 ファンタジー系が好きなんですけれど、推理小説とかも好きです。ハリーポッターとか、ナルニア国物語とかを読んでました。ハリーポッターが本当に好きなので。

――先日はイギリス遠征もありましたしよかったですね

宮里 本当に興奮していたよね。

桑山 かなりテンションが上がりました。

宮里 ここに来てからいい経験をいっぱいさせてもらっているので。イギリス遠征が1番やばかったな。

桑山 イギリス遠征は最高でしたね。オックスフォードだったため、ハリーポッターの食堂でふくろうが飛んできてふくろう便を届ける撮影をしたところに行ったりしたので、すごいテンションが上がりましたね。

――取材前に桑山選手から伺ったところ、お2人とも英語があまり話せず、遠征では飯嶋進策選手(国教1=茨城・清真学園)と松井丈典選手(スポ1=愛知・旭野)に頼っていたと聞きましたが、いかがですか

宮里 俺も英語できないって言ったの?

桑山 仲間だろ(笑)。

宮里 自分は英語ができない割には話しかけましたよ。こいつは面倒くさがり屋なので。

桑山 話しかけられたら話す感じです。

宮里 遠征した中で1番自分が英語の能力がないので、飯嶋とか、松井に結構ついていっていました。

桑山 楽しかったことはワールドカップに行けたことです。

宮里 本当に感動しました。それといろんな外国のチームと試合ができたのは楽しかったです。怖かったんですけど、その後交流もできましたし。

桑山 すごく多くの国とできましたし、あの短期間でいっぱい試合ができることはないなと思います。

――話は変わりますが、そもそもラグビーを始めたきっかけは何だったのでしょうか

桑山 流通経大でやっている(SO)平井継之助君という子と小学校が一緒で、ラグビーをやろうと誘われて始めました。

宮里 自分はお父さんがラグビーをしていたのと、周りがラグビー関係者だったので自然とラグビーに行きました。

――沖縄にはラグビースクールは小中学校からありますか

宮里 いや、少なかったと思います。自分の地元にはたぶんなかったと思いますね。

――もしラグビースクールがあればやっていましたか

宮里 それはないですね。小、中学時代はやっぱりバスケです。

――いまのポジションでなかったらやってみたいところはありますか

桑山 憧れの選手がニュージーランド代表のダン・カーターなので、SOやりたいなと思っていたんですけど、周りの人から違う違うと言われてるんで(笑)。やってみたいのはSOです。

宮里 自分はWTBかSOです。

――どんな理由でSOなんですか

宮里 早大ではやりたくないですけど(笑)、自分の地元の高校だったら色々自由にプレーできるので、その中でも特にSOが1番自由にプレーできるかなと思って。WTBはもう少し足が速かったらやりたいですね。トライとるの、かっこいいですよね。

――WTBをされている桑山選手はいまのお話を聞いていかがですか

桑山 確かに華はありますね。ただボールに触れないポジションでもあるので。最後は取るところありますけど、過程としてはあまり現れないですね。

――では、ラグビー以外にやっていたスポーツや習い事はありますか

桑山 僕はピアノを幼稚園のころからやっていて、水泳、ハンドボール、陸上、それとラグビーという感じですね。あと書道もちょっとやっていました。

宮里 自分は短距離と長距離と、バスケがほとんどです。あとは何もやっていないです。

――桑山選手は陸上で全国レベルだったと聞きましたが

桑山 中学時代の全国大会では、4種競技と110メートルハードルと4×100メートルリレーです。/p>

――ラグビー以外の習い事の中で特に得意なものは何ですか

桑山 基本的に習っていたスポーツは何でもできたほうです。ハンドボールは小学校のときまでしかやっていなかったのでうまいとかはないですけど、一応九州大会には出ていました。

――宮里選手は中学までバスケをしていたそうですが、どんなプレーヤーでしたか

宮里 本当に下手くそで突っ込んでばかりの選手です。技術がなくガッツだけでやるプレーヤーで。そんな感じなのでバスケで上を目指そうとは思っていなかったです。ただ友達といて楽しかっただけです。

――桑山選手はどれくらいまでピアノを続けていたんですか

桑山 中1の途中くらいまでやっていたので10年くらいです。やっていた時は絶対音感を持っていたと思います。音を当てられたので。でもいまはもう音を取れないですね。

「小さい時からの憧れ」(桑山)

大型ルーキーとして入部した桑山


――大学として早大を選んだ理由は何ですか

桑山 僕がラグビー部というより早大を選んだ理由としては、父親が早大出身だったので小さいときから憧れがあり、ラグビー部の応援も小さいころからしていて。それで早大のラグビー部に入りたいなと思いました。

