全日本学生選手権(インカレ)最終日。男子部からは4艇が決勝に出場した。舵手付きフォアが総合2位に入ったが、それ以外の3艇(エイト・舵手なしフォア・舵手なしペア)は総合4位と表彰台まであと一歩届かなかった。それでも苦戦が続いていた最近のインカレから見れば、今年は良い成績を残したと言える。
★下級生中心クルーで堂々2位(舵手付きフォア)
2週間前の全日本選手権(全日本)では2位、学生の中ではトップの成績を残した舵手付きフォア。インカレで狙うのは当然優勝。そんな気持ちを抱いて臨んだ決勝。1000メートル時点でトップの中大と1秒差。全日本から見せていた終盤の強さでその差を詰めていき、ついには横に並んだ。このまま差すかと思われたが、「終盤自力の差が出てしまった」とCOXの山田侯太(商4=東京・早大学院)が言うように、ラストスパートで再び中大に離されて、2着でゴール。総合2位で目標としていた優勝には届かなかった。しかし、「クルーの完成度で言ったら中大に勝っているかも」(山田)と敗れはしたものの、充実した大会になった。
★メダル届かずも『やり切った』(エイト)
2015年以来の決勝進出を果たしたエイト。仙台大、日大と強力な相手がひしめく決勝に挑んだ。強みであるスタートからの500メートルでは他艇とほぼ差がない状態。だが、中盤以降は「自分たちのテクニック面で足りないとこが出た」と田中海靖主将(スポ4=愛媛・今治西)が言うように、他艇に徐々に置いてかれる厳しい展開に。悪い流れを断ち切ることができず、4位でフィニッシュ。総合4位でメダルにはあと一歩届かなかった。しかし、今まで順位決定戦に回っていたここ数年から見れば、善戦したと言えよう。3年間、エイトに乗り続けてきた田中海靖主将も「決勝の舞台に後輩たちを立たせてあげられたことは良かった」と振り返った。
決勝のレースで力漕するエイト
★この結果を糧に(舵手なしペア・舵手なしフォア)
決勝の舞台はそう甘くはなかった。敗者復活戦から決勝まで上がってきた舵手なしペアは、予選で破れた慶大と3位を争う形に。中盤から徐々に慶大に離され、4着でフィニッシュ。総合4位で今大会を終えた。4年生2人を乗せた舵手なしフォアは前半から他艇に先行を許し、厳しいレース展開が続く。その後も差を縮めることができずに4着、総合4位となった。2艇とも納得のいく結果ではなかっただろう。しかし、舵手なしペアの2人はまだ挽回する機会がある。舵手なしフォアも、4年生の2人の思いを下級生が晴らしてくれるだろう。
男子部では久々に4艇が決勝に進んだインカレ。メダルを獲得したのは1種目のみにとどまったが、成果のある大会になったのは間違いない。内田大介監督(昭54教卒=長野・岡谷南)は『今年のこの成績は来年に必ずつながると思う』と力強く言った。来年は次期主将の船木豪太(スポ3=静岡・浜松北)を中心に、新たな漕艇部が誕生する。『来年必ず優勝してくれると信じている』。田中海靖主将は大会後にこう語った。“古豪”ではなく“強豪”に。男子部の新たな挑戦が始まる。
(記事 関飛人、写真 早稲田大学漕艇部)
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結果
総合6点 総合5位
決勝
【エイト】
C:菱谷泰志(スポ4=鳥取・米子東)
S:阿部光治(スポ2=愛知・猿投農林)
7:青木洋樹(スポ1=東京・成立学園)
6:中島湧心(スポ2=富山・八尾)
5:森長佑(スポ2=福井・若狭)
4:田中海靖主将(スポ4=愛媛・今治西)
3:瀧川尚歩副将(法4=香川・高松)
2:舩越湧太郎(社4=滋賀・膳所)
B:船木豪太(スポ3=静岡・浜松北)
6分1秒34 【4着 総合4位】
【舵手つきフォア】
C:山田侯太(商4=東京・早大学院)
S:越智竣也(スポ2=愛媛・今治西)
3:小林里駆(スポ2=静岡・浜松西)
2:濱野圭吾(商2=埼玉・春日部)
B:岩松賢仁(スポ3=熊本学園大付)
6分37秒84 【2着 総合2位】
【舵手なしフォア】
S:中川大誠(スポ4=東京・小松川)
3:菅原陸央(政経2=秋田・本荘)
2:鈴木利駆(スポ4=静岡・浜松西)
B:牟田昇平(商3=兵庫・三田学園)
