【連載】第5回 ロック大峯功三主将×ロック桑野詠真

ラグビー男子

 本連載のトリを飾るのは普段は目立たぬ、縁の下の力持ちのロック陣。このポジションで、ロック大峯功三主将(スポ4=福岡・東筑)とロック桑野詠真(スポ2=福岡・筑紫)は春からレギュラーとして君臨し続けている。そんなお二人の出身地でもある福岡県の話から、早大に求められるロックとはなど様々なことについて語って頂いた。

※この取材は11月11日に行われたものです。

同郷・福岡の思い出

春からこのコンビで組むことが多いロック陣

――お二人で話すときは博多弁になりますか

桑野 僕は敬語なので博多弁は出ないです(笑)。功三さんは出てますね。

大峯 でも住んでた場所が違うんですよ。僕は北九州で、(桑野選手は)筑紫野市っていう博多の下なので、微妙に言葉も違うんですよね。

――福岡出身の選手も多いですよね

大峯 多いですね。九州出身も。いろいろな言葉が飛び交います。逆に関西が少ないから、九州弁か標準語かって感じです。

――高校時代面識はありましたか

大峯、桑野 いや、全くですね。

桑野 僕は高校からラグビー始めて、1年生のころは何も分からなかったので…。

大峯 試合出てなかったやろ?

桑野 出てないですね。

大峯 高校同士で試合はやってるんですけどね。

桑野 でも、名前は知ってました!すごい強い人みたいな。

一同 (笑)。

――福岡に対して思い入れであったり、あるあるなことはありますか

大峯 ちょうどこの時期になると、高校ラグビーの福岡予選があるのでそわそわしてます。でもお互い負けたんですよ。

桑野 筑紫もおとといヒガシ(東福岡高)に負けましたね。

大峯 僕より前くらいまでは4強時代が続いていて、ヒガシ、筑紫、小倉、福岡高校っていう4強があったんですけど、それがいま崩れてきているんですよね。修猷館高校っていう昔から強いところなんですけど、ことしはもっと上がってきてたりしています。見ている人は多いですね。いまのベスト4のところに全員一人ずついるんですよ。小倉は久富(久富悠介、文構3=福岡・小倉)ですし

桑野 福高は3人いますよね。

大峯 修猷館には1年生がいて、ヒガシは布巻(布巻峻介副将、スポ4=東福岡)筆頭にいるので、そう見ると面白いですよね。「筑紫がまた負けた!」とか言って盛り上がってます(笑)。

――お二人の最終成績を教えてください

大峯 僕たちの年は記念大会で、福岡から2校出ることができたんですよね。2つのパートに分かれてて、僕たちはヒガシパートだったんでヒガシに負けました。もう一つのパートが筑紫、修猷館とかが第2位を決めるようなパートでやってました。そっちは中尾(中尾康太郎、スポ4=福岡)がいる福岡高校が勝ったんですけど、実質ベスト8ぐらいですかね。

桑野 僕は決勝でヒガシに負けました。その記念大会以外はずっとヒガシと決勝でやっていて、連続で負けていました。僕らは7点差で負けました。

大峯 毎年ね。良い試合なんだけどね。

桑野 (笑)。

――筑紫高のラグビー部が取り上げられているドキュメンタリー番組は素晴らしいですよね

大峯 僕も感動しました(笑)。でももっと西村先生(西村寛久前監督)の違う面もあるよね。

桑野 結構怖いっていう印象がテレビだとあったじゃないですか。練習では怖いですけど、基本的には優しくて愛のある先生でした。

――心に残っていることはありますか

大峯 魂でいいんちゃう?筑紫魂。

桑野 (笑)。西村先生が優しいなと思ったのは、3年生の10月くらいに股関節脱臼をして試合に出られない感じになったんですよ。長崎でやったので、長崎の病院に入院してたんですけど、福岡から何回もお見舞いに来てくれて「絶対治るから」って言ってもらいました。復帰まで4カ月ぐらいかかるケガだったんですけど、準決勝の福岡高校戦に間に合って、1カ月で何とかなりました。あの時はいろいろとありがたかったです。

大峯 あいさつに行ったときとか優しかったですし、愛のある先生ですよ。

――股関節脱臼はどのようにしたらなるのですか

桑野 もう痛すぎて、一回失神しました(笑)。腰に痛み止め3本打ったんですけど治らなくて、麻酔かけて痛みを征服しました。

大峯 どうなったと?

