【第3回】204号室 芦屋勇帆×深津健吾×桑野詠真

ラグビー男子

連載第3回は、ロック芦谷勇帆(スポ4=京都・伏見工)、WTB深津健吾(スポ3=東京・国学院久我山)、ロック桑野詠真(スポ1=福岡・筑紫)の三人部屋。190センチ越えが二人もいる部屋だが、中で立っていることはあまりないから窮屈さは感じないそう。「うちの部屋が一番仲良し」と声をそろえた三人に、普段の部屋での様子から春シーズンの振り返りまでを伺った。

※この取材は7月13日に行ったものです。

「寮生であることを誇りに思う」(深津)

仲良く談笑する3人

――今回深津さんと桑野さんは初めての対談ということですが、どんな心境ですか

桑野 いや、緊張してます。

深津 第三者が入って何か話すのが初めてなのと、この部屋でやるのがまたちょっと変な感じです。

――芦谷さんからアドバイスとかあれば

芦谷 僕一番苦手なんで…。

一同 (笑)。

――同部屋特集ということで部屋についてお聞きしたいのですが、まず、入寮されたのはいつ頃ですか

芦谷 僕は1年のときで入学したときからずっと寮ですね。

深津 2年生のシーズンが終わった2月くらいですね。今年の2月くらいです。

桑野 今年入学してすぐです。

――入寮というのは誰から知らされるものなのですか

深津 風の噂で部員伝えで主務とかから「お前なんか入るっぽいよ」みたいなことを言われて「そうなんだ」と思っているところに、最後ちゃんと紙みたいなのが来るんですよ。それで入寮決定というか。

――紙を受け取ったときの気持ちはいかがでしたか

深津 前々から聞いていたことではあったので、「あ、来たか」という感じでしたね。

――外勤の人にとっては入寮というのは嬉しいことなんですか

深津 そうですね。うれしいし、本当にすぐそこがグラウンドだしウエイトもできるので、ラグビーをする環境として一番良いので、誇りに思う部分はありますね。

――今までどの選手と同じ部屋になったことがありますか

芦谷 僕は1年のときは最初があの今サントリーにおられる村田大志さん(平23教卒=現サントリー)と榎本さん(光祐、平23スポ卒=現コカ・コーラウエスト)、2年のときが横谷さん(大祐、平24スポ卒)と土屋さん(鷹一郎、平24スポ卒=現NTTドコモ)で、3年の頃が安江さん(順、現FWコーチ)と伊藤平一郎さん(平25スポ卒=現ヤマ   ハ発動機)です。で、今がこのメンバーです。

――そのなかで一番印象に残ったできごとはありますか

芦谷 そうですね。昨年、3年の後期が安江さんと平野(航輝、スポ3=長崎南山)と一緒だったんですけど、印象に残っているというか楽しかったですね。一番。

――—部屋員はどのように決めるのですか

芦谷 まず4年生がじゃんけんで自分の好きな部屋の場所を決めるんですよ。そのあとに4年生が下級生を指名していく感じです。僕はこの二人と接点がなかったんですけど、桑野はロックだからじゃあ俺がとるって言って、深津はしゃべったことないんですけど…(笑)。

一同 (笑)。

――この人がいいというのはなかったのですか

芦谷 誰がいいっていう奴もいるんですけど、別に僕は基本的には誰でもよかったので。たまたまこの二人って感じです。

――芦谷さん、桑野さんのお二人が190cm以上ありますが部屋を深津さんはどう感じますか

深津 圧迫感は最初感じましたよ。でもだいたい部屋で立っていることがなくて、寝ているか座っているかなので、そこまでは部屋にいるときは感じないです。でも、3人で外に出たりとかすると「ああやっぱデカイな」って思うときはあります。

