大学選手権決勝・展望

ラグビー男子

 ついに覇権奪還のチャンスを得た。相手はもちろん、現在全国大学選手権(大学選手権)4連覇中の王者・帝京大である。早大が5年ぶりに『荒ぶる』をつかむのか。帝京大が空前の5連覇を果たすのか。勝負の行方はいかに――。

 早大の強みとなるのは、セットプレー。全国大学対抗戦(対抗戦)で帝京大と対戦した時には、スクラムで優位に立つ場面が何度も見られた。昨年同様に帝京大がこの3か月で修正してくることは十分に考えられるため油断は禁物だが、いずれにしても勝負のカギを握ることは間違いない。「自分たちの方が強いFWだということを証明したい」(フランカー金正奎副将、教4=大阪・常翔啓光学園)。セットプレーを起点にしたテンポの早い連続攻撃を仕掛け、トライを狙う。また、後半の戦い方も重要になってくるだろう。これまでの帝京大との接戦を振り返ると、試合序盤は互角かそれ以上の展開をしても、集中力の切れた一瞬の隙をつかれ失点し勝利できなかったものが多い。高い集中力をいかに持続できるかが重要なポイントとなってくるだろう。そして今回、FB藤田慶和(スポ2=東福岡)の存在に、大きな期待が集まる。帝京大戦は今回が初出場。「最高の準備をして最高の状態で決勝戦を迎えたい」(藤田)と、気合は十分だ。

帝京大戦初出場の藤田のプレーに注目が集まる

 対する帝京大は、今季もここまで頭一つ抜けた強さを見せつけている。『打倒トップリーグ4強』を新たな目標に掲げた今季は、シーズンを通して学生相手に全勝。対抗戦では3大会連続の優勝を決め、大学選手権セカンドステージも楽々と突破した。昨季以上にチーム力を上げてきている帝京大に死角は見当たらないが、あえて不安を挙げるとすれば敗戦を味わっていないということだろいうか。昨年は対抗戦で筑波大に敗れ、その悔しさをバネに大学選手権ではあらゆる局面で格段に強さを増してきた。しかし準決勝でその心配もなくなった。セカンドステージで厳しい戦いを勝ち抜き成長を遂げた慶大の気合のこもったタックルに、帝京大は予想以上の苦戦を強いられたのである。「願わくば厳しいゲームができればと思っていた。少しつまずきそうなゲームを体験したことで、次に向けて最高の準備ができる」(岩出雅之監督)。厳しい展開の中で気持ちをコントロールし続け勝利を手にした帝京大は、その中で新たな収穫を得て、決勝につなげてくるだろう。またケガでここ4試合欠場が続いていたNO・8李聖彰がスタメンに復帰。準決勝からさらに完成度の高いチームとなることは間違いない。

「全員の思いを背負ってグラウンドで出し切るような試合をしたい」と意気込むCTB中村亮土主将

 互いに準決勝では厳しい戦いを勝ち抜き、万全の準備を整えた両校。対戦成績としては、2010年の大学選手権決勝での敗戦に始まり、早大は帝京大に8連敗中。今季も3度の対戦に挑んだが、接戦こそ演じたもののいまだに勝利を手にすることはできずにいる。だがそんなことは問題ではない。「とうとう舞台が整ってあとは勝つだけなので、悔いが残らないように頑張りたい」(プロップ垣永真之介主将、スポ4=東福岡)。最後に勝つものが、今季の大学王者である。

(記事 田中絢、写真 森健悟、大口穂菜美)

  

早大メンバー
背番号 名前 学部学年 出身校
大瀧 祐司 文4 神奈川・横浜緑ケ丘
須藤 拓輝 スポ4 東京・国学院久我山
◎垣永 真之介 スポ4 東福岡
黒木 東星 スポ4 東福岡
芦谷 勇帆 スポ4 京都・伏見工
金 正奎 教4 大阪・常翔啓光学園
布巻 峻介 スポ3 東福岡
佐藤 穣司 スポ2 山梨・日川
岡田 一平 スポ2 大阪・常翔学園
10 小倉 順平 スポ3 神奈川・桐蔭学園
11 深津 健吾 スポ3 東京・国学院久我山
12 坪郷 勇輝 商4 東京・早実
13 飯野 恭史 商3 東京・早実
14 荻野 岳志 先理3 神奈川・柏陽
15 藤田 慶和 スポ2 東福岡
リザーブ
16 光川 広之 スポ3 神奈川・公文国際
17 清水 新也 スポ3 宮城・仙台育英
18 佐藤 勇人 スポ3 秋田中央
19 大峯 功三 スポ3 福岡・東筑
20 植田 耕平 スポ4 東京・本郷
21 辰野 新之介 文構4 神奈川・桐蔭学園
22 水野 健人 人4 大阪・東海大仰星
23 滝沢 祐樹 基理2 福島
※◎は主将、監督は後藤禎和(平2社卒=東京・日比谷)