関東大学対抗戦 11月10日 対筑波大 熊谷ラグビー場
帝京大を48ー17で下し、歓喜に沸いた日から一週間。熊谷ラグビー場で関東大学対抗戦(対抗戦)第5節、筑波大との一戦が行われた。試合は開始早々から動く。早大はボールを大きく動かすアタックでいきなり筑波大を押し込み、ノーホイッスルでの先制に成功。しかし、直後のプレーで筑波大に失点を許してしまう。シーソーゲームになるかと思われた今試合だったが、早大の鉄壁は健在。筑波大の侵略を許さず、ペナルティーゴールなどで得点を重ねていく。25ー7で前半を終えると、続く後半も早大ペース。ポゼッションで優位に立たれる時間もあったが、強烈なタックルで押し戻した。筑波大のアタックを自由にさせず、44ー7と37点差で対抗戦の連勝を5に伸ばした。
試合が動いたのはファーストプレーからだった。筑波大の脱出キックをキャッチしたSO服部亮太(スポ1=佐賀工)からボールを受け取ったFB矢崎由高(スポ2=神奈川・桐蔭学園)が自陣からカウンターアタックを仕掛けた。敵陣10メートル付近でラックを形成すると、SH細矢聖樹(スポ4=国学院栃木)が素早いテンポでボールを捌く。PR杉本安伊朗(スポ2=東京・国学院久我山)がラインブレイクし、10メートル近くゲインすると早大アタックはさらに加速した。FL城央祐(スポ1=神奈川・桐蔭学園)からFL田中勇成(教3=東京・早実)にショートパスを繋ぎ、一気にゴール前に侵入。筑波大ディフェンスが整う前にライン際までボールを回し、WTB池本晴人(社2=東京・早実)がインゴール左隅にダイブした。キックオフから90秒のことだった。強烈な先制パンチに成功した早大だったが続く4分、筑波大のラインアウトからのサインプレーで守備のミスマッチを正確に突かれ、7-7と同点に追いつかれた。今節を「難しい試合」と大田尾竜彦監督(平 16 人卒=佐賀工)も位置付けていたように、一筋縄ではいかない筑波大戦を象徴するような立ち上がりだった。12分、敵陣22メートルライン付近マイボールラインアウトからのアタックでWTB田中健想(社1=神奈川・桐蔭学園)がハイタックルのアドバンテージを得ると、HO佐藤健次主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)がアグレッシブにラック際に仕掛けて前進。早いテンポでボールを持ち出した細矢からオフロードパスを受け取ったNO・8鈴木風詩(社4=国学院栃木)がグラウンディングした。続く22分、相手ボールスクラムでコラプシングを獲得した早大はショットを選択。CTB野中健吾(スポ3=東海大大阪仰星)の正確なキックで3点を追加し、スコアは17ー7とリードを広げた。さらに28分にもペナルティーゴールで3点を加えた。31分、服部と筑波大SO楢本幹志朗の見ごたえのある蹴り合いから両チームのコンタクトは熱を帯びる。筑波大のアタックをハーフライン付近で止め続けた早大ディフェンス。26フェーズの強烈な肉弾戦は池本と野中がタッチライン際でのラックを越えきり、早大に軍配が上がる。前半終了間際のラストプレーではCTB福島秀法(スポ3=福岡・修猷館)がスクラムからの攻撃でトライに成功し、25ー7で前半の40分を終えた。
続く後半も序盤から激しい身体のぶつけ合いが繰り広げられた。ひと際存在感を放ったのは田中勇。高いワークレートで何度もタックルに入り、早大ディフェンスの要となった。4分、矢崎が自陣から積極的にアタックを仕掛け守備を引き裂くと、持ち前の快足とステップで一気にゴール前まで侵入。早いテンポでアタックを継続し、筑波大のオフサイドを誘発した。反則の位置からタッチに蹴り出すと思われたが服部が意表を突き、右サイドに待ち受けていた田中健にピンポイントでキックパス。難なくグラウンディングに成功し、早大は後半も先制した。続く10分、早大は筑波大ラインアウトを2連続でターンオーバーし、勢いを強める。ハイパントキックからペナルティーを得た早大は敵陣ゴール前でラインアウトモールを形成し、最後は佐藤が今季対抗戦初トライ。37ー7とさらにリードを広げた。22分、早大はゲートオフサイドの反則から自陣ゴール前まで押し込まれるが、またしても鉄壁のディフェンスでインゴールを割らせない。早い出足でプレッシャーをかけつつも、反則を犯さない規律の良さで筑波大アタックを自由にさせなかった。福島のタックルでターンオーバーに成功するとその勢いのまま敵陣に入り込み、野中がインゴールに飛び込んだ。自らゴールも決め、スコアは44ー7に。その後はセットプレーの時間が長く、両チーム得点を作り出せないままノーサイドとなった。