――桑野さんからみてお二人の印象はいかがですか

桑野 そうですね。勇帆さんは入る前に本当にしゃべらない人だぞ、大変だぞって他の先輩から言われていたんですけど、今では良い先輩です。

一同 (笑)。

桑野 尊敬しています。深津さんは、まあ最初しゃべっていて授業のこととかいろいろ教えてくれたので、芦谷さんよりは印象が良くて…(笑)。

――お互い一緒の部屋で生活するようになってからわかったことはありますか

芦谷 まず深津は体のケアをめっちゃします。まずローションとかも体に塗りたくってます。

一同 (笑)。

深津 そこだけ言ったら変な人になるから(笑)。洗顔とかそういう段階を置いてからじゃないとわかんないでしょ。

芦谷 洗顔とかもめっちゃこだわるんですよ。(棚に)並んでいるやつがみんな深津のです。詠真はなんやろうなあ。ずっとアニメとか見てます。ももクロとか好きです。

深津 勇帆さんは毎日ということもないけどプロテインをよく飲む人だなあと。

桑野 確かに。

深津 桑野は携帯のLINEのゲームをよくやってるなって。まあ勇帆さんもやるか。

芦谷 LINEPOPやる。

桑野 勇帆さんはYUIが好きです。僕も携帯に入れてもらいました。深津さんは基本オシャレなのでいろいろ教えてもらいます。服とか。僕がけっこう疎かったので。

――一緒に買い物に行かれたりもするのですか

深津 行かないですね。

桑野 一緒に行ったじゃないですか、アウトレット。

深津 あ、そうだ。アウトレット行ったんだ。行きました行きました(笑)。

桑野 勇帆さんとは行ってないですよね。

深津 行ったじゃん。原宿。

桑野 あ、そうだ。原宿行きました。

「深津がこの部屋の支配者です」(芦谷)

笑顔で取材に応じる芦谷

――部屋の中でのポジションを教えてください

芦谷 それ聞いちゃいますか。僕部屋長です。っていうのは表向きで、彼(深津)が支配者です。

一同 (笑)。

――例えばどんな点ですか

芦谷 まず、この僕のベッドは僕4割、深津6割くらいです。

深津 このテレビを下に置くっていったときに、僕のなんですけど、勇帆さんが「ここで勝手にテレビ見ていいよ」って言ったから見てるんですけど、なんか…。

芦谷 全然いいです(笑)。

桑野 深津さんはここでよく寝ています。夜は。

深津 下は勇帆さんで、上が桑野と僕なんですけど、たまに僕がここ(下)で寝てて起こされて上に行けって。

芦谷 桑野はあれっすね。一番下なので有無も言わせず…(笑)。

桑野 支配されてますね、僕は。

――掃除はこの人というような役割はありますか

芦谷 掃除はこの部屋みんなしないっす。この部屋は本当に。言わないとしない。

桑野 僕と芦谷さんはまあまあするんですよ。

芦谷 こいつ(深津)は絶対にしない。オシャレなのにちょっと。外行くときはめっちゃきめてるんですけど、部屋は…(笑)。

――きれい好きという方はいますか

芦谷 この部屋にはいないです。全員汚いです。明日になればこの部屋もごちゃごちゃです。

――お互いの直してほしいところはありますか

深津 きっと掃除しろでしょ。

芦谷 掃除しろでしょ。深津の場合は。詠真は特にないです。

深津 目覚まし一回で起きろくらいじゃない?

芦谷 ああそうやね。目覚まし一回で起きろくらい。『It’s My Life』三回くらい鳴るからね。アラーム鳴りっぱでどっか行くんですよ、人が寝てるのに。それぐらいですかね。

――桑野さんからはありますか

桑野 勇帆さん…。

深津 早く復帰してってとこかな。

桑野 あ〜そうですね。ケガを早く治してほしいです。

――この部屋は他の部屋とどの辺が異なりますか

桑野 アットホームですよ。

深津 アットホームですよ。三人が仲良いっていう。基本的に何も気に留めないよね。

芦谷 部屋をちょっときれいにしてほしいくらいやな。ちょっとな。

一同 (笑)。

――この部屋だけの決まり事はありますか

芦谷 ないっすね。作らないといけないくらいなんですけど(笑)。でもあんまり言うこと聞いてくれないんで。

――今回他に3つのお部屋を取材させていただくのですが他の部屋の印象はいかがですか。まず平野さんと廣野さん(晃紀、社4=東京・早実)の部屋はいかがですか

芦谷 あいつらっすか。

深津 仲は良いんだけど、廣野さんがちょっと忘れっぽいんですよ。なんか抜けてるんだよね。

桑野 平野さんがよく怒っています。

芦谷 部屋の電気とかテレビ消さないんですよ。それダメなんですよ。それを平野によく怒られてます。後輩なのに。先輩なのに後輩に怒られるという。

――藤近さん(紘二郎、政経4=神奈川・桐蔭学園)、河野さん(秀明、創理2=東京・早実)そして新しく入寮した光川さん(広之、スポ3=神奈川・公文国際)の部屋はどうですか

深津 光川が入った後はわからないけど話してるのかな?

