【連載】早慶レガッタ直前特集『ONE』第二エイト:牟田昇平副将×岡本真弘

漕艇

 完全優勝へむけて早慶レガッタでは先陣を切る第二エイト。クルーの半数は大学から競技を始めた選手だ。そんな日々成長しているクルーを率いる、牟田昇平副将(商4=兵庫・三田学園)と岡本真弘(商4=東京・早大学院)の4年生二人に、第二エイトについて詳しく伺っていく。

※この取材は3月27日にオンラインで行われたものです。

2021年につながる昨シーズンだった

副将を務める牟田

――対談を始めるにあたり、お互いのことを簡単に紹介していただけますか

岡本 牟田は副主将として部を統括してくれていて、競技中も全体を俯瞰しクルーメイクに長けており、僕も彼に助けられています。私生活では学部学年も同じなのでずっと一緒にいます。仲良しです!にこにこ明るく人懐っこいという印象です(笑)。

牟田 一言で言うと、めっちゃイイ奴です(笑)。彼(岡本)の言う通り、僕はいつもニコニコしているので、全体をピシッと?咤激励したりすることは、岡本が結構やってくれています。自分にできないことをやってくれるので頼りにしています。学校も練習も一緒にしているので、部活の中では一番距離が近い存在だと思っています。

――お二人の仲のよさが伝わってきます!つづいて、昨シーズンについて簡単に振り返っていただけますか

牟田 昨年のシーズンは、シーズン一ヶ月前に腰痛が発生し、病院で検査したところ腰椎分離症で腰の骨が折れていたことがわかり、大変なシーズンでした。結果はあまり納得のいくものではなかったのですが、チーム全体としては過去では類を見ないほど多くのクルーが決勝に進出していました。副将の立場からだと2021年に繋がるレース結果で、今年が楽しみだなという感じです。

 

岡本 昨年はインカレしか試合がなかったので、一試合に集中するという感じでした。僕自身では2年生の新人戦で決勝に進出したことはありますが、全国大会での決勝進出は経験がなかったので、自分自身にとってもクルーメンバーの三浦(武蔵、商3=山梨・吉田)にとっても飛躍の一年になりました。牟田が言ってくれた通り、例年と比べ多くの種目が決勝まで進出し、早稲田大学ボート部としても成長期にあると思っています。その意味でも今シーズンに繋がるいいシーズンだったと感じています。

――新体制となって5ヶ月ほどが経ちました。副将という立場からは、今のチームの雰囲気はどのように見ていますか

牟田 学年の垣根を越えて団結力が高まっていると感じています。どちらかというと、僕たち最上級生よりも下級生のほうが実力ある状況なので、下からの突き上げという点でチームの雰囲気もかなりいいと思います。下級生の力がある分、僕たちがしっかりしていなければならないのですが、雰囲気がよく練習の質も上がっているので、かなりいいです。

――岡本さんからみてチームの雰囲気はどうでしょうか

岡本 学年間を越えて仲がいい、ボートに対しては真剣ですが競技以外のことで、僕の1年時よりも距離が縮まっているのは感じています。総じていい雰囲気で寮生活を送れていると思います。僕が下級生の頃は関わり自体があまりなかったのですが、今は男女やポジションの壁を越えて、コミュニケーションが取れているのもいい点だと思います。

 

バウペアで全体を支える!

岡本は2番での出場予定だ

――漕艇競技についても伺っていこうと思います。第二エイトでのご自身のポジションについて、求められる役割など教えていただけますか。まずは2番の岡本さんからお願いします

岡本 2番は、牟田のポジションのバウと一緒で「バウペア」と呼ばれていて、一番後ろで船を支えるポジションになります。後ろから船全体の動きを見て指示を飛ばすことや、漕ぐという面においても、真っ直ぐ進むためにバウペアが合っていることはすごく重要です。全体を支え統括する立場になります。2番はバウペアの左側を担っています。

――ペアで大事だということですが、B(バウ)の牟田さんはどのような役割がありますか

牟田岡本と一緒で、船を全体的に俯瞰するポジションで、一番船の動きを感じられる場所になります。その船の動きを感じながら全体がどういう状況なのかを把握し、各々にオールの高さなどを指示して、どんどん船をよくしていくというポジションになっています。

――また今年は特に新歓活動に力を入れていると伺いました。新入生にボートの魅力を伝えるとしたら、どのようなことを伝えますか

岡本 水上15センチのところに自分の体があって艇を進めるのですが、水の真上で風を切る爽快感がボートをやっていない人にとっては、たまらないと思います!僕自身高校生の時にそれに惹かれて入部した経緯があって、大きい魅力の一つかなと思います。あとは女子の場合は一人暮らし、男子の場合は寮生活ということで、競技生活以外の人とコミュニケーションをとるといった対人関係力など、社会人に必要な要素が全部詰まっているのが、漕艇部での4年間だと思います。楽しいことやつらいことなどたくさんありますが、それも含めて普通の学生にはできないような良い経験ができると思っています。

牟田 僕はずっと水泳という個人スポーツをやっていました。一方でボートは究極のチームスポーツと言われているのですが、全員の気持ちと動きが全部一致していないと進まないし勝てないというところが魅力です。チームスポーツの中で、人間性を鍛えられることも魅力だと思います。そして未経験からも始められるという点では、大学からスイープ競技という1人1本のオールを持ってこぐ種目が始まります。この点で見ると中学高校からやっている選手とも同じスタートラインから始まり、戦える土俵まで積み上げていけることが魅力だと思っています。

――ここからは早慶レガッタについて質問していきます。お二人にとって早慶レガッタはどのような舞台でしょうか

牟田 伝統ある戦いというイメージで、すごく憧れの舞台です。桜橋で観客が橋の上にたくさんいて、そこを駆け抜けて最後にガッツポーズするっていうイメージがすごく強いので、今年は無観客開催ということで少し残念なのですが、歴史ある戦いということで頑張りたいなと思います。

岡本 僕は早稲田の付属高出身なので、高校時代も実は一度早慶レガッタに出場しています。ですが慶應義塾高に惨敗してしまい、そのときの負けた景色を忘れられずに、大学でもボートを続けているという経緯があります。僕も大学では初めての早慶戦となりますが、勝って慶應の背中を見てゴールすることを何よりも目標として今まで頑張ってきたので、僕にとって特別な戦いです。

――そんな憧れの舞台である早慶レガッタのPRを、ぜひお願いします!