桑野 モールで足を引っ張られて、そのまま倒れたんです。

大峯 ほう…。すごい…。

――東筑高はどのような高校でしたか

大峯 勉強は大変でしたね。毎朝7時30分から授業が始まって…。

桑野 福岡はどこも朝早いですよね。

大峯 筑紫は何時?

桑野 僕は7時45分からでした。

大峯 ヒガシもあったはずです。家から学校が遠かったんで、6時過ぎに起きて自転車に乗ってみたいな感じでした。0限から7限までで16時過ぎまで授業でした。バタバタのままグラウンド出て2、3時間くらい練習してましたね。21時過ぎまでいて、22時に家帰ってきてみたいな生活でした。ラグビーやりに行くぐらいラグビーが生きがいでしたね。

桑野 僕らの代は1回もやってないんですけど、見てて狂った良いタックルしてるなと。熱いというかソウル系のチームですよね?熱かったです(笑)。

「ロックは低賃金・重労働」(大峯)

ロックの魅力について考える大峯

――ロックというポジションになった経緯について教えてください

大峯 僕は高校と大学1、2年まではバックローをしていて、3年生になるときに後藤さん(後藤禎和監督、平2社卒=東京・日比谷)と今後自分がロックをやりたいですって話して決めました。

桑野 僕は高校で始めたときからロックです。もうロックしかできないです(笑)。ラグビーのポジション知らなかったんですけど、「もうロックやろ」みたいな空気になっててロックになりました。

――背の高い選手が多いポジションだと思いますが、いつごろから伸び始めましたか

大峯 確認ですけど、僕は高いで大丈夫ですか?

一同 (笑)。

大峯 小さいころから高いほうでした。高校までで伸びきって、182センチぐらいに落ち着きました。

桑野 僕は小学校ぐらいからそこそこ高くて、中学校卒業くらいに187センチぐらいありました。高校卒業くらいに190ぐらいになりました。

――まだ伸びていたりはしますか

大峯 いや、僕は…。

桑野 僕伸びてないですか?(笑)。U―20の試合の後に同じ背ぐらいの人と話すと、あれ?伸びてんぞ、みたいになるんですよ。その時の調子で1、2センチ変わるんです。朝起きたら高いみたいな感じで。

大峯 スクラム組むと縮むって聞きます。フロントが一番縮んで、ロックも少しみたいな。押し合いの中で縮むみたいです。

――背の高さで試合中に有利なことはありますか

大峯 僕は背の高さで得になるってことは無いですかね。小さいので。

桑野 デカいんですけど、うまく使えてないですね。使うとしたらセットプレーでのジャンプとかですかね。

――ロックの仕事とは何になりますか

桑野 後藤さんはロックが一番強くないといけないって言いますよね。

大峯 フロントファイブっていう1から5番までの人と、バックファイブと呼ばれる4から8番までのこの両方に重なる4、5番っていうのはすごい大事だと言われます。なので後藤さんにはロックが活躍しないと勝てないって言われますね。

――バックファイブの重みが大事だとプロップの対談でも話しになりましたが、意識していることはありますか

大峯 第一に体重が大きい方が強くなるとは思います。でも僕はもう100キロにはいかないと思うので、力を持続させたりするところにフォーカスしていきたいです。

桑野 プロップ陣がうまく姿勢を取ってくれていると思うので、あとは押すだけです。僕はスクラム好きなので楽しいです。

大峯 失礼なことは言えないですけど、最初のころのスクラムは本当に嫌でしたね。ロックになったとき意味が分からないというか(笑)。感覚が分からなかったです。押しているのにフロントに伝わってないっていうのがあって、それは姿勢だったり押すポイントでしたりの問題があったんですけどね。でもそこから楽しい時期がきました。いまも楽しいですよ(笑)。

桑野 相性ってありますよね?