運動量の多さでディフェンスを牽引した田中勇は「ゼロに抑えたかったが、自分たちのやりたいディフェンスはできた」と今試合を振り返った。鋭い出足と低いタックルで前進を許さないことに加え、全員が立ち上がって組織ディフェンスを作り出し、数的優位を与えることがなかった早大ディフェンス。筑波大の強力なBK陣のアタックも見事に封じ切り、危なげない勝利を決めた。次戦はついに早慶戦。「その年の成績に関係なく厳しい試合になる」(大田尾監督)ことが予想される伝統の一戦を前に、さらに勢いを加速した。このまま突き進む先は対抗戦全勝優勝、そして『荒ぶる』だ。もう早大は誰にも止められない。
(記事 村上結太、写真 権藤彩乃)
コメント
※一部記者会見抜粋
大田尾竜彦監督(平 16 人卒=佐賀工)
ーー今日の試合の振り返りをお願いします
対抗戦のスケジュールが決まってから筑波大戦っていうのが難しい試合になることは予想していました。やはり、タフに体を当ててくるということはさすが筑波さんだなと思いながら序盤は過ごしていました。徐々に自分たちのペースをつかみながら、特にディフェンスでペースをつかんでいたことは非常に大きかったと思いますし、一週間の中でリーダー陣がしっかりベクトルを自分たちに向けて根本を作り上げてきたことも非常に大きいというふうに思います。次節まで時間は少し空くので準備をしっかりしてコンディションを整えて次に臨みたいなと思います。
ーー次節の早慶戦に向けて意気込みをお願いします
早慶戦では今年の自分たちの戦い方っていうのを示す必要があると思っています。やはり圧力をかけてくるでしょうから、そこに対して逃げるのではなく、厳しいプレーでやりきることが絶対だと思っています。早慶戦はその年の成績に関係なく厳しい試合になるので、自分たちにフォーカスあててもう一つ成長する必要があります。そういう意味では我々にフォーカスして厳しくいくプレーが大事かなと思います。
HO佐藤健次主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)
ーー今日の試合の振り返りをお願いします
まず今日の試合は夏合宿に帝京大に勝って、その一週間後の天理大に負けるという反省があったので一週間の準備というのを入念にやっていました。筑波大はバックスリーに速いランナーがいたり、10番のゲームメイクがうまかったり、すごい特徴のあるチームだったので自分たちもそれに合わせていい準備ができたのかなと思っています。しかし、帝京大のときには少なかったボールロストが今試合は多かったなという印象があります。毎回同じクオリティを出せなかったら、全国大学選手権で毎試合毎試合パーフェクトな試合をしなければいけない中で勝てる試合も勝てなくなってしまうので、毎回の練習もっともっと突き詰めてやっていきたいなと思います。
ーー先ほど夏合宿に天理大に負けた反省というのがありましたが、具体的にどんな反省点が挙げられますか
天理大戦も帝京大に勝って浮かれていたとかいうのは全くなくて、どこか準備する段階で自分たちにベクトルが向かずにいろんなところにベクトルが向いてしまって準備がうまくいかなかったところもあると思っています。また、帝京大でうまくいったことをやろうとした結果、コンタクトとかじゃなくて裏目を多く使ったりして壁から逃げてしまったっていう反省点がありました。そこで今回は一週間通して、自分たちにフォーカスして今日は『ディティール』っていうところがゲームのテーマになっていたので、帝京大戦でできなかった細かいところを詰めて試合しようというところはありました。自分たちにフォーカスした結果、今日のロースコアなゲームができたと思うのでこれからも自分たちにフォーカスしていきたいなと思います。
ーー先週の勝ちから引き締まったところやいい影響はありましたか
