なんとか逃げ切り流通経大Bに辛勝

ラグビー男子

 5日のAチームの試合に引き続き、Bチームの戦いも幕を上げた。対する初戦は屈強なフィジカルを武器にする流通経大B。前半から体の大きい相手選手に対して、今季の理想である連続攻撃からしぶとくチャンスをつくり出し確実に得点を重ねていく。ディフェンスの部分で課題は残しつつも、最後の最後まで逆転は許さず27-26でノーサイド。追い上げてくる相手の猛攻からなんとか逃げ切り、初戦を勝利で飾った。

 今季から新しいアタックシステムに取り組んでいる早大。この試合でもそれを確実に実行していく。自陣からもあまりキックは用いず、一つ一つの接点を重ねていった。すると前半6分、流通経大Bがたまらず犯したペナルティーからSO横山陽介(スポ2=神奈川・桐蔭学園)が素早いリスタート。抜け出したところでキックパスを放ち、それに反応したWTB桜井正敏(政経4=東京・早大学院)がインゴールに飛び込んだ。8分に、ラインアウトからのディフェンスミスで同点に追いつかれてしまうが、18分には再び桜井が、30分にはラックサイドを抜け出したSH杉本峻(商3=東京・早実)がそれぞれトライを挙げ、主導権は譲らない。前半終了間際にキックチャージを受けるという不運なかたちで15-12とされたものの、アタック面で成果を残し、試合を折り返した。

キックやパスで攻撃にリズムを生み出した横山

 ハーフタイムを終え、突き放しにかかりたい早大B。5分にまたしても杉本峻が連続攻撃で手薄になったラックサイドを突き、この日2トライ目を挙げる。しかしこのまま黙って引き下がる流通経大Bではない。20分にスクラムでプレッシャーを受けボールを失うと、そこから相手選手の力強いプレーでじわじわと前進されてしまう。そうして空いたスペースを相手SOに狙われ失トライ。その後もなんとか守り切りはするものの、「(相手)ディフェンスが詰めてくるところに対して、後半うまくリズムを作れなかった」(桜井)と、なかなか思い通りのアタックができない。しかし、しぶといタックルがチャンスをもたらした。杉本峻のタックルを受けた相手選手の苦し紛れのパスをロック吉満慎吾(人2=東京・本郷)がインターセプトしそのままトライ。最後の最後にゴール前で粘り切れずに失点するが、逆転までは許さず。27-26で逃げ切りに成功した。

1年生ながらフル出場を果たした鷲野

 新しいラグビーに取り組んでいることで、課題も多く出た早大B。それでも、「練習通りにできたところはうまくいった」とフランカー寺川賢太ゲームキャプテン(スポ4=福岡)が語るように、練習の成果は確実に発揮できている。そしてフッカー鷲野孝成(基理1=神奈川・桐蔭学園)をはじめ、1年生3人がフル出場を果たしたことも収穫だったはずだ。早大というチームが、そして選手たち自身が秋に飛躍を遂げるためにも、こうした成長を一つ一つ積み重ねていくことこそが重要となる。次の試合までにどれだけレベルアップすることができるか。勝負の秋に向けた道のりはまだ始まったばかりだ。

(記事 進藤翔太、写真 黒田菜々子、寒竹咲月)

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桜井も、ラストイヤーに思いを懸ける

 チームを勢いづける2トライに加え、何度もゲインを見せたのがWTB桜井正敏(政経4=東京・早大学院)だ。主にC、Dチームで過ごした昨季を「全然トライを取り切れなかった」と振り返る。そこで「4年の春にピーキングしようとシーズンオフもやってきた」とアタック中心に鍛錬を積んできたオフシーズン。その成果を2トライという結果で見事に示してみせた。また後半には自身も驚いたと振り返るほど鋭く突き刺さるビッグタックルがさく裂。攻守にわたって存在感をアピールした。早大のWTBは好選手がひしめく激戦区。それでも「失うものは何もない」と下から這い上がってきた男が、スタメン争いに参戦してみせる。

