【連載】早慶レガッタ直前特集『ONE』女子エイト:宇野聡恵女子主将×勝又真央

漕艇

 昨年全日本大学選手権(インカレ)3連覇を成し遂げた女子部。『絶対女王』として、伝統の一戦に負けるわけにはいかない。勝利の鍵を握る宇野聡恵主将(スポ4=大分・日田)とコックス・勝又真央(スポ3=東京・小松川)に、昨シーズンの振り返りや現在のチーム、そして早慶レガッタへの意気込みを伺った。

※この取材は3月31日にオンラインで行われたものです。

チームのまとまりはとてもある

荒川で練習する女子エイト

――まずは昨シーズンの振り返りをしていただきたいと思います。様々なことがありましたが、インカレでは宇野選手は舵手なしクォドルプルで優勝されました。どのような1年、そしてインカレとなりましたか

宇野 コロナの影響でできないことも多くあったのですが、藤田さん(藤田彩也香、令3スポ卒=東京・小松川)と安井さん(安井咲智、令3スポ卒=東京・小松川)と3年間ずっと一緒に乗っていて、「絶対に勝ちたい」という思いが年々強くなっていったと思います。初めて一緒に優勝した時も逆転レースだったのですが、昨年のレースはそれ以上に勝ちたい気持ちがあったレースでした。

――勝又選手にとって昨シーズンはどのようなシーズンでしたか

                                                                   

勝又 私は昨年レースがなかったのですが、コックスとして自分のレースがない分、船の整備などに力を入れてやっていました。1年生の時はインカレに出場したのですが、昨年は1つもレースがなかったので、少しの妥協もせずに船を整備するということに力を入れていました。

宇野 つけ加えると、コックスがいないクルー艇の整備もしてもらうというように、やや無茶振りのようなことをお願いしていました。

――そんな昨シーズンを終えて、宇野選手は新たに女子主将に就任されましたが意識に変化はありますか

                                                                   

宇野 今までは自分がやりたいことを伝えればそれが伝わるということが多かったです。しかし同期や後輩と乗ることが多くなったので、まとめるためには、自分がやりたいことだけを伝えていてはいけないと思うようになりました。

――勝又選手から見た宇野主将はどのような主将ですか

                                                                   

勝又 練習の時もそうでない時も、フレンドリーな方で居心地がいいです。それでも水上に行くと的確に指示や状況を伝えてくれます。水上でも陸上でも頼れる先輩だと思っています。

――現在のチームの雰囲気はいかがですか

                                                                   

勝又 先輩と後輩の境界線はあまりなく、下級生も意見を言いやすい環境だと思います。お互いに指摘し合える良い関係ですね。

宇野 後輩が頼もしく、助けられているということは感じています。私たちの学年は特に人数が昨年の先輩に比べて少ないので、気がつける範囲がどうしても小さくなってしまいます。そのような部分で後輩からの発言もあることによってやりやすい環境はあるので、チームとしてのまとまりはとてもあると思っています。

――今年のチームで重点的に練習している点はありますか

                                                                   

宇野 昨年は個人として強い先輩が多くいたのですが、今年は全体的に人数が減っている分、お互いを生かしあっています。1足す1を3にするというところは意識していますね。

勝又 私はあまりコックスというポジションにこだわりがなくて、漕艇は漕手がいてこその競技だと思っています。漕手がしっかりとトレーニングする環境を作ったり、客観的に見ているポジションとして漕手ではないからこそ気づけることを指摘したり、プラスアルファの役割を果たすポジションです。漕手自身では気がつけないところに気がつけるよう意識しています。

「試合に挑んでいた先輩たちがキラキラしていて、格好いいなと思っていた」(宇野)

2番を務める宇野がクルー全体を支える

――ここからは、早慶レガッタに関連して伺っていこうと思います。早慶レガッタはご自身にとってどのような舞台ですか

                                                                   

勝又 一昨年初めてレースを見て、応援団の方々や観客の皆さんが多くいて、迫力がすごいというのが第一印象でした。三大早慶戦の一つということでプレッシャーも選手たちの中にはあると思います。そのような気持ちを全てレースにぶつけていると感じ、勝利の瞬間に溢れ出した喜びを目の当たりにした感動を今でも覚えています。そのような場所で自分もレースができるということに喜びはあります。