宮里 自分は高校3年の夏まで早大とか全然考えていなくて。ラグビーができればどこでもいいという感じだったので、何も考えないでいました。

――後藤禎和監督(平2社卒=東京・日比谷)が視察した際に声がかかったというお話を伺ったことがありますが、どういった機会にいらっしゃったのですか

宮里 沖縄の名護高にキャラバンという形で4日間くらいワセダが毎年教えに来ていまして。名護高が教えてもらっていて、その練習台として名護商工が入っていました。名護高が戦術とかをワセダから学ぶので、その時の相手をしていた、それだけです。

――特に参加して自分をアピールしようと思ったわけでもないんですか

宮里 行こうとも思っていなく、全然何も考えていなかったです。普通にやっていました。

――寮に住まわれていますが、お部屋はどなたと一緒ですか

桑山 僕はプロップの石倉さん(石倉庸平、人4=山梨・日川)とフッカーの周藤さん(周藤直也、社3=東京・早大学院)と3人部屋です。

――フロントのお2人と一緒のお部屋なんですね

桑山 最初は藤田さん(FB藤田慶和副将、スポ4=東福岡)と同じ部屋だったらしいんですけど、入寮したときに変わってそうなりました。すごく居心地がいいです。

――宮里選手はどなたと同じお部屋ですか

宮里 自分は佐藤穣司さん(NO・8佐藤穣司副将、スポ4=山梨・日川)と2人部屋です。

――佐藤選手とポジションが似ていますが何かラグビーのことを話されたりすることはありますか

宮里 結構話します。筑波大戦の前も2人でずっと話したりしていました。やはり4年生はかけている思いが違うので、いろいろ聞く部分もありますし、部屋は結構リラックスできます。

――佐藤穣選手は昨年、フランカー加藤広人選手(スポ2=秋田工)に対して1年生のころから出ていたから気持ちが分かるとおっしゃっていましたが、1年生から出ている宮里選手に対しても何かアドバイスされることはありますか

宮里 穣司さんも1年生のころから出続けていたと思うんですけど、穣司さんの時代は先輩後輩の上下関係が結構厳しかったみたいで、逆に穣司さんは自分たちに、優しくわかりやすく教えてくれていると思います。

――高校と大学のレベルの差で感じることはありますか

桑山 やっぱりコンタクト強度とスピードが全然違うなと思いました。

宮里 全部が全然違います。コンタクトが特に。

――お互いの強みや長所はどこですか

桑山 侑樹はボールを持ったときのランニングですかね。あいつは間合いの取り方がすごく上手いと思います。

宮里 桑山はWTBとしては1番大きく、フィジカルは大学のWTBでも上のほうだと思います。あと。スピードもすごいです。

――お互いに聞いて納得ですか

宮里 納得ではないですね。こういうのは自分が1番わからないので、周りに言ってもらったほうが。

――いまのラグビー部の雰囲気はいかがですか

桑山 僕はいまケガ人なので…。

宮里 4年生が結構引っ張ってくれていて、それに下の人たちがついていけています。いい雰囲気だと思いますよ。

桑山 僕はケガする前とケガした後だと筑波大戦を挟んでいるので、いまは後がないという雰囲気が漂っているなと感じます。点差も点差だったので。

――後ろ向きな感じですか、それともやってやろうという前向きな感じですか

桑山 前向きに捉えていると思います。本当に追い込まれていて、やらないといけない状態なので。やらないといけないという雰囲気はあると思います。

――試合前は緊張されると思いますが、何か願掛けはされていますか

桑山 1試合に1回は空を見るようにしています。試合前は高校の時から空を見て落ち着いていると思います。結構自分で意識してやっている感じです。あとはジャージーのワセダのマークをつかんで深呼吸して気持ちを高めるようにしています。

――大学に入って初めての夏合宿はどうでしたか

桑山 (世代別の)代表で長期の遠征はあったんですけど、大抵は試合をしに行く合宿が多かったので、あまりトレーニング合宿が長いということはありませんでした。高強度のトレーニングが続くというのは初めてで、正直きつく、ケガも抱えており、体調もあまり良くなくても休めないという状況が続いていたので、すごくタフになれた合宿だったかなと思います。

宮里 自分は高校のとき、遠征とかも何もなくて合宿自体が初めてだったんですよ。合宿自体が初めてで、その合宿が長くて結構きつくて、日にちを数える毎日でした(笑)。きょうは何日だ、みたいな。予定表を毎日見ていました。でも合宿でチームに慣れた部分もありましたし、合宿で戦術など理解できたところもありますし、チームに少しはなじめたかなと思います。