練習試合
早大B スコア 流通経大B
前半 後半 得点 前半 後半
15 12 12 14
27 合計 26
【得点】▽トライ 吉満、杉本峻2、桜井2 ▽ゴール 横山(1G)
※得点者は早大のみ記載
早大登録メンバー
背番号 名前 学部学年 出身校
柴田 雄基 文2 愛知・千種
鷲野 孝成 基理1 神奈川・桐蔭学園
石川 敬人 スポ4 茨城・茗溪学園
吉中 大典 スポ4 広島・崇徳
吉満 慎吾 人2 東京・本郷
◎寺川 賢太 スポ4 福岡
堤 悠 政経3 東京・攻玉社
五十嵐 隆介 教4 埼玉・早大本庄
杉本 峻 商3 東京・早実
10 横山 陽介 スポ2 神奈川・桐蔭学園
11 桜井 正敏 政経4 東京・早大学院
12 高橋 駿 文構3 東京・早実
13 フリン 勝音 スポ1 福岡・筑紫丘
14 今岡 晃大 商4 東京・早大学院
15 伊藤 大貴 スポ1 愛知・春日丘
リザーブ
16 石倉 庸平 人4 山梨・日川
17 渡瀬 完太 商4 東京・早大学院
18 樋口 悦久 商3 大阪・早稲田摂陵
19 田丸 暖 法4 埼玉・早大本庄
20 山川 慶祐 社3 東京・早実
21 船越 明義 社1 東京・早大学院
※◎はゲームキャプテン、監督は後藤禎和(平2社卒=東京・日比谷)
コメント

フランカー寺川賢太ゲームキャプテン(スポ4=福岡)

――この試合を振り返っていかがでしたか

今までのアタックシステムとは違うシステムでやっているので、そこの部分と、あとはブレイクダウンとボール継続のところに集中してやりました。

――新しいアタックシステムに関して詳しく教えてください

昨季とは違って、ボールは蹴らずに大きくボールを展開してずっと継続し続けるということですね。ボールを相手に与えないアタックシステムということにこだわっていました。

――この試合でもそれがトライに生きていましたね

そうですね。練習通りに出来たところはうまくいったんですけど、まだまだ体力がきつくなってきたり、みんなの意識統一が不十分だったところでうまくいかなかったところもあったので、そういった精度であったり強さであったりをこれから磨いていきたいと思います。

――ゲームキャプテンとしての出場ということで、どんなことを意識して試合に臨みましたか

4日にDチーム、5日にAチーム、そしてこの試合の前にCチームの試合があったので、Bチームが今週最後の試合だったんですけど、今までの試合を見ていて、新しいアタックシステムに取り組もうとするあまりワセダのラグビーである激しさだったり、ディフェンスの泥臭さとか、そういった部分が不十分だったと感じていました。なので、アタックシステムにチャレンジするのも大事だけど、伝統的なワセダのラグビーというところは忘れずにプレーしようと心掛けていたし、チームに対して声も掛けていました。

――この試合で出た課題などはありますか

さっき言った通り、練習通りに出来たところはうまくいったので、そこはきょうの良かったことですね。練習してきたことは間違っていなかったんだと確認できたので、そこは磨いていこうと思います。

――FWの選手が外めにポジショニングする場面が多く見られたのですが、それは意図したことだったのでしょうか

ことしのアタックシステムの強みとして、今までのワセダのようにFWが絶対に内側で、BKが絶対に外側というのではなくて、それぞれが分散しているので、どこにでもボールが運べるということなので、きょうのゲームでは今まで見られなかったFWが外に残るといった局面が増えたんだと思います。そういったところは練習の成果が出たのかなと思います。

――チームとしての春の目標などはありますか

チーム全体としては、後藤さん(禎和監督、平2社卒=東京・日比谷)も言われた通りに、春の試合期間だけを見るのではなくめて、秋までに今取り組んでいる新しいラグビーを完成させるということですね。コーチ陣だったり、監督だったりから出された課題を一つ一つ地道にやっていくというのを心掛けているので、多くに手を出すのではなくて、与えられた課題を一つ一つクリアしていくということをチームとして取り組んでいきたいと思います。

――ラストイヤーとなる今季、個人としての目標を教えてください

ワセダに来た以上は赤黒を着て、大学日本一に貢献しないと来た意味が無いので。それが目標です。

フッカー鷲野孝成(基理1=神奈川・桐蔭学園)

――きょうの試合を振り返ってみていかがですか

練習してきた部分が出せたところもあったのですが、ここぞというところでの自分のラインアウトスローの精度だったりミスがあったりしたので来週からはそこを修正したいと思います。

