チャリティーマッチで、現役部員とOBが共演

ラグビー男子

 
 東日本大震災復興支援を掲げ、ことしで4回目を迎えた早慶明三大学によるチャリティーマッチ。収益金の一部及び募金は、JRFUラグビーファミリー支援会を通じた被災地のラグビーファミリーへの支援基金となる。試合形式は、現役部員とOBを混合したチーム構成で1試合40分の総当たり戦。大会終了後には三大学ともにエール交換や部歌斉唱をするなど、普段の試合では見られない場面もあり会場を盛り上げた。また、全早大キャプテンを務めたロック吉上耕平(平9人卒=福岡・筑紫丘)は、今大会をもって現役を引退した。

 全早大の初戦の相手は全慶大だった。開始早々、全早大はチーム内の連携がかみ合わず、ペナルティーを連発。両チーム共に序盤はペースをつかめなかったが、その流れを全慶大に断ち切られた。13分に先制を許すと、そのまま全早大は自陣でのプレーを強いられる。途中、SH山岡篤樹(教3=東京・本郷)が突破を試みたが、得点には届かない。一方で突破力の勝る相手に2トライを追加され、差が広がっていく。意地を見せ、インゴールを割ったのはWTB土肥将也(平26年人卒=現三菱東京UFJ)。34分、スクラムからパスを回し、大外の土肥が相手選手をかわしながら左中間にトライ。しかし36分にダメ押しの得点を決められ、7-28でノーサイドを迎えた。

執念のトライを見せた土肥

 次の全明大戦も、相手に押される展開に。しかしWTB中靏隆彰(平25年スポ卒=現サントリー)が自陣深くから50メートル近くゲインするなど個人技が光る場面も見られる。FB門田成朗(法3=埼玉・早大本庄)も敵陣に踏み込むが、その後のパスや連携にミスが出てしまい、得点につなげることはできなかった。結果、3トライを献上しノートライのまま試合終了。0−19の完封負けとなった。

今後の活躍に期待が掛かる門田

 全早大は2敗と悔しい結果に終わった。出場した現役選手たちには収穫と課題が見つかったようだ。「一つ一つのスキルであったり、声掛け」(山岡)と、OBから吸収する部分は大いにあった。OB選手とプレーをしたことで、直接アドバイスを受けられたことは今大会ならではのことだろう。一方、課題は「コンタクトやペナルティーの部分」(プロップ千葉太一、教2=東京・早実)と振り返るように、修正点は明白となった。今回赤黒のジャージーを初めて身にまとった選手も多く、十分に伸びしろがある。課題を修正し、今シーズンにつなげていきたい。

(記事 高畑幸、写真 目黒広菜、和泉智也)

コメント

今駒憲二全早大監督(BKコーチ、昭63年教卒=神奈川・生田)

――試合を振り返っていかがですか

全慶大、全明大、関係者の皆様、ありがとうございました。試合は我々としては、残念な結果に終わりました。復興支援チャリティーを三校でやらせていただいていることは、意義深く、我々としても感謝しています。私事ですが、震災時にはちょうど仙台にいました。厳しい状況なのはよく分かります。復興に少しでも役立てればと思い、全力でやりました。吉上(耕平、平9人卒=現九州電力)の引退試合ということもあり、最後は残念な結果になってしまいました。戦う姿勢など、後輩にいろいろなものを伝えてくれたと思います。感謝しています。ありがとうございました。

ロック吉上耕平ゲームキャプテン(平9人卒=福岡・筑紫丘)

――試合を振り返っていかがですか

全慶大、全明大、関係者の皆様ありがとうございました。チャリティーマッチも4回目になります。十年、二十年後の子どもたちの目標となる姿になれたらうれしいです。後輩とOBが共に戦うこの大会は、姿勢や取り組みなど、互いに吸収できるすばらしい取り組みだと思います。今後も継続していけたらと思います。本日は本当にありがとうございました。