宇野 年に1回隅田川で漕ぐことができるのは早稲田と慶應だけなので、そのような部分で特別感はあります。やはりそこにかける思いや、慶應に対するプライドやプレッシャーもあると思います。かけている思いが大きい分、試合に挑んでいた先輩たちがキラキラしていて格好いいなと思ったので、私たちも後輩たちにボート魅力を伝えられたらと思っています。

――宇野選手にとっても早慶レガッタ出場は初めてなのですか

                                                                   

宇野 そうですね。私も含め、今年は9人全員が隅田川で漕いだことがないというフレッシュなクルーです。

――隅田川の特徴とはどのようなところにあるのでしょうか

                                                                   

勝又 以前コックスだけで、コートを知るためにモーターボートに乗って隅田川に行ったのですが、いつも練習している荒川とは違う波の形がありました。普段は静水で練習しているため、水のつかみや漕ぎの部分で工夫が必要だと感じるコースでした。

宇野 私はまだ漕いだことがなく、見たことしかありません。実際に漕ぐ時と、見ていた時とではギャップがあると思います。聞いた話によるといつもとは違った力を使う動作や波があるということなので、気持ちの面も大切になってくるのではないかと思っています。

――ご自身のポジションに求められる役割を教えてください

                                                                   

宇野 私は2番という後ろの方のポジションに乗っています。後ろはいろいろなことが見える位置です。だからこそ、後ろから声を出すことでクルーの雰囲気を明るくすることが重要だと思っています。また体にかかる艇の重さが軽い分、たくさん漕ぐことで前の人を楽にするというようなバックアップの役割も、私は頑張らないといけないと思っています。

――勝又選手のコックスではどういったことがポイントですか

勝又 普段は1000メートルレースなので、どこで勝負をかけるのかということを考えるレースなのですが、800メートルになると駆け引きというよりは800メートルをどれだけ崩さずに落ち着いていけるのかということが大事だと思っています。外から見ているポジションとして声かけをしていかなければいけません。また全体的にレートが高く、ペースの速いレースになると思うので、合わせすぎたり漕ぎが乱れたりしないようにコックスとしてまとめていければと思っています。

――ありがとうございます。つづいて、今年は特に新歓に力を入れていると伺いました。新入生に向けて漕艇部の魅力を伝えてください!

                                                                   

宇野 ボート競技は未経験で始める人も多いです。それこそ早慶戦を見て憧れて入った選手も多く、そんな選手も活躍することができます。教育システムという部分でも、基礎の部分を教育するプログラムも考えており、未知の競技で不安もたくさんあると思うのですが、周囲が助けてくれるという部分では始めやすい競技だと思います。

勝又 ポジションが充実していて、トレーナーというポジションもあるので、水上だけでなく陸上トレーニングなど特殊なトレーニングもできる環境が整っています。高校でインターハイ出場など結果を残している選手もそうでない選手も、全員で高め合える環境がここにはあります。

――今度の早慶レガッタは新入生が漕艇部を知る大きな機会だと思います。早慶レガッタのP Rをお願いします!

                                                                   

宇野 春の風物詩で、伝統の一戦ということもあり、都内でここまで白熱したボート競技を見られることは魅力の一つです。男子エイトはもちろんですが、女子のエイトがフォーカスされるのは早慶戦しかないと思うので、女子が8人漕ぎ1人が操り、9人全員が本気になって戦うという姿を見てもらうことで何か感じていただけるかなと思っています。

「難しいところも魅力」(勝又)

クルー全体の意思疎通にコックス勝又は欠かせない存在

――詳しく女子エイト全体のことについて伺っていきます。早大女子エイトの強みはどのような点でしょうか

                                                                   

勝又 客観的に私が見ていて、監督やお互いの声かけへの反応や修正力が高いです。言われたことを意識するまでが早いので、練習を積み重ねていくうちに良くなっていくのがわかります。レースに向かって日々向上している実感があって、そこは良いところだと思います。