大峯 前とのはあると思う。高橋(プロップ高橋俊太郎、社4=東京・早実)と千葉(プロップ千葉太一、教2=東京・早実)がよく前にいるんですけど、どっちともシャイで口下手なのでこっちから声を掛けるようにしているんですね。でも組んでいるだけに疲れてるじゃないですか。二人も伝えても息で返事しかしてくれないです(笑)。伝わってるのか不安になりますね。

桑野 勇人さん(プロップ佐藤勇人、スポ4=秋田中央)がスクラムものすごく強いので、僕が勇人さんから教えてもらうという感じです。勇人さんのおかげでスクラムが分かってきた気がします。

――4番と5番の相性はありますか

大峯 僕がNO・8やってたころに思ったのは、スクラムを組むときに10センチくらい違うと段差ができるじゃないですか。だから僕があと10センチ高ければ押しやすいんでしょうね(笑)。でもうまく佐藤(NO・8佐藤穣司、スポ3=山梨・日川)がやってくれてます。

――役割の違いや相違点はありますか

大峯 桑野だったらセットプレーで必ず体の大きさを生かすというところです。僕だったら体が小さい分、運動量でフランカーと同じようにしていかないといけないってところですね。個人的に違ってくるというところです。

――お互いのプレーの印象を聞かせてください

桑野 功三さんはがむしゃらというか、力強いプレーっていう感じです。ブレイクダウンとかでも強くて、僕は逆に激しくするのができていないので、教えてもらいたいです。

大峯 詠真はセットプレーでの活躍ですね。ラインアウトでもキックオフでもスクラムでも桑野中心にやっている部分はあります。欲を言えばもっとガツガツやってほしいですね。体の大きさを生かしてほしいです。

――今季のロックの仲はいかがですか

桑野 プロップの特集で、プロップは仲良いですみたいなこと言ってたじゃないですか。でもロックのほうが仲良いですよ。

一同 (笑)。

桑野 そうですよね実際?

大峯 できるだけ現役のロックで集まろうとしてますね。花小金井の銭湯にみんなで行ったりしました。

桑野 伝統的に仲良いと思いますよ。現役のロックと、OBのロックで集まる会があります。

大峯 他のポジションにはないんですよ。縦のつながりが強いですね。

――ロックの魅力とは何でしょうか

桑野 セットプレーで、スクラムもラインアウトもキックオフも全部係わってくるポジションです。フィールドプレーでも全部高いプレーをするんですね。地味ながらもロックが強いとチームが安定できるのかなと思います。かっこいいと思います。

大峯 よく低賃金・重労働って言われていて、それは桑野が言ったところだと思います。全部に関係ある分、全部僕たちの責任にもなるんですね。そこが低賃金・重労働になるのかなと。そこで仕事したり、頑張れば勝利に貢献できます。実は一番勝利に近いところにいるのかもしれません。

――プレーをする上で大切にしていることがあれば教えてください

桑野 僕がよく言われているのが1プレー1プレー考えるっていうのが課題です。みんなにもっと気を遣うことができれば、BKがもっとやりやすいディフェンスができるようになると思います。もっと考えて激しくプレーできればと思います。

大峯 止まらないことですね。走るのを止めないこと、考えるのを止めないことです。一つ一つのプレーが終わったらどうしても止まってしまう瞬間ができてしまうんですけど、その瞬間をできるだけ短くするというのは考えています。少しずつできるようになってきたかと思います。

――夏合宿では後藤監督からの特訓もあったと思いますがいかがでしたか

桑野 ありましたね。

大峯 徒然なるままにね。

桑野 僕と山口(ロック山口和慶、スポ2=福岡)と加藤(フランカー加藤広人、スポ2=秋田工)が後藤さんから直々に教えてもらいました。ロックが強くないとチームが強くならないっていうのを体現するためにやってもらいました。精神的にはきましたね(笑)。

大峯 僕も1年生のときにはやりましたね。

桑野 全体の練習やって、ポジション練習やって、後藤さんの練習やるって感じでした。

大峯 本当のプラスアルファですよね。試合の前日とかまでやってましたよ。毎日帰ってくるの最後でしたね。

「下級生から盛り上げていきたい」(桑野)

桑野は年間を通して赤黒を着るのは初めてのことだ

――帝京大戦を振り返ってください

桑野 通用する部分と通用しない部分がありました。特に個人としては1プレーずつ激しくいかないといけないのに、ビデオ見たら受けてしまうのが多かったです。いままでできていなかったことが、そのまま出てたなと思います。