6分38秒02 【4着 総合4位】
【舵手なしペア】
S:三浦武蔵(商2=山梨・吉田)
B:岡本真弘(商3=東京・早大学院)
7分24秒70 【4着 総合4位】
コメント
内田大介監督(昭54教卒=長野・岡谷南)
――インカレを振り返って
若干の取りこぼしもありましたが、出場したクルーの大半が決勝に進んだことは近年稀に見ることですし、どの学年も関わってチーム構成ができていたので、今年のこの成績は来年に必ずつながっていくと思います。優勝の数は思ったより少なかったですが、非常に成果のある大会になりました。
――男子エイトが5年ぶりに決勝に進んだ勝因は
海外遠征での成果が定着してきたところはあります。部員が一つの狙いで漕げるようになってきたのが大きいです。他大学と比較して、うちはどのクルーも同じスタイスでローイングすることができるようになってきたので、誰がエイトに乗っても力が発揮できるようなチーム構成になってきたことが2015年以来の躍進につながったと思います。
――全日本、インカレともに好成績を残した男子舵手付きフォアの活躍については
正直な話、一番高い所を取れればよかったと思っています。ただ、クルーの構成が2年生中心でしたので、優勝した中大が強かったです。早稲田はまだまだ実力不足、努力不足だったかなと思います。
――大会前の目標は達成できなかったものの、監督から見てインカレは満足のいく結果だったか
これだけの数の種目が決勝に進んだので、当初の理想的な目標には達しなかったが、現実的には非常に満足できる結果でした。
――引退する4年生はどんな学年だったか
女子部に関しては日々努力の学年でした。決してスター選手がいるということではありませんでしたし、他大学に比べて体格的には劣っていましたが、日々の努力の積み重ねで勝てたかなと思います。男子部に関しても、トップアスリートがいるかと言われればこの学年はそれほどでもなかったので、一歩一歩積み上げてきたという印象が強いです。
――これからは次期主将である船木豪太(スポ3=静岡・浜松北)選手と宇野聡恵(スポ3=大分・日田)選手を中心になっていくが、来年の漕艇部について
男子部はインカレで活躍した種目に2、3年生が多かったので、多分来年ブレイクしてくれるかなと期待しています。特にエイトはかなり期待できるかなと思います。女子部に関しては、努力してここまで積み上げてきた4年生がいなくなるので、4年生を超えるような努力をしていかないと今年並みの成績は上がらないかなという感じです。彼女らの努力に期待しています。
田中海靖主将(スポ4=愛媛・今治西)
――学生最後の大会が終わった、今の率直な気持ちは
やり切ったという気持ちが大きいです。自分が出場したエイトでは4位という結果に終わりましたが、それ以外の種目では良い成績を残せた人もいて、個人としてもチームとしてもやり切ったかなと思います。
――決勝のレースプランは
エイトはスタートから500メートルまでのスピードが持ち味なので、最初にリードして1500メートルで勝負を決める、どんどん攻めるレースプランで挑みました。
――実際の決勝を振り返って
優勝した仙台大には及ばなかったものの良いスタートが切れたと思っていて、500メートル時点ではその仙台大ともほぼ差がない状態で1位通過できました。そこからはミスオールなど自分たちのテクニック面で及ばないところがあって、他艇にするすると置いてかれて、相手が見えない辛いレースになってしまいました。そこで粘れなかったのが4位になった敗因だと思います。
――ここ数年苦戦が続いていたインカレでしたが、今年の男子部の戦いぶりについて
一人一人の力が上がってきた結果、4種目のクルーが決勝に残れたので、そこはコロナ渦でも成長できた点だと思います。
――早大漕艇部の4年間を振り返って