宇野 ボート競技は一人が速くても、エイトになって速いとは限らないので、その点でチーム力というのは強みですね。

――インカレに女子エイトがない分、早慶レガッタにかける思いは大きいのでしょうか

                                                                   

宇野 女子のエイトが注目されるレースというのは、早慶戦くらいしかないです。人数が多い分難しい部分も多いのですが、レースを終えた時のやりがいや、他の種目で感じることのできないスピード感もあるので、そのような点でエイトは楽しいと思っています。

勝又 舵手つきフォアにはないスピード感もありますし、9人で合わせることの難しさを日々感じています。しかし難しいところも魅力であるので、エイトは良い種目だと思っています。

――エイトで特に大変な部分はどのような点でしょうか

                                                                   

宇野 人数が多いので、それぞれが感じていることが違うのは大変です。また、一番後ろと一番前までが遠いので言葉が届きません。そこで何がやりたいのかというお互いの意思疎通が難しいです。そのような部分では間の人がつなぐという工夫でのりきっています。

勝又 コックスとストロークという前のポジションと後ろのポジションの間で、思っていることやフィードバックが違います。そこをどう擦り合わせていくのかというところが難しいと思いますね。8人で漕ぎを合わせる際に、同じメニューの中でもリズムが変わってしまうということがあります。同じリズムで漕ぎ通すということは非常に大事な部分だと思うので、そこは難しいと感じます。

――女子エイトの距離が1000メートルから800メートルに変更となったことはどのように感じていますか

                                                                   

宇野 どちらかというと苦しいです。200メートル短くなった分、レース展開が速くその中にぎゅっと詰まっているので、最初から勝負をどんどん仕掛けていかなければ、逆転しにくいと感じています。

――現在女子エイトの課題はありますか

                                                                   

宇野 求めていることを、いかに再現性高く出し続けられるかというところですね。隅田川に今週(4月初週)行くのですが、隅田川の波に対応しつつ今まで狙っていた漕ぎをどれだけ出せるかということが今後の課題です。

                                                                  

勝又 乗り始めからバラバラという感じはなく、漕ぎが統一できないこともあまりないクルーです。やはり波が高く風の強い隅田川で、練習で培った漕ぎをどれだけ再現度高く出せるのかということがポイントです。先程宇野さんもおっしゃっていたように今週末の隅田練がとても重要になってくると思います。

――現在の女子エイトの仕上がりを点数で表すなら何点ですか

                                                                   

宇野 まあ60点くらいですね。ある程度完成度は高いと思うのですが、まだ詰められる部分や成長できる部分、隅田川にどう対応していくかというところで伸びしろがあると思うので、この点数です。

――では最後に、早慶レガッタへの意気込みをお願いします

                                                                   

宇野 昨年できなかった分、2年分の思いや昨年先輩と流した悔し涙もあります。その分もこのクルーにかけて全員でやっていきたいです。絶対に勝とうと思っています。

勝又 自分たちがレースで勝ちたい気持ちはもちろんあります。また30連覇してきているという歴史も途絶えさせてはいけないと思うので、気負い過ぎてもいけませんが、今まで培ってきたものをつなげるという部分でも大事なレースになると思います。これから残りの期間、全員でより高めていきたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 内海日和、樋本岳 写真 早大漕艇部提供)

◆宇野聡恵(うの・あきえ)(※写真左)

1999(平11)年12月18日生まれ。大分・日田高出身。スポーツ科学部4年。「先輩たちと流した涙の分も」勝ちにいくと語ってくれた宇野主将。水上でも陸上でも、いつでもどこでも頼れる主将が昨年の悔しさを胸に、女子エイトを31連覇へ導いてくれることでしょう!

◆勝又真央(かつまた・まお)

2000(平12)年12月25日生まれ。東京・小松川高出身。スポーツ科学部3年。「エイトは難しいところも魅力だ」と語ってくれた勝又選手。漕手8人それぞれを見つめ、艇をコントロールする勝又選手の目には、桜橋までのビクトリーロードが浮かんでいるはずです!