大峯 ロックというところから見ると、セットプレーが安定できませんでした。ここはすぐにでも取り掛からないといけないです。それこそ僕たちが目立っていたかと言えばそうではないと思うんですよね。そういうところを含めて、激しく、強くやることを突き詰めていかないといけないと思います。

――マイボールスクラムに関して保持率が高くできていますがその点についてはいかがですか

大峯 帝京大戦に関して言えば、ボールが出ればいいのかって言うとそうではなくて、最後のところで佐藤穣がプレッシャー掛けられて倒されていたりというのがあります。その次のプレーにつながるところなので、もっと相手にプレッシャーを与えなくてはいけないです。押されながらボールを出しても、それは100パーセントではないと考えてるので、そこはしっかり直さないといけないです。

――帝京大戦が終わってからチームとして確認したことを教えてください

大峯 チームでは一方的に言うのではなくて、もっと小さいコミュニケーションにこだわっていかないといけないという話をしました。

――桑野選手は初めて年間を通して赤黒を着ていらっしゃいますが、ここまでの出来はいかがですか

桑野 1年生の春に着た赤黒もうれしかったんですけど、(関東大学)対抗戦ってことで、みんなの代表として戦っているという気持ちがあります。それだけにもっとできるんじゃないかと毎試合、毎試合思います。それをまだうまく出せてないという感じです。やり切ったという実感はなくて、反省が多いです。でも練習で良くなってきている部分もあるので、そこをもっと出していきたいです。

――下級生が活躍する土台づくりを今シーズンの最初に目標とされていましたが、実際に下級生が台頭してきていますね

大峯 それをやろうとしている人が増えてきていると思います。でも全員ができていると言えばできていないと思います。このチームは下級生が多いだけに、最後の最後まで伸びしろがあると思っています。何倍でも強くなります。なので4年生が自分に厳しくしないと最後の伸びがなくなると思います。そこを含めてこれからはやっていきたいです。

――対抗戦は残り2試合ですが、これからは多くの観客が入る試合になると思います。昨年の早明戦などを思い返してみていかがですか

大峯 試合には出ていないですけど、1、2年生のころとは明らかに違う雰囲気でした。ロッカーから出て、タグアウトっていう入り口付近のとこがあるんですけど、そこから見た景色が明らかに違ったのを覚えていますね。

桑野 ラグビーでこんなに人が入るのかって思いました。初めてあんな人数の中で試合を見ましたし、自分があの中でプレーしたいって思いが試合の後に思いましたね。

――そこの2試合に向けての意気込みをお願いします

大峯 伸びしろがある分、一つでも試合を落としたらもう戻れないという緊張感を持って臨みたいと思います。確実な一歩を踏むために良い練習、良い準備をしていきたいです。

桑野 4年生が僕らを支えてくれているんですけど、そこに甘えてしまっている部分があります。でももっとできる部分もあるので、プレー面ではもっと激しく、考えて下級生から盛り上げていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 佐藤凌介、御船祥平)

肩を組み仲良くポーズを取ってもらいました!

◆大峯功三(おおみね・こうぞう)(※写真右)

1992(平4)年10月3日生まれ。182センチ、97キロ。福岡・東筑高出身。スポーツ科学部4年。最近、明太子を頂くことがあったという大峯選手。しかし、そこは人気の食べ物明太子。みんながご飯のおかずにして食べてしまい、大峯選手の持分が急激に減ってしまったそう。「僕のものなんですけどね」と笑っていましたが、その目の奥には明太子争奪戦への闘志が溢れていました。

◆桑野詠真(くわの・えいしん)(※写真右)

1994年(平6)10月11日生まれ。192センチ、102キロ。福岡・筑紫高出身。スポーツ科学部2年。桑野選手はアンケートにて好きな食べ物は明太子と回答。そのことについて尋ねてみると、一度はためらいの表情を浮かます。しかし最終的には、「何というかおいしいですよね(笑)」と照れくささを感じながらおっしゃって頂きました。おいしい明太子を食べて早慶戦も力を発揮してください!