昨年に早明戦100回目を迎え、注目度が高まったラグビー伝統の一戦が、北海道の月寒で行われた。U20代表に選出されていたメンバーが帰ってきて、現在のベストの布陣で臨んだこの試合。キックオフ直後から早大が明大の守備の穴を突き、順調に得点を積み上げていく。途中ペナルティが重なり自陣に押し込められる時間帯もあったが、後半の怒涛のトライラッシュでワンサイドゲームに。早大は翌週に控える帝京大との試合に向けて大きく弾みをつけた。
前半が始まるやいなや、早大のBKを中心とした攻撃が爆発した。前半3分、SO小倉順平(スポ3=神奈川・桐蔭学園)がキックで陣地を稼ぐと、早大ボールのラインアウトからタテに切れ込んだフランカー金正奎(教4=大阪・常翔啓光学園)が抜け出し、フォローに走っていたロック近藤貴敬(社4=宮城・仙台育英)がインゴールになだれ込む。さらに6分には同じようなシチュエーションから、WTB荻野岳志(先理3=神奈川・柏陽)がU20代表を経て一回り大きくなったその体を活かし、敵を引きずりながらトライを挙げた。17分に早大が犯した連続反則から点差を縮められたが、この日の早大はここから崩れない。テンポの良い攻撃でさらに追加点を挙げ、前半を26-5で折り返した。
U20で自慢のランに磨きをかけた荻野
後半はスタンドに駆けつけたファンの度肝を抜く、フランカー池本翔一(スポ2=愛知・千種)の足元に突き刺さるタックルで幕が開けた。5分に早大のペナルティから素早くリスタートされて失点するが、ここから早大の猛攻撃が始まる。中でも、小倉のキックを織り交ぜながら、約90メートルを走りきってのトライは圧巻そのもの。さらに今季CTBからフランカーに転向した布巻峻介(スポ3=東福岡)が途中出場し、敵をなぎ倒すタックルで相手の反則を誘うなど、ケガからの復活をアピールした。結局後半だけで7つのトライを重ねた早大が73-12で明大相手に文字通りの完勝を収めた。
冷静に攻撃を組み立てた小倉
約60点もの点差をつけて勝利し、選手たちからは笑みもこぼれたが、「早大の目標は帝京大に勝つこと」(布巻)とあくまでも選手が向けるベクトルは帝京大へと向いている。春シーズンで地道に練習してきたタックルやフィットネスが実を結び、春の集大成を迎えるのに絶好の環境は整った。今季のチームが見据える先はただ一つ。6月30日、早大が絶対的王者の牙城を崩しにかかる。
(記事 御船祥平 カメラ 戸澤美穂、近藤万里奈)
春季オープン戦 | ||||
---|---|---|---|---|
早大 | スコア | 明大 | ||
前半 | 後半 | 得点 | 前半 | 後半 |
4 | 7 | T | 1 | 1 |
3 | 6 | G | 0 | 1 |
0 | 0 | P | 0 | 0 |
0 | 0 | D | 0 | 0 |
26 | 47 | 計 | 5 | 7 |
73 | 合計 | 12 | ||
【得点】▽トライ 大瀧、荻野2、小倉、垣永2、金2、近藤、間島、廣野 ▽ゴール 小倉(8G)、間島(1G) | ||||
※得点者は早大のみ記載 |
早大メンバー | |||
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背番号 | 名前 | 学部学年 | 出身校 |
1 | 大瀧 祐司 | 文4 | 神奈川・横浜緑ケ丘 |
後半26分交代→17佐藤勇 | |||
2 | 須藤 拓輝 | スポ4 | 東京・国学院久我山 |
3 | ◎垣永 真之介 | スポ4 | 東福岡 |
4 | 近藤貴敬 | 社4 | 宮城・仙台育英 |
5 | 河野 秀明 | 創理2 | 東京・早実 |
6 | 金 正奎 | 教4 | 大阪・常翔啓光学園 |
7 | 池本 翔一 | スポ2 | 愛知・千種 |
後半23分交代→19布巻 | |||
8 | 佐藤 穣司 | スポ2 | 山梨・日川 |
9 | 岡田 一平 | スポ2 | 大阪・常翔学園 |
後半26分交代→20平野 | |||
10 | 小倉 順平 | スポ3 | 神奈川・桐蔭学園 |
11 | 深津 健吾 | スポ3 | 東京・国学院久我山 |
12 | 坪郷 勇輝 | 商4 | 東京・早実 |