――改めて、早慶明のライバルの存在とはどんなものですか

私は、子供の頃から早慶戦、早明戦を見てきました。20年前の早明戦で私は初めて赤黒のジャージーを着ました。その20年後、赤黒のジャージーを着てラグビーができたことはすごく幸せなことです。慶大、明大のライバルとはお互いの強みを引き出せる関係だと思います。この三校はラグビー界の中でも一番良い関係だと思います。これからも三校が一緒になって、日本のラグビー界を引っ張っていけたらと思います。

――打倒・帝京大に向けてはどのように後輩と話しましたか

トップリーグの強豪、サントリー、パナソニックの強みは80分間ベースを継続できていることです。大学でそこができているのは帝京大です。早慶明三校が帝京大と対戦する時、(攻撃などのチャンスをつくる)いい時間はあると思いますが、その状態を80分継続できていないことに敗因があります。ベースをきちんとした上で、自分たちのラグビーを継続できるかがすごく大事です。帝京大は確かに強いです。しかし実際にトップリーグの試合などでは帝京大も弱みを見せています。そこを分析し、自分たちの強みを80分継続できたら、三校にも帝京大に勝てるチャンスはあると思います。

ロック芦谷勇帆(平26スポ卒=現キヤノン)

――きょうの試合を振り返っていかがですか

寄せ集めのチームだったので、コミュニケーションがうまく取れなかったのですが、楽しくできたのでよかったです。

――この試合にはどのような経緯で出場なさったのですか

出てくれという依頼が来て、自分自身もう一度赤黒を着て試合をしたいという気持ちがあったので、快諾しました。

――チャリティーマッチということでしたがどのような気持ちで臨みましたか

今回で4回目になるのですが、今後も続けていければいいなと思います。

――久しぶりに全慶大、全明大と体をぶつけてみての印象はいかがですか

現役のときと変わらないカラーが出ていました。全慶大は非常にディフェンスの圧力があり、全明大はFWが大きかったりなど、懐かしかったです。

――OBという立場から見て、きょうの全早大の現役部員はいかがでしたか

きょうのメンバーはすごく頑張ってくれていたので、秋のレギュラー争いに絡んでいけるように頑張ってほしいです。

――今季の早大に一言お願いします

とにかく『荒ぶる』取って欲しい、ということだけです。

WTB中靏隆彰(平25スポ卒=現サントリー)

――久しぶりの赤黒はいかがでしたか

チャリティーマッチということで、大好きなラグビーで被災地の支援になるので本当に良いことだと思いました。出場できて良かったです。

――どのような経緯で今回出場されたのですか

後藤監督(禎和、平2社卒=東京・日比谷)から試合に出られるかという要請をいただいたので、喜んで出場させていただきました。

――どのようなお気持ちでチャリティーマッチに臨まれましたか

まだ復興もしっかり進んでいないと思いますし、あの出来事を忘れないためにもラグビー界が一丸となって支援できるように、また少しでも良いプレーができるようにと思って試合に臨みました。

――全明大戦を振り返っていかがでしたか

全明大さんはとても体も大きくて強いので、しっかりエリアを取っていこうというゲームプランでした。ペナルティーが多く、自陣でプレーすることが多くなってしまったことが敗因だと感じています。

――OBとして、この試合で明らかになった現役の課題はありましたか

僕が現役の時には一緒にプレーすることができなかった門田(成朗、法3=埼玉・早大本庄)や山川(慶祐、社2=東京・早実)など、本当に良いものを持っていると思うので、今後の活躍に期待したいです。

――早大ラグビーファンの方々に一言お願いします

大学を卒業してもワセダのジャージーを着てプレーできることは本当に喜ばしいことなので、また今後出る機会があればしっかりと良いプレーができるように頑張りたいです。

――後輩に一言お願いします

毎年とても努力していると思いますし、帝京大に勝つという目標があるのでそれに向かって頑張ってほしいです。

プロップ千葉太一(教2=東京・早実)

