前節の韓国戦から2週間を経たこの日、アジアラグビーチャンピオンシップ2015の香港戦が秩父宮ラグビー場にて行われた。今秋にラグビーワールドカップ(W杯)イングランド大会を控えた日本代表にとってホームで開催される今季初の試合なだけに、秩父宮ラグビー場には9000人近くのファンが集結。大きな声援をうけてプレーした日本代表は41-0で快勝した。早大の副将を務めるWTB藤田慶和(スポ4=東福岡)は前半終了間際からの出場ながら1トライをマーク。W杯スコッド入りに向けて首脳陣にアピールした。
前半から何度もチャンスは作りながらも、ペナルティーや自らのハンドリングエラーなどでなかなか香港代表を突き放すことができない日本代表。そんな雰囲気の中、「チームに勢いを与えられるプレーをしよう」と意気込んで前半39分から試合に臨んだ藤田は、積極的にボールに働きかけていく。相手ディフェンスの裏を狙ったキックへのチェイスなど、いくつか惜しい場面を演出。すると後半14分、敵陣でのターンオーバーボールを右大外に展開し、ボールを受けた藤田が相手選手に囲まれながらもフィニッシュ。そう思われたが、前のプレーでのノックオンを取られトライは幻に。その後もボールに絡むためグラウンドを走り回る藤田に、再びチャンスが訪れた。後半32分、ラインアウトから日本代表の強みである連続攻撃で着実にゲインを積み重ねていく。そうして空いた右のスペースを大きく使い、最後は藤田がトライを決めた。最終スコアは41-0の完勝。WTBとしてしっかり仕事を果たし、日本代表の勝利に貢献した。
キックチェイスなどボールタッチ以外でも存在感を示した藤田
同世代の松井千士(同大)や福岡堅樹(筑波大)など、代表のWTBでは激しいポジション争いが繰り広げられている。そんな中で迎えたこの試合。藤田のプレーは、エディー・ジョーンズ日本代表ヘッドコーチも「藤田は交代して出て良かった」と評価するなど、首脳陣に向けた良いアピールになった。「苦痛と思うのではなくて、しっかり楽しんでポジション争いをしたい」と語るように、この刺激は藤田にとっても、ひいてはチームにとってもプラスに働いているはずだ。秋に14番としてイングランドのピッチに立つためにも、藤田のさらなる成長に期待したい。
(記事 進藤翔太、写真 高畑幸)
コメント
WTB藤田慶和副将(スポ4=東福岡)
――実質後半からの出場となりましたが、どのような気持ちで試合に臨まれましたか
チームに勢いを与えられるプレーをしようと心掛けてプレーしました。
――前半をグラウンドの外から試合を見ていて、どのように感じましたか
自分たちがやりたいことはできている感じがしたのですが、少しのミスとかで自分たちの勢いを打ち切られていたので、後半はそれをどう修正していくのか、例えばポジショニングをちょっと深くするとか、そういうところを選手の間で(ハーフタイムに)話せて実行できたというのはよかったんじゃないかなと思います。
――ポジション争いをしている同世代の松井千士選手(同大)についてはどう思われていますか
すごい足が速い選手で、セブンズでも試合に出ていて、世界で通用する選手だと思っています。きょうはちょっと緊張していたのかなという感じは受けたのですが、もっとお互いに切磋琢磨(せっさたくま)しあって頑張っていきたいなと思います。
――逆に、首脳陣には自分のどういうところを強みにしてアピールしていきたいですか
これからスピードという部分も強化して強みにしていきたいなと思いますし、それ以外にもスキルとか、コミュニケーションであったり、今取り組んでいるディフェンスであったり、いろんなものを強みにすることで自分のプレースタイルの幅が広がってくると思うので、どんどん幅を広げてやっていきたいと思います。
――激しくなってきたWTBのポジション争いについてはどうお考えですか
たくさん争える人がいるので、すごい楽しみですし、それを苦痛と思うのではなくて、しっかり楽しんでポジション争いをしたいなと思います。