後半0分交代→21間島 | |||
13 | 藤近 紘二郎 | 政経4 | 神奈川・桐蔭学園 |
後半15分交代→22滝沢 | |||
14 | 荻野 岳志 | 先理3 | 神奈川・柏陽 |
15 | 廣野 晃紀 | 社4 | 東京・早実 |
リザーブ | |||
16 | 清水 新也 | スポ3 | 宮城・仙台育英 |
17 | 佐藤 勇人 | スポ3 | 秋田中央 |
18 | 大峯 功三 | スポ3 | 福岡・東筑 |
19 | 布巻 峻介 | スポ3 | 東福岡 |
20 | 平野 航輝 | スポ3 | 長崎南山 |
21 | 間島 陸 | 商4 | 東京・早大学院 |
22 | 滝沢 裕樹 | 基理2 | 福島 |
※◎は主将、監督は後藤禎和(平2社卒=東京・日比谷) |
コメント
後藤禎和監督(平2社卒=東京・日比谷)
――今日の試合を振り返ってください
春シーズンが残り2週間ということで、最後の帝京大を元々ターゲットにしてきて、そろそろ仕上げていかないといけないということで、そういう意味で選手達がよく頑張ってくれたと思います。
――ゲームプランとこの試合を迎えるにあたって選手に伝えたことを教えてください
プランとしては明大はFWに強くて大きなプレーヤーがたくさんいるので、今まで同様にずっと取り組んできたぶつかり合いのところで負けないで主導権をとっていこうということでした。土曜日に1年生は大敗してしまいましたが、BチームもCチームもすごくいい内容で勝てたので、Aチームだけがそれに取り残されないようにということを話しました。
――前半から小倉順平選手(スポ3=神奈川・桐蔭学園)のエリアマネジメントが優れて主導権を握れたと思いますが、前半を振り返ってください
彼自身ここ数試合余裕を持って相手の状況を見ることが出来ているので、すごく成長していると思います。
――前半の最後と後半の入りに自陣でペナルティが重なってしまったことについてどうお考えですか
そこは大問題ですね。帝京大相手に同じことをやっていると、失点を積み重ねることになるので、そこは1週間かけて修正していきたいと思います。
――全体的にタックルが低くいけえていたように思えますが、タックルの評価を教えてください
体力的に、精神的に余裕があるときは精度が高くやれているんですけど、疲れ始めて余裕がなくなってくると飛び込む癖が出ているので、そこがどこまで来週の試合で粘り強く出来るかですね。
プロップ垣永真之介主将(スポ4=東福岡)
――歴史的大勝となりました。感想をお願いします
久しぶりに自分たちのラグビーが80分間通してできたと思います。でも目指しているのはこんなものではないので、今回出た課題をしっかりと修正して頑張っていきたいと思います。
――あまり喜んでいるようには見えませんでしたが、このスコアは予想通りだったのでしょうか
そんなことはありません。いい結果として受け止めたいと思います。しかしターゲットは次なんで、内容に関しては冷静に見つめ直したいです。
――ずばり勝因は何だとお考えでしょうか
今までブレイクダウンでファイトできなかった部分でしっかりと勝負できたところです。また80分間、自分たちのペースに持ち込むことができました。
――ミスが少なく攻撃がかみ合った印象でしたが、いかがでしたか
完璧なチャンスを逃した部分もありましたし、タイトな試合ではそういうところが重要になってくるので、アタックに関してもまだまだです。
――チームに戻ってきたU20組と本日復帰した布巻選手(峻介、スポ3=東福岡)の印象はいかがでしたか
U20組に関しては、見違えるほど頼りになる存在になって帰ってきてくれました。布巻については、いいセンスで心強いです。
――帝京大戦を来週に控えて、不安材料はありますか
いろいろありますが、失うものはないので、すべてをぶつけたいと思います。
――帝京大戦の自信の程はどれほどなのでしょうか
相手が未知数なのでなんとも言えないですが、良い部分に関してはそのまま継続、悪い部分に関しては修正して、すべてをぶつけていきたいと思います。
フランカー布巻峻介(スポ3=東福岡)
――今季初の試合でしたが、振り返っていかがですか
まあ復帰できたことが一番ですね。
