漆黒のジャージーを身にまとい、名だたる強豪国に勝利し続けるチームがある。通称『オールブラックス』、ニュージーランド代表だ。前回のワールドカップの覇者であり、IRBのワールドランキングで約4年間トップの座に君臨している。日本代表は、その最強軍団を26年ぶりに日本へ招き、テストマッチ(国同士の真剣勝負)を行った。控えに入っていたWTB藤田慶和(スポ2=東福岡)は後半途中から出場。日本は試合に敗れたが、藤田は勢いあるプレーで停滞していたチームに活力を与えた。
ニュージーランド伝統の『ハカ』は会場を大いに盛り上げた
序盤から日本はニュージーランドに押し込まれ、自陣でのプレーを余儀なくされる。自らのミスがきっかけで先制を許したが、前半13分に相手ペナルティーからショットを選択。キッカーのFB五郎丸歩(平20スポ卒=現ヤマハ発動機)はきっちりとPGを成功させると、さらにもう1本を決め、1点差に追い上げる。しかしここからニュージーランドに力を発揮され、6-28で折り返した。
後半、点差を広げられる中、何とか流れを呼び込みたい日本。中盤を迎えた17分、会場に駆けつけた満員の観客の期待を背に、ついに藤田がピッチに投入された。するとその直後、五郎丸のハイパントキックがこぼれ落ちると、それをWTB福岡堅樹(筑波大)がキャッチ。藤田は懸命にフォローへと走る。つながればトライのこの場面、福岡が放ったパスは惜しくも藤田の手に収まらず、相手ボールに。藤田はこのファーストプレーでインパクトを残すと、その後も攻守に奔走した。
献身的に動き回った藤田
日本は6-54で敗れたが、この試合はラグビーファンの記憶に残る歴史的なゲームであったことは間違いない。藤田にとっても、世界との距離感を再確認できたまたとない機会になったはずだ。この貴重な経験を生かし、個人、さらには早大の進化へとつなげていきたい。
(記事 御船祥平、写真 戸澤美穂)