桑野 話してるとこ見たことなくないですか?

芦谷 藤近が、「なんでうちの部屋が取材なんだよ〜」とか言ってました(笑)。

――光川さんが入ることで和らぐのですね

芦谷 和らぎます。めっちゃ和らぎます。

――正奎さん(金正奎、教4=大阪・常翔啓光学園)、小倉さん(順平、スポ3=神奈川・桐蔭学園)、池本さん(翔一、スポ2=愛知・千種)のお部屋はいかがですか

芦谷 あいつらは仲良いっすよ。

深津 けっこう部屋にいることが多いよね。

――一番仲が良い部屋はどこだと思いますか

深津 いや、ここでしょ(笑)。

「この部屋だからホームシックにはならない」(桑野)

初対談で少し緊張した面持ちの桑野

――寮生活で一番楽しいことと苦しいことは何でしょうか

芦谷 毎日楽しいですね。苦しいことは特にないです。

深津 寮生活をしていて苦しいことはあんまりないかな。門限があることくらいじゃない?

芦谷 門限が無かったらいいのになと思うことはたまにあります。

――門限は何時ですか

深津 23時です。早いです。

芦谷 今はないんですよ。7月中は。練習がないので遊べる時期です。

深津 まあ遊びに行ってないけどね。

一同 (笑)。

――門限を破るとどうなってしまうのですか

芦谷 それたぶん一番ヤバイやつです。ラグビー部でかつて破った人がいるんですけど、まず坊主にしなきゃいけません。チームは一番下に下げられてみんなから怖い目で見られます。

――寮のごはんについてお聞きします。一番好きなメニューは何ですか

深津 親父さんが揚げたカツが一番ですよ。晩飯に出るのなら。

芦谷 何が一番好きやろ。最近食ったなかでは…。

深津 白飯でしょ。白飯。

芦谷 白飯も好きだけど何が一番好きやろ。ハヤシライス。

桑野 勇帆さんめっちゃ食いますよ。朝から大きいどんぶりで。

芦谷 ハヤシライスとかっす。カレーライスとか。

深津 普通(笑)。

桑野 僕は何でも好きなんですけど、野菜は人参とかちょっとダメなんですけどちょっとダメっす。

一同 (笑)。

――ホームシックにはなりますか

芦谷 いや、もう僕はならないです。全然。はい。

桑野 僕はこの前福岡に帰ったんですけど、まだそこからはなってないですけど帰るまでは友達に会いたいなとか思って、帰り…いや、でもここが基本家みたいというか家族みたいな感じだから普通にあんまり。他の部屋だったらものすごくホームシックになってたけど、この部屋だからあんまりならないです。

深津 僕は帰ろうと思えばいつでも帰れますし。

――話が戻るのですが、ご飯はいくら食べてもいいのですか

深津 おかずだけ決まっていて味噌汁とサラダと白飯はいっくらでも。

――実家からこれだけは絶対に持ってきたいと思って持ってきたものはありますか

芦谷 何かあるかな。

深津 うーん…。

芦谷 ないっすね、僕。服かな。

深津 決まってなくない?パソコンくらいじゃない?