――途中からの出場でしたが、ベンチから見ていて思ったことはありますか
良い感じで点差も開いて、チームとして勢いもあったので、頑張っていると思いました。
――明大相手に大勝しましたが、大きな意味があると思いますか
体が大きい相手に逃げずに向かっていけたということなので、良かったと思います。この前慶大には負けているので、勝てたことは大きいと思いますね。
――個人的な反省点はありますか
トライのとき、ゴール前でスイープミスをしたことですね。あとはもっとボールに絡みたかったです。
――良かった点はありますか
一本タックルからトライの起点になれたことです。
――ケガについてはいかがですか
本調子ではないのですが、秋のシーズンまでには間に合うようにしたいです。
――最後に今後の意気込みをお願いします
次は帝京戦で、早大の目標は帝京大に勝つことなので、チャレンジャー精神をもってやりたいと思います。
NO・8佐藤穣司(スポ2=山梨・日川)
――――試合全体を振り返っていかがですか
圧勝できたってことは、よかったんですけど、その中でミスが結構多かったです。そういった細かいミスを修正しないと、帝京大とか強いチームが相手のときに接戦をものにできないと思います。そこを修正していけたらなと思います。
――U20を終えて、久しぶりの赤黒でしたね
U20の遠征中にワセダは慶大に負けたり、他の大学とも接戦だったりと、元気がないということを聞いていたので、盛り上げられればと思って試合に臨みました。
――U20で成長した点はどんなところでしょうか
ラグビーのことから、私生活のことまで勉強になることが多くあったので、そういったいい経験をいかしていきたいなと思っています。
――試合の話に戻ります。前半からトライを重ねていき、特に後半の終盤は完全にワセダペースで試合が運びました
ワセダがやってきたフィットネスという部分で、明大を上回れたのだと思います。やってきたことが出せたのでよかったです。
――明大に対し、60点差という大勝でしたね
点差はひらいたのですが、ディフェンスの部分があまりよくなかったところがあるので、そこを修正して、もっとレベルアップしていけたらと思います。
――来週の帝京大戦にむけて、どんなところを強化していきたいですか
ワセダは一発で取りきれるっていう選手が、昨年に比べて減ったと思います。なので、ディフェンスが大事になってきますね。ディフェンスでしっかり我慢して、少ないチャンスをものにするというところを帝京大戦にむけてもやっていきたいです。
WTB荻野岳志(先理3=神奈川・柏陽)
――早大の選手として久しぶりの試合でした。振り返っていかがですか
最終的にスコアは開きましたが、(攻撃の人数が)余っているシチュエーションでコミュニケーションが取れず、なかなかトライが取りきれませんでした。なのでこれからは早めにコールしたりしてそのあたりを突き詰めていきたいと思います。
――大差で快勝しましたが、反省点も多い試合ということですか
でも、今チームがあまりうまくいっていない状態なので、そういう意味では一つのきっかけになれればいいなと思います。
――明大に対して大差で勝利したことは大きな意味があると思いますか
でもまだ春なので。これでうぬぼれることなく、まだ帝京大戦も待っていますし。
――ご自身の活躍についてはどうでしょうか
とりあえず穣司(NO・8佐藤穣司、スポ2=山梨・日川)と流れを少しでも変えられたらなとは話していたので、そういう意味ではほっとしています。
――U20の試合で学んだことはありますか
沢木さん(敬介、U20日本代表ヘッドコーチ)からは、攻守の切り替えをもっと激しくしろと。相手のミスボールをトライにつなげるように言われていました。帝京大のような強い相手になると、相手のミスをチャンスとしてモノにできないといけないので。
――U20での経験を経て成長したところはありますか
体の大きい相手に対して低くタックルに行くことができるようになったことですかね。
――帝京大戦へ向けて意気込みを教えてください
他チームの結果を見ても分かる通り、今帝京大が一強だと思います。その強い相手に対して早大らしい泥臭いプレーで僅差をモノにしたいと思います。