勝利を収めるも内容に課題

ラグビー男子

 名古屋在住の早大と同大のOBたちが中心となり、4年に1度開催される春の早同戦。先制点、そして追加点と着実に得点を重ね、序盤から試合を優位に進めた早大だったが、ミスから流れを失うと後半に逆転を許してしまう。しかし、すぐさま逆転トライを挙げ、そのまま勝利した早大。内容に課題を残したものの、伝統の一戦を制した。

今季、初スタメンの吉田

 キックオフ直後から敵陣に攻め込んだ早大は開始4分、モールを押し込み、幸先よく先制点を挙げる。その後もテンポ良くボールを回して相手を揺さぶると、20分にはCTB小倉順平(スポ3=神奈川・桐蔭学園)の突破から繋ぎ、CTB飯野恭史(商3=東京・早実)のトライでリードを広げる。しかし、時より強く降る雨の影響か、試合中盤に入ると両チームともボールが手につかず、攻めあぐねる場面が目立つようになる。互いに敵陣深くまで攻め入ることができずにいる時間帯が続くと、スクラムで優位に立ち始めた同大が徐々に試合の主導権を握り始める。30分にはトライ、39分にはペナルティーゴールと受け手に回ってしまい、反撃を許した早大。10-8とリードをしてハーフタイムに入るも、試合内容はほぼ互角の前半であった。

最後のトライに絡んだ水野

 雨が引き続き降る中で始まった後半。早大は前半と同様、開始直後にトライチャンスを作るも、ラインアウトでのミスからチャンスを逸してしまう。15分過ぎにはハーフウェーラインからモールで攻め、その流れから相手ゴール前まで攻め込むも相手を押し込めず、またしてもトライを取りきれない。そんな決め手を欠くもどかしい展開が続き、試合がこう着した中で迎えた26分、この日手を焼いた相手CTBのゲインから突破を許し、逆転トライを献上。同大に逆転を許してしまう。だが、このまま逆転負けかと思われた33分、WTB廣野晃紀(社4=東京・早実)が個人技で抜け出してチャンスを作ると、最後は途中出場のフランカー池本翔一(スポ2=愛知・千種)が飛び込み、逆転に成功。終了間際とロスタイムにもトライをあげてリードを広げるなど、逆転した後でも守りに入らない姿勢がチーム全体から見られた早大。29-13と逆転勝利で雨中の決戦を制した。

 逆転勝ちを収めたもののミスが相次いだ試合だっただけに、選手たちは「BKが後半になるにつれてどんどんしゃべれなくなるので、いつもコミュニケーションをとれるようにやっていきたい」(小倉)、「ラインアウトのミスを極力少なくしていきたい」(フッカー清水新也、スポ3=宮城・仙台育英)と口々に課題を挙げている。今日の収穫としては雨という悪条件の中でもしっかりと勝ち切れたことが挙げられるだろう。春季の総仕上げとして設定している6月30日の帝京大との大一番に向け、1つ1つ課題を克服しながら、早大は前に進んでいく。

(記事 八木和基、写真 北田ゆず)

早大 スコア 同大
前半 後半 得点 前半 後半
10 19
29 合計 13
【得点】▽トライ 河野、飯野、山本、池本、金澤
 ▽ゴール 鈴木亮2
※得点者は早大のみ記載

早大出場メンバー
背番号 名前 学部・学年 出身校
大瀧 祐司 文4 神奈川・横浜緑ヶ丘
清水 新也 スポ3 宮城・仙台育英
◎垣永 真之介 スポ4 東福岡
河野 秀明 創理2 東京・早実
桑野 詠真 スポ1 福岡・筑紫
呉 泰誠
後半28分→交代18池本
スポ4 大阪朝鮮
小谷田 祐紀 文構3 東京・早実
古賀 壮一郎 教4 福岡・筑紫
吉田 有輝
後半16分→交代20平野
人3 大分舞鶴
10 間島 陸
後半34分→交代22水野
商4 東京・早大学院
11 鈴木 亮 教2 神奈川・桐蔭学園
12 小倉 順平 スポ3 神奈川・桐蔭学園
13 飯野 恭史
後半6分→交代21金澤
商3 東京・早実
14 廣野 晃紀 社4 東京・早実
15 山本 龍平 商3 東京・都立武蔵
リザーブ
16 光川 広之 スポ3 神奈川・公文国際
17 佐藤 勇人 スポ3 秋田中央
18 池本 翔一 スポ2 愛知・千種
19 仲元寺 宏行 社2 広島・尾道
20 平野 航輝 スポ3 長崎南山
21 金澤 男 社4 千葉・市川
22 水野 健人 人4 大阪・東海大仰星
※◎は主将、監督は後藤禎和(平2社卒=東京・日比谷)