芦谷 パソコンは…(笑)。まあそうやな。特にないっすね。こっちで全部調達してます。服とかも別に無かったらもう。

桑野 僕あれっすよ。高校のときの写真持ってきました。みんなの。寂しいから。

深津 寂しいんじゃん(笑)。

桑野 寝るときに見ます。

――宝物とかがあれば、見せていただけますか

芦谷 宝物か…。ないなあ。特にないです。YUIのDVDくらいです(笑)。

一同 (笑)。

――見せて頂いてもいいですか

芦谷 そこ(棚)にあるんですけど、下の段のところです。あ、やっぱり宝物あった。これっす。デジタルフォトフレームです。

深津 ああ〜。

芦谷 同期のみんなからメッセージをもらいました。

深津 絶対忘れてたじゃん。

芦谷 誕生日にもらったんですよ。最近。一週間くらい前に。7月2日。

――毎回誕生日はお祝いをしていらっしゃるのですか

芦谷 そうっすね。毎回僕らはなんか、同期が仲良くてそういうのが好きなので。あ、そうそう。このクッションも誕生日に同期からもらったんですよ。これは3年生のときに垣永(真之介主将、スポ4=東福岡)からもらいました。

深津 大好きだよな。それ。

――そうなのですか

深津 大好き。

芦谷 そうっすね(笑)。

――深津さんの宝物はありますか

深津 宝物…。うーん…。あった。いや、一個には絞れない。この写真と、上にあるコンポですね。この写真なんですけど、4年生に(呉)泰誠さん(スポ4=大阪朝鮮)と古賀さん(教4=福岡・筑紫)という人がいるんですけど、この二人が最初ワセダクラブでラグビーを教えてて、そこに一緒にやらないという感じで僕は途中から行ったんですけど、そしたらすごく面白くてコーチになりました。それで昨年は年少を教えていて、最後にその子たち全員とコーチとで撮った写真がこれです。本当に楽しかったですね。あとこのコンポは、ホコリかぶってますけど同期が誕生日にくれたんです。

桑野 誕生日にもらったんですか?知りませんでした。

――ここで流すのですか

深津 アラジンの『ホール・ニューワールド』流してちょっと歌うよね。

桑野 いつもディズニー聞いてる。

――寮で一番落ち着く場所はどこですか

深津 このベッドの上ですね(笑)。

――次に一緒の部屋になってみたい選手はいらっしゃいますか

芦谷 いや、別に…。

深津 どうなの?どうなの?実際どうなんですか?(笑)

芦谷 実際ですか?(笑)いや、僕はこのままで全然いいです。

――今季も変更はあるのですか

芦谷 後期には変わっちゃうんですけど。

桑野 半年に1回です。

――寂しいですか

芦谷 そうっすね。でも決まっていることなんで仕方ないです。もしかしたらまた同じ部屋でもいいかもしれないので。でもちょっとそこらへんは寮長に聞いてみないとわからないので、どうなるかわからないです。

――深津選手はいかがですか

深津 いやあ、もうここが1番いいです(笑)。

――本当にすごく仲がよろしいんですね。桑野選手はどうですか

桑野 いや、僕も…。

芦谷 ほんまか?(笑)

深津 本当か?(笑)

一同 (笑)。

桑野 僕もここがいいです。僕ちょっとあんまちょっと他の先輩怖いので…。はい。このままがいいです。

深津 安牌がいいって?

桑野 勇帆さんと深津さんがいいです。

――三人で共有してるものや物の貸し借りはありますか

芦谷 もう全然。寮全体であります。みんな使ったら返さないんですよ。とりあえず(笑)。もう返せっていうまで返さなくて、なんか一カ月後とかに聞いたら失くしたとか言われて。

一同(笑)。

芦谷 けっこう無責任なんでみんな。冷蔵庫とかも食べ物を入れといても勝手に無くなったりとかするので。

深津 うんうん。

芦谷 直してほしいところ言ったらそこっすね(笑)。借りた物は返すっていう。

――本年度は特に後藤監督(禎和、平2社卒=東京・日比谷)も自律ということを非常に重要視なさっていると思います。そのなかで、自分たちが寮生活でどのようなことに意識的に取り組んでいますか

芦谷 僕は気付いたら何かをやるようにしています。例えば、オフが長く続いたら共同のゴミ箱が溢れ返るんですよ。それで気付いたら自分でゴミ袋を替えるようにしたり、気付いたら人任せにするんじゃなくて、自分でやるようには一応心がけてはいます。