1、2年生の頃は練習についていくので必死で、また怪我や病気もあって思うような成績を残せなくて、すごく悔しかったです。でも学年が上がるにつれてだんだんと練習の雰囲気にも慣れてきたり、上級生の自覚も徐々に出てきたりして、どう行動すればいいのか自分で考えられるようになってきました。いざ4年生になって、かつ主将を務めさせていただくことになってからは、部をまとめるという難しさもありましたが、自分の行動も責任や自覚が持てるようになりました。そして4年生の集大成として今回、5年ぶりにエイトとしては決勝に残ることができました。本当は優勝したかったのですが、正直な感想としては今まで順位決定戦だったところを、一歩進んで決勝の舞台に後輩たちを立たせてあげたというところは良かったと思っていて、彼らに良いものを残せたと思います。自分としても4年間の集大成として良い形で終わることができました。
――今後、競技を続ける予定は
競技としてはこれで終わりますが、ボート競技は大好きなので、漕艇部OBとして支援していきたいと考えています。
――これからの漕艇部を担う後輩に対して伝えたいことは
今回のインカレでは非常に良い成績を残すことができましたが、男子部に関しては優勝クルーがなかったので、悔しい気持ちがすごく大きいと感じていています。僕の経験上、悔しい気持ちは練習するにつれてだんだんと薄れてきてしまって、忘れてしまうことがあると思いますが、今感じている悔しさを忘れず、バネにして今後頑張ってほしいです。エイトは4位でしたが、来年以降すごく力のあるクルーになると思います。他にも舵手フォアや、惜しくも準決勝で敗退したクルーにも非常に力のある後輩たちが揃っているので、これから1年間みっちりトレーニングして、『来年必ず優勝してくれると信じている』ということを伝えたいです。
山田侯太(商4=東京・早大学院)
――舵手付きフォアで2位になった今の気持ちは
2週間前に行われた全日本では関西電力には負けてしまったものの、学生の中では1位だったので、インカレでは優勝したいという思いがありましたが、最後に中大に差し切れずに終わってしまい、正直悔しいなというところではあります。
――決勝のレースプランは
中大は予選や準決勝では当たっていないものの、レース動画を見ながら序盤、スタートは速いから出られても落ち着いて第二クォーターまでにトップを取るというのが作戦でした。
――実際の決勝は
第1クォーターで1艇身出られてしまいましたが、そこは想定内でした。1艇身出られると精神的にきついところではありますが、僕のアタックコールに漕手のみんなが反応してくれて、中盤でトップに並んだところまでは良かったと思います。ただ、やっぱり終盤自力の差が出てしまって、最後200メートルを勝ち切れなかったところが今回の悔しい点です。でも、それまでは攻めたレースですごく良かったかなと思います。
――唯一の4年生、またCOXとして意識していたことは
下級生中心のクルーだったので、彼らが何を考えているのか、彼らがどう漕ぎたいかを上手く生かしてあげられるように、練習から考えていました。また、どうしても4年生の意見が通りやすいので、そこをそうじゃなくて下級生がどう考えているのかをできるだけピックアップすることで、クルーとしてまとまることができたと思います。
――同じクルーの後輩4人に伝えたいことは
クルーとしての完成度はすごく高くて、中大に負けてない、もしかしたら勝ってるかなと思います。ただ、やっぱり体力的な面で負けてしまったので、来年の早慶戦、インカレ、全日本までに強化して、そこで負けないようにしてもらえれば、今回のように優勝し切れなかったということなく勝てると思います。彼らみんな上手いので、体力の方を冬でつけてもらえたらなと思います。
――高校で3年間、大学で4年間。7年間の早稲田でのボート生活を振り返って
高校でも一流の選手ではなかったですし、大学でもそういった選手ではなかったと思います。ただ、自分のやりたいことをやれたし、あまりスポーツが得意じゃない中でもボートという競技で、全日本級の大会で何回か表彰台に乗るぐらいのレベルには成長できたので、7年間早稲田という環境でボートをやれて良かったと思います。
――同期や後輩に伝えたいことは
引退された先輩方を含めて、みんながいなければやれなかった。特にCOXは自分で船を進められないので、そういった意味で仲間の大切さというものを実感した4年間でした。なので、僕と一緒にボートをやってくれてありがとうございましたと言いたいです。