一つ一つのプレーに自信はついてきたんですけど、自信にしすぎることは良くないと思っています。僕らはチャンピオンになったわけでもないので、帝京大の勝ちを引きずらずに一戦一戦切り替えられたのがよかったのかなと思います。なのでまた慶応戦に向けて2週間準備していきたいです。
ーー次節の早慶戦に向けて意気込みをお願いします
今年は(慶大は)、特にブレイクダウンに日本で一番力を入れていると思うのでそういった相手にブレイクダウン周りで圧倒できたら自分たちのペースになるのかなと思います。また、フロントローも全員4年生でセットプレーのところは自信を持っているチームだと思います。僕たちも僕、亀山、杉本を含め、今年はラインアウト、スクラムというセットプレーで自信もってやっているので、ブレイクダウンやセットプレーでプレッシャーをかけてくる相手に対して、逆にそこでプレッシャーをかけれるようなプレーをしたいと思います。また、先ほど監督も言っていたんですけど、その年の勝敗に関係なく難しい試合になると思うので自分たちにフォーカスあててやっていきたいと思います。
PR亀山昇太郎(スポ4=茨城・茗溪学園)
ーー今日の試合の振り返りをお願いします
今日の試合は夏合宿での天理大戦の経験っていうのを忘れちゃいけないということに注目していました。今回のような試合、普段自分たちが準備してきたところどれだけ出せるかっていうことに囚われすぎずに自分たちの立ち返る場所、体をしっかり当てる、ディフェンスで前に出るっていうのを意識してプレーしました。
ーースクラムの手ごたえはいかがでしたか
筑波大さんの特殊、というか癖の強い組み方っていうのに対して自分たちの姿勢を崩さずに自分たちのスクラムを組もうとした部分で相手に流されてしまったところがあったのでそこは修正していきたいと思います。
ーー次節の早慶戦に向けて意気込みをお願いします
慶大戦は毎年そうなんですけど、プライドのぶつかりあいなので絶対負けたくないです。早稲田生として自分は慶大に負けたくないという自覚はあるので気持ちの面で全員が気迫をもってプレーできればいいなと思っています。
FL田中勇成(教3=東京・早実)
ーー今日の個人としてのコンセプトを教えてください
仕事量の部分を意識しました。
ーー自身のタックルなどコンタクトの場面での成果、課題はいかがですか
タックル入る前にいい状態で相手に間合いを詰めることができたので自分のタックルができたと思います。
ーー失点は前半最初の1トライのみに抑えましたが、チームのディフェンスを振り返っていかがですか
ゼロに抑えたかったですが、自分たちのやりたいDFはできました。まだまだ改善する部分があるのでそこの細かいところを突き詰めてやっていきます。
ーー今後の意気込みをお願いします
これからも自分たちにフォーカスして一戦一戦成長していきたいと思います。
CTB福島秀法(スポ3=福岡・修猷館)
ーー今日の個人としてのコンセプトを教えてください
ゲインラインを超えるということです。
ーータックルやボールキャリーなどコンタクトの場面で前に出る回数が多かったですが、今日の自身のパフォーマンスはいかがですか
ボールタッチは多かったですが、冷静に周りを見れてなかった事が反省点です。また、もっとゲイン出来るプレーが多かったので次の試合修正します。
ーーチーム全体のディフェンスを振り返っていかがですか
ディフェンスで、何度も攻め込まれるシーンがあったのですが守りきれた事は良かったです。
ーー今後の意気込みをお願いします
さらに激しいコンタクトで、ゲインラインを突破します。
WTB池本晴人(社2=東京・早実)
ーー今日の個人としてのコンセプトを教えてください
常に強いプレーを選択して、アタックでもディフェンスでも前に出ることを意識しました。
ーー自身のボールキャリーでの出来栄えはいかがですか
ボールキャリーは簡単に捕まってしまった場面が何度かあったので、修正したいと思います。
ーーチーム全体のアタックをふりかえっていかがですか
・ボール継続していく中でミスがあったり、敵陣に入ってトライを取り切れない部分があったと思います。次回からは試合中に修正できるようにしたいと思います。
ーー今後の意気込みをお願いします
・自分にできることを泥臭くやっていきたいです。
得点表