桑野 僕はスリッパをよく並べますよ。

芦谷 あ、そうそう。スリッパ並べます。ちゃんと。

桑野 はい。みんなの並べます。

――ほかに意識的に取り組んでいることはありますか

芦谷 あとは食事に関してですね。昨年までは、お昼にラーメンだけ食べて終わっていたことも多かったんですけど、それがなくなりましたね。みんな、肉買って来て焼いてご飯とみそ汁作って食べてます。

開幕戦前日にまさかの大ケガ、そして回ってきた大役

1年生ながら赤黒を経験した桑野

――春シーズンを振り返っていかがでしたか

芦谷 僕はケガで、春シーズン1試合も出ていなくて偉そうなことはあまり言えないのですが。序盤はちょっとどうしたのかな、ワセダらしくないなというところがありました。でも、試合を重ねるうちにチームらしくなってきて、最後は帝京大にも勝てるなぐらいに思ったので、夏合宿でどれだけ追い越せるかですね。

――春の段階での目標は何でしたか

芦谷 特に目標はなくて、ウエイトとかできることをがむしゃらにやっていた感じですね。体力だけ落とさずに。

深津 ずっと帝京大はターゲットにしていたので、そこに向けて体を大きくすると言うのが目標でした。途中でポジションが変わっちゃったので、早くチームに迷惑を掛けないようなプレーをしなきゃということを、WTBになってからは考えてやっていました。

桑野 僕は大学に入って始めてのシーズンで、初戦の中大戦は勇帆さんが出るはずだったんですけど…、3日前とかですか?

芦谷 前日やな。

桑野 前日に勇帆さんがケガして、急に(自分が)Aチームで出ることになって。そこからもうわからないことだらけでAチームに出て、迷惑もけっこう掛けました。最後の方はAチームで出られなくて、そこは悔しいなと思っています。あと途中から体重を増やすように意識し始めて、けっこう変わりましたよね?

芦谷 でかくなったな。

深津 うん。

桑野 体が大きくなったのでそこは良かったと思います。

――チーム発足当時の雰囲気はいかがでしたか

芦谷 『荒ぶる』を知らない代なので、2年連続負けて今季優勝しなければたぶんワセダは10年優勝できないと言われていて、そういう危機感から始まりました。

――お二人は復帰に向けてどういったリハビリに取り組みましたか

深津 僕は疲労骨折みたいな感じだったので、取り敢えず患部は動かさないようにして、患部以外をできるだけ強くして戻ろうと。

芦谷 僕は大学に入って初めてのケガで、手術もするわりと大きなケガだったので、最初は何でラストシーズンに限ってケガするんだろうなとショックでした。でもそんなこと考えても仕方ないので、いまチームのためにできることはなんだろうって考えて、まず体重を増やして大きくなろう、帰ってきたら頑張ろうって思って。いまも取り敢えず食って夏合宿の復帰に向けて頑張っています。

――桑野選手は同じポジションの選手ですが、芦谷選手から見ていかがでしたか

芦谷 試合とか見てたんですけど、全然ですね…。荒っぽいプレーをするなと。あまり偉そうなことは言えないですけど、けっこうアドバイスしました。

桑野 されました。

――具体的にはどういったことですか

桑野 全部です!ビデオ見ながら。

芦谷 そうですね、ビデオ見ながら。

――それは個人的にですか

桑野 そうですね。

芦谷 一緒にビデオ見ようみたいな。偉そうなことは言えないんですけど、偉そうにアドバイスしました。

桑野 やっぱり同じポジションの人から言われるとすごくわかりやすいし、コーチとか上の立場とかじゃなくて芦谷さんから言われると思うとけっこう入ってくるんです。

――中大戦の後にコメントの中で桑野選手は「目指しているのは芦谷先輩」とおっしゃっていましたね

深津 アハハハハ。

芦谷 こいつなんか、言ったじゃないですか!そうしたら後から、「ちょっと勇帆さん」とか言って、「ちゃんと尊敬する先輩は勇帆さんって言っときましたよ」って。

桑野 本当です!本当です!