――フル出場となりましたがいかがですか

本当に良い経験になりました。

――セットプレーについてどのようにお考えですか

自分がだめだった部分があるのですが、先輩に支えてもらいながらなんとかやり切りました。

――課題というのはどのような部分でしょうか

スクラムでのプレーの姿勢が高かったり、スクラムでボールが入ったときにフッキングするときに身体が浮いてしまったり、あとラインアウトでのサインミスとかです。

――大学生と実際に身体をぶつけてみて感触はいかがですか

高校生のときよりも強いです。厳しいところがありました。

――ことしの1年生の雰囲気はいかがですか

楽しい雰囲気なのですが少しゆるい部分もあるので、そこをしっかり引き締めていきたいと思います。

――ご自身の強みはどのようなところですか

ボールを持ったときのコンタクトプレーが自分の長所だと思っています。

――今後どのような選手になっていきたいですか

セットプレーを安定させてBKにセットプレーからしっかりとボールを供給できるプレイヤーになりたいと思います。

SO横山陽介(スポ2=神奈川・桐蔭学園)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

やろうとしてたことができたときとできなかったときがありました。

――具体的にはどのような点でしょうか

アタックは、もっと一人一人がゲインできるところはゲインしていこうというところ、あとサインミスもなくしていこうとは話してたんですがありました。でもアタックはよかったです。ディフェンスでは内側からのサポートがいなかったときがあったのですが、後半の最後からやっとできるようになったので、あれを最初からできるようになれば良いと思います。

――アタックの際、SOから声出しを要求されていましたが、まだまだ足りないということでしょうか

外からのコールで動かそうということだったんですが、外からのコールがなかったのでそれをもっと早く出すことを意識しました。あとチームがとても若いので。一年生もいますしまだBチームで出たことも少ないので、そこは僕が引っ張っていけたらいいなと思いました。

――SOとして、引っ張っていこうという意識があるということですね

そうですね、きょねんから出ているのでその分出てない人たちも引っ張っていかないといけないと思います。

――スタメン争いに関してはどうお考えですか

スタメンにはもちろんなりたいんですが、それ以上に晋吾さん(浅見、スポ4=神奈川・桐蔭学園)といいチームを作っていきたいので、その結果がスタメンだと思います。なので、お互いを高め合っていける関係でありたいと思います。

――手術をされたと伺ったのですが

はい、ボルトを抜いただけです。

――回復具合はいかがですか

まあまあです(笑)。

――春シーズンの目標をお願いします

しっかりスタメンに入って、帝京大に勝って、これからも全勝で終わりたいです。

WTB桜井正敏(政経4=東京・早大学院)

――開幕戦を振り返ってみていかがですか

僅差で勝てたことが最大の収穫ですが、自分たちが用意してきたことを前半は要所で出せたのに、Aチームと同様にディフェンスが対応したところに対して自分たちが対応しきれなかったことがもったいなかったです。

――どのようなことを準備してきたのですか

ポッドラグビーというものに取り組んでいるのですが、外に回したいところを読まれてしまいました。銘苅さん(信吾ヘッドコーチ、国際武道大卒)にハーフタイムに言われたのですが、ディフェンスが詰めてくるところに対して、後半うまくリズムを作れなかったので、来週の練習でしっかりやっていきたいです。

――BK全体の出来についてはどう思いますか

CTBとFBに1年生が入ったのですが、彼らが頑張ってくれていましたし声も出してくれていたので全体として悪くはないかなと思います。

――前半の2トライに加え、後半はビッグタックルもありましたが、自身のプレーについて評価を聞かせてください

タックルは自分でもびっくりしましたね(笑)。後ろにいた銘苅コーチからロングパスに詰めていいという指示があったので、思い切っていけました。

――自身ではアタックとディフェンスではどちらを得意なのでしょうか

昨季は全然トライを取り切れなかったので、最近はアタックを中心に取り組んでいます。トライを取り切れなかったということは後藤さん(後藤禎和監督、平2社卒=東京・日比谷)にも言われていました。あと、一個上に千年原さん(旭、平27法卒=東京・早大学院)という方がいらっしゃったのですが、旭さんは秋にピークを持ってきて(関東大学)ジュニア選手権でトライを奪うなど活躍されたのですが、結局赤黒は着られなくて。なので自分は失う物は何もないですし、4年の春にピーキングしようとシーズンオフもやってきました。その結果を春の初戦で出せたということは自分のなかではよかったです。

――ラストイヤーの意気込みを聞かせてください

門田(成朗、法4=埼玉・早大本庄)の5日の試合の活躍にも刺激を受けたのですが、彼らを脅かすような存在になり、赤黒を着たいと思います。