◆コメント
後藤禎和監督(平2社卒=東京・日比谷)
――試合を振り返っての感想をお願いします
良い経験が出来たかな、という感じです。
――試合を通してミスが多く見られました
基本的には先週の釜石(シーウェイブス)戦と同じで、そこは経験不足の選手が多いということもあるだろし、まあ今日出ていた選手たちの実力不足だと言えるのかなと思います。
――ミスが多く見られた原因として雨の影響もあったのでしょうか
試合直前になって雨がひどくなってきたんですけど、明らかにボールが手につかない、ボールが滑りやすい状況になった時点でゲームの組み立て方や戦い方を変えなきゃいけない、極端に変えていいのに選手たちだけでは出来なかった。いつも通りのラグビーをやろうとして、ミスにミスを重ねて後手を踏んでしまった。そこは非常に不満です。
――今日の試合で起用の期待に応えた選手はいましたか
MVPとしては泰誠(フランカー呉、スポ4=大阪朝鮮)ですね。すごく献身的にサポートプレーをして、なおかつキレのあるランプレーを見せてくれたということで個人的にはすごく成長を感じました。
――試合後、選手たちにはどのような話をされたのでしょうか
(トライを)取るべきところできっちり取らなければ相手の流れになってこういった試合展開になるということと、トライを取った後のコンバージョンであるとかゴール前でのラインアウトだとか、そういった1つ1つのプレーを仕留めるというか精度高くやっていこうということを選手たち自身が口にしているのに全然できてない、そこはもっと本気でやっていかないとという話をしました。

プロップ垣永真之介主将(スポ4=東福岡)
――思ってもみない試合展開となりましたね
先週から全く成長できてないというか、ミスで自滅してという展開だったので、今回出た課題をしっかりと修正していきたいと思います。
――雨の影響が大きかったのでしょうか
そうですね。(新チームになって)初めての雨の試合でしたので。しかし、雨の試合を経験できたことは、次につながるので、前向きに捉えたいと思います。
――アタックではなかなかトライまで繋げることができませんでしたが、何が原因でしたか
ミスとやってきたことが全くできなかったのが原因だと思います。
――スクラムに関しては、対面が高校の後輩である北川賢吾選手でした。組んでみていかがでしたか
彼はジャパンなので、挑戦者の気持ちで組んでました。やられた時もあったので、個人の課題にしたいと思います。
――後半はセットプレーが安定しなかったですね
そこが釜石シーウェイブス戦から進歩できてないところだと思うので、しっかりと意識して修正していきたいと思います。
――試合終わって、円陣を組んでましたが、どんな言葉をかけましたか
最後逆転できたことは、昨年からしたらメンタルの面で成長しているので、良かったと話しました。厳しい言葉は全くかけてないです。