深津 めっちゃうれしかったくせに。

芦谷 いや、うれしいんですけど!うれしいんですけど、こいつなんやねんとか思って。

桑野 本当に思ってます。

――春はどのようなことをチームとして重点的に練習されてきたのですか

深津 アタックのフォーメーションがあるんですけど、そこが形として最初できていなかったので、そこをチーム全体でフォーカスしてできるようにですね。

――あと、春は橋本さん(新、コンディショニングコーチ)も結構追い込んだとおっしゃっていました

深津 まあ、いじめられたね。

桑野 きつかったです。

――高校と比べていかがですか

桑野 普通に大学の方がきついです。予想以上に。

――フィットネスの成果は出ていると感じますか

深津 個人的に実感としてはあまりないのですが、監督が見ている目で「お前ら変わってる」と言っているので。持ち上げてるとかじゃなくて、たぶん指導者目線でそう見えるということは、変わってるんだと思います。

――慶大戦はいかがでしたか

深津 前半ですぐ代わったもんな。

桑野 はい、僕はダメダメすぎて、すぐ、ほんとにすぐ代わりましたね。前半の最初に。

深津 僕は前の日にここ(上井草)で80分試合していたので、リザーブ入るかな?って感じだったので、入ったか!と思っているくらいだったのですが…。小谷田(祐紀、文構3=東京・早実)がすぐにケガをしたので後半から出て。体の差はたしかにありましたね。そこで1対1で負けちゃっていたから、どんどんディフェンスが後手後手になってしまって相手の好きなようにラグビーさせたのが良くなかったです。

――芦谷選手もビデオなどでご覧になりましたか

芦谷 見ました。コンタクトで負けてるなと思いました。春は体づくりを重点的にやってきたのに、その面で成果が出てないなと思って。ただ、けっこうみんな落ち込んでたんですけど、僕はまあ大丈夫でしょと思ってました。

――皆さん落ち込んでいたんですか

芦谷 落ち込んでいたというか…。

深津 チーム落ちたよね。

芦谷 落ちましたね、一回。

――垣永主将はこの負けがあって、チームの意識が変わったとおっしゃっていました

深津 あの試合以来、たしかにディフェンスは良くなったよね。

芦谷 そうですね。

――委員から言われたことはありますか

桑野 ウエイトじゃないですか?

深津 ウエイトの日じゃない日でも個人的にウエイトをするようにしようっていうのは言われました。

――実際にその後練習をしていて意識の変化を感じましたか

深津 意識というか…、練習の雰囲気が良くなかったので、雰囲気を自分たちでつくらなければいけないっていう意識が着いたように感じます。

本人も驚きの異例すぎるコンバート

コンバートについて胸の内を明かす深津

――そして日大戦があって、高麗大戦で深津さんがWTBに転向しました。WTBにコンバートした経緯を教えてください

深津 完全に僕の知らないところで後藤監督が動いていました。いつも日曜日の試合が終わった後にコーチのミーティングがあって動かされるんですけど、日大戦あまり良くなかったのでどうなったかなと思ってメンバー表見に行ったんですね。8番のところになくて、上から探していたんですけど、あれってなって。あ、でもあったなと思って横見たら11で。あれ聞いてないんだけど、フランカーとしてはクビか?ってなったところを後藤さんに話してもらいました。僕NO・8単独とかでボール持って走ったりとかはしていたので、そういう体の強さを後藤さんには評価していただいていて。チーム全体として、外にボールを持ったとき、WTBとかがボールを持ったときに、ボールが相手ボールになっちゃうケースが多かったので、そういうところで僕の体の強さを生かしたいみたいな感じの話をされました。

――WTBの経験はありましたか

深津 WTBはないですね。高校1年の夏までFBをやっていたのですが、ボールあんまりパスできなくてそれもすぐクビになってNO・8に行きました。全然BKを知らないでFWに行っちゃって、ずっとFWをやっていたので全く無知ですね。

――WTBで一番難しいなと思ったのは何ですか

深津 ディフェンスですね。FWのディフェンスだったら、だいたい近場に突っ込んでくるFWに対してぶっささればいいだけなんですよ。ね?

