王者の前に悔しい大敗

　関東大学対抗戦（対抗戦）ここまで３連勝中の慶大は、同じく３連勝中の王者・帝京大と対戦。夏季オープン戦では０－８７と大敗を喫した相手だが、『大学日本一～打倒帝京～』を掲げる慶大は、この一戦に強い思いを持って挑んだ。しかし、ノーサイドの笛が鳴ったときのスコアは１０－８９。要所で持ち味を出したシーンがあったとはいえ帝京大に圧倒され、紛れもない完敗だった。

　前半は３０分まで互角の戦いを演じた。出足の鋭いディフェンスを見せ、帝京大のミスを誘発。ＳＯ矢川智基主将とＣＴＢ青井郁也のキックを中心に確実にエリアを取っていく。ゴール前ラインアウトからモールを組まれたシーンでも、見事ターンオーバーを決め、簡単にはインゴールを明け渡さない。しかし、試合の流れが一気に変わったのは０－１４で迎えた３０分のことだった。チームとして同じ反則の繰り返しでフランカー鈴木達哉が一時退場を宣告されてしまう。この後ラインアウトモールからの失点を皮切りに、カウンターなどアンストラクチャーの場面から連続失点。１０分間で２６点を奪われ、０－４０で折り返すこととなった。

キックを中心にゲームを組み立てた矢川主将

　後半も７分にショートサイドを抜かれ点差を広げられた慶大だが、１２分に待望の初得点が生まれる。相手の反則からゴール前ラインアウトを得るとモールを形成。最後はフッカー佐藤耀が抜け出し５点を返す。１トライ奪われた後の２０分には密集からのこぼれ球をうまくつなぎ、途中出場のＷＴＢ佐野航太がインゴールへ飛び込んだ。だが、後半互角の戦いができたのはここまで。フィジカルで勝る帝京大のアタックがボディーブローのように効いていたのは明白だった。足が止まる選手がいると、ＳＯ近辺を中心に容赦なく帝京大のスピードあるランナーに抜き去られてしまう。ボールを持っても接点への寄りが遅く、瞬く間にターンオーバーを許してしまった。ラストワンプレーでもトライを許して、最終結果は１０－８９。王者の力をまたも見せつけられた。

帝京大の強固なカベに阻まれた

　決して慶大が無策だったわけではない。序盤はＦＷサイドで１トライ許したものの、ディフェンスで粘りを見せた。しかし、明らかになった帝京大との集中力の差。一瞬気を抜いたところを帝京大フィフティーンは見逃さず突いてきた。体格差、経験値の差など致し方ない部分もあるが、絶対王者を倒すためには８０分間集中力を切らさず、足を動かし続けることが求められるだろう。とはいえ、対抗戦はこれからも続く。次戦の相手は慶大と同じく伝統校・明大。きょうの試合の入りの２０分のようなプレーを継続できれば、勝利が見えてくるはずだ。

（記事　菅原拓人、写真　三佐川唯、榎本透子）