フッカー清水新也(スポ3=宮城・仙台育英)
――試合内容はいかがでしたか
とにかく僕のラインアウトのスローイングミスが多すぎて、せっかくいいキックでエリアをとっても、ラインアウトの僕のミスで攻撃できなくて、それが一番の反省だと思っています。
――それは雨の影響が大きかったのでしょうか
雨の影響もあるかもしれないですけど、雨でも試合が無くなる訳ではないので、雨でもしっかり投げられるようにしたいです。根本的にミスが多かったです。
――スクラムが押されているように見えましたが、組んでみての実感は
垣永さんと大瀧さん(プロップ大瀧祐司、文4=神奈川・横浜緑ヶ丘)に助けられた部分が大きかったので、自分で相手のフッカーを止められるようにしていきたいです
――先週の釜石シーウェイブスのような大きな相手と組んだ時に感じたことはありましたか
ワセダは相手のほうが大きいことのほうが多いので、低く早く固まって組むというのを大事にしているので、そこをもっと突き詰めていって、低さでどこのチームにも負けないスクラムを組めるようになりたいです。
――ボールのもらい方などのフィールドプレーがよかったように思えましたが
ラインアウトが本当にひどすぎて、フィールドプレーで取り返すしかないと思っていたので、たくさん走りました。
――来週の法大戦に向けて一言お願いします
一番の反省であるスローイングをしっかり修正して、ラインアウトのミスを極力少なくしていきたいです。

SO間島陸(商4=東京・早大学院)

――試合を振り返っていかがですか

雨の中の戦いでエリアを同志社さんに上手く取られてしまって自分らの思うように試合が運べなかったというのが1つと、あと最後はしっかり立て直して取るところは取れたので良かったと思います。
――雨の影響はやはり大きかったですか

そうですね、前半は中盤で攻めている中で雨などでミスが重なってうちのペースにならなくて悪循環が続きました。後半はしっかりエリア取ろうとしたんですけど、同志社さんが上手くエリア取ってきたのでそこはしっかり修正しなくちゃいけないと思いました。
――ご自身のキックの出来はいかがでしたか
きょうは全然当たってなくて、僕だけじゃなくてチームみんなでもっとエリアを取っていかなくちゃと思いました。キックの精度もそうですし、キックの選択や判断というのも良くなかったです。

――後半は立ち上がりからしばらくお互いに攻めきれずに点が取れなかったですが、振り返っていかがですか

僕らも後半は最初の頃は自陣で無理せずしっかりエリアを取っていこうとしたんですけど、全部が全部そういう判断になってしまっててもっと攻めれるところは攻めても良かったんじゃないかと思います。それでお互いがキックを蹴りあってああいうキックゲームみたいな展開になってしまったんだと思います。

――最後は逆転して点差を広げたという結果に関してはいかがですか

やっぱり最後走り勝つという意味でもそうなんですけど、自分たちのラグビーを出来たのは良かったと思います。

――自分たちのラグビーというのは具体的にどのようなラグビーなのでしょうか

しっかりFWがセットして良い動きでしっかり縦に入ってからの展開ですね。きょうも最後はもう蹴っていても逆転出来ないので、そういう意味で開き直って自分たちのラグビーが出来たと思います。
――試合を通じて感じた課題はありますか
細かいプレーで、ブレイクダウンに入っていく人数だったりFWが相手を突破していくとことかもっと突き詰めていかないと、もっと相手が強くなってきた時に自分たちのラグビーが出来なくなってしまうのでその辺の1つ1つのプレーの精度を上げていかなくちゃいけないと思います。
――これからまたリーグ戦やオープン戦が控えていますが意気込みをお願いします
ライバルというか凄い強豪校と試合をするので、1つ1つの試合でレベルアップ出来るように個人としてもチームとしてもやっていきたいです。

CTB小倉順平(スポ3=神奈川・桐蔭学園)
――どのようなゲームプランで試合に臨みましたか
天候がこうなるのはわかっていたので、後半にFWが楽になるように進める予定だったんですけど、前半が全然ダメでしたね。
――具体的に前半の良くなかった点は何ですか
自陣から攻めすぎて、自陣でミスをして相手ボールになってというのを繰り返していたので、それにもっと早く気付けなかったのが課題です。
――CTBでの出場でしたが、プレーしてみていかがでしたか
練習からずっとCTBなので、そんなに違和感なくやっています。
――どのようなところに力を入れて練習をしていますか
ブレイクダウンというのと、BKだったらスターターでどれだけゲインするのかということをやっています。
――今後の課題を教えてください
BKが後半になるにつれてどんどんしゃべれなくなるので、いつもコミュニケーションをとれるようにやっていきたいと思います。