芦谷 うん。

深津 だけど、WTBだと段差つけたりだとか、相手のボールの動きによって上がったりとか、逆方向行っても今度バッキングしなきゃいけなかったりとか、いろいろやることが増えちゃうので。いままで頭使ってなかった分つらかったですね。

――周りの反応はいかがでしたか

芦谷 僕はけっこういいなと思いました。

深津 え、びっくりでしょ絶対。

芦谷 びっくりはしたんですけど、深津はボール持ったら何かしてくれるという感じなので、けっこういいんじゃないかなと思いました。

桑野 気にしてましたよね。高麗大戦、(深津さんは)韓国に行ったのですが、僕ら二人は部屋にいて、深津さんどうやったかなみたいな話しました。

芦谷 はい。僕はいけると思いました。

――実際高麗大戦やってみていかがでしたか

深津 全然ダメでした。ディフェンスも全然良くなかったし、トライ取れるところでボール落としちゃったりして。こんなんでAチーム残れるかなと思っていたら、後藤さんが根気強くAチームで使ってくれて。すごく感謝しています。

――WTBは自分に合っていると思いますか

深津 合ってるという感覚はまだないです。いままで自分が一緒にプレーしてた人たちが、帝京大戦とか特にそうなんですけど、FW戦でバチバチタックル入って、ターンオーバーしたりしてよっしゃーってなってるのを外から見ていて。みんなバチバチしているから息上がってるんですよ。ハーハー言って、汗もすごくかいているし。遠くから見ているオレは何なんだろうなってたまに思いました。

――外は抜かれたらいけないという責任も大きいと思いますがいかがですか

深津 そこは本当に怖いです。自分の方にボールが回ってくると恐怖しかないです。

――フランカーとはだいぶ違いますか

深津 だいぶ違います。フランカーだったら、誰かしらバッキングがいるっていうのがあるんですけど、ウイングが抜かれちゃうと、FBもそんなに来れないので、1対1で必ず止めなきゃいけないっていう使命は大きいです。

「越えられないカベではない、あとは僕たち次第」(深津)

慣れないポジションで日々試行錯誤を続ける深津

――帝京大の印象はいかがでしたか

桑野 B戦では、いつも練習をAチームとやっているので、Aチームの方が全然強いと思ったし、そんなに差は…。強かったですけど、予想以上に強いというのはBチームとしてはそんなに。スクラムとかも押されましたけど、予想以上ではなかったと思います。

――自信は付きましたか

桑野 自信ついたと思います。

――深津選手はいかがでしたか

深津 僕はWTBで身体をあてるというシチュエーションはあまりなかったんですけど。おととし、昨年と見てきて、体の差は縮まっていると思うんですよ。まだ若干あって、でもその分をみんな気合いというか、相手が帝京大だからというのもあると思うのですが、メンタルの部分でカバーしているように思いました。タックルも1人外されてもすぐ2人目が入ったりしてて、昔までならすぐ引きずられていたのを食い止めていたような感じはありました。

――メンタルの成長もあるのでしょうか

深津 そこはたぶん大きいと思います。

――芦谷選手はいかがでしたか

芦谷 すごいなと、自分も熱くなりました。やりたくなりました。みんなタックルもすごくて、体張るなと。外から見ていても気持ち入ってるなというのは感じましたね。

――慶大戦が終わった時には、1カ月後にここまで戦えると思っていましたか

深津 慶大戦が終わったときはどうなるかなと思っていたんですけど、次の練習くらいから、「こんなんじゃ帝京大に100点くらいで負ける。だから自分たちはどうしなければいけないか」みたいなのを思ってやっていて。ここまで来れたことはうれしい意味で想定外です。

――ここは通用しなかったというところはありましたか

深津 後藤さんが「帝京大とか強い相手に対してずっと自分たちがボールを持って攻撃を続けられるということはないから、一回ボールを持った時に仕留めきるイメージを持て」ってずっと言っているんです。ワセダはワンショットって言ってるんですけど、そういった部分で取りきれなかったのがありますね。

――あと皆さんがおっしゃっていたのはペナルティーの部分でしたね

深津 あー。

桑野 B戦はけっこうペナルティーが多くて、その後の試合の反省でも規律と集中力というテーマが掲げられていたので、そういうところはこれからしっかり改善していかないと。やっぱり一回ペナルティーして相手にボールが渡ってしまうと中々帰ってこないので、改善点だと思います。

――越えられるカベだと思いましたか

深津 越えられないカベではないと思いました。あとは僕たち次第。

「もっと後藤さんにいじめてもらって強くなりたい」(桑野)

桑野は赤黒の定着を目指す

――夏合宿ではどこをのばしたいですか

桑野 ラグビー理解度の部分と、もっと後藤さんに指導というかいじめてもらって強くなっていきたい。

芦谷・深津 (笑)。

芦谷 これ記事読まれるよ。

深津 そこはぜひ書いてください。

桑野 「後藤さんに指導してもらいたい」とぜひ書いてください!