――赤黒デビューとなりましたが、試合を振り返って感想をお願いします

初めてだったので、赤黒ジャージーを着たときは本当にうれしいという気持ちでいっぱいでした。

――チャリティー試合でしたが、どのような気持ちで臨まれましたか

父の実家が大船渡なので東北の現状を見てきましたが、まだ復興していないので、自分も少しでも力になれたらいいなと思いました。

――OBの方と一緒にプレーをしてみて、どのような印象を受けましたか

普段は同期や大学内の先輩だけなので、人数は少ないですけど同じフィールドでOBの方とプレーしたことで、プレー中にもご指導をいただけてプラスになったことが多かったと感じます。

――具体的にどのようなアドバイスをいただきましたか

スクラムの立ち位置だったり組み方だったり、ディフェンスの抜き方、アタックのスピードなどについて教えてもらいました。

――試合から見えた課題はありますか

コンタクトやペナルティーの部分ですね。チームで目指している『自律』や『結束力』、『集中力』を高めていかなければいけないなと改めて思いました。

――今シーズンの意気込みをお願いします

2年生ですが、赤黒を着て秩父宮でプレーをしたいという思いがあるので、ことしこそ必ず赤黒を着て『荒ぶる』を歌いたいと思います。

SH山岡篤樹(教3=東京・本郷)

――試合を振り返っていかがですか

全体的にフィットネスの部分が足りず、相手にくらってしまうことが多かったです。自分自身の反省としては、SHへのプレッシャーがすごくてそれに対応できなかったというところです。

――チャリティーマッチでしたがどういう気持ちで臨まれましたか

僕としては、普段の試合と変わらない気持ちで臨みました。赤黒を着られるチャンスで、強い相手と戦えるという気持ちでした。

――赤黒を実際に着てみていかがでしたか

そんなに緊張せず普段通りにやれたと思いますが、やはり相手のプレッシャーが強い中でいままでと同じプレーをしなくてはならないのに、それができなかったのが心残りですね。

――トップリーグの選手と共にプレーしてみて何か収穫はありましたか

一つ一つのスキルであったり、声掛けであったりが的確で上手いですし、それを吸収してチームに還元できればなと思っています。

――今後の課題は何ですか

僕はパスが課題で、パスを突き詰めていきたいというのと、SHとしてゲームコントロールの面でSOとうまくやっていけるようになりたいです。

――今シーズンの意気込みをお願いします

赤黒しか目指していないので、赤黒だけを見てやっていくのと、『荒ぶる』を歌う時に自分がピッチにでていることを目指してやっていきたいと思います。

FB門田成朗(法3=埼玉・早大本庄)

――OBの方々と同じピッチに立って、感想はいかがでしたか

まずはケガしなかったこと、赤黒を着られて秩父宮で出られたことはすごくうれしかったですね。

――全明大は、現役の主力級も出場していました。試合をしてみていかがでしたか

ボールへの寄りや、タックルされた後の2人目もすごく早くて、ターンオーバーを何回もされたんですけど、そこはさすが全明大だなと思いました。

――チャリティーという意味合いもある試合でした。全早大の代表として出場し、感じたことはありますか

チャリティーはすごくいいことだと思うので、チャリティーのイベントにはもっと積極的に参加していきたいと思います。早大として、こういうのをどんどんやっていけたらと思います。

――ご自身のプレーを振り返ってください

自分では、勝負にいきすぎたなと思っています。でもそれは自分の持ち味でもあるので、スタイルは変えずに、行くところと行かないところを見極めて、パスもキックもできるようになりたいですね。

――BK陣のレギュラー争いは激しいですが、今季にかける意気込みをお願いします

自分の持ち味であるステップや意外性など、観客をわくわくさせるようなプレーでAチームに出たいと思います。