――いままでに挫折を感じたことはありますか

宮里 自分は名護高に落ちたことです。名護高に落ちて名護商工高に行ったんですよ。まさか落ちるとは思っていなくて、びっくりしました。そんなに簡単じゃないんだなって(笑)。仲良く友だちと塾で勉強していて、塾に行ってもお菓子を食いながらしゃべっているだけだったのですが、なぜかわからないのですが受かる自信だけはあったんです。絶対落ちるわけがないと思っていたので、番号がなくてびっくりしました。いまでも覚えています。番号ないときのショックがすごかったです。

――名護高はラグビーが強いですが、やはり名護高でラグビーをしたいという気持ちが大きかったのですか

宮里 ラグビーをするなら名護高と思っていました。名護商工高っていう考えは全くなくて。名護高だけしか行くと思っていなかったので、落ちたときには駅伝もしていたので北山高で駅伝をしようかなと思っていたんですけど、ラグビーやるかと思って、ラグビーをやっていたらこんな感じになりました。

――ではあまりラグビー人生としてはあまり挫折を感じたことはないのでしょうか

宮里 挫折というか、最初のほうはプレッシャーに押しつぶされました。ここへ来て初めて胃腸炎に3回くらいなって、点滴も初めてここでして。挫折というわけではないですけど、メンタルが崩れていました。

桑山 1番グサッと来たのはU-20日本代表の遠征中です。結構大事な試合で接戦のなかで自分のミスが出て、それで流れが持って行かれたときは本当にチームからいなくなりたいと思いました。

――そういう経験を経ていまのみなさんがあると思いますが、何か得たことはありますか

宮里 自分の人生は奇跡できているので、逆に名護高に行っていたら早大には来ていないなと思いますし、本当にわからないですね。

桑山 僕はそのときのミスを教訓にしていて、2度とそんな思いはしたくないので。ミス1つで信頼を失ってしまうので、そういうプレーはしないように心がけています。

「少しは成長した」(宮里)

宮里は攻撃面で積極的なプレーが目立ってきた


――ここまで関東大学対抗戦(対抗戦)を3試合終えましたが、自己評価はいかがですか

宮里 先輩方がケガをしているから自分が6番を背負っているかたちなのですが、ワセダの6番を背負うことはプレーで魅せないといけないのでプレッシャーにもなっていました。ですが、春よりはボールをもらえるようになりましたし、声も出せるようになったので、少しは成長したかなと思います。春は試合に出ても空気だったのに比べ、いまは80分間でられるようにもなりましたし。

桑山 夏合宿から本格的にチームに合流したので、初めの立大戦は硬くなった部分もあったのですが、1試合こなしたあとの青学大戦はリラックスして普段のように周りとコミュニケーションを取ってプレーできました。1試合1試合よくなっているかなと思います。

――宮里選手は立大戦で3トライを挙げ、スポーツ紙にも取り上げられましたがいかがですか

宮里 3トライのうち自分で取ったのは1トライだけという感じですね。2つはモールですし、1つも前が空いていただけなので、でも3トライに絡めたのはいいことかなと思います。

桑山 そこにいるのがすごいんだよ。

宮里 じゃあ、そういうことにしておきます(笑)。

――桑山選手は早大として初トライを青学大戦で、しかも3トライ決めましたね

桑山 久々のトライでうれしかったですね。1本はまぐれですが、後の2本は先輩たちが崩してくれたところをサポートしてとれたので、そこは自分の役割ができたかなと思います。

宮里 こいつすごいんすよ、予言が当たっていて。3トライするって試合前に言っていて、しかもキックパスで1トライするって言っていたんですよ。

桑山 ただビックマウスなだけだったつもりなんですよ。

宮里 最初は冗談のつもりだったんですよ、取れたらいいなという感じで。でも本当に当たって、笑いましたね。

――取れる予感はあったのですか

桑山 どうですかね…。キックパスは練習でもやっていたので、あるかなとは思っていました。

――熊谷ラグビー場のインゴールが広いこともあって狙っていたのでしょうか

桑山 チームとしても試合前にグラウンドを見て、浅見さん(SO浅見晋吾、スポ4=神奈川・桐蔭学園)にはゴールが広いから蹴って大丈夫ですと伝えていました。

――筑波大戦では対抗戦で初めて強豪と対戦しましたが、いかがでしたか

宮里 自分がディフェンスで前に出られずあのような結果になってしまったので、反省点が多い試合になりました。

――筑波大戦の後、後藤監督にお話を伺ったところ体を張ってアタックを頑張っているとして名前を挙げられていましたが

宮里 けっこうディフェンスで怒られたんですよ。ミーティングでも自分がかなり言われました。アタックにかんしては何も言われなかったのですが、とにかくディフェンスですね。春よりはアタックで前に出る意識が強くなったのですが、ディフェンスは相変わらずなので、名指しで怒られます。それでも修正点が見つかりましたし、次の帝京大戦に出られるよう努力したいです。