岡本 早慶レガッタは野球、ラグビーと並んで三大早慶戦と言われています。同時に春の風物詩で新歓イベントの目玉になっていたり、応援部の方が大勢押し寄せて応援してくれたりと、早稲田大学全体にとっても大きいイベントです。今年はオンラインでしか見られませんが、ぜひ早慶レガッタで早稲田大学の雰囲気を味わってもらいたいです。また、僕らも毎日朝起きて授業期間中は大学に行って、そして練習で死力をつくしてこの試合に向かっています。そういう一人の人間が命をかけて試合に臨むという姿を、試合を通して見届けて欲しいなと思います。熱い勝負が見られると思うのでぜひ見てください!

牟田 普段のレースが2000メートルなのですが、早慶レガッタはほぼ倍の3750メートル漕ぎます。年明けから全員で積み上げてきて、レガッタだけに向かって全力を尽くしているところです。また今年の2年生も初めて見る人も多いと思うので、1年生だけでなく2年生にも伝統ある試合を見ていただきたいと思っています。今年はオンラインということで、生で応援することは出来ないですが、その分どこからでも見られると思うのでぜひ見ていただきたいです!

基礎を大切に、万全の準備をしていく

荒川で練習する第二エイト

――第二エイトについてお二人にお聞きしたいのですが、現在の第二エイトの強みと課題を教えてください

牟田 未経験漕手がかなり多く乗っています。そういう点でまだまだブラッシュアップしていけるところがあるので、これからの成長にも期待できると思っています。基礎を大切にしてそこを積み上げてきているので、ユニフォーミティが高いというところを是非見ていただけたらなと思います。慶應よりもパワーでは劣るかも知れませんが、その分チームスポーツの肝であるユニフォーミティを強みにしながら、頑張ってこぎきりたいと思っています。

岡本 牟田とあと越智(竣也、スポ3=愛媛・今治西)という選手がいるのですが、全国の大舞台で活躍している一流の選手が前と後ろに乗っているので、船の感覚とかどういう風にマネジメントしていくのかというところは、一流の選手がいるということで強みだと思います。課題に関しては、どれだけトップクラスの選手にくらいついていけるか。まだまだ未経験の選手もいますし、パワーでは及ばないので細かいところや全体のまとまりを、どれだけ本番までに積み上げていけるかが課題だと思っています。

――当日までどのような準備をしていきたいですか

岡本 例年隅田練習という実際のコースで漕ぐ練習を3回行っているのですが、来週が3回目なので、そこに向けた準備を今はしています。本番の隅田川は普段のレースとは異なりかなり荒れたコンディションでレースをするので、いかなる不測の事態が起きても対応できるように万全の準備をしていきたいと思っています。

牟田 やはり万全の準備というのが1番大切かなと思います。早慶戦は特に不測の事態が起こりやすく、ボートというのは道具を使ったスポーツなので備品などの事前準備の段階からすでに勝負は始まっているという認識で一丸となって頑張っていきます。あとはクルー全体としてレースのイメージなどは、これから積み上げていくところだと思っています。レースに向けて全体での精神統一というところも大切にしてやっていきます。

――昨年の中止の悔しさも胸にレースに臨まれると思います。最後に早慶レガッタへむけて意気込みをお願いします!

牟田 昨年はギリギリまで開催できると信じて最後まで練習していたのですが、開催できなかった残念な思いと、去年出場出来なかった先輩の思いも込めて全力で3750メートル漕ぎきりたいと思います。オンラインで残念ですが、ぜひ僕たちの漕いで勝つ姿を見ていただきたいです!

岡本 僕自身にとっては高校時代のリベンジということで1番良い舞台を用意してもらったので、まずはそこで全力で勝ってお世話になっている方々に自分の雄志を見せたいです。あとは部活全体としても今年は早慶戦完全優勝を掲げているので、女子と僕たちが勝って対校エイトのレースに繋げられるように全力で3750メートル漕ぎきります!

――ありがとうございました!第二エイトの熱い戦いも見逃せません!

(取材・編集 樋本岳 土生諒子 伊勢崎晃、 写真 早大漕艇部提供)

◆牟田昇平(むた・しょうへい)(※写真右)

1999(平11)年6月9日生まれ。176センチ。76キロ。兵庫・三田学園高出身。商学部4年。終始にこやかにインタビューに答えてくださった牟田副将。学部も同じで仲のいい岡本選手と抜群の連携を発揮し、第二エイトを支えてくれることでしょう!

◆岡本真弘(おかもと・まさひろ)

2000(平12)年1月3日生まれ。171センチ。67キロ。東京・早大学院高出身。商学部4年。高校時に出場した早慶レガッタのレースで慶応義塾高に敗北し、そのリベンジを果たすべく努力を積み重ねてきた岡本選手。やられたらやり返す、倍返しだ!