深津 僕はチームではなく個人的にちゃんとWTBとして働けるようにならなければいけないので、個人的にもっとWTBらしくなります。

芦谷 個人的には早く復帰して試合に出たいです。チームとしては、『荒ぶる』を取るために自分ができることは何かっていうことを考えてやりたいですね。

――復帰はいつ頃になりそうですか

芦谷 いつ頃というのはあまり言われていなくて、トレーナーもけっこうほったらかしなんです。いまは自分でメニューも考えてやっているのですが、自分では合宿の内に絶対復帰してやろうと思っています。

――桑野選手には怖いライバルが現れますね

桑野・深津 ライバル(笑)。

桑野 目標です。

――ロックはすでに今年Aチームで出場した選手が6人ほどいらっしゃいます。さらにポジション争いが激しくなりますね

芦谷 そうですね。

桑野 東星さん(黒木、スポ4=東福岡)も帰ってきますし。

芦谷 ロック、競争激しいですね。

――その中で赤黒を着るために必要なことは何だと思われますか

芦谷 自分は2年から5番のジャージーを着て試合に出ることが出来ているんですけど、出るからには他のロックよりも全て1番じゃなきゃいけないと思っています。赤黒着るからには絶対に優れてないといけないし、強くないといけないと思います。

桑野 僕は、勇帆さんも言ったように、全て強くないと、キックオフでもスクラムでもラインアウトでも全てが関わってくるので、「ロックが弱いとチームが弱い」と後藤さんも言っていましたが、やっぱりロックがチームで一番強くないといけないと思います。

――ファンに向けて一言お願いします

芦谷 応援いつもありがとうございます。今季は『荒ぶる』取るので、できれば試合会場に足を運んでいただけるとうれしいです。

深津 ポジションは変わりましたけど、深津健吾という選手ではあるので、自分の良さを前面に出してプレーしていくので、ぜひ会場に来ていただきたいと思います。

桑野 まだまだ足りない部分も多いので、そこを改善して伸ばしていって、試合にずっとAチームで出続けて、自分のプレーで流れを変えられるような選手になるので、応援よろしくお願いします。

――ありがとうございました!

(取材・編集 坂田謙一、北田ゆず、宮城由衣)

「もっと後藤さんにいじめてもらって強くなりたい」(桑野)

笑顔が絶えない3人

芦谷勇帆(あしや・ゆうほ)

1991年(平3)7月2日生まれのA型。190センチ、102キロ。京都・伏見工高出身。スポーツ科学部4年。ポジションはロック。寡黙として有名な芦谷選手ですが、今回の対談ではそれを覆す饒舌さを見せて下さいました。ケガから全快してのイチ早い復帰を、心待ちにしています!

桑野詠真(くわの・えいしん)

1994年(平6)10月11日生まれのAB型。192センチ、95キロ。福岡・筑紫高出身。スポーツ科学部1年。ポジションはロック。対談取材初体験の桑野選手でしたが、寮についてもラグビーについてもたくさん話して頂きました。「体を大きくすること、走り勝つこと」を目標に掲げ、1年生ながら早くもAチームで出場する桑野選手に今後も期待大です!

深津健吾(ふかつ・けんご)

1992年(平4)4月23日生まれのB型。175センチ、85キロ。東京・国学院久我山高出身。スポーツ科学部3年。ポジションはフランカー/WTB。将来の夢は「素敵なお父さん」と語るほど、とにかく子供が大好きな深津選手。コーチを務めるワセダクラブの子供たちには、『筋肉コーチ』という愛称で親しまれているそうです。試合中の声援にどう返していいか戸惑うそうですが、子供たちの声援を力に変えてきっとワセダを勝利に導きます。