昨秋の関東大学対抗戦(対抗戦)で5位に沈んだ明大にとって、巻き返しを図る勝負の戦いが始まった。対抗戦の初陣は筑波大が相手。昨秋10-50と大敗した因縁の難敵だ。「借りを返す」(プロップ勝木来幸主将)と意気込んだフィフティーンは試合開始から猛攻を仕掛け3トライを連取する。後半に一時は追い上げられたものの、最後には突き放して41-21。大事な初戦を快勝で飾った。
試合開始のキックオフ。SO田村煕の右足から放たれたボールは相手の落球を誘い、紫紺の下に収まった。ここから明大の猛攻が始まる。FW・BK一体となって前進を繰り返すと最後は田村がインゴールへ。わずか2分足らずで先制に成功した。攻撃の手が緩められることはない。前半8分、相手ボールのラインアウトを奪い、一気に外に展開してCTB尾又寛汰がトライ。その10分後には鮮やかなサインプレーでゴールラインに迫り、NO・8松橋周平が仕留めた。田村のゴールキックも全て成功。これで明大は21-0と一気に差を広げる。しかしここからは足踏み。26分には反則を機にあっさりとディフェンスを破られトライを許してしまう。前半終盤の10分間近くはスクラムトライを狙い、相手ペナルティーに際し繰り返しスクラムを選択したが、「いけそうでいけなかった」(勝木)と相手の一時退場を誘発しながらも無得点。結局21-7で前半を終えた。
田村はこの試合21得点と躍動した
開始当初の勢いを取り戻したい後半。4分に田村のPGで最初の得点を挙げた。しかしその後はしばらく筑波大の反撃を受けることに。相手の日本代表WTB福岡堅樹に走り抜けられ失点すると、続けざまにトライを献上。21-24と3点差に迫られた。すると焦ったか、明大は絶好の位置でPGではなくラインアウトを選択。そこでミスをしてしまう。しかし主導権を再び明大に戻したのは前半にもこだわったスクラムだった。「明大の看板」(勝木)と自負する得意プレーを約6分間続け、最終的に途中出場のフランカー桶谷宗汰がインゴールへ。待望の追加点を挙げた。その後36分に田村のPGで加点。そしてラストプレーを勝木主将のトライで締めくくった明大は最終的に41-21でノーサイドを迎える。因縁の強敵をほぼダブルスコアで制した。
猛然とインゴールへ迫る松橋
不用意な反則やプレーの選択ミスが目立ったものの、それでも大勝したのはこれまでに培ってきた地力の強さの表れ。精度を上げれば、さらに手ごわさを増すだろう。そうなれば帝京大を倒し、「評判を覆して明大の時代にする」(勝木)と目標に掲げる日本一も夢ではない。しかし勝木主将はこうも言った。「帝京大を倒す前に、目の前の一つ一つの試合を大切にする」。まだ開幕戦の1試合を終えただけ。明大の逆襲は始まったばかりだ。
(記事 鈴木泰介、写真 和泉智也、近藤廉一郎)
関東大学対抗戦 | ||||
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明大 | スコア | 筑波大 | ||
前半 | 後半 | 得点 | 前半 | 後半 |
3 | 2 | T | 1 | 2 |
3 | 2 | G | 1 | 2 |
0 | 2 | P | 0 | 0 |
0 | 0 | D | 0 | 0 |
21 | 20 | 計 | 7 | 14 |
41 | 合計 | 21 | ||
【得点】▽トライ 田村、尾又、松橋、桶谷、勝木 ▽ゴール 田村(5G・2PG) | ||||
※得点者は明大のみ記載 |
コメント
丹羽政彦監督
――試合の振り返りをお願いします
結果としてきょうは『勝つ』、それだけを目指しました。基本的に相手の状況も含めてセットプレーでプレッシャーをかけられました。入りは非常にうまくボールをつないで先制点も入り、いいスタートが切れたのですが、後半一瞬流れが行くと、筑波大の力もあってスコアが少し詰まりました。後半最後の20分は自分たちの方が走れると意識していたので、FW・BKみんなが頑張ってくれていい結果になったと思います。
――良かった点と課題は
相手の主力がいなかったのでもう少し失点を抑えたかったということがあります。どうしてもある程度エリアを取っていかなければならない場面がありましたが、そこでハイパントキックを上げる位置が悪くチェイスも遅かったです。相手の(WTB)福岡(堅樹)や(FB)山下(一主将)が走るのは分かっていながらラインブレイクされてしまったことは次への課題です。相手も明大対策をしてくると思うので修正していきたいと思います。あとFWは前半のゴール前でスクラムを繰り返しましたが、取り切って相手にダメージを与えたかったなというところもありますし、PGを狙うとかタッチキックを蹴るとかそういった判断のところでもう少し学生とヒアリングをして、どういう風な形で明大を強くしていくかというところを詰めていきたいと思います。良かった点はFWのセットプレーができていたという点が重要だと思います。BKは、相手が早いもののDFが強くないということは意識していたので外にボールを動かして継続していくことが良かったと思います。
プロップ勝木来幸主将
――試合の振り返りをお願いします
明大としては(筑波大は)昨年大敗した相手で、春に勝ちはしたのですが借りは返せなかったのできょう勝ってしっかりと借りを返そうと話しました。後半は最初流れが相手に傾きかけたのですが、しっかりそこでチームをまとめて、このままズルズルといかないように、出られない部員のためにもこの試合をしている以上、絶対に負けられないという話をしてもう一回流れを戻すことができたことが、次につながるすごくいい経験になったと思います。
――スクラムの組み直しが多かった原因は
スクラムを組むときに自分たちが優勢だと思い、相手が反則をしてきたので、相手が嫌がることをしようということでこだわりました。
――前半最後の方のスクラムで取り切れなかったことについては
FWのプライドがあって、スクラムは明大の看板なので前面に押し出そうとしたのですが、何度も組み合っていけそうでいけませんでした。強い帝京大が相手となると取れるところで取れるというのがカギとなるので良い経験になったと思います。ハーフタイムでは悲観するほどではなく、次はモールを試してみようとかいろいろな策を話し合いました。
――帝京大への意識は強いですか
帝京大が優勝候補と言われているのですが、その評判を覆して明大の時代にしていくという話をしているので必ず実現したいです。ですが帝京大を倒す前に、目の前の一つ一つの試合を大切にして最終的には全国大学選手権優勝のために頑張っています。