――ここまでの対抗戦で印象に残ったプレーはありますか

桑山 ディフェンスだとバックスリーで追うコースが決まっていて、それが自分はできていなかったのですが、青学大戦でそのコースをうまく取れたので、それはよかったです。アタックだとキックパスのトライは印象に残っています。身長が高くてよかったです(笑)。

宮里 自分は筑波大戦で、ディフェンスでいいところがなくて、悪いところばかりで、下に入るところを受身になってしまいました。オフェンスでは練習通りにゲインすることができたのでよかったですね。

――同じポジションの先輩と練習したりアドバイスされたりすることは多いのですか

桑山 さっきも少し話したのですが、ディフェンスのコースやなどをバックスリーの先輩方が教えてくださります。あと、キックがうまい先輩も多いので、キックを教わったりします。

宮里 チームのディフェンスなどについて穣司さんなどが教えてくださります。あと、タックルなどスキル面でたくさん教えてくれるのが2年の加藤(広人)さんで、練習後にマンツーマンで教えてくれたりしています。

――どちらから声を掛けて始まったのですか

 最初は自分がラインアウトのジャンパーとしてまだまだなので練習しようと声を掛けてくれて、それからは自分から加藤さんを誘って時間がある時は練習してもらっています。

――先ほど緊張のお話をされましたが、この先満員の早慶戦や早明戦についても緊張しそうですか

宮里 まずは試合に出られるかで、いまは定着しているのですが、早慶戦となると部内のメンバー争いも激しくなると思うので、まずは出ることですね。でも、高校の時は1回戦負けとかで観客も選手しかいない感じで、満員のなかやったことがないので、どうなるかわからないですね。

桑山 自分が出たと考えたら緊張はしないんじゃないですかね。

――桑山選手はあまり緊張しないタイプなのですか

桑山 あまり熱いタイプではないので、冷めてるという感じで(笑)。

宮里 絶対に緊張するでしょ。

桑山 秩父宮に立ったら緊張しないと思います。

――緊張するのは特にどの辺りでしょうか

宮里 ロッカールームいる時とかですね。

桑山 自分は会場に着くまでですね。

宮里 でも、自分はロッカールームで部歌を歌えば緊張がなくなります。部歌を歌うまでが本当に緊張します。大声を出すのが好きなので、歌えば大丈夫です(笑)。

――ここからシーズンも後半になります。次戦で戦う帝京大の印象についていかがですか

桑山 強いFWを前面に押し出して、そのあとBKで仕留めるというイメージはあります。

宮里 1人1人が大きくて個が強いイメージですね。

――帝京大戦ではどのようなプレーをしたいですか

宮里 自分は受身にならず前に出続けて、ディフェンスを集中してやっていきたいです。オフェンスはいつも通りやりたいです。

桑山 対抗戦で一番強い相手ということで相当気持ちも入っていると思うのですが、そのなかで熱いプレーと冷静なプレーを使い分けたいと思います。

――シーズンも残りわずかになってきましたが、今後への抱負を聞かせてください

桑山 帝京大戦から日体大、早慶戦、早明戦と続いていきますが、対抗戦を通じて大学選手権へ向けてチームも成長していって、最後は大学選手権で優勝できるようにしたいです。

宮里 ラグビーの経験が少ないながら春からたくさんの経験をさせてもらって少し成長した部分もあるのですが、ここまでチームには貢献できていません。ここから強い相手が続くので、もっと練習をして1年生ですがチームをけん引したいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 菅原拓人、平川さつき)

色紙に大事にしている言葉を書いてもらいました!


◆桑山聖生(くわやま・としき)(※写真右)

1996年(平8)6月6日生まれ。身長184センチ、体重92キロ。鹿児島実高出身。ポジションはWTB。スポーツ科学部1年。色紙には『ついてる』と書いてくれた桑山選手。鹿児島実高ラグビー部時代のチームの合言葉的なものだったそうです。斜めに書いてくれた可愛らしいレイアウトにも注目してください!

◆宮里侑樹(みやざと・ゆうき)(※写真左)

1997年(平9)1月6日生まれ。身長179センチ、体重92キロ。沖縄・名護商工高出身。ポジションはフランカー。スポーツ科学部1年。立大戦で3トライを決めた宮里選手。翌日のスポーツ紙で書かれた『早大の侑ちゃん』というニックネームで対談後にチームメートからいじられる一面もあり、同期の仲の良さが伺えました!